【イナズマイレブン】shout out the ペンギン 作:NEW謝
帝国がくるらしいんだよね
「流石東京だなぁ」
ありがたいことに、新学期も始まって約数週間ですかね。
なんとか生き抜くことができてまして……。
で、ホント今さっき学校のすぐそばなんだけどさ、
お祭りっていうのかな?まぁちょっとした春のイベントみたいなのをやっていまして。
俺も実際登校するときに
「おいしそ……」
なんて眺めつつも、
「でも俺、これから学校だしな……」
と、自分とは関係ない催しなんだなくらいに、
勝手にちょっと自分を納得させて、
なるべく他の事を考えながら校門に入ってたわけよ。
けど、やっぱどうしても気になっちゃうじゃない。
学校に近いところでやってるわけだから、
ちらちら子連れだったり若い人が楽しそうにやってるのが、教室に居ても目に入っちゃってたのよ。
「えーと、このロングウィンナー? 一つ下さい!」
「750円になります」
……「たかっ」で合ってるのかな?相場が分からないので何とも言えない。
まあ俺のお金でもないし……。
熱血ポイントとか友情ポイントとか超次元の類……流石に現物ではあるんだけど、結構怪しいやつだ。
「丁度お預かりします」
「あ、はいありがとうございまーす」
まぁこういう日があっても、仕方ないよね。
──暇だとホント良くないことばっか考えちゃうし……。
取りあえず河川敷まで、タッパー抱えて行きますか。
俺も別に自分のことリスとか、野生動物みたいって自惚れてるわけじゃないんだけど、
あーのねぇ、さっさと学校を後にしてテリトリーに帰ってしまいたいんだよね。
だって帝……あーダメだ早く河川敷行かなちゃ。
てぃっ……帝……帝コッ……。
◆
ここ最近はホントありがたいことですよ。
あの”イナズマイレブンの円堂さん”にパスの出し方・体の使い方を教わってまして。
「水城、行くぞー!」
「はい、お願いしまーす」
相手の進行方向前にボール蹴って、俺自身も並走して走り、そしたらまた今度はボールを受けてっていう、
一般的な練習なのかな?俺もサッカーやってた時、何度かやったことあるし。
まずはそんなウォーミングアップをしている。
「サッカー部は俺を入れて4の……6の……8人ですよね」
「水城に宍戸・壁山・栗松に少林、今年は5人も新入部員が入ってくれたな」
「っすよねー、そしたらもう……メンバー集めもきっと……いや、うん…」
今日一日、部員集めに奔走している先輩を横目に見てきて。
別に俺程度に出せる言葉なんか微々たるものでしかなく、だからこそ無意識に頼ってしまうのかもしれないが……。
「多分”なんとかなります”よ」
「え?」
俺も、メンバー集めに関するところだけは、流石にためらってしまってる。
自分が破壊者の実であること。
これは日が進むにつれて、どうしても意識せざるをえない。
……でも俺が存在してしまうことは、もうどうしようもないじゃない。
そう割り切ってかないと、ホントどうにもこうにも行かないもんね。
うん。
「何よりきっと”なんとかなる”、少なくとも雷門に居るうちは、俺だってそう確信してますよ」
「そうだよな、俺もまだまだあいつらとサッカーしたいし……そうだ廃部になんかさせてたまるものか!」
そうだよなあ、俺も先を見据えて色々やっていかないと。
競技・競争としてサッカーと向き合うのは大分久しぶり、いやなんなら初めてくらいかもしれないしね。
だからまぁ俺もFFIだったりとか、地上最強イレブンを目標にして、
練習から本気でやっていかないといけないなと……あれ?練習?
練習……河川敷……そういえば!
「……あ、円堂さん一つだけ、帝国戦に向けて俺も試したい技があるんですが」
シャウト・ザ・ペンギンのほかに、一つだけ、
手掛かりがありそうな……だったら最低でも帝国までに身に付けないといけない技が。
◆
そんなこんながありましてついに一週間。
ユニフォーム……それからスパイクに履き替え、帝国を待ち構える俺たち弱小サッカー部。
体の芯が冷たく、ソワソワとしている気がする……俺は今逃げ出してしまいたいのだろうか?
──だが勿論、同時にサッカーが出来ると高揚してる感覚もある。
「全力を出さないと、なんだって見えてこないさ、俺たちのサッカー見せてやろうぜ!」
「「「おう!」」」
初戦なんか特に大事だ、俺も執着持ってや──
「なんだか急に暗くなってきたでやんす」
突如、空が雲で覆われるような、かといって乾いているような、この学校近辺だけ異様な空気に包み込まれている。
「これが嵐の前の静けさ」ってやつか、と敵ながらも尊敬、そして感心しつつも。
いや、そんな場合じゃなくてね。
「なんだあれ?」
「トラック?いや電車か?」
教室から観覧している生徒たちまでザワザワとしだしてしまう。
これじゃあ、「わが校の優れた品格を知ってもらう事で、校舎破壊のような野蛮な行為をけん制する──」。
そんな校長の思惑を……一歩、
なんならその何段階上をいってしまうような帝国サイドの圧倒的強者感。
俺も体をほぐしながら、緊張をなるべく意識しない様に、なんだったら忘れられるくらいに期待して。
「あ、あれがやっぱり帝国のバスっすか」
「うわぁ……」
初見「なにこれかっけぇ」と「恐ろしい」その両方が入り混じるような、不思議な感覚・そして光景。
極めて近未来的で、少なくとも「とんでもない額の投資がされてるんだろうなぁ」ってことくらいは、素人目でも一目見れば分かってしまう。
「ふっ」
……まってチラッと見えた鬼道の横から、
なんかフィフスセクターみたいなヤツラぞろぞろ現れてるって!
いや、そういえば見たことあるかも……。
レッドカーペットをバーっと敷いて、洗練された動きでその横に等間隔で並んでいく一般生徒たち。
この方たちでさえ一人一人が俺らよりサッカー上手い、みたいな。
そんな下積み感覚でやられてるわけじゃないよね?いや俺もほとんど初心者みたいなもんだけど、大丈夫よね?
「鬼道さん、なんでこんなチームと試合を? うちのスキルが上がるとは思いませんけど」
「面白いものが見られるかもよ」
「面白いもの?」
「……面白いもの?」
──やっぱ豪炎寺さんのことなのかな?
まだ転校すらしてないみたいんだけど、大丈夫かな……。
一応、でもじゃぁ今日学校見学にでもくんのかな程度に思っといて……そうじゃないと普通に勝ち目ないもんね。
「んー半田先輩、”豪炎寺”って人知ってますか? えーっとあの円堂先輩のクラスに転校生とか?」
「いや、俺は知らないけど……」
うーんまぁ来ることを期待している限り、どんなにボロボロでも諦めずにいられる……とにかくそこだけが俺のアドバンテージだ。
「うわ、すっげえ。椅子がコックピットみたいに生えてきたんだけど」
そんなうちら側の一般生徒の声も聞こえて。
「よりにもよってこの学校とはな……ふっ、これも因縁か」
◆
雷門 帝国
染岡 寺門 佐久間
半田 宍戸 鬼道
咲山 洞面
少林 マックス 辺見
風丸 水城 成神 五条
壁山 影野 栗松 だいでん 万丈
円堂 げんおう
壁山君が逃げたり、舐め腐ってる鬼道さんなど……。
いわゆるパッケージとされる展開がまぁやはり、ありまして。
とは言えそれが終わってしまえば、もう試合。
合唱祭とか、こういう人から見られるような感覚……俺苦手なんだけどなぁ。
「さぁみんな、頑張っていこうぜ!」
──ピィーーっと試合の合図が鳴り響く。
まぁ最初は相手もわざと隙を見せてくるだろう……ならそこを狙う以外考えられないよな。
──風丸さんが左サイドから勢いよく上がっていく。
ついにはペナルティエリア付近で相手SBの五条さんと対峙、
「そら、染岡」
無理にはスピードで切り込もうとせず、一度染岡さんに下げてやり直すような形。
「マックス!」
そして染岡さんも松野先輩を経由し、反対側を目指し宍戸君へパス。
最後には右サイドに上がっていた俺へと……。
──ついにボールに触れた。
……入れられるなら中に入れるのが一番だし、最初は俺がクロス精度を見せて警戒を……なんて期待もある。
が、相手は帝国学園なんだ。
「ここしかないんだもんな……」
首を頻繁に振りながらキョロキョロしつつ、少しずつ前を目指していく……。
右の視界にオレンジ色のアフロが。
「宍戸!」
「よっし」
「任せた!」
俺はボールを預けたまま宍戸君と入れ替わり、中央目指してダッシュ。
「せんぱい!」
ラインぎりぎりでクロスを上げる宍戸。
成神の舐め腐った軽いプレスなどお構いなしだ。
「よっしゃあああ!」
空中で半田先輩がスルーしたボールに、
染岡さんが食らいつく。
「おらあ!」
「ここ!」
思いっきり蹴られたボールの進行方向は、どちらかというとげんおうの反対側。
がら空きとなった右側をつら抜こうとする。
「素早いシュートにキーパー動けないか!?」
と彼を知らない人が、そう思ってしまうのも仕方がない。
だけども”キング・オブ・ゴールキーパー”、結局止めてしまうんだろう。
──だから、げんおうが動き始めた瞬間ギリギリ、
そのまた逆方向に向かってヘディング。
この世界でいうところの、シュートチェインなるもの。
「イッテぇ」
メガネしてないだけで、こんなんほとんどメガネクラッシュ……。
この試合もめがね先輩はスーパーサブで出るみたいだし、俺も実際彼の変わりだよ。
「入った!」
「よっしゃあ」
ゴールラインの上で、叩きつけられたボールがバウンドする。
──誰もが、少なくとも雷門中に居る全員が淡い期待してしまったその瞬間。
「サイクロン!」
その声が聞こえた瞬間、俺の心臓がゾワリっと鳥肌を立てた。
生存本能……いや実際にはただギュッとなっただけなんだが、
まぁとにかくこの状況、俺だけが知ってる……そう思って。
「やっばい」
……突如現れた風のぶ厚い壁、ボールをこれ以上ゴールに近づけさせない。
それどころか俺もろとも、何もできないまま上空に弾き飛ばされる。
「っくは」
本来遠くから放たれるDF技を至近距離、しかも変な態勢で受けてしまう。
一人だけ悪い方向に目立ってしまう恥ずかしさ……など一瞬で消え去った。
「このまま落ちたらどうなんのかな……」
「水城!」
小学時代、俺が唯一大人から点を取ったなんちゃってゴール。
かつての成功体験など、超次元サッカーの前に……なにより“本物のサッカー”にあっけなく敗れてしまった。
水城の逆一mm……。
まぁ入ってたとしても、この程度は買収されてるんじゃないですかね?
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