杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
ワシントンD.C.、CIA本部地下の極秘会議室。
蛍光灯の冷たい光が、鋼鉄のテーブルを照らす。部屋には四人の女性だけが座っていた。
窓はなく、ドアは三重のロック。外の音は一切入らない。
テーブルを囲む四人――CIAが「対トオル用」に極秘で集めた最強のチーム。
統括責任者のリアス・グレモリーは、赤い長髪を優雅に流し、紫の瞳で一同を見回した。
彼女は軍人としての階級を持ちながら、圧倒的なカリスマでこのチームを束ねている。
声は落ち着きながらも、絶対的な威厳があった。
「全員揃ったわね。改めて確認する。
今回の目標は、佐藤トオル。
八歳の少年でありながら、人類未踏の領域を探索し、召喚獣を操り、魔法で世界を変える存在。
我が国は彼を……必要に応じて排除するか、完全に掌握するか。
大統領命令は『結果を問わず、成功せよ』よ」
隣に座るのは、長距離射撃の名手――朝田詩乃(コードネーム:シノン)。
日系アメリカ人。黒髪をポニーテールにまとめ、冷静で無表情。
彼女はすでに狙撃銃の分解図を指でなぞっていた。
「了解。私の役割は遠距離からの精密射撃。
トオルが基地の外に出た瞬間、頭部を一発で。
ただ……あの召喚獣の反応速度は異常です。デスナイト一匹で特殊部隊を無力化した記録があります。
接近戦は避け、可能な限り遠距離で仕留めます」
向かいに座るのは、格闘戦の名手――サテライザー=エル=ブリジット。
金髪を短く切り揃え、鋭い青い瞳。
彼女は両手をテーブルに置き、指を組んでいた。
戦闘服の上に白いコートを羽織った姿は、冷たい美しさそのもの。
「私は接近戦専門。
トオルの護衛を突破し、直接拘束するか、殺害する。
あのデスナイトやエルダーリッチ……正直、単独では厳しい。
ですが、チームで連携すれば、隙は作れるはずです」
さらに奥に座るのは、快楽殺人者で重犯罪者――クレマンティーヌ。
金髪を長く流し、赤い瞳が妖しく光る。
彼女はナイフを指先でくるくると回しながら、にこりと笑った。
その笑みは、どこか病的な甘さを含んでいる。
「ふふ……私には、トオルくんを『遊んで』殺す役目ね。
あの可愛い顔を、ゆっくりと……
召喚獣が邪魔なら、まずはあの子たちを『楽しませて』から本命をいただくわ。
死ぬまで、たっぷり愛してあげる」
リアスが冷たい視線をクレマンティーヌに向けた。
「クレマンティーヌ。
個人的な快楽は後回し。
任務優先よ。失敗したら、あなたの首が飛ぶわ」
クレマンティーヌは肩をすくめ、ナイフを止めた。
「わかってるわよ、リーダー。
ただ……あの子の血を味わうのは、私の特権にしておいてね?」
リアスはため息をつき、テーブルに視線を落とした。
「四人で動く。
シノンは遠距離支援、サテライザーは接近戦の切り込み、クレマンティーヌは混乱と暗殺、
私は全体指揮と魔力対策。
トオルの結界は強力だが、完全に無敵ではないはず。
隙を見つけて接近する。
日本政府はまだトオルを『宝』として守っているが……我々はそれを突破する」
シノンが静かに言った。
「一つだけ。
トオルが召喚したバーゲスト……妖精騎士の存在も確認されています。
彼女に近づこうとしたエージェントが、威圧だけで動けなくなったそうです。
接近は極めて危険です」
サテライザーが頷いた。
「ならば、まずは召喚獣の排除から。
デスナイト、エルダーリッチ、グイン、D……
全員を同時に相手にするのは無理。
一匹ずつ、引き離して倒す」
リアスが立ち上がり、会議を締めくくった。
「作戦名は『フォールン・エンジェル』。
トオルは天使のように優しい少年だが……我々にとっては、最大の脅威。
大統領は『結果を問わず』と言っている。
失敗は許されないわ」
四人は同時に立ち上がり、静かに頷いた。
「了解」
会議室の灯りが消え、四人の影が闇に溶けていく。
遠く岩内では、トオルが食堂でみんなと一緒に食事をしていた。
七歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。
「みんな、元気でいてね……」
杖くんが耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……世界の影が、また近づいてきてるわ。でも、あなたの優しさが、きっと守ってくれる』
基地の外では、夏の風が吹いていた。
ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り続ける。
CIAの影は、静かに日本へ向かっていた。
人類史上最大の魔法使いは、七歳の心で、世界の欲望を、静かに受け止め続けていた。
霧の港町は、少年の優しさと、鋼の守護に包まれながら、輝き続けていた。