ひとつの器で六魂共鳴 - 最下層から始まる六人格侵略譚 - 作:z567ug
灰が、風に舞っていた。
アッシュクロウを離れてから、どれくらい歩いただろうか。
背後の街はすでに見えなくなり、視界に広がるのはひび割れた大地と、焼け焦げた岩の群れ。
空は鈍色。
時間の感覚すら曖昧になる。
「……景色、終わってんな」
湊はぼそりと呟いた。
「終わってるって言うと、ちょっと面白いね」
リーネが小さく笑う。
「いや笑いどころじゃないだろ。これ観光地だったらレビュー最低だぞ」
「レビューってなに?」
「……今度説明する」
たぶんしない。
しばらく歩く。
風と足音だけが続く静寂。
だがその静寂の中でも、湊の内側は静かではなかった。
『周囲に反応はないでござるか』
宗十郎の声。
「今のところは大丈夫そう。リーネ?」
「うん。近くにはいないよ」
『ならば進行を継続すべきだ』
ガイゼルが淡々と言う。
「いやでもさ」
湊は軽く息を吐いた。
「俺が戦えないっての、やっぱり不便だな」
『当然でござるな』
宗十郎。
『主は戦う器ではない』
『いや器なんだけどな』
湊がぼそっと返す。
『うるせぇ!戦うなら俺に任せろ!』
羅豪が割り込む。
『無駄な戦闘は避けろ。現状、損耗は許容できない』
ガイゼル。
『……あなたが出ると被害が増えるのよ』
シアが冷たく言った。
『あぁ!?』
『……無茶をすれば、確実に死にますね』
セレスが淡々と締める。
「まとまる気配ゼロなんだが?」
思わず苦笑する。
リーネがくすっと笑った。
「ほんとに賑やかだね」
「他人事だと思ってるだろ」
「うん」
「即答かよ」
そのときだった。
リーネの表情が変わる。
「……来る」
「どっち?」
「前。三体。大きい」
湊の背筋に緊張が走る。
(来たか……)
「……任せるぞ」
意識を沈める。
次の瞬間――
身体の主導権が切り替わった。
視界が変わる。
重心が落ちる。
呼吸が整う。
「――遅い」
低く、鋭い声。
それはもう、天瀬湊ではない。
羅豪が、前に出た。
魔物が飛びかかる。
だが、その軌道は見切られていた。
踏み込み。
拳。
一撃。
骨ごと砕く。
「次だ!」
吠える。
二体目が横から来る。
「甘ぇ!」
蹴り上げる。
地面に叩きつけ、そのまま踏み砕く。
三体目。
後ろから。
だが――
「――そこ」
声が変わる。
静かで、鋭い。
瞬間、身体の使い方が変わった。
無駄のない動き。
流れるような重心移動。
宗十郎。
「断つ」
一歩。
わずかな間合い。
そして――
一閃。
魔物の首が、遅れて落ちた。
静寂。
数秒後。
身体の主導権が戻る。
「……っはぁ……」
湊は息を吐いた。
「やっぱ疲れるなこれ……」
『当然でござる』
宗十郎。
『未熟ゆえ、負荷が大きい』
『だが悪くない』
ガイゼルが短く言う。
『切替は機能している』
『ほらな!俺のおかげだろ!』
羅豪。
『半分は私よ』
シア。
「はいはい全員のおかげです」
適当にまとめる。
「……すごい」
リーネが、少し目を見開いていた。
「今、全然違った」
「違っただろ」
「うん。別人みたい」
「別人だからな」
軽く笑う。
だが、その裏で理解している。
まだ不完全だ。
今は一人ずつしか出せない。
切り替えにも隙がある。
そして――負担が重い。
「でも、無理はしないでね」
リーネが言う。
「さっき、ちょっと苦しそうだった」
「ああ、分かってる」
再び歩き出す。
しばらく進んだ先。
リーネが前を指さした。
「……見えてきた」
遠くに、街の影。
煙が上がっている。
人の気配。
「街か」
「うん。あそこは――」
少しだけ間を置いて、
「ローデルの街」
「知ってるのか」
「うん。この辺では大きい方。
港に行く人は、だいたいここを通る」
「中継地点ってことか」
「そんな感じ」
湊は目を細めた。
人がいる。
情報がある。
そして――
「……“器”のことも、何か分かるかもな」
ぽつりと呟く。
『……あの呼び方は危険だ』
ガイゼルが低く言う。
『対象を“物”として扱う言葉だ』
「分かってる」
『気に入らぬでござるな』
宗十郎。
『壊される前に壊す』
シアが静かに言う。
『なら戦うだけだろ!』
羅豪。
「……だな」
湊は小さく笑った。
「使われるつもりはない」
風が吹く。
灰が舞う。
その先にある街――ローデル。
そこに何があるのかは分からない。
だが確実に、次の局面が始まる。
そんな予感だけが、確かにあった。
七話お読みいただきありがとうございます!
ここまで書いてきて、主人公の脳内での会話が誰が喋っているのか分からなく感じる事がありそうだなぁと感じていたので今回台詞の癖を付けたり、名前を入れてみたりしてみました。今後は暫定でこの形で書いていこうと思ってます!
次回はローデル。2つ目の街ですがどんな事が起こるでしょうか?
よく見るようなレベルアップやステータスの概念がこの物語には無いので、
主人公達の成長は戦闘毎の差分や新たな技などでしか計れないようにしてるので分かりづらいかもしれませんがちゃんと成長を表現できればと思ってますので、
どうぞよろしくお願いします!
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今後とも「ひとつの器で六魂共鳴」をよろしくお願いいたします。