ひとつの器で六魂共鳴 - 最下層から始まる六人格侵略譚 -   作:z567ug

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第二十五話 未来を狩る者

翌朝。

まだ陽も高くない時間。

 

「……眠い」

 

目を擦るリーネの横で、

シルビアが腕を組む。

 

「戦場で眠いなんて言ってたら死ぬよ」

 

「う……」

 

「ほら、行くよ」

 

ベルガルド郊外。

街を少し離れた森の縁。

そこに、小さな小屋があった。

 

「……ここ?」

 

「そう」

 

シルビアが扉を蹴る。

 

「グレン!居るだろ!」

 

「蹴るな!!」

 

中から怒声。

扉が開く。

現れたのは、

無精髭の男だった。

背に弓。

腰にはナイフ。

全身、森に溶け込むような装備。

 

「……なんだ、姐さんか」

 

「誰が姐さんだ」

 

「姐さんだろ」

 

「殺すよ」

 

「朝から物騒だな」

 

男がリーネを見る。

「……そっちが噂の嬢ちゃん?」

 

「リーネです」

 

「グレンだ」

軽く手を上げる。

 

「で?」

「何の用だ?」

 

シルビアが事情を説明する。

未来視。

ボウガン。

足止め。

補助戦術。

グレンが顎に手を当てる。

 

「……なるほどな」

 

しゃがみ込む。

荷物袋を漁る。

 

「なら、この辺だ」

 

取り出される。

鉄製の撒菱。

小型罠。

拘束紐。

 

「戦闘で使うなら撒菱が一番現実的だな」

 

「撒菱……」

 

「相手の進路に撒くのさ」

「相手の動きを制限できるし」

「踏ませれば止まる」

 

「でも……」

リーネが困った顔をする。

「そんな正確に置けるかな……」

 

グレンが肩をすくめる。

「置けるかじゃねぇ」

「置くんだよ」

 

沈黙。

シルビアが言う。

「……なら、慣れるしかないね」

 

「数こなせって事?」

 

「ああ」

 

グレンが笑う。

「ちょうど今から、狩りに行く」

「ついて来るか?」

 

森。

グレンの後ろを追う。

 

「まず言っとくぞ」

 

グレンが立ち止まる。

「未来視は万能じゃねぇ」

 

「……うん」

 

「見えても身体が追いつかなきゃ意味ねぇ」

「置く場所を理解してなきゃ意味ねぇ」

 

リーネに撒菱を持たせる。

 

「敵を見ろ」

 

前方。

小型の獣型魔物。

 

「未来視を使え」

 

集中。

「……見えた」

 

「どこへ行く?」

 

「右に跳ぶ」

 

「なら?」

 

「……その先」

 

「置け!」

 

投げる。

だが。

ズレる。

魔物は避ける。

 

「惜しい!」

グレン。

 

「未来は“点”じゃねぇ」

「線で見ろ」

 

「線……」

 

何度も繰り返す。

外す。

失敗する。

避けられる。

だが。

徐々に。

 

「……そこ!」

 

撒菱。

着地。

命中。

魔物が足を取られる。

 

「今だ!」

 

シルビアが飛び出し、

一撃で仕留める。

 

「……やった!」

 

「いいじゃねぇか!」

グレンが頷く。

 

だが、

そこからが地獄だった。

 

「次」

 

「次」

 

「次」

 

「ま、まだ!?」

 

「戦場は待ってくれねぇぞ?」

 

未来視。

撒菱。

投擲。

移動。

再設置。

繰り返す。

何度も。

汗だくになる。

 

夕方。

 

「……む、無理……」

リーネが倒れる。

 

「甘い」

シルビア。

 

「初日で何言ってんだい」

 

「鬼……」

 

「だろっ?」

グレンが笑う。

 

「姐さんに教わる時点で諦めろ」

 

「おい!」

 

帰路。

歩きながら。

リーネが呟く。

 

「……でも」

「前より分かる」

 

「何が?」

 

「未来視」

「少しだけ、前より先が見える」

 

シルビアとグレンが目を合わせる。

 

「……成長型か」

 

「厄介だな、そりゃ」

 

リーネが首を傾げる。

「厄介?」

 

「強くなるって意味だよ」

シルビアが笑う。

 

「未来視は使えば使うほど伸びるタイプかもしれないね」

 

リーネの目が輝く。

「……もっとやる!」

 

「その意気だ!」

 

宿へ戻る頃には、

日は落ちていた。

湊が迎える。

 

「お、どうだった?」

 

リーネが胸を張る。

「戦い方、増えた!」

 

「おお!」

 

シルビアが笑う。

「そのうちアンタ守られる側になるかもよ?」

 

「俺も負けてられないな」

 

笑い声。

だがその裏で。

着実に。

力は積み上がっていた。

未来を見る少女は、

未来を変える力を手に入れ始めていた。

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