進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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変態視点です



第百十一話

 

 

 

私の愛する、この世で最も美しく尊いアトラス。

 

 

アトラスが腰に生成した円盤にそっと手を当てた、その瞬間だった。

 

 

(……あぁっ)

 

私の全身の産毛が総毛立ち、背筋に強烈な電流が駆け抜けた。

 

 

 

今まで、私の隣で照れくさそうに微笑んでいた愛らしい美少女の姿が、瞬きをする間に『完成』されたのだ。

 

 

 

一切の無駄な力みが消え失せた、完璧すぎる重心。

 

 

 

それは、私が常に無意識下で維持している────いついかなる体勢からでも敵の喉笛を掻き切るための絶対的な臨戦態勢と全く同じ……いや、それ以上の芸術的な高みへと至っていた。

 

 

 

正規の訓練など一度も受けたことがないはずの彼女が、私とリヴァイの動きを見ただけで、自身の肉体の神経接続を完全に最適化してしまったのだ。

 

 

 

背後でエルヴィンやミケが息を呑む気配がしたが、そんな雑音はどうでもよかった。

 

 

 

私の視界には今、絶対的な死の気配を纏いながらも、どこまでも澄み切った美しさを放つアトラスしか映っていない。

 

 

 

──────ドゴォォォォォォォォォンッ!!!

 

 

 

大気が爆発する轟音と共に、彼女の足元の地面がクレーターのように吹き飛んだ。

 

 

 

「なっ……!?」というリヴァイの間の抜けた声が聞こえたが、無理もない。

 

 

 

私でさえ、極限まで研ぎ澄ませた動体視力をもってしても、彼女が空中に射出された初速を一瞬完全に見失いかけたのだから。

 

 

 

(速い……! しかも、なんて力強いの……!)

 

 

視界の上方で、アトラスが両手に硬質化のブレードを逆手で構えるのが見えた。リヴァイの構えだ。

 

 

 

そして彼女は、空中で直角に軌道を変え、巨大な訓練用の大樹へと回転しながら突っ込んでいく。

 

 

 

──────ズバァァァァァァァァァンッ!!!

 

 

 

直径数メートルはある巨木が、まるで紙屑のように両断され、空を舞う。

 

 

 

私はその圧倒的な破壊力を目に焼き付けながら、自身の脳内で冷静かつ狂気的な分析を走らせていた。

 

 

 

(すごい……あれだけの速度と遠心力で回転すれば、人間の肉体なら骨も内臓もバラバラに砕け散るはず。でもアトラスは、皮膚の表面に極薄の硬質化の膜を展開して、外骨格として自身の身体を保護しているんだわ……!)

 

 

 

ガシャンという野暮ったいワイヤーの音はない。

 

 

 

思考と完全にリンクした硬質化の糸と、超高圧蒸気の爆発的な推進力。

 

 

 

今度は、私の機動だ。一切の無駄を省き、最短距離で空間を削り取る死の軌跡。

 

 

 

アトラスはそれを完璧に模倣し、さらに彼女自身の持つ絶望的な膂力と反応速度で、私以上の『神速の蹂躙』を体現してみせた。

 

 

 

もし。もしも今、私が完全武装で彼女に殺し合いを挑んだとしたら。

 

 

 

(……ゼロ手、ね)

 

 

入団したばかりのリヴァイに対する評価─────四十三手どころの話ではない。

 

 

 

瞬きをする間に、私の首は愛する彼女の刃によって美しく刎ね飛ばされるだろう。

 

 

 

私の人類最強などと持て囃される力すら、彼女の御前ではただの無力な赤子に等しい。

 

 

 

手も足も出ない、完全なる敗北。

 

 

 

あぁ……なんて、なんて素晴らしい絶望。

 

 

 

なんて甘美な死の幻影だろう。この世の誰に殺されるのも御免だが、アトラスにこの身を解体され、その手の中で肉塊に変われるのなら、それは至上の幸福以外の何物でもない。

 

 

 

──────ゴオォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!

 

 

 

思考の海に溺れる私の前で、アトラスが上空から六本の糸を射出し、自らを巨大なドリルと化して森へと突撃した。

 

 

 

木々が根こそぎ粉砕され、凄まじい衝撃波と土煙が私たちを襲う。

 

 

 

暴風に煽られながらも、私は目を逸らさなかった。土煙が晴れた先、そこには息一つ乱さず、一滴の返り血(木屑)すら浴びていない、無傷で完璧な美少女の姿があった。

 

 

 

「……こんな感じで、どうでしょうか?」

 

 

少し照れくさそうに、はにかみながら首を傾げるアトラス。

 

 

 

後方でハンジが狂ったように奇声を上げ、地面に這いつくばっているが、知ったことではない。私の愛するアトラスが、私のために、あんなにも素晴らしい暴力の芸術を見せてくれたのだ。

 

 

 

「アトラスぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!!」

 

 

気がつけば、私は弾丸のような速度で地面を蹴り、愛しの彼女の元へと飛び込んでいた。

 

 

 

「あ、ちょ、リーシェ───」

 

ドンッ!

 

アトラスの細くしなやかな腰に両腕を回し、私は全力でその柔らかい腹部に抱き着いた。

 

 

そのまま顔を彼女の確かな胸元へとグリグリと押し付ける。

 

 

「はぁぁぁ……っ! アトラス! アトラス、アトラス!! すっごく、すっごく格好良かったわ!! 私の動きを真似してくれたのね!? ねぇ、そうよね!?」

 

 

彼女の体温が、服越しに私の頬に伝わってくる。

 

 

 

あんな災害の化身みたいな動きを見せられた直後に、こんなにも温かく、華奢で、女の子らしい柔らかさを堪能できるなんて。私は愛おしさで頭がおかしくなりそうだった。

 

 

 

「いや、もう十分おかしいから! ていうか苦しい、離して!」

 

 

アトラスが顔を真っ赤にして私の頭を引き剥がそうとするが、絶対に離すものか。

 

 

 

私は彼女の首筋と胸元の隙間に鼻を埋め、スゥーッと、肺の奥底までその空気を吸い込んだ。

 

 

 

いつもアトラスから漂う、甘く清らかな、お花畑のような香り。

 

 

 

だが、今はそれに混じって。

 

 

 

 

あのような超常の機動をこなしたからだろう。ほんの微かに、ほんの僅かにだけ──アトラスの『汗の匂い』がしたのだ。

 

 

 

 

「────ッ!!」

 

 

 

ゾクゥッ!

 

 

 

脳髄を、雷に撃たれたような強烈な快感が突き抜けた。

 

 

 

ただでさえ神聖な彼女の香りに、生々しい、生きている少女の熱と汗の匂いがブレンドされた、この世で私しか知らない極上の劇薬。

 

 

 

(……あぁ、だめ、これ、すごく……っ)

 

 

 

私は無意識に口角を吊り上げ、アトラスの胸元に顔を埋めたまま、ハァッ、ハァッ、と荒い息を吐き出し始めた。興奮で視界がチカチカと明滅する。

 

 

 

 

「ちょっとリーシェ!? なんで急にフンスフンス匂い嗅ぎまくってんの!? やめ、くすぐったいってば!!」

 

 

「んんぅ……アトラス、アトラしゅ……いい匂い、すっごく、すっごく生きてる匂いがするぅ……っ、もっと、もっと嗅がせて……っ」

 

 

周囲で人類のトップ層たちが呆然とこちらを見つめている気配すら、今の私にとっては極上のスパイスでしかない。

 

 

 

私は、限界を超えた愛と興奮をそのままに、汗ばむ美少女の温もりに貪るようにすがりつき続けるのだった。




明日は土曜日ですが18時に二話更新します
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