仮面ライダーガヴが面白すぎましたが、最終回だけ個人的に納得しきれていなかったので少し変更しました。主にランゴとショウマの掛け合いと戦闘シーンを変更しています。完全な自己満です。


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仮面ライダーガヴが面白すぎましたが、最終回だけ個人的に納得しきれていなかったので少し変更しました。主にランゴとショウマの掛け合いと戦闘シーンを変更しています。完全な自己満です。


第1話

ストマック家と根強い関係を持っていたグラニュートの大統領、ボッカ・ジャルダックを討ち取ったランゴ・ストマックは人間たちに「出荷」再開を宣言。

 

一方、ストマック社に囚われていたヒトプレスを全て回収した辛木田絆斗は仮面ライダーヴァレンとしてジープ・ジャルダックを撃破した。一人先立たれ、悲しみに暮れて涙したリゼル・ジャルダックを伏し目がちにヒトプレスを積んだ台車を重そうに押していく。

 

絆斗にヒトプレスを託し、エージェントを返り討ちにしたラキア・アマルガこと仮面ライダーヴラムは嘗てストマック社に加担した罪滅ぼしとしてグラニュート界に残ることを決め、人間の世界へ繋がる無数の扉を破壊していく。微かに覗けた人々の平穏さ、仲間たちとの賑やかな日々に想いを馳せて崩れた足場の瓦礫と共に急加速で落下していく。

 

そして某所の遊園地にてストマックとしての血を分けた二人の男が対峙していた。人間の『牧場化計画』を仮面ライダー、ショウマ・ストマック自身が阻止した。威風堂々としたランゴ・ストマックが目の前で開口一番に敵意を剥き出す。

 

 

「ボッカを倒すのに役立ってはくれたが…やはりお前はストマック家にとって邪魔な存在。今度こそ倒しておかないとな」

 

 

「ストマック家って何?」

 

 

「はあ?」

 

 

「子供の頃から…俺、兄さんが楽しそうな顔してるの見たことない。人間の幸せと命を奪って、闇菓子を食べたグラニュートを食い物にして、それで、兄さんは幸せなの?」

 

 

俺の問いかけに対して兄さんはちっとも理解をしていない様子で口を軽く開けたまま呆れていた。“幸せ”のワンフレーズに兄さんは豹変し、怒りに満ちた眼光で睨みつけながら俺の胸ぐらを掴んでメリーゴーランドの柵に叩きつけた。

 

 

「お前がそれを言うか!恵まれた家に生まれたはずだった。だが…じいさんの後を継いだのは、あのボンクラおやじ…手にするはずだったものが少しずつ溢れ落ちていった!俺が掴むはずだった輝かしい未来、この手で取り戻すしかないだろう!」

 

 

「じゃあ、父さんが死んだのは…」

 

 

「わかるだろう?邪魔者は全て排除する。俺の未来はその先にしかない…!」

 

 

俺の父さんも母さんもランゴ兄さんの謀略によって殺されてしまった、環境も人生も立場も滅茶苦茶に壊されて。それでも俺は憎しみだけを兄さんにぶつけるなんてことはできない。こんなに取り乱している兄さんを見るのは初めてだったから。震える拳に哀愁と歯痒さが込められていたから。今では強大だった筈のランゴが虚勢を張っているようにしか思えなくなっていた。

 

 

「そっか…ランゴ兄さんも俺と同じだったんだ」

 

 

「……なに?」

 

 

「おじいちゃんとお父さんの被害者で…幸せになろうと必死に踠く一人のグラニュートなんだ。俺もそうだ、ただ幸せでおいしい世界を目指していただけなんだ」

 

 

「馬鹿馬鹿しい、誰が同じだ!グラニュートの俺と、人間の子であるお前のどこが!」

 

 

違う、同じなんだ兄さん。俺たちはきっと何がどうなっても違えるしかなかった。俺の“おいしい”を分け与えることはできない。分け合ってもきっと無碍にされる。みんなで仲良くできたらいいのに、なんて都合のいい夢をまだ見てる。俺たちの立場が逆だったら…きっと俺が兄さんを切り捨てていたのかもしれない。目指す先が違うだけで欲しいものは同じだったんだね。

 

 

「お前を倒し、清算する…全てだ!この生き方が正しかったと最期に教えてやる」

 

 

「もうたくさんの人に教えてもらったんだ。俺の生き方はもう決まってる…!手に入れたい幸せがあるんだ」

 

 

「ふん…グラニュートの俺と、人間の子であるお前。その差を思い知るがいい」

 

 

『マスター!わー!わー!』

 

 

「戦うしかないなら負けないよ、兄さん。ここで終わらせる…変身!」

 

 

互いの“ガヴ”を向かい合わせ、ランゴは刺さっていたミミックキーを抜き取る。俺は取り出したゴチポッドをレバーで半回転し、ガヴへ装填する。レバーを回しながらランゴの腕を掴み上げ、回していた腕で左横のボタンを押し込む。瓶のような物体に二人が包まれ、それが割れて破片が飛び散ると異形の姿に変身、変貌する。

 

 

『マスターテイスト!』

 

 

仮面ライダー、グラニュートの決着はきっと近い。横に移動しながら互いの攻撃を捌き、一手早く拳が届いてランゴを殴りつける。間髪入れずに高速で距離を縮め、飛び上がったままランゴの頭上に拳を振り下ろす。空を振り抜いただけの音に違和感を抱いた時には赤く発光した隻眼のランゴが背後に立っており、大剣で背中を二回斬りつけられてから蹴りを入れられる。転がったまま地面を蹴って無理矢理ランゴに突進し、空中で跨ったまま拳を連続で打ちつけて畳み掛ける。

 

 

「調子に乗るなよ」

 

 

ランゴのガヴに光とエネルギーが収束、一直線の光線が放出される。寸前で空中へ飛び立った俺の頭を掠めて浮かんでいた雲の塊を貫き、青空の面積を広げた。継続してガヴから火炎の追尾弾が五つ放たれ、高速で避けながら遊園地内の障害物を利用して電灯、マップ、車の乗り物で遊ぶアトラクションの柵に誘導してぶつけることで内三つを消し去る。レストラン付近の屋外テーブルまで移動すると目の前にランゴが待ち構え、大剣を振るってくるのを躱す。背後から接近する追尾弾の熱を肌で感じ、俺はランゴの背後へ瞬時に入り込んで蹴り飛ばすと火炎の餌食にしようとする。

 

 

「赤ガヴ、お前の戦い方は俺から見れば稚拙なもんだ」

 

 

「どうかな…!」

 

 

『オーバー!オーバーエナジー!』

 

 

ランゴは自分に直撃する筈の追尾弾を最後まで操り、上と横に軌道を変えて俺に直撃させる。それよりも前にゴチポッドを半回転させ、紫を基調とした細身のマスターモードからオレンジを基調とした図体の大きいオーバーモードへと転身し、それらを打ち消す。そのまま拳を真っ直ぐ打ち出すが大剣で受け流され、逆に拳を顔面に喰らうがものともせずに次に繰り出した拳で大剣を峰から破壊し、即座にゴチポッドを半回転する。

 

 

『マスター!マスターテイスト!』

 

 

マスターモードに戻るとランゴのカウンターを避けて背後を取って飛び蹴りを後頭部に放つ。振り返るランゴの片腕で受け止められ、拮抗する。同時に俊敏に周囲を駆けて空中で虹色と赤黒い閃光が大気を走り、生み出された衝撃波で空間が揺れ動く。前回の戦闘を経てランゴは俺のスピードに慣れてきているのか、途中で反撃を喰らって吹き飛ぶと観覧車に突っ込む。

 

 

『マシュマロ!ふわふわ〜』

 

 

「機動力を捨ててどうする?的としか思えんな」

 

 

『チョコ!パキパキ!』

 

 

揺れる観覧車から『フワ』の文字に片手で掴まって滑空し、空気を蹴って瞬間的にランゴとの距離を縮めると赤い包装と銀紙、僅かに露出した拳銃・チョコダンガンを握ってチョコの弾丸を連発する。命中させた後にそのまま通り過ぎ、ランゴが地面を踏み込んだことによる大きな地割れから急いで逃がれる。

 

 

『グミ!ジューシー!ケーキ!ふわふわ〜』

 

 

「俺の全てをぶつける!」

 

 

『デコレーション!』

 

 

イチゴのケーキとクリームの搾り袋でできたガヴホイッピアを左手に構え、右手をパンチングミゴチゾウの力を具現化した巨大な青い剛腕に変化させる。ランゴの周囲にガヴホイッピアから召喚されたマシュマロの肉体を纏ったホイップ兵が立ち塞がり、俺はランゴを剛腕で殴り飛ばしてホイップ兵の肉体で跳ね返ってきたランゴを更に殴打してダメージを重ねる。ホイップ兵の頭部をランゴの拳や回し蹴りで破壊されるが、俺はすぐに巨大なガトリングガンを装備する六体のホイップ兵でランゴを取り囲ませる。

 

 

『ドーナツ!もふもふ〜』

 

『キャンディ!ペロペロ!』

 

 

出現したドーナツがランゴの胴体を拘束、ガヴホイッピアから射出したクリームが足元で固まる。ホイップ兵と共にブルキャンガトリングを構え、二脚の支持棒が伸びると重装備を支える。高威力で発射される飴玉型硬質玉がランゴに炸裂し、爆風が園内を包み込む。しかし、ランゴの周囲には展開された赤黒いシールドが阻んでおり、地面が抉れる結果だけを残した。鼻で笑った無傷のランゴは超速でホイップ兵を殴り倒し、消し去ると今度は標的を俺に変える。

 

 

「まだ使えるなんて…!」

 

 

「計算外だったか?お前の大技を見切るにこの切り札は必要だった」

 

 

「ボッカの時にも隠していたってことか」

 

 

「ああ、まだ使えることをお前に悟られないためだ!」

 

 

『わー!CHARGE!わー!CHARGE!マスターブースト!』

 

 

ランゴが未だに絶対防御を隠し球として取り残していたなんて想定外だ。ガヴのハンドルを回して横のボタンを手の平で押し込み、激しい咆哮に呼応してランゴの周囲に展開されたオレンジ色のボトルへ駆け出す。次々とボトルに乗り移り、最大加速でランゴに蹴りや突きを連続で繰り出して動き回る。しかし、それらの攻撃は以前と比べても遥かに手応えがなく、全て捌かれている。もう挙動が見切られているのならランゴにとって予想外の攻撃を仕掛けるだけだ。拳が直撃する寸前でランゴは受け長そうとするのを読み、軌道をずらして命中させようとする瞬間にゴチポッドを半回転する。

 

 

『オーバー!オーバーエナジー!』

 

 

「なんだと…!」

 

 

『オーバースマッシュ!』

 

 

「攻撃の最中に切り替えられるのは知ってるはずだ、ランゴ!」

 

 

ランゴの慢心を利用した必殺技の重ねがけ。マスターモードによる超加速の連撃はランゴには届かない。超加速で得たエネルギーを当てる直前で更に大きな破壊力を誇るオーバーモードで放出する。ランゴにダメージを与えるための作戦じゃない。咄嗟に切り出すしかなかったランゴのシールドを割る、今ので消耗したのは2枚。ランゴは吹き飛んで転がりながらすぐに上体を起こし、次に備えている間に俺はマスターモードに切り替える。

 

 

『マスターブースト!』

 

 

「小賢しい奴だ!」

 

 

『オーバースマッシュ!』

 

 

同様に疾走し、今度はランゴにフェイントをかけて通過するだけの行動を繰り返す。時折り肩や足に体を掠めてランゴのシールド展開を煽り、ガヴガブレイドのボタンを押してから威力を高めて投擲する、狙うは目元。目眩しだけじゃなく、嘗て切り裂いたその目を庇うはずだ。案の定、ランゴの片手がそっちに注意をずらして叩き落とした。その隙に接近して加速した分のエネルギーを乗せたオーバーモードの拳を解き放つ。今度はわざと少し距離を取って放つことでランゴに拳圧を浴びせる。それでももろに喰らえば無傷で済むはずがないため、ランゴは残り3枚のシールドを全て消費したのか息切れしながら粉砕されたを見届けていた。

 

 

「赤ガヴ…教えてやろう。俺の絶対防御はあの時確かに壊された……が、時間経過で復活するんだよこいつは」

 

 

「それがどうしたんだ。もう全部壊した」

 

 

「ああ……そうだ…お互いに…」

 

 

既にゴチポッド内のゴチゾウも限界を迎えていた。必殺技の連発と変身の切り替えが普段以上に負担を招き、極め付けはランゴが背中から広げた両翼から音波が発生してゴチポッド内の弱ったゴチゾウを昇天させた。ランゴも策士、万全の状態なら音波を喰らうこともないし、喰らっても支障はなかったはずだから見抜かれていた。空っぽになったゴチポッドに視線を落としながら俺は変身の維持を諦めた。

 

 

「どうする、赤ガヴ。俺もお前もここからが本番だ」

 

 

『アイス!EATアーイス!チュポン……チュポン……』

 

 

「変身!」

 

 

『いや〜あ〜!ブリザードソルベ!ヒエヒエ!』

 

 

ブリザードソルベエゴチゾウをガヴに食べさせ、急いでハンドルを回す。冷気と氷塊が包み、それらを囲うようにガラスのカップが出現する。複数のアイスクリームが氷塊とガラスカップが砕け散るのと同時に分解し、装甲として吸着する。ブリザードソルベフォームに変身し、ランゴの追撃を受け止めるとゴチゾウのブレードを回転して手の甲を舐める。接近した状態で口から極低温の冷気を吹き出して足下を凍らせ、そこを滑り抜けてからランゴの翼をも凍結させる。身動きの取れないランゴの片翼を根元から氷を纏ったガヴガブレイドで切り落とす。

 

 

『カッキーン!アイスイリュージョン!』

 

 

「考えたな、赤ガヴ」

 

 

『デコレーション!』

 

 

ブリザードソルベエゴチゾウのブレードを連続で4回以上回転させ、鋭いアイスクリームをドリルのようにランゴへぶつける。ガヴからブリザードソルベエゴチゾウを抜き取って構えたガヴホイッピアにタッチさせる。巨大な氷状のガヴホイッピアを生成し、大上段に構えてから勢いよく振り下ろす。しかし、ランゴは片腕を後ろへ回して新たに作り出した大剣でそれを受け止めた。全身から溢れ出る熱気で氷塊は融解し、水浸しになった地面から蒸発して乾いた大地に変わる。

 

 

「このままだと溶ける…!」

 

 

『アタリ!』

 

 

新たに装填したゴチゾウで引き当てた運を味方につける。多種多様なゴチゾウが搭乗した複数台のゴチスピーダー、ガヴガブレイドからポッピングミゴチゾウとケーキングゴチゾウが乗り込むスピーダーが発射されたのを皮切りに続々とランゴへ体当たりしていく。ランゴを撹乱、怯ませている間にガヴホイッピアを上空へ投げ飛ばし、再び氷を得たガヴガブレイドでランゴと切り結ぶ。常に熱気を発している状態のランゴに装甲が溶け落ちていくが、ケーキングゴチゾウをスピーダーから手に乗せてガヴに放り投げる。そのまま熱で溶けてきたガヴガブレイドの氷を振り抜くことでランゴの顔面を濡らして視界を奪う。

 

 

『ケーキング!アメイジング!』

 

 

落下してきたガヴホイッピアを手に取り、ケーキングフォームに変身するとクリームを飛ばしてランゴの視界を奪う時間を永らえさせる。その隙に胴体を切り崩し、ブルキャンゴチゾウをガヴホイッピアにタッチする。5台のバギー形態のブルキャンバギーを乗りこなすホイップ兵を繰り出し、ランゴを四方八方から轢いて地面に転がす。ランゴが目元を拭い、視界を確保してから光線を発射したことで4台のブルキャンバギーと5体のホイップ兵が消し去り、煤のついたブルキャンバギーが一台だけ残る。

 

 

『ブシュエルふわふわ〜』

 

 

ブシュエルフォームとなり、巨大な斧を手にしたまま全身を使ってランゴに斬りかかる。ランゴと互角のパワーで火花を散らしながら切り結び、両脚から丸太型のエネルギーを発生させてランゴを打ち上げる。

 

 

『グルキャン!ペロペロ!バクキャン!』

 

 

グルキャンフォームに変身し、更に追い菓子チェンジを利用する。両肩に追加された2門の砲塔から上空のランゴへ円柱形の硬弾で狙い撃ち、爆撃と共に体表にヒビを入れていく。カウンターで大剣を一文字に下ろしたランゴの攻撃にグルキャンフォームの装甲は耐え、拳を打ち返す。

 

 

『チョコダン!パキパキー!チョコドン!』

 

 

チョコダンフォームに変身を続け、二丁拳銃でランゴへ超射撃を行う。ランゴに入った亀裂にチョコが紛れ込み、確実に傷を押し広げていくがランゴの片翼による嵐が俺を吹き飛ばす。

 

 

『ふわマロ!ふわふわ〜まるマロ〜』

 

 

高台に衝突するがふわマロフォームの弾力によって空へ跳ね返る。追い菓子チェンジによって上半身が肥大化し、マシュマロを円柱状に集め体を変形させて回転しながら落下、ランゴを押し潰しながら走行する。マシュマロを全て切り離したランゴは片膝をつきながら折れた大剣を俺の装甲に突き刺していた。それを抜き取って肩で息をする。

 

 

『ザクザクチップス!ザックザク〜!ヒリヒリチップス!』

 

 

ザクザクチップスフォームになると二刀流で手にした刀をすぐに手離し、粉々にする。その破片がランゴを炎の嵐に巻き込み、廃工場まで焼き尽くしながら飛ばしていく。ランゴにも弱点を生み出すことができた。未だ勝機はある。

 

 

『ポッピングミ! ジューシー!』

 

 

火の玉に包まれているランゴは廃工場に撃墜、俺は残されたゴチゾウの数を見越しつつもポッピングミフォームとなってバイク形態のブルキャンバギーに跨り、エンジンを蒸かすと廃工場へ発進させる。風に逆らって駆け抜ける姿から夕影は伸び、共に走る。

 

******

 

一方、なんでも屋「はぴぱれ」にて甘根幸果はパソコンでSNSから情報収集をしていた。「雨に濡れ、意識が戻った」旨の投稿が続々と縦列に並んでいくのに目を通し、ショウマの『わたがし作戦』が成功したことを喜ぶ。

 

 

「仮面ライダー…不思議な力だ」

 

 

井上優ははぴぱれに訪れてショウマ達の吉報に幸果と喜びを共有する。仮面ライダー、彼らは何度も窮地を影から救われ、そして仮面ライダー自身をも支えていた。はぴぱれに残されていたショウマの「おいしいものノート」を偶然発見した優はパラパラとページを捲る。

 

 

「母さん…?」

 

 

「それ…」

 

 

「ショウマくんの奪われた家族ってもしかして…お母さん?」

 

 

「ああ…はい」

 

 

「お菓子の好きなお母さんだったんだね。僕の妹と同じだ…」

 

 

「母さん」のワードがノートに綴られていることに気がつくと優は心のどこかで引っ掛かりを感じざるを得なくなった。互いに家族を奪われた立場、それだけならここまでの因果を強く意識するのは何故かと自問自答を胸中で繰り返す。

 

 

「…お母さんの名前、知ってる?」

 

 

「……ウマショーが帰ってきたら聞いてみてください」

 

 

その質問で急に静観を貫いた幸果を一瞥した優はおいしいものノートを眺めながら視線を落とし、真相に密かに辿り着いた。彼はとにかくショウマの帰りを待ち望む。残された宝物だから。

 

******

 

廃工場に出向いた俺はランゴの火球をブルキャンバギーで避けながら接近し、余波で迫るドラム缶をバギー形態で轢き潰す。火球と後方のドラム缶が引火して誘爆が連鎖すると上空へ持ち上げられた俺は咄嗟にブルキャンバギーをバイクへ変形し、ランゴへと切迫する。そのまま車輪で体当たりした後、乗り捨てて大破したそれを見届けながら「ムニュ」という文字のグミをクッションに跳ね上がってランゴの片翼を逆手に持ったガヴガブレイドで根っこから串刺して地面へ叩きつけてから引き裂く。

 

 

「……ここまで消耗させられるとはな…だが策を弄する暇もないのはお前もだろう」

 

 

「それでも…譲らないよ、兄さん」

 

 

「だろうな…お前は腐ってもストマック家の人間だ。認めてやる、もう奪われるだけの弱かった赤ガヴではないとな」

 

 

意外でしかなかった。あの傍若無人の兄さんが全てを失ってまでまだ俺と再戦したのに、兄さんからしてみれば俺は始末対象でしかなかったはずが、今だけはストマック家の人間として初めて認めた瞬間だったはずだ。外へ飛び出した俺たちはすっかり日が暮れ、真っ暗闇で相対する。

 

 

「ジープもやられただろうな。一族の安寧、そんなものを願ったところでもう遅い」

 

 

「じゃあ、どうして…俺と戦うんだ」

 

 

「わかるだろう、赤ガヴ。意地だ、ストマック家の長男としての意地。お前にだって信念くらいはあるはずだ。だから鬱陶しくも俺たち家族と強い因縁で結ばれた」

 

 

「………確かに、俺には俺の意地も信念もある。俺の居場所…この世界を守り抜く!」

 

 

「俺に残されたのはこの戦いで精算することだ。グラニュートと人間の格の違いを教えてやる!」

 

 

この語り合いでの和解はない。それぞれの立場を守るためのエゴだから。散らばる木箱の中で殴り合いを開始し、木箱に互いを押さえつけて殴打する。俺の体からもグミの装甲が弾けるが、木箱を土台にランゴへ蹴りを直撃させる。木箱自体を蹴り壊され、バランスを崩して地面に突っ伏すると両足でランゴの腹部を蹴飛ばす。今度はランゴから腹部を足で踏み潰され、装甲が減っていく。胸ぐらを摑み、引き剥がしてから互いを殴り飛ばして距離を取る。

 

 

『ポッピングミ!フィニッシュ!』

 

 

最後の力を振り絞って放つ飛び蹴りでランゴを吹き飛ばすつもりだったが、拳と拮抗して力負けしたまま木材を粉々にしながら木屑に埋もれる。ランゴは片手を負傷したのか痛みを確認していたが、余裕はまだあるらしく俺の顔面を何度も殴って遂に俺は変身が解けてしまった。

 

 

「力が持たなかったようだな。これがグラニュートと人間の格の違いだ!」

 

 

「違うのは…変われた俺と兄さんだ!」

 

 

「俺は今まさに奪われて変わった。たとえ全て消し去られようとも俺はお前を倒す」

 

 

「俺にはたくさんある。ストマック家を離れて手に入れたものがたくさん!お前にはないものがたくさん!お前が作ろうとしなかったものが!だから負けない…負けるわけにはいかない!」

 

 

顔面を蹴り飛ばされてグラニュートの力量を思い知らされようとも譲れない。全てを失ったランゴ兄さんと失ってから少しずつ手に入れた俺は違う。スタートは同じでも、ゴールはもう違えることはない。弱々しく拳を打ち付けてもランゴには効かず、剥がされる。

 

 

「ランゴ兄さん…最後にもう一度だけ聞く!どうする?…二度と人間に関わらないか…それとも、この場で俺に倒されるか!」

 

 

「答えは一つ。お前が俺に倒されるんだ!」

 

 

『ポッピングミ!』

 

 

文字通り、《最後の審判》。ランゴの大振りを低姿勢で避けて残された一つだけのゴチゾウがガヴに飛び込み、食べられる。しかし、変身することなく俺の頭の中でかつての記憶と失いたくない楽しい感情が湧き上がり、ゴチゾウに注ぎ込まれると虹色に発光し、変化する。

 

 

「変身!」

 

 

『アルティメット!ポッピングミ!ジューシー!』

 

 

ポッピングミフォームに虹色のグラデーションが加わり、装甲に光沢が増す。複眼には主体となった黄色に光が加わるアルティメットポッピングミフォームに変身するとランゴとの打撃の応酬が始まり、攻撃を受けても装甲がそれを弾いてダメージを吸収し、ランゴへ打ち返す拳に込められたエネルギーで突き飛ばす。

 

 

『CHARGE ME CHARGE ME!』

 

 

「俺とお前、最後の果し合いだ!赤ガヴ!」

 

 

『CHARGE ME CHARGE ME!』

 

 

「終わりだ、ランゴ!」

 

 

『CHARGE ME CHARGE ME!』

 

 

ガヴのハンドルを回しながらランゴと取っ組み合いになって殴り合い、怯むことなく拳でランゴの顎を打ち飛ばす。打たれ、打つほど連打は加速してランゴは遂に蹌踉めくが赤黒いエネルギーを込めた拳を勢いよく突き出してくる。

 

 

「はあッ!!」

 

 

『アルティメット!ポッピングミ!フィニッシュ!』

 

 

ランゴの拳を片腕で受け止め、反動が体の強度を上げる。ランゴの胸目掛けて蹴りが炸裂し、エネルギーが内部から暴発するとランゴの肉体は徐々に崩れ落ちながら仰向けに倒れ込み、爆発した。まだ息があるランゴの肉体が白い羽へと変わりつつある様を目に焼き付け、変身が解けるとゴチゾウも天に召される。

 

 

「……赤ガヴ…お前は…強かった……」

 

 

「兄さんこそ強かったよ」

 

 

「勝ったのは…お前だ」

 

 

「……さよなら兄さん」

 

 

最後まで怪人を貫いて生き絶え、白い羽として生まれ変わる強敵、ランゴ・ストマックに別れを告げて初めてこの世界で感動したお菓子、グミの個包装を手向けとして置いてその場を後にした。長きに亘るストマック家との因縁は今、決着した。

 

******

 

三ヶ月後、はぴぱれで俺は様々なお菓子に挑戦しては味見を繰り返していた。幸果さんにも味を見てもらい、喜んでもらえた。食べるたびに新しいゴチゾウが増える中、絆斗が訪れる。

 

 

「あっ、ハンティ」

 

 

「悪い。今日も場所貸してくんねえ?」

 

 

「いいけど…そろそろお金取るよ?」

 

 

「そこは労働で払わせてくれ」

 

 

「やった!絆斗も一緒にバイトするんだ」

 

 

「ずっとじゃねえぞ!単発だよ、単発」

 

 

それでも幸果さんや絆斗と仕事ができるのは楽しいからこれからの楽しみがまた増えた。ラキアも居たらきっと…もっと楽しかっただろうな。それでも俺は前を向き、二人に出かけることを伝えてからお菓子を持って扉を開けた。

 

 

「最近…あいつしょっちゅうお菓子作ってるな」

 

 

「闇菓子ならぬ光菓子、作りたいんだって」

 

 

「光菓子?」

 

 

「あっちの世界に帰れなくなったグラニュートもきっとたくさんいるでしょ?グラニュートと人間、どっちが食べても美味しくて幸せになれるお菓子を作って配りたいんだって」

 

 

その言葉に絆斗は思うところがあるのか俯き、寒風が吹き付ける中取り残されるリゼルの姿を頭に浮かべる。冗談混じりにラキアが余計な真似をしたからだと口にすると人間の世界に残ったぷるゼリーゴチゾウにどつかれ、咄嗟に謝る。

 

 

「今日もダメか…大丈夫だよ。きっとラキアはあっちの世界でも元気にやってる」

 

 

毎日外の扉を確認してはグラニュートの世界へ繋がることができないかを確認しているショウマはどっプリンゴチゾウを安心させるために呼びかけた。

 

******

 

一方、グラニュート界では平和が訪れていた。ベンチで新聞を読み通すラキア・アマルガはグラニュートの姿で独りごつ。しかし、彼にはプリンテゴチゾウという仲間がいる。

 

 

「新しい大統領が決まったか。グラニュートがどれだけ消えようが世界は回るんだよな。大丈夫だ、お前が残ってくれたおかげで寂しくない」

 

******

 

扉を確認した後に優さんのお店にいつもの如く足を運んだ俺は自信作のお菓子を食べてもらったが、以前作ったお菓子の方が好みだと正直に言われてしまった。光菓子への道は遠く険しいものだ。

 

 

「みんなが好きなお菓子って難しいな。みちるさんはどんなのが好きかな?」

 

 

「どうだろうねぇ…ショウマくんが作ったものだったら、なんでも美味しいって言うんじゃないかな?」

 

 

「えっ?」

 

 

「君がとても一生懸命だから」

 

 

「そっか…でもやっぱり俺、たくさんの人が幸せになれるお菓子にしたいな!」

 

 

優さんが持っていた手帳から少しだけ見えた気がした写真は懐かしさを覚えたが、きっと気のせいだと思う。終着点は誰もが幸せになれるおいしい世界、俺や兄さん、母さんのような人を増やさないためにも光菓子を完成させる。脳裏に焼きついた兄さんや母さんの今際の際を思い起こし、目標を掲げ直す。

 

 

「ありがとう、優さん。また来るね!」

 

 

「うん、待ってる。じゃあ!気をつけて!」

 

 

「はーい!」

 

 

意気込んで全力で走り出したのが悪かったのか通り過がりの男の人とぶつかってお互いに尻餅をついてしまった。一緒に謝りながら誇りを払うと男の人は見覚えのあるものを差し出してきた。

 

 

「落としましたよ。はい」

 

 

「ありがとう。えっ…ゴチゾウ?知らない子だ…」

 

 

『ネクストライダー!』

 

 

謎のゴチゾウを譲り受けたのも束の間、男の人の頭上に円盤状の物体…UFOが出現して発せられた落雷に打たれていた。普通は無事じゃ済まなそうだけど、フェンスに倒れ込みながら息絶え絶えで辛うじて生きていた。

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

 

「人を助けるとこういう目に遭うんだ」

 

 

「どういうこと?」

 

 

「でも大丈夫、慣れてるから。後は任せて、夢は…俺が守る」

 

 

「わかった。じゃあ、はい。これあげるね!」

 

 

最後まで意味はわからなかった。彼とは何か存在が近いような気もしたけど、何故か安心してその後を託せるような気がして今日の試作品のお菓子をあげると喜んだ彼の小さくなっていく背中を見守ることにした。

 

******

 

辛木田絆斗の戦いはまだ終わらない。闇菓子事件の一連の騒動を記事にするまでは終われない。そして元バイトのグラニュートから「助けて下さい」とメールが届いた。ストマック社が失墜したことで、身の振り方がわからないらしい。ショウマは直接会うことにした。

 

 

「これ、食べてくれるよね。目指せ、幸せのお菓子屋さん!」

 

 

ヘルメットを被り、バイクのグルキャンバギーに跨って路頭に迷ったグラニュートの元へ発進させる。光菓子の試作品を食べて気持ちが落ち着いてくれるといいなと淡い期待を持つ。分け合えば幸せだって膨らむ、そうでしょ…母さん、兄さん。


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