ひとつの器で六魂共鳴 - 最下層から始まる六人格侵略譚 -   作:z567ug

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第十六話 託すという選択

夜。

グレイヴェル港都。

 

「……はぁ……」

 

足が重い。

 

「……無理……もう無理……」

 

湊がよろける。

 

「みなと、大丈夫?」

 

「大丈夫じゃない……」

 

満身創痍。

それでも。

 

「……あと少し……」

 

見えてきた。

 

「……ガルドのとこだ」

 

扉。

叩く。

 

「おい……ガルド……」

 

数秒。

 

「誰だ――ってお前らぁ!?」

 

扉が開く。

 

「そのボロボロ具合なんだよ!?」

 

「……色々あってな……」

 

そのまま。

崩れる。

 

「おい!?おい!!」

 

 

数日後。

 

「……生きてる……」

 

天井。

柔らかい寝床。

 

「ここ……」

 

「商会だよ」

 

横。

リーネ。

 

「……助かったのか」

 

「うん」

 

「ガルドが運んでくれた」

 

「……あいつ神か?」

 

「たぶん違う」

 

「だよな」

 

起き上がる。

 

「いてぇ……」

 

「無理しないで」

 

「するしかないだろ……」

 

沈黙。

そして。

 

「……なあ」

 

「うん?」

 

「“この大陸あげる”ってなんだよ」

 

沈黙。

脳内。

 

『知らん』

羅豪。

 

「早いわ」

 

『統治権の譲渡だろう』

ガイゼル。

 

『つまり殿様でござるな』

宗十郎。

 

『めんどくさそう』

シア。

 

『責任重大ですね』

セレス。

 

「いや無理だろ」

 

『じゃあぶっ壊すか?』

羅豪。

 

「極端すぎるだろ!!」

 

『根本解決でござる』

宗十郎。

 

「違う違う違う!!」

 

『破壊は医療ではありません』

セレス。

 

「誰も医療の話してねぇ!!」

 

リーネが小さく笑う。

 

「……楽しそう」

 

「全然楽しくない」

 

『現実的に考えろ』

ガイゼル。

 

「はい」

 

『統治には人材、資源、時間が必要だ』

 

「ないな」

 

『我々は移動する存在だ』

 

「だな」

 

『結論』

 

「……やりたくない」

 

『同意だ』

 

『面倒』

シア。

 

『殿様は性に合わぬ』

宗十郎。

 

『拳振るえりゃいい』

羅豪。

 

「お前は黙ってろ!」

 

沈黙。

 

「……じゃあ誰がやるんだよ」

 

その瞬間。

 

「……ガルド」

リーネ。

 

「……あー」

「差別しないし」

「人もついてくるし」

「街のことも知ってる」

「……適任じゃね?」

 

沈黙。

 

『合理的だ』

ガイゼル。

 

『異論なし』

セレス。

 

『いいんじゃない』

シア。

 

『殿としては上々でござる』

宗十郎。

 

『気に入らなきゃ殴りに行けるしな!』

羅豪。

 

「それ基準やめろ」

「……決まりか」

 

「うん」

 

 

ガルドの部屋。

 

「は?」

 

「だから」

「この大陸、任せたいんだ」

 

「意味わかんねぇよ!?」

 

「いや俺もわかってない」

 

「じゃあ言うな!!」

 

「シーマが言ってたんだ、あげるって……」

 

沈黙。

 

「……マジか?」

 

「マジ」

 

ガルドが頭を抱える。

 

「いや無理だろ!!」

 

「だよな」

 

「だよなじゃねぇよ!!」

 

リーネが言う。

「でも、ガルドしかいない」

 

「いやいやいや!!」

「俺ただの商人だぞ!?」

 

「知ってる」

 

「本当にわかってて言ってんのか!?」

 

「うん」

 

「鬼か!?」

 

「ちがう」

 

「悪魔か!?」

 

「ちがう」

 

「じゃあなんだよ!?」

 

「……みなと」

 

「やめろ今振るな!!」

 

「……信頼してる」

 

静かに。

 

「お前なら、できると思う」

 

沈黙。

ガルドが、言葉を失う。

 

「……いや……でも……」

 

「にげる?」

 

「ぐっ……!」

 

「街、どうなると思う?」

 

「……」

 

「今よりもっとひどくなるかも」

 

沈黙。

長い。

 

「……あー……クソ」

 

頭をかく。

 

「……やるよ」

 

「ほんとか?」

 

「その代わり」

 

睨む。

 

「責任は取れよ?」

 

「もちろん!」

 

「無理だったら殴りに来い!」

 

「それお前が言うのかよ」

 

「お前らなら来るだろ?」

 

『行くな』

羅豪。

 

行くなよ!!

「叩き直す必要があればな」

 

リーネが笑う。

 

 

数日後。

 

闘技場。

人。

人。

人。

 

「……多すぎだろ」

 

「うん」

 

中央。

ガルドが立つ。

 

「聞け!!」

 

声が響く。

静まる。

 

「今日からこの大陸は――」

 

一瞬。

 

「俺が預かる!!」

 

ざわめき。

沈黙。

そして――

 

「おおおおおおお!!」

 

歓声。

拍手。

誰も否定しない。

むしろ。

歓迎。

 

「……すげぇな」

 

「うん」

「信頼されてる」

 

ガルドが照れくさそうに頭をかく。

 

「……やるしかねぇな」

 

 

さらに数日後。

 

「……だいぶ動けるな」

 

「うん」

 

回復。

完全ではないが。

十分。

 

「……行くか」

 

「うん」

 

街を歩く。

空気が違う。

人の表情。

声。

 

「……なんか軽いな」

 

「うん」

 

「前より、怖くない」

 

「だな!」

 

少しだけ。

変わっていた。

 

「……いいじゃん」

 

湊が笑う。

 

「うん」

 

港。

船。

 

「さーて、次だな」

「次は蒼礼大陸《セルディア》か……」

 

「楽しみ?」

 

「ちょっとだけな」

 

「私は……ちょっと怖い」

 

「そりゃそうだ」

「でも……」

 

湊が前を見る。

 

「行くしかない」

 

「うん」

 

船へ。

足を踏み出す。

灰の大陸を背に。

次の世界へ。

物語は、続く。

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