杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
岩内自衛隊基地の地下訓練室は、蛍光灯の白い光と汗の匂いが混じり合っていた。
トオルはニンジャスレイヤーの前に立っていた。七歳の小さな体に、黒い忍装束を模した簡易な服を着て、両手にクナイを握っている。ニンジャスレイヤーは覆面の下で静かに構え、覆面越しに低く響く声で言った。
「ドーモ。クナイ・ダート、スリケン。基本から教える。投げるのは腕の力だけではない。呼吸、中心、流れ……すべてを一つに」
トオルは真剣に頷き、ニンジャスレイヤーの動きを目で追った。覆面の忍者がクナイを軽く放つと、的の中心に深々と突き刺さる。続いてスリケンが三枚、弧を描いて連続で命中する。
「今度はお前だ」
トオルは深呼吸し、クナイを投げた。最初は的の端をかすめただけだったが、二投目、三投目と、徐々に中心に近づいていく。ニンジャスレイヤーは覆面の下で、わずかに目を細めた。
「いいぞ。だが、まだ足りん」
トオルがスリケンを手に取ると、ニンジャスレイヤーは静かに語り始めた。
「かつて俺の師、ドラゴン・ゲンドーソーはこう言った。『百発のスリケンで倒せぬ相手だからといって、一発の力に頼ってはならぬ。一千発のスリケンを投げるのだ!』」
トオルはスリケンを握りしめ、ゆっくりと頷いた。
「一千発……僕、がんばるよ」
少年は魔力を込めてスリケンを投げた。最初は普通の金属の軌道だったが、次第に青白い光を帯び、的を貫く速度と貫通力が上がっていく。マジックアローやマジックミサイルの応用――魔力をスリケンに纏わせ、投擲の精度と威力を同時に高める技術だ。
ニンジャスレイヤーは覆面の下で、静かに笑みを浮かべた。普段は冷徹な復讐鬼だが、今は師匠の顔をしていた。
「ドーモ……吸収が早いな、トオル。お前の魔力は、俺のカラテと忍術を、すぐに自分のものに変える」
トオルは息を弾ませながら、的の中心に突き刺さったスリケンを見つめた。十枚、二十枚……次第に光の軌跡が連続し、的が蜂の巣のように穴だらけになる。
「マジックミサイル……もっと速く、もっと強く……!」
ニンジャスレイヤーは覆面の下で、満足げに頷いた。
「いいぞ。だが、力に溺れるな。スリケンは、ただ殺すための道具ではない。守るための刃だ。お前はそれを、よくわかっている」
トオルはスリケンを収め、ニンジャスレイヤーに向き直った。
「うん……僕、みんなを守るために、強くなるよ。ニンジャスレイヤーさん、ありがとう」
ニンジャスレイヤーは覆面の下で、再び笑みを浮かべた。復讐の道を歩む忍びが、七歳の少年に、わずかな温かさを見せた瞬間だった。
「ドーモ。続けろ、トオル。千発のスリケンを、投げ続けろ」
訓練室の外では、雪が静かに溶け始めていた。ガンダムとザクが広場に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。
トオルはニンジャスレイヤーの教えを胸に、魔力の刃を振るい続けた。
人類史上最大の魔法使いは、七歳の心で、忍びの技を、優しさの力に変え続けていた。
霧の港町は、少年の成長と、鋼の守護に包まれながら、静かに輝き続けていた。