ひとつの器で六魂共鳴 - 最下層から始まる六人格侵略譚 - 作:z567ug
歓声が、渦を巻いていた。
「決勝戦!!」
闘技場の熱気は、これまでとは別物だった。
「……空気違うな」
湊が呟く。
「うん」
リーネも頷く。
中央。
四組。
剣士ペアが二組。
そして――
「おお、お二人さん!」
ゼルはソロでの参加らしい。
笑っている。
「来たな!」
「来たな、じゃねぇよ」
「楽しみだったんだよ!」
その軽さとは裏腹に。
“強い”。
はっきりと分かる。
「……始まる」
鐘が鳴る。
「――開始!!」
一斉に動く。
ゼルが片方の剣士ペアに激突。
湊たちは別の剣士ペアに視線を送る。
「……まずはあっちだな」
「うん」
「来るぞ!」
剣士二人。
速い。
「羅豪!」
『任せろぉ!!』
切り替わる。
踏み込む。
拳。
「――ッ!」
剣を弾く。
「なにっ!?」
もう一人。
「遅ぇ!!」
叩き込む。
「ぐぁっ!!」
リーネ。
「右、来る!」
「おう!」
完璧に回避。
「今!」
「終わりだぁ!!」
撃破。
『……早い』
湊が内側で呟く。
『リーネの精度、上がってるな』
その時。
反対側。
轟音。
「うおおおおお!!」
ゼル。
蹴り。
一瞬で、剣士ペアを吹き飛ばす。
『……は?』
『……強すぎ』
湊。
「終わりぃ!!」
ゼルが笑う。
「じゃ、やろうぜ!」
「……来いっ!」
対峙。
静寂。
「拳か?」
ゼルが言う。
「いやいや、蹴りだろ?」
『拳だ!!』
羅豪。
「蹴りだな!」
「拳だろ!」
言い合い。
「……今それやる?」
リーネが呆れる。
「いいじゃねぇか!」
ゼルが笑う。
「湧いてきたぜぇ!」
羅豪も同調する。
その瞬間。
動く。
速い。
蹴り。
「――ッ!」
受ける。
重い。
非常識な重さだ。
「……っ!!」
『これは…何か特殊な技か?』
ガイゼル。
「面白ぇだろ?」
ゼルが笑う。
連撃。
回し蹴り。
膝。
踵。
「くっ……!」
押される。
「みなと!」
リーネ。
「次、左!」
回避。
「今!」
反撃。
だが。
「甘い!」
弾かれる。
「……強ぇなぁ!」
「そりゃな!」
笑う。
「お前、いい拳してるぜ!」
「でも――」
「そんなんじゃ振ってるだけだな」
その言葉。
「……あぁ?」
羅豪の声が、低くなる。
「今なんつった?」
「事実だろ?」
ゼルが笑う。
「重いだけの拳だ」
「つまんねぇ」
その瞬間。
空気が、変わる。
「テメェ……」
怒り。
闘志。
爆発する。
「ぶっ飛ばすぞ!ゴルァ!」
踏み込む。
速度が変わる。
拳。
「――ッ!」
重い。
だが。
ゼルは受ける。
「いいな!」
笑う。
「それだ!」
さらに加速。
「……っ!」
「まだだ!!」
限界を超える。
身体が軋む。
「……見える!」
リーネの声。
「全部、見える!」
その瞬間。
視界が、繋がる。
未来。
動き。
共有される。
「――右!」
「おう!!」
完全な連携。
拳が入る。
「……っ!」
ゼルが初めて、よろける。
「いいなぁ!!」
「もっとこいよぉ!!」
笑う。
「楽しくなってきた!!」
さらに。
踏み込む。
「――ここだ!!」
蹴り。
直撃。
吹き飛ぶ。
「……ぐっ!」
立ち上がる。
「……まだだ」
「まだ終わってねぇ!!」
その瞬間。
羅豪の内側で、何かが弾ける。
「――……は?」
空気が、震える。
「……これは」
「力か!!」
氣。
流れる。
全身へ。
自然と口からこぼれる。
「――闘神纏」
爆発。
「……っ!?」
ゼルが目を細める。
「それだ!!」
笑う。
「来い!!」
踏み込む。
速い。
重い。
拳。
「――ッ!!」
蹴り。
ぶつかる。
衝撃。
「……っ!!」
互角。
いや――
「いいな!!」
ゼルが笑う。
「最高だ!!」
さらに。
「――行くぞぉ!!」
「来い!!」
同時。
拳。
蹴り。
「――ッ!!」
衝突。
爆音。
静寂。
二人とも。
崩れる。
「……っ」
「……」
沈黙。
「……勝者」
一瞬の間。
「湊・リーネ組!!」
歓声。
「おおおおおおお!!」
リングにはリーネだけが立っている。
「……勝った…の?」
息を吐く。
その時。
「……はは」
ゼルが笑う。
「いいな、お前ら」
立ち上がる。
「負けたわ」
「いや、引き分けだ」
「結果は結果だ」
笑う。
「俺はゼル・ヴァンディア」
改めて名乗る。
「流浪の旅をしている」
「この世界、気に入らねぇからさ」
「ぶっ壊して回ってんだよ」
「……仲良くなれそうだ」
湊が言う。
「だな」
ゼルが笑う。
「また会おうぜ」
振り返る。
「その時は、もっと強くなってこいよ」
「そっちこそ」
去っていく。
沈黙。
夜。
「……行くか」
湊が言う。
「うん」
リーネも満ちた顔つき。
「リベンジだ」
視線の先。
城。
シーマ。
「……今度は」
「勝つ」
灰の都。
次の戦いが、始まる。