杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
岩内自衛隊基地の地下大講堂は、毎週月曜の午後になると厳粛な空気に包まれた。照明は落とされ、中央の大きなスクリーンと黒板だけが明るく照らされる。そこに座るのは、自衛隊の精鋭たち、そして各国から派遣された特殊部隊の隊員たち。アメリカのデルタフォース、ソ連のスペツナズ、イギリスのSAS、フランスのGIGN……皆、背筋を伸ばし、ノートを広げて待っている。
壇上に上がったのは、七歳の少年――佐藤トオル。
杖くんを手に、黒板の横に小さな椅子を置き、トオルはマイクを握った。声はまだ幼いが、はっきりとした言葉で語り始める。
「今日は、三十階以降に現れるようになった危険なモンスターについて話します。みんなが傷つかないように、ちゃんと知っておいてほしいから……」
スクリーンに映し出されたのは、トオル自身が撮影した映像と、手描きの資料。まずは飛竜種のリオレイアとリオレウス。
「リオレイアは緑色の雌飛竜。毒の尾で攻撃してくるし、火の息も吐きます。リオレウスは赤い雄飛竜で、炎の息が特に強力。二人でペアになって襲ってくることも多いです。自衛隊の銃だけでは、翼で飛ばれて逃げられます。ミスリル刀やマカライト盾で近づいて、翼を狙うのがいいと思います」
次に、ゼノモーフの群れ。黒い外殻がスクリーンに映るたび、会場から息を飲む音が漏れた。
「ゼノモーフは酸の血があって、寄生もします。群れで来るから、孤立しないように。エルダーリッチさんの魔法や、僕の即死魔法でまとめて倒すのが一番安全です」
続いて、ジェイソン・ボーヒーズとレザーフェイス。ホラー映画の怪物が現実の映像になると、外国の隊員たちも顔を強張らせた。
「ジェイソンは再生が早くて、レザーフェイスはチェーンソーが危険です。でも、不死身じゃないから、ミスリル刀で首を落とせば倒せます。ただ、浅い階層にも出てくるようになったので、二十階でも警戒してください」
そして、エルダーゴブリンの集団。最上位種のゴブリンたちが、知能を持って連携する姿が映し出される。
「エルダーゴブリンは魔法も使います。シャーマンがいる群れは特に危ないです。デスナイトさんやグインさんが前衛になって、僕が後ろから魔法で支援します」
最後に、五十階で確認された二体の怪物。
スクリーンに映ったのは、虎のような猛々しい飛竜――ティガレックス。強烈な咆哮と突進で、ゼノモーフの大群を一匹で蹴散らした姿が、鮮明に記録されていた。
「ティガレックスは五十階で初めて見ました。一匹でゼノモーフの群れを全滅させるくらい強いです。咆哮で周囲を麻痺させるから、耳栓や防御魔法が必須です」
続いて、ブランゴを率いる巨大な白い牙獣――ドドブランゴ。群れを統率し、バックステップと強烈な攻撃を繰り返す姿が映る。
「ドドブランゴはブランゴのボスです。群れで来ると本当に危ない。マカライト盾で受け止めて、ミスリル刀で一気に倒すのがいいと思います」
講堂は静まり返った。外国の特殊部隊員たちが、ノートに必死に書き込みながら顔を見合わせる。
アメリカのデルタフォース隊長が、低い声で呟いた。
「既存の軍隊では……到底対処できないな」
ソ連のスペツナズ将校も、静かに頷いた。
「ティガレックス一匹で、特殊部隊が全滅する可能性が高い」
トオルは資料を閉じ、優しく微笑んだ。
「みんな、絶対に無理しないでね。僕と召喚獣たちがいるから、一緒に戦おう。傷つかないように、僕が守るよ」
講堂に、温かな拍手が起こった。煉獄杏寿郎三佐が立ち上がり、炎のような声で言った。
「うむ! トオル、よく説明してくれた! これで三十階以降も、もっと安全に進めるぞ!」
胡蝶しのぶが優雅に微笑み、
「ふふ……トオルくんの講習、毎週楽しみですわ」
胡蝶カナエが穏やかに頷き、
「あらあら、みんな真剣に聞いてくれてるわね」
炭治郎が静かに、
「トオルくん……ありがとう。これで、僕たちももっと強くなれる」
トオルはみんなの顔を見て、胸が温かくなった。
「うん……僕も、みんなと一緒にがんばるよ」
杖くんが耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……あなたは、もうみんなの先生よ。世界中の特殊部隊が、あなたの言葉を待ってるわ』
講堂の外では、雪解けの風が吹き始めていた。ガンダムとザクが広場に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
毎週の講習は、トオルの優しい声で、世界の精鋭たちを少しずつ強くしていた。
人類史上最大の魔法使いは、七歳の心で、地上の守り手を、静かに育て続けていた。
霧の港町は、少年の教えに包まれながら、静かに輝き続けていた。