復讐の始まりは“怒り”と共に~怯える事なく生きるために、俺は大罪を継承し最強になる~ 作:異世界叙事詩専門店【Geist】
何とか街に入れた。
最初に行くべきは冒険者ギルドだな。
ついでにギルドで夕食も摂れるしな。
しかし、少し懐かしいな。
昔ここに来た時の《
あの頃は純粋に冒険を楽しんでいたのだが。
「ガルド、ギルドの場所は?」
「中央広場付近です。この道を真っ直ぐ行ったら出れますよ」
流石に5年程前に訪れただけのギルドの場所は覚えていない。
だが、中央広場は少し覚えている。
変わっていないのだろうか。
明日、レアと散策しても良いかもしれないな。
数分歩き、大きな広場へと出る。
夜だというのに、人で賑わっている。
照明用魔道具がそこかしこに設置されており、昼かと勘違いしてしまう程には明るい。
「ギルドは……ああ、あれか」
ここまで来たら思い出した。
それに、ギルドの竜の紋章が見える。
大都市であるのに、100メートル四方を優に超える程大きい。
それほどまでに〈ヴァルグレイア〉において冒険者ギルドが賑わっているという事だろう。
「王都と同じくらいでけえな。この感じは久しぶりだ」
「カイさんって王都から来た冒険者だったんですか……。そりゃあ強いわけですね」
「ああ、まあ、な」
俺単体の冒険者ランクはCなので少し誤魔化して答える。
そういえばレアのランクはどうなのだろうか。
「なあ、レア。さっきのカード見せてくれねえか?」
「良いけど、別に特に何も書いてないよ?」
スッと取り出して渡してくれた。
自分のと見比べてみるが、文字の形式や書かれている事項などが少し異なっている。
レアのランクは……Bか。
まあ、控えめに登録したんだろうな。
「ありがとう。そうだ、ついでに証書更新するか? そうしたら俺とパーティも組めるだろうし」
「うん。カイは絶対誰にも渡さないから」
「はは、別にんな事しなくてもどこにも行かねえよ」
恐らく固定の絆の事だろう。
確か、昔は
何故かは知らないが、色々と制度が変わる時に一緒に変わったらしい。
「知ってる。でも、誰にもつけ入る隙を与えないから」
そんなところも可愛いなと頭を撫でつつ、ギルドの中へ入っていく。
《宵哭きの魔獣 ノクスフェル》の依頼を剥がしてから総合受付へ向かう。
「すまない、この依頼なんだが、既に達成してしまったから取り下げは出来るか?」
「承知しました。依頼主はガルド様となっていますが……」
「俺がガルドだ。これが〈グレイヴ村〉の長の証と、冒険者証書だ」
そう言いながら首にかけたアクセサリーと冒険者証書を取り出して渡す。
村は基本的に近くの大都市に管理が任されており、大都市の管理長が村の長を決めている。
冒険者証書は身分証として有用なので、基本的に成人すると取る人が多い。
「……はい、確認が取れました。ガルド様で間違いないですね。では、撤回処理しておきますので、報告ありがとうございました」
「あ、すまん。もう一つ頼んでも良いか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「こいつの証書を更新したいんだが、今からでも出来るか?」
レアが無言で受付に証書を置く。
係員は少し驚いたようにするも、すぐに平静を取り戻して返答する。
「承知しました。えーっと……これは、57年前に登録されたものですね。お名前はレア様で間違いないですか?」
「うん。すぐ出来るの?」
「はい。数分お待ち頂ければ可能です。ただ、ここまで古いものだと更新料が少し高くなってしまいますが、大丈夫でしょうか?」
「ああ、平気だ。幾らだ?」
「金貨1枚です。では、更新手続きをしてきますので、少々お待ちください」
別に金貨1枚くらいなら払える。
ただ、所持金が少なくなってきたな。
何かしらを売って金にした方が良いかもしれない。
そういう風に考えていると、レアが少し申し訳なさそうにルクスに話しかける。
「私、一応人の国のお金持ってるよ……? 昔のだから、今も使えるか分かんないけど……」
と、不意に袋を取り出して渡して来た。
「重! どんだけ入ってんだこれ……!?」
軽く受け取ろうとしたら身体が持ってかれた。
レアの顔を見ると頷いていたので開けても良いのだろう。
紐を解いて開けると、そこには金貨が数十枚どころではない量が入っていた。
あまりの事に思考が止まる。
「は……? これ、全部金貨かよ……。しかも、ちゃんと旧制のやつだ……」
たまに見るやつと全く同じだ。
旧制の金貨は今も効力を失っていないため、全部使える。
こんな金額は、パーティ共有のでしか見た事が無い……。
「んー、まあ、これはお前の金だからお前が好きに使った方が良い」
流石にこの額を受け取る気にはなれない。
しかし、何故これだけの金貨を持っていたのだろうか。
「でも、カイは私のものだから、私はカイのものでしょ? つまりそれは私のものであり、カイのものだよ。だから、カイにあげる」
金貨袋など興味なさげにそう言い放つレア。
それでもカイは全てを受け取りはしなかった。
「いや、全部は要らない。そうだな……。10枚だけ貰っておく。後は返すから、自分で持っててくれ」
確かに金は必要ではあるが……。
だが、金を工面する必要が無くなったというのは大きい。
金貨10枚もあれば、半年は何もしなくても良い程である。
「むぅ……。分かった。じゃあ、今度何かあげるね」
「そこまでして金を使わなくて良い……。まあ、自分の好きな様に使えれば、それで良いが……」
そうこうしている内に更新が終わったようで、係員が二枚のカードを持ってくる。
「こちら旧制の証書はお返しいたします。こちらが現行の証書となっています」
「ありがと。じゃあ、カイとパーティ組みたいんだけど、出来る?」
「はい、お二人の証書を頂いてもよろしいですか?」
レアと俺の分の証書を渡す。
カードを重ね合わせ、呪文を唱える。
カードが光り、俺とレアの間で光が交差し、纏わり、カードへ戻っていく。
「完了いたしました。要件は以上でしょうか?」
「ああ、色々と手間かけてすまなかったな。また頼む」
「またのご利用をお待ちしております」
ギルドでやる事は終わったので、夕食にする。
「ガルド、明日の昼に〈グレイヴ村〉へ向かう。お前はこの後どうするんだ?」
「俺は一度村に戻ります。道案内が必要でしたら明日も来ますが、どうしますか?」
「いや、大丈夫だ。後、一人で二頭持って帰れるか?」
「出来ますが……。不要なんですか?」
「ああ。走った方が速いからな」
「ああ、成程……。分かりました。では、また明日」
そう言って一礼し、ギルドを出ていく。
「んじゃ、レア。飯にするぞ」
「うん。こういうところで食べるの初めてだから、ちょっと楽しみ」
「普段何食って生きてたんだよ……」
あれだけ金があるのに、街で飯を食べた事無いとかどんな暮らしだったんだ……。
「森にある実とか、魔物の肉とか。私、
高位森精……!?
王国主催の祝賀会に招かれた時くらいしか見た事が無いぞ……。
「お前……そんな高貴な人だったんだな……。ぞんざいに扱って、なんかすまん」
「そうだよ? でも、私は闇魔法の禁忌に触れて幽閉された。そして《
成程、そりゃあれだけの金額を持ってるわけだ。
しかし、闇魔法も使えたのか。
禁忌に触れる程とは……。
実は結構頭が良いのかもしれない。
「レアは、俺なんかより大変だったんだろうな」
「そんな事無いよ。カイだって、同じだけの苦しみを味わってる。そんな貴方だからこそ、私は貴方を手に入れたかったの」
先日にも聞いたような言葉。
俺も、そんなレアだから信じる事が出来た。
レアだけが、俺の信用出来る人。
「だから、カイが私を幸せにして? 私もカイを幸せにするから」
共依存に近しい言葉。
それは、今の俺にとっては望ましいもの。
「……当たり前だ。二人で、この世界を平和に過ごそう」
「うん。じゃあ、ご飯食べよ?」
話が落ち着いたので夕食を摂る。
初めて見る料理に、レアが色々と悩んでいるのを微笑ましく眺めていた。
ちなみに、さっさと寝たかったが無理だった。