杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと銀河の夢

岩内自衛隊基地の訓練広場で、トオルがライトセーバーを振るう姿は、科学者たちのカメラに収められていた。

青白い魔力の刃が弧を描き、雪を溶かしながら空を裂く。オビ=ワン・ケノービのソレスを模した防御の型、ルーク・スカイウォーカーのシエンを思わせる攻撃の連撃、ダース・ベイダーの重厚な一撃……七歳の少年の小さな体が、銀河の英雄たちの動きを正確にトレースしていく。

その映像は、基地の科学者チームによって即座に編集され、各国政府と研究機関に極秘で送信された。タイトルはシンプルだった。

「Subject: T-01(佐藤トオル)のエネルギー刃(ライトセーバー)実演記録」

映像を見た瞬間、世界の科学者たちは息を飲んだ。だが、一番強く心を揺さぶられたのは、ジョージ・ルーカス本人だった。

カリフォルニアの自宅スタジオで、ルーカスはVHSデッキにテープを挿入した。画面に映ったのは、雪の広場でライトセーバーを振るう小さな少年。青い刃が唸り、少年の動きは――オビ=ワン、ルーク、ベイダーのそれと重なる。

ルーカスは椅子に深く腰を沈め、眼鏡を外して目を擦った。声が震える。

「……俺の想像したものが……本当に、動いてる」

彼は新聞でゼノモーフの存在を知っていた。リドリー・スコットが涙を流して対面した、あの黒い悪夢が現実になったことは衝撃だった。だが、これは別次元だった。

「フォースを……魔力で代用? ライトセーバーを、純粋なエネルギーの刃として?」

ルーカスは映像を巻き戻し、何度も繰り返し見た。少年の型は、映画の振り付けを忠実に再現しながらも、どこか純粋で、力強い。オビ=ワンの静かな守り、ルークの成長する闘志、ベイダーの圧倒的な威圧感――すべてが、七歳の子供の体に宿っていた。

彼はスタジオの電話に手を伸ばした。声はかすれていた。

「……すぐに日本へ行く。トオルくんに会いたい」

数日後、ルーカスは岩内に到着した。基地の特別室で、トオルと対面した。46歳の映画監督は、膝をついて少年の目線に合わせた。

「トオルくん……君が、俺の映画を見て、フォースとライトセーバーを作ったんだね」

トオルは杖くんを抱き、恥ずかしそうに頷いた。

「うん……スター・ウォーズ、すごかったから。フォースって、魔力みたいだなって。ライトセーバーも、魔力の刃で作ってみたんだ」

ルーカスは涙を浮かべ、少年の頭を優しく撫でた。

「ありがとう……君は、俺の夢を、現実にしてくれた。オビ=ワンやルーク、ベイダーの動きが……君の体に重なって見えたよ」

トオルは照れくさそうに笑った。

「僕、みんなを守るために使いたいんだ。フォースみたいに、優しい力にしたい」

ルーカスは深く頷き、立ち上がった。

「君は、もう銀河の希望だ。俺の映画は、君の物語の一部になったんだね」

その対面の写真は、次の日の世界の新聞の一面を飾った。

「『スター・ウォーズ』監督ジョージ・ルーカス、北海道で少年と対面――フォースが現実に」

「ルーカス、涙の感謝。八歳の魔法使いが、銀河の夢を叶えた」

映像は各国で繰り返し放送され、映画ファンたちは歓喜した。科学者たちは「魔力のエネルギー変換」を解析しようと躍起になり、投資家たちは「次なるライトセーバー関連技術」を夢見た。

だが、トオルはただ、基地の広場でライトセーバーを振るい続けていた。青い刃が雪を溶かし、子供たちの笑い声が響く。

「オビ=ワンさんみたいに……みんなを守れるように」

杖くんが耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……あなたは、もう銀河の光よ。ルーカスさんも、きっと感謝してるわ』

雪の降る岩内は、映画の夢と現実の奇跡が交わる場所として、静かに輝き続けていた。

人類史上最大の魔法使いは、七歳の心で、銀河の物語を、地上に繋ぎ続けていた。

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