ひとつの器で六魂共鳴 - 最下層から始まる六人格侵略譚 - 作:z567ug
夜。
ベルガルドの地下アジト。
机の上に広げられた地図。
その前に、ガイゼルとレオハルトが並んでいた。
「……本当に行くのか?」
レオハルトが問う。
「ああ」
ガイゼル。
「本戦前に内部構造、警備配置、侵入経路を把握する」
「これで作戦の成功率が格段に上がる」
「危険すぎる」
シルビアが眉をひそめる。
「だからこそ適任がいる」
その瞬間。
『呼んだ?』
シア。
『潜入なら任せて』
グレンが腕を組む。
「……俺も行く」
ガイゼルが頷く。
「罠設置はお前に任せる」
「承知した」
深夜。
リヴェルア水上都市外縁。
巨大な湖。
その中央に浮かぶ都市。
白い建築。
青い水路。
橋。
灯り。
月光を受けて、
幻想的なほど美しい。
「……綺麗だな」
グレンが小さく呟く。
シアが鼻で笑う。
「表だけね」
その視線の先。
橋の上を、
豪奢な服を着た貴族たちが歩く。
その足元では、
下層民らしき使用人が頭を垂れていた。
「クソみたいな絵面ね…」
「同感だ」
外壁。
通常門は閉鎖。
警備兵多数。
「正面は無理だな」
グレン。
「誰も正面から行くなんて言ってない」
シアが笑う。
「ついてきて」
水路脇。
管理用排水路。
格子。
鍵。
グレンが眉をひそめる。
「おい、ここ通るのか?」
「文句ある?」
「臭ぇ、鼻が曲がりそうだ…」
「我慢しなさい」
短剣。
カチリ。
解錠。
「…なんだよ…便利だなそれ」
「基本でしょ」
都市内部。
下層整備区画。
煌びやかな表通りとは違う。
薄暗い。
汚い。
人目が少ない。
「……裏はちゃんと汚ぇな」
「当然ね」
シアが屋根へ飛ぶ。
「上から見る」
グレンも追う。
そこから数時間。
警備巡回。
見張り塔。
武器庫。
兵舎。
貴族街。
中央広場。
次々と確認。
グレンが小型罠を設置していく。
「爆薬は使えねぇな」
「音で全部バレちまう」
「足止め優先で頼むわ」
「分かってる」
その途中。
「……止まって」
シアが低く言う。
気配。
屋根向こう。
二人の兵。
「この動きは巡回予定に無いわね」
「どうする?」
「殺す」
「即答か…」
次の瞬間。
音もなく。
影が走る。
「――」
首筋。
一閃。
崩れる。
「…プロだとは思ってたが…すげぇな」
「当然でしょ、プロだもの」
中央区画。
最奥。
巨大な宮殿。
「……あれが」
「統治者の館」
警備密度が桁違い。
グレンが顔をしかめる。
「正面突破は無理だな」
「だから作戦立てるんでしょ」
シアが目を細める。
「……でも」
屋上。
最上階。
一つだけ。
異様な気配。
「……いる」
「何が?」
「強いのが」
沈黙。
「フォクシーか?」
「多分ね」
その瞬間。
ゾワッ――
殺気。
「……ッ!」
シアの目が見開く。
「伏せろ!!」
次の瞬間。
屋上を、
巨大な槍が貫いた。
轟音。
「見つかった!?」
「そうね――」
上。
宮殿屋上。
フォクシー。
こちらを見ている。
笑っていた。
「……歓迎ってか」
シアが舌打ちする。
「撤退!」
水路へ飛ぶ。
追撃。
槍が飛ぶ。
屋根を砕く。
「速っ!?」
グレンが叫ぶ。
「喋るな走れ!」
排水路へ飛び込む。
そのまま――
脱出。
ベルガルド。
地下アジト。
「……で」
レオハルト。
「見つかってしまった、と」
「最後だけね」
シア。
「でも必要な情報は取れた」
地図に書き込む。
警備配置。
巡回。
侵入経路。
罠設置位置。
グレンが笑う。
「準備は整った」
沈黙。
一拍おいてガイゼルに変わる。
全員を見る。
「…では…作戦を開始する」
空気が変わる。
いよいよ。
反撃の時だった。