俺たちはナナシビトさんとオルガマリー所長と合流することができた。二人がフランス兵と行動を共にしていた理由はナナシビトさんが彼らの窮地を救い、近くの拠点まで案内してもらうことになったかららしい。二人が未だにその拠点に向かっていないのは俺たちを探していたからだそう。つまりこれから、フランス兵の皆さんの拠点に向かうこととなった。
「流石、本当のサーヴァントといった活躍ですナナシビトさん。もう現地の方々との交流が出来ているとは」
「いや、実は彼らが第一村人じゃないんだ。別の聖職者みたいな女の子に一番最初に会って一緒に彼らを助けたんだけど………」
「だけど?」
「戦いを終えるのと同時に「神のご加護があらんことを」って言って森の奥に入って行っちゃった」
『うーん、所長たちがどんな魔物と戦ったのかわからないけど。サーヴァントと共闘できるような人物がこの神秘の薄まっている時代にいるとは思えないんだけどなー?』
「話はひと段落したか?それならもう行くぞ」
「うん、案内よろしくね」
「まかせな恩人様、とはいってもあんまりここから離れてなくてすぐの距離なんだけどな」
そうしてフランス小隊の方々の後ろをついて行き着いたのは、かつてのような堅牢さは見る影もなくなった砦だった。外壁は何とか形を保っていいるが門の隙間から見える中はボロボロだ。
「これは………。酷い、ですね………」
『中がボロボロじゃないか………外壁はそこそこ無事だけど、もう砦とは呼べないぞ、これ』
「はは、耳の痛い話だ。あいつらにてひどくやられちまってね。この有様さ」
「………確かにあの魔物なら城壁を無視して中だけを攻撃できるでしょう。でもなぜあのような魔物がこの時代に?」
「○○小隊巡回から帰還した」
「どうしたいつもより早いじゃないか………後ろのお連れの方々は?」
「俺たちの命の恩人とそのお仲間さんだ」
「そうか、俺たちの仲間を助けてくれてありがとな見てのとおりこの惨状だ。もてなすことなんてできはしないがくつろいでくれ」
「来る」
「………ッ!来た!奴らが来たぞ!」
『注意してくれ!魔力反応がある!少量の魔力に人体を用いた使い魔………骸骨兵だな。今回の特異点初の戦闘だ。思う存分暴れてくれ!』
二人の声を聴き視線を遠くにやると道中には見られなかった見覚えのある人型の影が幾つか見える。冬木の町で見たあの骸骨だ。
「はい。指示をマスター!木っ端微塵に蹴散らします!」
「頑張って、マシュ」
「それじゃあマリーすぐにかたずけるから立夏のそばから援護お願いね」
「ええ、もちろんよ任せて頂戴」
戦闘はサーヴァント二人によるワンサイドゲームでオルガマリー所長が援護する必要もなかった。ナナシビトさんがバットを振り回しながら大群に突撃して、マシュも何故が盾を振り回しながら敵に突撃していた。盾って振り回すものだったけ?
「アンタたち、あの数のあいつらを相手によくやるな」
「………慣れです。それより申し訳ありませんが、一から事情をお聞かせください。どうしてあのような魔物が砦を襲っているのですか?シャルル七世は休戦条約を結ばなかったのですか?」
「シャルル王?知らんのか、アンタ。王なら死んだよ。魔女の炎に焼かれた」
彼が言うには処刑されたジャンヌ・ダルクが【竜の魔女】となって蘇り、魔竜を従えながらフランスに復讐しているようだ。………酷い拷問を受けたそうだし、復讐したくなる気持ちを否定することは出来ない。だが、髪色や肌は異なるらしい。本当に本人なのだろうか。
そうして、事情を聴いているさなかまたもや敵襲………今度はドラゴン⁉
「くそ、やっぱりだ!来たぞ、迎え討て!ほらほら立て立て!ドラゴンが来たぞ!抵抗しなきゃ食われちまうぞ!」
『君たちの周囲に大型の生体反応!しかも、速い……!』
「あれは、ワイバーンと呼ばれる竜の亜種体です。間違っても、絶対に、十五世紀のフランスに存在していい生物じゃありません!」
「私を守りなさい!ナナシビト!私に竜をどうにかする手立てはないわ!」
「恩人様お願いします!」
「任せて、マシュあんただとまだ空中の敵を攻撃するのは難しいと思う。だから、立夏とマリーを守りながら襲ってきたやつをはじいて」
「わかりました。マスター、オルガマリー所長私の近くに必ず守りぬきます」
「頑張ろうね、マシュ」
「はい、マスター。マシュ・キリエライト行きます!」
戦いへ向けて気合を入れワイバーンに会いたいしようとしたその時、
「兵たちよ、水を被りなさい!彼らの炎を一瞬ですが防げます!」
「え……!?」
「あ、さっきぶりだね。さっきみたいに今回は逃げないでよね、アンタにも聞きたいこといろいろあるんだから」
「先ほどぶりですね、勇士。今回も共闘よろしくお願いできますか?」
「もちろん」
「この人は……」
『おおう、サーヴァントだ!しかし反応が弱いな。彼女は一体……』
ナナシビトさんがバットを振りかぶりながら飛んでワイバーンを殴り飛ばしてほとんどのワイバーンを倒してくれた。残りのワイバーンはフランスの人たちによる迎撃によって地に落ち、それを剣で串刺しにして倒していた。
「………今ので最後のようですね」
『ようし、よくやったぞ諸君!いやあ、手に汗とゴマ饅頭を握って見入ちゃったな!』
『このゴマ饅頭本当に美味しい!丹恒も食べなよ!』
『三月、人のものを食べるのなら用意していた本人の許可を得てから食べるべきだ』
『え?どういうこと?』
「お二人とも。それはわたしが用意したゴマ饅頭ですね」
『え?あれ?そうなの?管制室にお茶と一緒にあったから、てっきり……』
「……このオーダーから帰還できたことを想定し、ささやかな労いとして用意していたのです。もちろん、現地で活躍したであろう先輩用に」
『マシュ……なんて気の利く子に育って……もしゃもしゃ。うん。それにしても美味しいね、この饅頭。これなら藤丸くんも大喜びだろう!』
『安心しろ、キリエライト。君と藤丸の分の饅頭はとって置いてある。ただ一ついうのなら、キリエライト、;人は一度に二十を超える饅頭は食べられない』
「ありがとうございます。丹恒さん。それではドクターを峰打ちを見舞わせたいエネミーから登録を解除します」
『なに?その物騒なもの。もきゅもきゅ』
「そんな、貴女は――いや、お前は!逃げろ!魔女が出たぞ!」
「え、魔女……?」
「……。あの。ありがとございます」
「いえ、当然です。それより、貴女の名を――」
「
「ジャンヌ……ダルク!?」
「あの、魔女になったとかいう……死んだはずでは?」
「その話はあとで。……彼らの前で、話すことでもありませんから。こちらに来てください。お願いします」
「……誘われてしまいました。どうしましょう、先輩、オルガマリー所長?」
「ついていこう」
「……ついていくしかないでしょう。万が一のことがあっても弱っているサーヴァントとの二対一なら負けることもありません」
「キュキュ、キュウ!」
「僕も賛成だ。弱っているようだけど彼女だってサーヴァントだ。きっとこの時代の事情に精通している。詳しい話を聞いてみよう」
そうして俺たちは、ジャンヌ・ダルクについていき森にたどり着いた。道中魔物がいたがサーヴァントの三人が危なげなく撃退してくれた。そうして森の少し奥に広がる開けたところにたどり着いた。
「此処ならば落ち着けそうです。まず、貴女たちのお名前をお聞かせください」
「了解しました。私の個体名はマシュ・キリエライト。こちらが藤丸立夏。私のマスターに当たります。そして……」
「私がオルガマリー・アニムスフィア。この一行カルデアの所長を務めています」
「で、私はナナシビト。マリーのサーヴァントでクラスは一応ライダーかな」
「マスター……?この聖杯戦争にもマスターはいるのですね」
「私たちは聖杯戦争とは無関係よ。私達はグランドオーダーを果たすためにこの時代に来ました。この時代で起きている聖杯戦争には関係ないのです」
「………そうなのですか。では私の現状についてお話しましょう。私は確かにサーヴァントです。クラスもルーラー、そのことは理解できています。しかし……本来聖杯から与えられるべきである聖杯戦争に関する知識が大部分存在していません。いえ、知識だけでない。ステータスの面でもランクダウンしています。聖杯戦争を正すルーラーのとしての対サーヴァント用の令呪は無論、真名看破すらもできません。幸い、ここは私が生まれ育った故郷。で、時代。唯一、言語だけは通じるようですが………」
「先ほど、あの兵士が言っていました。ジャンヌダルクは【竜の魔女】になった、と」
「……私も数時間前に現界したばかりで、詳細は定かではないのですが。どうやらこの世界にはもう一人、ジャンヌ・ダルクがいるようです。あのフランス王シャルル七世を殺し、オレルアンにて大虐殺を行ったというジャンヌが……」
「同じ時代に同じサーヴァントが召喚されたということ?ロマンそんなことあるのかしら?」
『うーん……聖杯戦争の記録を紐解けば、その手の同時召喚の例はあるとは思うけど。ほら、そこにいるナナシビトや先のキャンサーみたいに複数のクラス適性のあるサーヴァントが別々に呼ばれるとかね』
「ともかく、これで確定しました。シャルル七世が死に、オレルアンが占拠された。それはつまり、フランスという国家の崩壊を意味します。歴史上、フランスは人間の自由と平等を謳った最初の国であり、多くの国がそれに追随しました。この二つの権利が遅れるもしくは誕生しないとなれば、歴史は大きく変化するでしょう。今回のグランドオーダーの達成にはもう一人のジャンヌ・ダルクが大いに関係があるのは間違いないようです」
「グランドオーダーとは何でしょうか?」
「失礼しました。マドモアゼル・ジャンヌ。今度は我々の番ですね。わたし達カルデアの目的は、この歪んだ歴史の修正です」
「……なるほど。よくわかりました。まさか、世界そのものが焼却されているとは。私の悩みなど小さな事でした。ですが今の私は――」
「フォウ?」
「サーヴァントとして万全ではなく、自分でさえ【私】を信用出来ずにいる。………オルレアンを占拠したジャンヌ・ダルク………それだけではなく、あの飛竜………」
「ワイバーンね。あんなものが十五世紀にいるはずもない。紛れもなく異常。間違いなくあれももう一人のジャンヌ・ダルクの仕業でしょう。【竜の魔女】と呼ばれていることからもそれを裏づけています」
「ええ。認めたくありませんが、あの竜たちを操っているのは【
『現代の魔術師では不可能だね。この時代の魔術レベルでも困難なはずだ。となると……藤丸君。そんな反則ができるものと言えば、』
「……聖杯の可能性が高い?」
「その通り。まだ憶測の域だけど、聖杯もオレルアンにあるかもしれない」
「……なるほど。状況に不明な点が多々ありますが、ある程度の把握はできました。マドモアゼル・ジャンヌ。貴方はこれからどうするのですか?」
「……目的は決まっています。オレルアンに向かい、都市を奪還する。その為の障害であるジャンヌ・ダルクを排除する。主からの啓示はなく、その手段は見えませんが、ここで目を背けることは出来ませんから」
「……一人でも戦う……何というか、歴史書どうりの方ですね、マスター」
「ああ、ダヴィンチちゃんとは違ってね」
「わたしたちと貴方ジャンヌ・ダルクの目的は一致しています。その為今後は共に行動しようと考えています。良いでしょうか?」
「そんな……こちらこそお願いします。どれほど感謝しても足りないほどです。ありがとう、マシュ、藤丸。私は一人で戦うものだとばかり思っていました。あ、ですがしばらくは斥候に徹しましょう。目的はシンプルですが、達成は困難ですから」
「さすがはジャンヌ・ダルク、軍の戦いに慣れている。彼女の言った通り、オレルアンに突撃は無謀だ。そこは見知らぬ土地だし、まだボクらには拠点もない。いまは率先して防衛に関する情報を集めないと。それから魔女ジャンヌ――黒ジャンヌとでも言おうか。彼女がどんなサーヴァントなのかも調べておきたい」
「あとは戦力ですね。こちらにいるサーヴァントは三人ですが十全なサーヴァントはライダーであるナナシビト一人。竜を連れている黒ジャンヌに今のままでは勝ち目がない。できれば他にサーヴァントが居れば仲間に引き入れたいわ」
「申し訳ありません。ルーラーが持っているサーヴァントの探知機能も今の私には使用不可です。通常のサーヴァント同様、ある程度の距離にならなければ知覚することはできません」
「………待った。黒ジャンヌなら他のサーヴァントを知覚できるってこと?」
「……! うかつでした、その可能性はあります。恐らく黒ジャンヌもサーヴァントであるのならクラスはルーラー。その場合、我々の居場所は即座に感付かれる。……いつでも戦う準備は必要です。できれば町や村での情報収集も最低限にしておきたいですが――何一つ手掛かりのない今は、そういう訳にもいかなさそうですね」
「方針決まった?」
そう声をかけてきたのは先ほどから姿を見せていなかったナナシビトさんだった。………何か引きずっている?
「貴方、私たちが話し合っている間何していたのよ」
「近くにいたのを倒していたの。後、三人のご飯探し。ほら、大物が捕れたよ」
「………そんな大きいの三人じゃ食べきれないわよ貴方も食べるの協力しなさい」
「はーい」
「貴方料理なんてできたのね。知らなかったわ」
「え?できないよ?私食べる担当だから」
そう言いながらナナシビトさんは捕ってきた動物を切って謎の機械の中に突っ込んだ⁉
「何してるの!?ナナシビトさん!?」
「え?ご飯作っているの」
少し待つと機械の中から本当に調理済みの焼肉丼が出てきた………。どうなっているんだ………ただ切ってお米と一緒に機械に入れただけなのに………。
「モグモグ。みんなもお食べ」
「………マシュ・キリエライト、行きます!………ん?おいしい、美味しいですよ、先輩。とても人の作る調理工程とは思えないものでしたが確かに料理としての体裁を保っています」
「ん、確かに美味しいね。所長もどうぞ」
「そうだよ、マリー。ちゃんと食べないとこっからきついよ?」
「今の私に食事はいるのかしら………美味しい」