ひとつの器で六魂共鳴 - 最下層から始まる六人格侵略譚 - 作:z567ug
夜のグレイヴェル港都。
喧騒は、まだ消えていなかった。
「……はぁ……」
城から離れた路地裏。
湊は壁にもたれ、息を吐く。
「……負けたな」
誰にともなく呟く。
『完敗だな』
ガイゼル。
『手も足も出なかったでござる』
宗十郎。
『あのオネェ、ムカつくわね』
シア。
『取り巻きどもまでクソ強ぇな!!』
羅豪。
「感想バラバラすぎるだろ」
リーネが小さく言う。
「……悔しい」
その声は、震えていた。
「私、全然役に立てなかった」
「いや」
湊は首を振る。
「俺も同じだ」
沈黙。
その時。
「おう、生きてたか」
聞き覚えのある声。
「ガルド」
大柄な男が、笑っていた。
「その顔、やられてきたな」
「まあな」
「どこ行ってた?」
「北」
一瞬の沈黙。
「……は?」
「城」
「……はぁ!?」
ガルドが頭を抱える。
「お前ら馬鹿か!?」
「否定はしない」
「いや否定しろよ!」
リーネが少しだけ笑った。
「……でも、行かなきゃいけなかったから」
ガルドがため息をつく。
「で?」
「勝てると思うか?」
「無理だな」
即答。
「だよな」
「でも」
ガルドがニヤリと笑う。
「方法はある」
「方法?」
「闘技場だ」
「……あー」
湊が少しだけ笑う。
「なるほどな」
「強くなりてぇなら、あそこが一番早い」
「死ぬ可能性も一番高いけどな」
「まあな」
リーネが、ゆっくり頷く。
「……やる」
「即決だな」
「強くなりたい」
その目は、真っ直ぐだった。
「俺も同意見だ」
ガルドが腕を組む。
「ちょうどいい。明日から大会がある」
「大会?」
「ペア戦だ」
「……都合良すぎない?」
「この街はそういう場所だ」
ガルドが笑う。
「出るか?」
「出る」
「うん」
即答。
「よし決まりだ」
翌日。
闘技場。
観客。
歓声。
熱気。
「……昨日より人多くない?」
「大会だから」
「納得」
受付。
「名前は?」
「湊とリーネ」
「登録完了」
「雑だな」
「人多いから」
「全部それだなこの街」
会場へ。
「おおおおおお!!」
歓声。
「……やば」
「すごい……」
中央。
「第一試合!」
魔物が出てくる。
「……でかいな」
「羅豪」
「頼む」
意識を沈める。
「――行くぞぉ!!」
羅豪。
踏み込む。
拳。
「――ッ!」
叩き込む。
「……硬ぇ!」
弾かれる。
『無駄な力みだ』
ガイゼル。
『力任せすぎでござる』
宗十郎。
「うるせぇ!!」
羅豪。
リーネの声。
「左!」
羅豪が避ける。
「次、来る!」
回避。
「……見えてるのか?」
「ちょっとだけ!」
まだ不安定。
だが――
当たらない。
「いいぞ!」
流れを掴む。
数発。
ついに。
「――倒した!!」
歓声。
「おおおおお!!」
「……勝った」
「うぉっしゃぁぁ!」
次。
第二試合。
別の魔物。
「今度は速ぇな!」
「右から来る!」
リーネの声。
ズレる。
「おいリーネ!?遅ぇぞ!」
「未来が……揺れる」
「揺れるだと?」
「変わると、見えなくなる」
「なるほどな!」
試行錯誤。
少しずつ。
合わせていく。
「今!」
「おう!」
連携。
撃破。
第三試合。
第四試合。
繰り返す。
徐々に。
リーネの声が、変わる。
「3秒後、右」
「次、上段」
「今、踏み込んで」
精度が上がる。
そして――
リーネのビジョンが伝わる。
「……見えた!?」
「え?」
未来視のビジョンを羅豪が視認。
「流れが、繋がる」
その瞬間。
動きが変わる。
「――今!」
完璧なタイミング。
「――終わりだぁ!!」
撃破。
歓声。
「おおおおお!!」
「すごい……」
「やるじゃねぇか!」
リーネが、少しだけ笑う。
「……できるようになってきた」
「だな!」
――湊に戻る。
ガルドが嬉しそうに駆け寄る。
「お前らやるじゃねぇか!」
「決勝進出だ!」
「……決勝」
「最後は乱戦だ」
「何組?」
「4組だ!」
「……地獄じゃん」
「この街はな」
ガルドが笑う。
「地獄が一番盛り上がる!」
その時。
「おっ!……お前ら!」
声。
振り向く。
そこにいたのは――
軽く手を上げる男。
「いい動きしてたな!」
明るい笑顔。
だが。
立っているだけで分かる。
「……強いな」
「そりゃどうも!」
笑う。
「俺はゼル!」
「湊」
「リーネ」
ゼルが、湊を見る。
「拳、いいな!」
「ん?拳?」
「気に入った!」
その瞬間。
『おい』
羅豪。
『こいつ……やるな』
ゼルが笑う。
「決勝で当たったら、全力で来いよ?」
「そのつもりだ」
「いいねぇ」
笑う。
「楽しみだ」
そう言って、去っていく。
沈黙。
『蹴りだな』
羅豪。
「蹴り?」
「拳とか蹴りとか訳分かんねぇよ」
『あいつ、常に蹴り出す事を意識した振舞いだった』
「へぇ」
『……面白ぇ』
湊は、少しだけ笑った。
決勝。
そこにいるのは。
今までとは違う相手。
そして。
次の自分。
「……行くぞ」
「うん」
グレイヴェルの闘技場。
最終戦が、始まる。