杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~ 作:redhot
ワシントンD.C.、CIAラングレー本部地下深くの遮蔽会議室。
蛍光灯の冷たい光が、鋼鉄製の長テーブルを青白く照らす。
窓はなく、ドアは三重の生体認証ロック。
室内には四人の女性と、壁に投影された地図とトオルの写真だけが浮かんでいる。
テーブルの主座に座るのは、リアス・グレモリー。
赤い長髪を後ろで束ね、紫の瞳が静かに一同を見渡す。
彼女は軍人としての階級を持ちながら、この作戦の統括責任者だ。
「改めて状況を整理するわ」
リアスは指先でテーブルのタッチパネルを操作し、トオルの最新写真と基地の衛星画像を拡大した。
「目標:佐藤トオル。
八歳の少年。
現在、北海道岩内自衛隊基地内に常駐。
常時、複数の召喚獣による警護下にあり。
デスナイト、エルダーリッチ、仮面ライダー各号、グイン、D、ニンジャスレイヤー、マシュ……
そして新たに確認された妖精騎士バーゲストも加わっている。
基地内部の警備は異常なまでに堅固。
あらゆる場所に自衛隊員が複数配置され、結界と思しき魔力障壁も存在する」
朝田詩乃(シノン)が、黒髪を耳にかけて冷静に言った。
「長距離狙撃は……現状不可能です。
基地外周からでも、召喚獣の感知範囲が広すぎる。
私が一番遠くから撃てる距離でも、デスナイトの盾に阻まれる可能性が高い。
しかも、トオル本人が基地内にいる限り、射線が通らない」
サテライザー=エル=ブリジットが、腕を組んで低い声で続けた。
「接近戦も厳しい。
私が単独で潜入を試みたが、エルフの少女――コッコロの気配察知が異常。
一歩近づいただけで、警戒された。
召喚獣の数が多すぎる上に、連携が完璧すぎる」
クレマンティーヌは、ナイフを指先でくるくると回しながら、にこりと笑った。
「ふふ……だったら、私が『遊んで』あげようかしら?
あの可愛い子を、ゆっくりと……
でも、バーゲストとかいう騎士がいるんでしょ?
あれは厄介ね。威圧だけで動けなくなるって報告があったわ」
リアスが冷たくクレマンティーヌを一瞥した。
「個人的な楽しみは後回し。
今の問題は、どうやって基地内部に侵入するか、よ」
彼女は地図を指差した。
「自衛隊基地内に、すでに我々の協力者がいる。
在日米軍の特殊部隊員の中に、数名が潜入しているわ。
ジェームズ・ボンドもいる。
彼らと合流するのが、現時点で最も現実的なルート」
シノンが静かに首を振った。
「ボンドは……信用できません。
彼はMI6の人間です。
アメリカの命令を聞くとは限りません。
下手な行動を取れば、逆にこちらが足元をすくわれます」
サテライザーが頷く。
「同感です。
ボンドは単独行動を好む。
我々と連携するより、自分のペースで動く可能性が高い」
クレマンティーヌがナイフをテーブルに突き立て、楽しげに言った。
「だったら、まずはボンドを排除しちゃう?
ふふ、面白そう」
リアスが手を挙げ、制した。
「それは最終手段。
今はまだ、トオルに近づくルートを探る段階よ。
基地内の協力者を通じて、トオルの行動パターンを把握する。
講義で基地外に出る機会があるなら、そこを狙う。
それが無理なら……基地内への潜入を本格的に計画する」
彼女は全員を見回し、静かに言った。
「失敗は許されない。
大統領は『結果を問わず成功せよ』と言っている。
私たちは、この作戦にすべてを賭けるわ」
四人の女性は、同時に頷いた。
「了解」
会議室の灯りが、彼女たちの影を長く伸ばした。
遠く岩内では、トオルが食堂でみんなと一緒に食事をしていた。
七歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、優しく笑う。
「みんな、元気でいてね……」
杖くんが耳元で優しく囁いた。
『トオルちゃん……世界の影が、また近づいてきてるわ。でも、あなたの優しさが、きっと守ってくれる』
基地の外では、夏の風が吹いていた。
ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り続ける。
CIAの女性エージェントたちは、静かに日本へ向かう準備を進めていた。
人類史上最大の魔法使いは、七歳の心で、世界の欲望を、静かに受け止め続けていた。
霧の港町は、少年の優しさと、鋼の守護に包まれながら、輝き続けていた。