杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと永遠の薔薇

アメリカ東海岸の小さな町にある、白い壁の可愛い一軒家。

幼い少女エマは、自分の部屋の窓辺に置かれた一輪の紅い薔薇を、毎日欠かさず眺めていた。

トオルが魔法で生み出してくれた花。

水をやらずとも、葉も花びらも一切枯れる気配がない。

いつまでも瑞々しく、朝露のような輝きを保ち、甘い香りを静かに放ち続けている。

エマは花にそっと指を触れ、目を細めた。

「トオルお兄ちゃん……まだ元気かな」

その日、エマの部屋には近所の友達の少女たちが三人集まっていた。

みんな同じ小学校のクラスメイトで、あのバーベキューでトオルを見た子たちだ。

一番活発なルーシーが、ベッドに寝転びながら言った。

「ねえ、エマ。あの魔法の花、まだ枯れないよね? マジで魔法だよ……私も欲しい!」

エマは大切そうに花瓶を抱き寄せ、誇らしげに頷いた。

「うん! トオルお兄ちゃんがくれたの。水あげなくても、ずっと綺麗。宝物だよ」

もう一人のおとなしい少女、ソフィアが窓辺に寄り、ため息をついた。

「また会いたいね……トオルお兄ちゃん。

あのガンダムさんやザクさんも、騎士さんのバーゲストさんも、猿のキー助さんも……みんなかっこよかった」

ルーシーが飛び起きて手を挙げた。

「次はシルフ以外の妖精にも会いたい! もっと恰好良いやつがいい! 剣持ってる騎士とか、ドラゴンに乗ってる人とか!」

ソフィアが小さく笑って首を振った。

「私は可愛いのがいいよ……ピンクの妖精さんとか、蝶の羽の女の子とか」

三番目の少女、ミアがクッションを抱えて言った。

「私はまたバーゲストさんやエスパークスさんたちと遊びたい!

キー助さん、しゃべるんだよ! 人間の言葉!

妖精や精霊って、絵本の中にしかいないと思ってたのに……本当にいたんだね」

部屋に、子供らしい笑い声が広がった。

ルーシーが立ち上がって両手を広げた。

「次に会ったら、絶対にシルフさんみたいに踊ろうよ!

キー助さんに『もっと話して!』ってせがもう!

トオルお兄ちゃんにまた魔法見せてもらおう!」

エマは薔薇の花びらをそっと撫でながら、静かに微笑んだ。

「うん……また会いたい。

トオルお兄ちゃんが魔法で作ってくれたこの花みたいに、ずっと忘れないよ」

四人の少女たちは、窓から見える青い空を見つめながら、夢見るように話し続けた。

「次はどんな妖精さんが来るかな……」

「キー助さんみたいに、しゃべる動物さんもいいよね!」

「トオルお兄ちゃん、元気かな……」

遠く日本では、トオルが基地の食堂でみんなと一緒に食事をしていた。

七歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、ふと空を見上げた。

「アメリカの女の子たち……あの花、喜んでくれてるかな」

杖くんが耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……あなたの優しさが、あの子たちの宝物になってるわ。

いつかまた、会える日が来るよ』

岩内の空は、今日も穏やかに広がっていた。

エマの部屋の窓辺で、紅い薔薇は、いつまでも瑞々しく輝き続けていた。

子供たちの夢と、少年の魔法が、遠く離れた二つの国を静かに繋いでいた。

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