杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんとダンジョンの食卓

アメリカ軍特殊部隊訓練施設の講堂。

前回の講義でモンスターの危険性を学んだ特殊部隊員たちは、今日は少し表情が柔らかくなっていた。壇上の七歳の少年が、いつものように丁寧にマイクを握り、ホワイトボードに新しい図を描き始める。

トオルは敬語で、ゆっくりと話し始めた。

「みなさん、今日は少し明るいお話です。ダンジョン内では、食べられる魔物や植物がとても多いんです。ちゃんと調理すれば、美味しいものがたくさんあります。僕が実際に食べてみたものも含めて、お話ししますね」

少年は最初の図を指した。角の生えたうさぎと大きな熊。

「1階から30階まででよく出会うのは、一角うさぎや豪傑熊です。肉はとても美味しくて、ジューシーです。歩き茸も食べられます。ちゃんと火を通せば、普通のきのこより旨味が強いですよ。大蠍(全長1メートルくらい)も、ちゃんと調理すれば美味しく食べられます。殻を割って、中の身を蒸したり焼いたりすると、蟹みたいな甘みがあります」

会場から小さなどよめきが起きた。コッコロが静かに補足する。

「私たちエルフも、昔からこれらを食べて暮らしていました。一角うさぎは煮込みが最高です。豪傑熊は塩焼きにすると、脂がとても良い香りになります」

トオルは次の図を貼った。人食い植物とマンドラゴラ。

「人食い植物の果実は、甘くて栄養価も高いです。マンドラゴラも栄養価の高い植物ですが……無理に地中から引き抜くと、悲鳴を上げます。その悲鳴は普通の人間が聞くと失神するくらいで、運が悪いと即死する可能性もあります。だから、魔法で静かに掘り起こすのが大事です」

さらに、大蝙蝠の絵。

「意外に思われるかもしれませんが、大蝙蝠も食用になります。ダンジョン内ではありますが……美味しいですよ? 皮をむいて焼くと、鶏肉みたいな食感です」

最後に、コカトリスと空飛ぶキャベツの図。

「食用のモンスターで唯一、注意しないといけないのがコカトリスです。視線に石化能力があります。味は巨大な七面鳥みたいで美味しいのですが、下処理が面倒です。目を布で覆ってから捕まえないと危険です」

トオルは最後に、にこっと笑って言った。

「あと、空飛ぶキャベツは、どこの階層にも何故かいます。類似種として、空飛ぶレタスや空飛ぶ白菜もいます。なんで飛んでいるかは不明です。でも、脅威度はゼロです。普通の野菜と同じで、すごく美味しいですよ」

コッコロが優しく微笑みながら、

「私たちも、空飛ぶキャベツはよく食べていました。スープにすると、甘みがとても良いです」

講堂は静かになった後、すぐに拍手が起こった。

デルタフォースの隊長が立ち上がり、敬礼した。

「ありがとう、トオルくん。……正直、怪物が食べられるとは思わなかった。コカトリスは怖いが……下処理さえ気をつければ、食料としても使えるんだな」

SEALsの隊員も、ノートを閉じながら呟いた。

「ダンジョンは、ただの脅威じゃなかった。食料庫でもあるのか……」

トオルは壇上で小さく頭を下げた。

「みんな、食べられるときは、ちゃんと火を通して食べてくださいね。僕も、もっと美味しい食べ方を調べます」

講堂に温かな笑いが広がった。

トオルは杖くんを抱き、コッコロと一緒にステージを降りた。

コッコロがそっと耳元で囁いた。

「トオル様……とても分かりやすくお話しできました。私も勉強になりました」

杖くんが優しく微笑み、

『トオルちゃん……あなたは、みんなに“生きる”方法も教えてるわ。怖いだけじゃなくて、美味しいものもいっぱいあるって』

基地の外では、夏の風が吹いていた。

ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り続ける。

トオルは、講義を終えた後も、みんなの安全と、美味しい食事を祈り続けていた。

人類史上最大の魔法使いは、七歳の心で、世界の精鋭たちに、静かに希望を分け与え続けていた。

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