杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
北海道の山岳地帯は、犬型ゴーレムの活躍で、かつてない静けさを取り戻していた。
五メートルの白銀色の巨体が、猛吹雪の中を疾走する。黄金の目が雪を貫き、鼻先が風を嗅ぎ分ける。遭難者の気配を捉えれば、即座に駆けつけ、雪崩が起きれば自動的に防御フィールドを展開。青白い光のドームが遭難者を包み込み、暖房と酸素を供給しながら救助隊を待つ。二次遭難――救助隊が巻き込まれる事故――も、激減した。滑落や雪崩の直撃以外での死亡者は、ほぼゼロに近づいていた。
あるエベレスト登頂者集団は、ネパールから岩内に連絡を入れてきた。
「トオルの犬型ゴーレムを、ぜひ連れて行きたい。八千メートル級の極限環境で、これほど頼りになるパートナーはいない」
彼らは、ヒマラヤの死のゾーンで何度も命を落としかけた経験から、犬型ゴーレムの可能性を本気で信じていた。残念ながら、トオルが創造したゴーレムは「岩内基地の守護」として動かず、国外派遣は認められなかったが、その願いは各国に広がり、犬型ゴーレムは「命の守護犬」として伝説になった。
派遣された国々では、それぞれに愛称がついていた。
アメリカでは「Snow Guardian(雪の守護者)」。デルタフォースの隊員たちが、遭難者を救出した後に「ありがとう、Guardian」と撫でる姿が、基地内で話題になった。
ソ連では「Белый Волк(白い狼)」。シベリアの極寒地帯で活躍し、隊員たちが「Волк、よくやった」と声をかけながら、雪を払う。
スイスでは「Schneehund(雪犬)」。アルプスの救助隊が、犬型ゴーレムの背中に乗って滑降する姿が、地元新聞に載った。
カナダでは「Avalanche Buddy(雪崩の相棒)」。ロッキー山脈で、遭難者を体内に収容して運ぶ姿が、国民の間で感動を呼んだ。
各国政府から、日本へ感謝の言葉が多数届いた。
アメリカ大統領からの親書。「貴国の佐藤トオルくんが創造したゴーレムは、無数の命を救っています。心より感謝申し上げます」
ソ連書記長からの電報。「白い狼は、我が国の山岳部隊の誇りとなりました。日本政府とトオルくんに、深謝」
スイス連邦大統領からの手紙。「Schneehundのおかげで、アルプスの遭難死亡率が過去最低となりました。トオルくんは、世界の希望です」
カナダ首相からのメッセージ。「Avalanche Buddyは、カナダの山を、家族の元へ帰す奇跡を起こしています。ありがとう」
トオルは、そんな感謝の手紙を、食堂のテーブルに広げて読んでいた。七歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。
「みんな、喜んでくれてる……よかった」
煉獄杏寿郎が大声で笑い、
「うむ! トオル、お前の犬型ゴーレムは、世界の山を変えたぞ!」
胡蝶しのぶが微笑みながら、
「ふふ……愛称までつけてもらってるんですのね。トオルくん、すごいですわ」
胡蝶カナエが穏やかに頷き、
「あらあら、各国からこんなに感謝の手紙が……トオルくん、あなたは本当にみんなの希望よ」
炭治郎が静かに、
「トオルくん……ありがとう。山で困ってる人たちが、減ってるよ」
トオルは手紙を胸に当て、目を細めた。
「僕、もっと作ろうかな……みんなが、もっと安全になるように」
杖くんが耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……あなたの優しさが、世界の山を温かくしてるわ。犬型ゴーレムたちは、みんなの命を繋いでる』
基地の外では、雪解けの風が吹き始めていた。犬型ゴーレムたちが、北海道の山々で静かに動き、遭難者の命を救い続ける。ガンダムとザクが広場に立ち、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
世界各国は、トオルの創造した「命の守護犬」に感謝の言葉を送り続けていた。
人類史上最大の魔法使いは、七歳の心で、世界の山を、静かに守り続けていた。
霧の港町は、雪解けの水音と、少年の優しさに包まれながら、輝き続けていた。