杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと基地の教室

岩内自衛隊基地の地下会議室の一角が、トオルのための小さな教室に変わっていた。机は一つ、黒板は簡易なホワイトボード。窓はないが、蛍光灯の柔らかな光が部屋を明るく照らす。そこに、胡蝶しのぶと胡蝶カナエが立っていた。二人とも制服の上に白衣を羽織り、教科書とノートを手に、優しく微笑んでいる。

トオルは七歳の小さな体を椅子に座らせ、杖くんを膝の上に置いて、目を輝かせていた。学校へ行く暇がない。ダンジョン探索が毎日続く中、胡蝶姉妹が交代で算数、社会、理科、国語を教えることになったのだ。

「今日は算数の続きよ、トオルくん」

しのぶが柔らかな声で黒板に分数を書く。蝶の髪飾りが揺れ、丁寧に説明する。

「3分の1と4分の1、どっちが大きいか……わかる?」

トオルは少し考えて、すぐに手を挙げた。

「3分の1の方が大きい! だって、分母が小さい方が1つ分が大きいから……」

「正解ですわ。素晴らしい」

カナエが穏やかに頷き、次の問題を出す。

「では、社会ね。日本で一番高い山は?」

「富士山! 3776メートル!」

「えらいわね。じゃあ、理科。植物はどうやって光合成するの?」

トオルは目を輝かせて答える。

「葉緑体が光を取り込んで、二酸化炭素と水から酸素とブドウ糖を作るんだよね!」

姉妹は顔を見合わせ、くすくすと笑った。

「もう、中学レベルね。トオルくん、覚えが早すぎるわ」

トオルは照れくさそうに頭を掻いた。

「胡蝶さんたちが、優しく教えてくれるから……楽しいよ」

授業は毎日続き、国語では漢字の書き取り、古典の読み方、社会では世界の国々、理科では物理や化学の基礎……。トオルはスポンジのように吸収し、いつの間にか高校レベルの知識まで身に着けていた。難しい問題を解くたび、姉妹は目を細めて褒める。

「トオルくん、本当に天才ね」

「これなら、いつか大学もいけるわよ」

トオルは笑顔で頷く。

「僕、みんなのために、もっと勉強するよ。ダンジョンで役立つ知識、たくさん知りたいから」

だが、自衛隊内で、一つだけ深刻な問題が持ち上がっていた。

誰がトオルに性教育をするか。

学校や親が教えるのが普通だが、トオルは今、親元を離れ、学校にも行けない。基地内で誰かが教える必要がある。だが、まさか胡蝶姉妹にやらせるわけにはいかない。しのぶは「ふふ、そんなこと、私たちにさせるなんて……」と笑い、カナエは「あらあら、困ったわね」と頰を赤らめる。

会議室で、煉獄が腕を組んで唸った。

「うむ! これは深刻だぞ! トオルはまだ七歳だが、いずれ必要な知識だ。誰が教える?」

炭治郎が静かに、

「僕……無理です。恥ずかしくて……」

善逸が顔を赤くして、

「俺も無理! 絶対無理!」

伊之助が大声で、

「俺が教える! 男同士だろ!」

だが、すぐに却下された。

「伊之助くん、それは違うわよ……」

結局、結論は出なかった。

「外から教師を呼ぶしかないか……」

「それとも、自衛隊内で、信頼できる人に……」

トオルは、そんな大人の悩みなど知らずに、教室で次の問題を解いていた。

「次は、理科の電気の話だよ。胡蝶さん、教えて!」

しのぶが優しく微笑み、

「ええ、もちろんですわ。トオルくんは本当にまじめね」

カナエが教科書をめくりながら、

「いつか、必要なことも……ちゃんと教えてあげないとね」

二人は顔を見合わせ、くすくすと笑った。

トオルは無邪気に頷く。

「うん! 僕、なんでも勉強したいよ。みんなのために!」

基地の外では、雪が静かに降り続いていた。ガンダムとザクが広場に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。

七歳の少年は、知識を吸収し続けながら、優しい笑顔を絶やさない。

人類史上最大の魔法使いは、教室の小さな机で、世界を照らす光を、少しずつ育てていた。

霧の港町は、少年の学びと、大人たちの悩みに包まれながら、静かに息づいていた。

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