杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと導かれた者たち

家族向けバーベキュー広場の片隅。

子供たちの笑い声と肉の焼ける音が遠くに響く中、トオルは小さな輪を作って座っていた。

杖くん(レディ・アヴァロン)は優雅に横に立ち、コッコロはトオルの隣で穏やかに微笑んでいる。

そして今、呼び出されたばかりの三組が、少年を取り囲むように輪に加わった。

バーゲストは立派な鎧を鳴らし、ゆっくりと膝をついた。

金髪が風に揺れ、妖精騎士らしい威厳を保ちながらも、瞳には柔らかな光がある。

「トオル様……再びお呼びいただき、光栄に存じます」

エスパークスは赤いマントを翻し、少年剣士らしい凛とした姿勢で立った。

肩に乗ったキー助は、茶色い毛を逆立てながらも、賢そうな目で周囲を見回している。

「よう、トオル! また呼んでくれたのか。俺たち、いつでも来るぜ」

キー助がエスパークスの肩から飛び降り、トオルの膝にちょこんと乗った。

「キー! 久しぶりだな、坊主! 元気にしてたか?」

ナイトガンダムは言葉を発さず、静かに剣を地面に立てて佇む。

銀色の鎧が陽光を反射し、背中の小さな翼が微かに揺れる。

トオルはみんなを見上げ、嬉しそうに笑った。

「バーゲストさん、エスパークスさん、キー助さん、ナイトガンダムさん……来てくれてありがとう!

みんな、急に呼んじゃってごめんね」

バーゲストは優しく首を振った。

「謝る必要などございません。

……トオル様の声が聞こえた瞬間、私の心は自然とここに向かいました。

きっとこの世界で、私の力が必要とされているのでしょう」

エスパークスが頷き、胸を張った。

「俺もだ。

ドラゴン・ゲンドーソーの教えを胸に、俺たちは勇者として生きてきた。

トオル、お前が呼ぶなら……どんな敵でも斬ってみせるぜ」

キー助が小さな手を振りながら、

「キー! 俺も相棒として全力だ!

この世界の敵は、俺たちの敵でもあるってことだろ?」

ナイトガンダムは無言で剣を軽く掲げ、静かに頷いた。

その仕草だけで、強い意志が伝わってくる。

トオルはみんなの顔を順番に見て、胸が熱くなった。

「みんな……ありがとう。

僕、ダンジョンで怖いことがたくさんあるけど、みんながいてくれるからがんばれるんだ。

世界を守るために、一緒に協力してくれる?」

バーゲストが胸に手を当て、騎士の誓いを立てるように言った。

「もちろんです。妖精騎士バーゲスト、トオル様の剣となり盾となりましょう。

この世界の平和を、共に守ります」

エスパークスが剣を握りしめ、力強く宣言した。

「勇者エスパークス、約束する!

どんな闇も、俺たちの剣で切り開くぜ!」

キー助が跳ね上がって、

「キー! 俺も全力でサポートする!

トオル、任せろ!」

ナイトガンダムは剣を胸に当て、静かに頭を下げた。

言葉はないが、その姿勢は「全力で守る」という誓いそのものだった。

トオルはみんなの手を順番に握った。小さな手が、大きな手や小さな手に触れる。

「みんな……大好きだよ。

これからも、一緒にがんばろうね」

コッコロが優しく微笑みながら、トオルの肩に手を置いた。

「トオル様……この方々は、きっと素晴らしい仲間になってくださいます」

杖くんがトオルの耳元で囁いた。

『トオルちゃん……また、新しい家族が増えたわね。みんな、あなたの優しさに導かれて、ここに来たのよ』

広場の向こうでは、子供たちの笑い声が響き、肉の焼ける匂いが漂う。

軍人たちも家族たちも、遠くからこの輪を見守っていた。

トオルはみんなを見上げ、明るく言った。

「じゃあ……みんなでバーベキュー、食べよう!

あばれうしどり、たくさんあるよ!」

バーゲストが少し戸惑いながらも、

「……バーベキュー、とは……?」

エスパークスが笑い、

「肉を焼いて食うんだよ! 楽しみだな!」

キー助が飛び跳ね、

「キー! 俺も食うぞ!」

ナイトガンダムは静かに頷き、剣を鞘に収めた。

輪はさらに大きくなり、笑い声が広がっていった。

七歳の少年は、異世界の騎士、勇者、猿、ガンダムに囲まれながら、ただ静かに、みんなの幸せを願っていた。

人類史上最大の魔法使いは、七歳の心で、世界の英雄たちを、優しさで繋ぎ続けていた。

霧の港町は、遠くアメリカの基地で、少年の輪が広がる光景を、静かに見守っていた。

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