杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
ダンジョン三十階の森は、いつものように湿った霧に包まれていた。木々の間を抜ける風が、腐葉土の匂いを運んでくる。そこに、突如として現れた影があった。
ジェイソン・ボーヒーズ。ホッケーマスクの下で赤い目がぎらつき、鉈を握った巨体がゆっくりと歩み出す。本来は三十階以降でしか現れないはずの怪物が、二十五階の浅い層にまで降りてきていた。
すぐ近くでは、レザーフェイスがチェーンソーを咆哮させながら、ゴブリンたちの群れに襲いかかっていた。緑色の小鬼たちが悲鳴を上げ、血しぶきが飛び散る。レザーフェイスは人間の皮を被ったまま、狂ったように笑いながらチェーンソーを振り回す。まるで、生き物を殺すことに快楽を感じているかのようだった。
自衛隊の探索隊が無線で叫んだ。
「三十階の怪物が二十五階に! ジェイソンとレザーフェイスを確認! 繰り返す、浅い階層に出現!」
トオルはすぐに駆けつけた。杖くんを握り、仮面ライダーたち、デスナイト、エルダーリッチ、グインたちを従えて。
「みんな……また出てきたね」
トオルは静かに息を吐いた。即死の魔法が奔流となって放たれる。ジェイソンの巨体が、鉈を振り上げたままふっと力を失い、地面に崩れ落ちた。レザーフェイスも、チェーンソーを回したまま静かに倒れる。痛みなく、安らかに。
だが、怪物たちは他の人型モンスターとも争っていた。
ゴブリンやホブゴブリン、ゴブリンシャーマンが群れで襲いかかるが、ジェイソンは鉈の一振りで何体も薙ぎ払い、レザーフェイスはチェーンソーで肉を切り裂く。コボルトやオークにさえ襲いかかり、ゴブリンの上位種――チャンピオン、ロード、キング――にも容赦なく挑む。まるで、殺すことそのものが喜びであるかのように、血の臭いを浴びながら笑う。
自衛隊の隊員たちは、撤退しながら報告した。
「他のモンスター同士で争っている……まるで、生き物を殺すことに快楽を感じているようです」
煉獄杏寿郎が基地で報告を受け、拳を握った。
「うむ……不死身ではないが、浅い階層にまで出てくるようになったか。以前の装備なら全滅だったが、今は撃退できる。だが、油断はできん」
胡蝶しのぶが優雅に微笑みながら、
「ふふ……映画の怪物が、ダンジョンの中で他の怪物と争うなんて。トオルくんがいなければ、本当に怖いですわね」
胡蝶カナエが穏やかに頷き、
「あらあら、ジェイソンさんもレザーフェイスさんも……殺すことに夢中みたい。地上に出たら、大変ね」
トオルは探索から戻り、みんなの顔を見て静かに言った。
「僕、もっと気をつけるよ。あの人たちが出てこないように……みんなが、怖がらないように」
杖くんが耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……地上の悪夢は、ダンジョンの中で他の怪物と争っているのね。でも、あなたがいる限り、地上は守られるわ』
基地の外では、雪が静かに降り続いていた。ガンダムとザクが広場に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちがミスリルの刀を手に訓練を続ける。
ダンジョンは、時折地上の恐怖を具現化する。
ジェイソンとレザーフェイスは、三十階以降でしか現れないはずだった。
だが、彼らは浅い階層に降り、他の怪物たちと血を浴びながら争い続ける。殺すことに、まるで快楽を感じているかのように。
トオルと杖くん、そして仲間たちは、何度もそれを撃退し続けていた。
人類史上最大の魔法使いは、七歳の心で、世界の悪夢を、静かに払い続けていた。
霧の港町は、少年の光に守られ、静かに息づいていた。