ひとつの器で六魂共鳴 - 最下層から始まる六人格侵略譚 -   作:z567ug

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第二十話 届かぬ刃、届く一閃

朝。

冷たい空気の中、3人は山を登っていた。

 

「……普通にきついな」

湊が息を吐く。

 

「昨日よりはマシ」

リーネが言う。

 

前を行くドゥルガンは振り返らない。

「この程度で音を上げるな。まだ半分も来てねぇ」

 

「マジかよ……」

 

だが道は、思ったより歩きやすかった。

岩は削られ、足場も均されている。

 

「……これ」

 

「俺が整地したんだ」

ドゥルガンが短く答える。

「砂鉄運ぶのに、毎回苦労してられるか」

 

「……地味にすごいな」

 

2時間ほど進む。

やがて。

ぽっかりと口を開けた洞窟が現れた。

 

「……ここか」

 

中は暗い。

奥が見えない。

ドゥルガンがランタンに火を灯す。

 

「俺の後ろを離れるな」

 

「了解」

 

中へ。

空気が変わる。

湿って、重い。

足元はぬかるみ、所々崩れている。

 

「……荒れてるな」

 

「しばらく来てねぇからな」

 

分かれ道。

迷いそうになるが。

 

「こっちだ」

 

ドゥルガンは迷わない。

進む。

さらに奥へ。

やがて。

 

空間が開ける。

広い。

そして。

そこにあった。

黒く光る砂鉄の溜まり。

そして――

 

「……いたな」

 

スライム。

思っていたより、明らかに大きい。

 

「でかいな……」

 

「なんだこりゃあ、前の3倍はあるぞ」

ドゥルガンが低く言う。

 

スライムが、ゆっくりと蠢く。

その体は、鈍い金属光沢を帯びていた。

 

『任せよ』

宗十郎。

 

切り替わる。

一歩。

踏み込む。

斬る。

 

「――ッ!」

 

手応え。

だが。

 

「……浅い」

 

外皮は斬れる。

だが。

届かない。

 

「なるほど……」

 

スライムが反応する。

触手のような塊が、広がる。

振り下ろされる。

 

「――遅い」

 

回避。

居合。

 

「――」

 

斬る。

だが。

やはり。

核まで届かない。

 

「……足りぬか」

 

連斬。

斬撃を重ねる。

削る。

だが。

削れても。

すぐに戻る。

 

「くっ……!」

 

リーネの声。

「右、来る!」

 

回避。

だが。

床が波打つ。

広範囲。

避けきれない。

 

「……っ!」

 

かすめる。

焼けるような痛み。

 

「問題ない」

 

だが。

確実に削られる。

何度も。

何度も。

斬る。

だが。

届かない。

 

「…これでも…届かぬか」

 

呼吸が乱れる。

足が、ほんのわずかに止まる。

その瞬間。

スライムが膨張する。

 

「まずっ――」

 

衝撃。

吹き飛ぶ。

 

「――ぐっ!」

 

強制解除。

 

「……っ!」

 

湊に戻る。

視界が揺れる。

 

「やば……」

 

スライムが迫る。

逃げ場がない。

 

(無理だ)

(どうする?)

 

その時。

 

『何かないのか』

ガイゼル。

 

「……何がだ?」

 

『羅豪の時のように』

 

「……あ」

 

閃く。

 

(あった)

(あったはずだ)

 

迫る。

時間がない。

 

(思い出せ)

(あの時みたいに)

 

集中。

意識が沈む。

 

「――六道継装!!」

 

衝撃。

 

「……!」

「……なるほど」

 

湊と宗十郎。

同時に存在する。

その瞬間。

流れ込む。

記憶。

RPG。

剣士。

コマンド。

斬撃。

飛ぶ。

 

「……そうだ」

「これなら!RPGの剣士が使ってた技、斬撃を、飛ばす技……!」

 

「風ではない」

宗十郎が理解する。

「斬撃そのものを、放つ」

 

構える。

深く。

静かに。

 

「いくぞ!」

「応!」

 

踏み込む。

 

「――真空斬り!」

 

振る。

その瞬間。

空気が裂ける。

見えない刃。

一直線。

 

「――ッ!!」

 

スライムを貫く。

核ごと。

断つ。

一瞬。

静寂。

そして。

崩れる。

液体となり、流れ落ちる。

中心に。

核だけが残る。

 

「……はぁ……」

 

融合が解ける。

膝をつく。

 

「やった……のか」

 

リーネが駆け寄る。

「うん……終わった」

 

ドゥルガンが近づく。

無言で核を見る。

しゃがむ。

触る。

「……おい」

 

声が変わる。

「これ……」

 

さらに覗き込む。

「……マジかよ」

 

振り返る。

「お前ら、とんでもねぇもん倒したぞ」

 

「え?」

 

「これ……ただの核じゃねぇ」

 

持ち上げる。

鈍く光る。

 

「アダマンタイトだ!」

 

「アダマンタイト?」

「って、あのゲームによく出てくる?」

 

「げぇむ?なんだそりゃ?」

 

「あー…いや、なんでもない」

 

「んな事よりアダマンタイトっていやぁ」

「伝承級の鉱石だ!」

ドゥルガンの目が、燃える。

 

「砂鉄を喰い続けて……変異しやがったんだ」

 

笑う。

「……最高だ」

 

立ち上がる。

「玉鋼にこれ混ぜりゃ……」

 

震える声。

「とんでもねぇ“子”ができる」

 

湊が笑う。

「楽しそうだな」

 

「当たり前だ!」

ドゥルガンが言う。

「腕が鳴るってもんよ!」

 

振り返る。

「……ありがとな」

 

短く。

だが確かな言葉。

 

「助かった」

 

「気にすんな」

「刀、頼むぞ」

 

「任せろ!」

 

その後。

砂鉄の回収が始まる。

ドゥルガンが黙々と作業する。

時間が過ぎる。

やがて。

 

「こんなもんか」

 

荷をまとめる。

 

「戻るぞ」

 

洞窟を出る。

外の光が眩しい。

 

「……終わったな」

 

「うん」

 

だが。

これは終わりじゃない。

始まりだ。

 

「次は――」

 

「刀だな」

 

ドゥルガンが笑う。

「最高の“子”を見せてやる」

 

山を下る。

夕日が差し込む。

その先にあるのは。

新たな力。

新たな刃。

その予感が、確かにあった。

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