ひとつの器で六魂共鳴 - 最下層から始まる六人格侵略譚 - 作:z567ug
夜明け前。
ベルガルドの空は、まだ暗い。
わずかに白み始めた地平線。
冷たい空気が、肺に刺さる。
「……」
湊は、静かに目を開けた。
「……朝か」
体を起こす。
傷は、もうほとんど残っていない。
「回復早すぎだろ……」
『当然です』
セレス。
『最適な処置と投薬を行いましたので』
「いや、それが怖いんだって」
小さく息を吐く。
外を見る。
静かだ。
何かを告げるように空気は澄んでいた。
(そろそろだ)
地下アジト。
全員が集まっていた。
武器。
装備。
視線。
誰一人、軽くない。
「……揃ったな」
ガイゼル。
その一言で、空気が締まる。
レオハルトが地図を広げる。
「最終確認です」
指が走る。
「侵入経路は排水路」
「第一段階、内部撹乱」
「第二段階、外縁陽動」
「第三段階、中枢突入」
「異論は?」
ガイゼル。
沈黙。
「……よし」
「予定通り実行する」
その時。
「……ねぇ」
リーネ。
「正しいことって、なんだろうね」
湊に戻る。
「オレにも正しい事なんてわからないさ」
「ただ、後で自分がダサいって思うような事をしたくないだけさ」
リーネは不思議そうな顔をする。
「ダサいって…なに?」
疑問の意図に気づいて湊は続ける。
「はは…そうだよな、わかんないよな」
ガイゼル。
『戦場においては結果が全てだ』
シア。
『勝てば正義、でしょ』
宗十郎。
『されど信念を曲げるな』
羅豪。
『勝ちゃいい』
セレス。
『生き延びることも正義です』
「……バラバラだな」
湊が笑う。
リーネも、小さく笑った。
「でも……それでいい気がする」
「……行こうか」
シルビア。
全員が動く。
街外れ。
排水路。
「……ここだ」
シアが前に出る。
カチリ。
「先行する」
「まずは俺達だな」
グレンも続く。
少し遅れて。
シルビアたちも侵入する。
リヴェルア水上都市。
内部。
薄暗い管理区画。
「……静かだね」
リーネ。
「嵐の前の静けさってやつだね」
シルビア。
第一段階。
撹乱開始。
遠く。
「――な、なんだ!?」
兵の声。
次の瞬間。
バチンッ!!
足元で何かが弾ける。
「ぐっ!?」
兵が転倒。
「トラバサミ!?」
グレンの仕掛け。
同時に。
影が走る。
「――」
シア。
一瞬で背後に回る。
スッ
首元。
崩れる。
「グレン、この死体、目立つところに移動するわよ」
「おうよ!」
グレンが応答する。
別の通路。
「侵入者だ!!」
兵が叫ぶ。
その瞬間。
「……そこ」
リーネ。
小さく呟く。
未来視を使う。
(来る――)
ボウガンを構える。
「――今」
発射。
バシュッ!!
矢が飛ぶ。
命中。
「ぐっ!?」
1人、崩れる。
だが。
まだ来る。
2人。
3人。
「……右」
未来視。
(跳ぶ)
「……ここ!」
撒菱を投げる。
カランッ
散る。
次の瞬間。
「うわっ!?」
兵が踏み込む。
足を取られる。
「今だ!」
シルビアが踏み込む。
「はぁっ!!」
一撃。
沈む。
「いいね!!」
シルビアが笑う。
リーネは止まらない。
「……次」
装填。
構え。
撃つ。
外さない。
別ルート。
グレンがニヤリと笑う。
「いい感じに回ってきたな」
「そっちも派手にやりなさいよ」
シア。
「任せろ」
罠、起動。
ガシャンッ!!
通路が封鎖される。
「うおっ!?」
「退路が!!」
混乱。
「……これでいい」
リーネ側。
呼吸が上がる。
だが。
止まらない。
「……見える」
戦いの中で成長している。
未来が、更に少し先まで見える。
(左から来る)
撃つ。
倒す。
(次は……)
撒菱。
置く。
兵の動きが止まる。
シルビアが仕留める。
連携。
完全に回り始めていた。
シルビアが笑う。
「いいじゃないか!」
「ちゃんと“戦ってる”ね!」
リーネが息を吐く。
「……うん」
汗。
徐々に速くなる鼓動。
だが。
怖くない。
(できる)
確信。
「……順調ですね」
レオハルトが頷く。
「想定以上です」
「第一段階、成功圏内」
遠く。
鐘の音。
カン――カン――
警鐘が鳴り響く。
「本格的に気付かれたわね」
シア。
『問題ない』
ガイゼル。
『ここからが本番だ』
『そろそろ出る準備はいいか?羅豪』
『一旦シルビア達と合流し派手に暴れてくれ』
羅豪。
『任せろ!暴れる準備はいつでもいいぜぇ!』
水都が、ざわめき始める。
静寂は、終わった。
『――次の段階へ移行する』
戦いは。
加速していく。