市長ルートの幻覚(KENZEN版)です
セト店長は見ちゃだめ

そのうち【裏】をハーメルンの何処かに放流予定


本作品は雨 唐衣様の『俺の切り札は光らない』の二次創作です。

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幻覚


札と札、重ねて【表】

 MeeKingの自動扉が開かれる。

 客が来たと思い、いつも通り「いらっしゃいませ」と言葉を発する。

 そして顔を上げるとそこには予想外の人物が立っていた。

 

「うむ、今日もきちんと営業しておるな」

「……カドさん」

 

 常盤火戸(トキワ カド)市長がそこに居る。

 そういえば結構前に不定期に店長とバニラの様子を見ることも兼ねて視察に行くとか言っていたっけ?

 前回の視察も本当に不意打ちだったから店長がビックリして尻餅をついたという記憶はまだ新しい。

 そして前の視察の時に「市長」と呼ぼうとしたら「ぷらいべーとみたいなもんじゃからカドで良い」と言われて、それから僕は「カドさん」と呼ばせてもらっている。

 

 店の清掃とかは普段からキチンとやっているし、今回の視察も問題ないだろう。

 それにしても今日はやけに気合が入っているのか、だいぶ綺麗な印象だ。

 いや、いつも綺麗な人ではあるんだけれど。

 それに……今回は和ロリと言うのだろうか? ロリィタ特有の華やかさに和服風に潜む控えめな感じのデザインで、シックな雰囲気が程よい調和を齎している。

 それと、肩が露出している為か、やや色気も──いや、今僕は何を考えたんだ?

 

「して、セトは……」

「あー、店長ならさっきユウキちゃん達と買い出しに行っちゃいましたよ」

 

 バニラが早くこの街に慣れてくれる様に、とも補足しながら僕は答える。

 だから店番として僕が残っている。

 

「ふ、ふむ……それならばちょうど良いか

 

 因みにサレンは自分は護衛だと言って付いて行った。

 ま、まぁ、女の子だらけの場所に男1人は気まずいし?

 

「えーと、店長達が戻ってくるまでお相手しましょうか?」

「それも良いのじゃが……一旦はそのデッキは仕舞っておくれ、頼む」

 

 以前、彼女と行ったファイトは楽しかった。だから今回はまた出来るのかなと思ったけれど、振られてしまった。

 まぁ、あの時は店長のカードを修復するためにスピリットが必要だったみたいだし、そう簡単には相手してもらえないよね。

 今回のファイトの申し込みはダメ元で言ってみただけだし。

 

「ほれ、こっちに近う寄れ少年」

 

 休憩スペースの方を指差してカドさんは手招きをする。

 この時間帯は特に客も来ないため、僕とカドさんの2人きり。

 だから他の客に聞かせられないような秘密話にはもってこいなのだろう。

 まぁ、僕も本来なら無関係の人間なのだけれど。

 でも、闇のカードの事件に子供や女性が巻き込まれたと知ったら犯人と刺し違えてでも助けるつもりだ。

 

 カドさんに袖を引かれるまま僕はそのまま休憩スペースの椅子に座らされる。

 そして彼女は何を思ったのか、僕の膝の上に座ってきた。

 

「いや何してるんだアンタ!?」

 

 太腿にかかる程よい重さと、女の子特有の柔らかs──変な思考に入りそうなところで自分の頬に1発拳を入れる。

 僕が突然自身の頬を殴ったからか、カドさんを驚かせてしまった。

 

「すみません、なんでも無いです」

「そ、そうか……なら良いのじゃが……」

「はい。……それで話とは?」

 

 カドさんは僕の身体に身を預けながら話し始める。

 身構えていたが、実際は最近の店長の様子はどうだ、とか、バニラはもう馴染んでい様で安心した、とかそう言った内容だ。

 それにしても良い匂いと柔らかい感触がダイレクトに伝わってくる。

 形容が難しいのだが、こう……女の子だって感じ。

 でもこの人僕よりも歳上なんだよね。見た目とのギャップで脳がバグる。

 

「そう言えばカドさんって店長のお母さんみたいですよね」

「そうか? まぁセトが教会から追い出された頃から面倒を見ておったゆえ、確かに吾はあやつの母代わりであろうな」

 

 僕の抱いた印象を率直に伝えると、彼女はどこか嬉しそうだ。

 るんるんと、彼女が足をぱたつかせる度に彼女のお尻の感触が太腿に響く。

 僕だって一応は思春期真っ盛りの高校男児だ。

 だからこれは不可抗力であろう。

 普段カードに向けている熱の一部が身体の一点に集ってしまう。

 

「おや……? 吾の臀部に何やら違和感があるのう」

 

 そして、当然膝の上に座る人物に気付かれる。

 わざとらしく、そして何やら笑みを浮かべているような声色。

 

「す、すみません……生理現象です……。あの、不快に思われたのなら退いてもらっても構わないです。と言うか退いて下さい切実に……」

 

 僕の訴えに対して彼女の答えはなぜか『更に身を預ける』だった。

 カドさんは僕の胸板に頭を預けて人差し指で軽く円を描くようになぞる。

 

「吾としては現状、少年にセトを預けても問題とは思っておる」

「か、揶揄わないでください……市長」

 

 咄嗟に溢れた「市長」と言う言葉に彼女の指の動きが止まる。

 そして頬を膨らませながら僕の顔を見上げてきた。

 その不満げな表情は、言外に「カド」と呼べと訴えているようである。

 

「……カドさん」

「うむ」

 

 僕が名前で呼び直すと、彼女は笑顔で頷く。

 そして今度は向かい合うように僕の膝の上に座り直す。

 先ほどとは違う柔らかい感触が太腿の上に広がった。

 面と面が向かい合う形となり、僕とカドさんは暫くお互いを見つめ合う。

 ここで何か話題でも上げられたのなら良かったが、生憎そのような器用な事は苦手だ。

 

 整った容姿の女性にマジマジと見られる体験なんて早々に無いため、思わず視線を逸らす。

 自動扉のガラスの向こうにはいつも通りの風景が写っているだけだ。

 

「おや? 何故(なにゆえ)視線を逸らす?」

 

 僕が視線を逸らして彼女は揶揄うように笑う。

 そして僕の頬に柔らかな手を添えて、そして身を預けるように前に倒れてくる。

 

「か、カドさん!?」

「ほれ、あの小僧の所で鍛えておるのなら、華奢な吾なぞ簡単に引き剥がせるじゃろ? ん?」

 

 確かにできなくはない。

 だけれどカドさんが自身の身体を華奢だと言うように、無理に細い身体を退かそうと力を込めたら傷付けてしまいそうで僕には出来ない。

 そのため、僕はカドさんの好きなようにされてしまっている。

 頬を撫でられ、首筋に吐息をかけられ、そして……。

 

「っ!?」

 

 頬、耳と言う順番に柔らかな感触が訪れる。

 僕は咄嗟にカドさんの両肩を掴んで密着する彼女を引き剥がす。

 

「おや、たかが接吻だろうにもう限界かえ?」

「か、揶揄わないでくださいよ……本当に」

 

 僕だって男だ。

 だからこんなことをされてしまっては勘違いをしてしまう。

 彼女を傷付けないように力は加減したつもりだ。

 手袋越しの両手に感じる柔らかな肩の肉が嫌にハッキリとしている。

 

「そう言えば少年。お前さんはいつもコレを付けておるな?」

 

 醜い怪我の痕を隠すための手袋にカドさんが触れる。

 そしてその下に気になる事があるのか、捲って確認しようとしてきた。

 

「……その下はあまり人様に見せられるようなものじゃないですよ」

「さては刺青か? その歳でなかなか遊んでおるなぁ?」

「ち、違いますから」

 

 手袋が捲られる。

 火傷の痕が彼女の瞳に反射して映った。

 

「おっと……これは予想外じゃったわい」

「ほら、見ていて気持ちのいいものでもないでしょう?」

 

 もう過ぎたこととはいえ、あの子が責められるようなことにはなって欲しくないためカドさんにこの傷痕の由来を簡単に説明する。

 そして僕が説明を終えると彼女は手袋を元通りに戻すと、その上から優しく撫でてきた。

 

「安心せい。既に解決しておるのならそこで終いじゃろう? ならば何も言うまいて」

 

 大人の余裕と言うものだろうか。

 彼女は本当に気にしておる素振りはない。

 

「それに、だ。この様な傷痕を残していておっても和解してその少女とまだ関わりがあるのなら尚更部外者が口を挟む必要なないからな。これ以上口を挟めば要らぬお節介になってしまうわい」

 

 その言葉を聞いて緊張が解れる。

 ……だから油断してしまった。

 

 再び胸元に軽い衝撃と共に重さを感じる。

 気付けばカドさんが再び僕に身を預けてきたのだ。

 

「ほれ、油断したな」

 

 悪戯が成功して嬉しいのか、笑みを浮かべながら僕の頬を再び撫でる。

 そして顔が近づいて来て──。

 

「フツオくんただいま〜」

「ただいまー!」

 

 自動扉が開き、店長とバニラの声が響く。

 僕とカドさんは今にも唇が重なりそうなところで静止している。

 

「チィッ! 良いところじゃったと言うのに……たいみんぐの悪い奴め」

「し、市長!? ()()()フツオくんに何しているんですか!?」

「セトー? 見えなーい!」

 

 一気に店内が慌ただしくなる。

 後から入ってきたユウキちゃんも、僕とカドさんの状態を見て思わず自身の手で目を隠して……いや指の隙間からちゃっかり見てるよこの子。

 そしてサレンは通報しようとしている。

 

「待てサレン。これは誤解だ。だから一旦通報しようとするにはやめてくれ」

「……申し分」

「吾が誘った。以上!!」

「以上じゃ無いよ!! と言うか早くフツオくんの上から退いて!!」

 

 渋々だったがやっとカドさんが退いてくれた。

 僕はロリコンでは無いが、これ以上続いていたら流石に限界が来ていた。

 店長を助けたあの時だって冷静になるまで時間がかかったし今回も一旦店の裏にでも避難して欲求を落ち着かせ無いと。

 

「ちゅっ……ではまた来るからのっ♪ フ・ツ・オ♡」

 

 不意打ちで喉に柔らかな感触を感じた。

 咄嗟にカドさんを見ると彼女は手を振りながら店を出て行く所だった。

 そして店長はカドさんの置き土産に荒ぶる。

 今、僕の心臓が早鐘を打っている。

 前世も含めて女の子からこんな事をされたのは初めてだ。

 だから嫌に全身が熱い。

 

「……もしもし」

「だからサレン誤解だって!!」




幻覚

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