復讐の始まりは“怒り”と共に~怯える事なく生きるために、俺は大罪を継承し最強になる~ 作:異世界叙事詩専門店【Geist】
陽が昇り、時刻は昼。
朝食兼昼食を摂ったが、まだ少し眠い。
仕方ないが門を出て《
レアを抱きかかえ、〈グレイヴ村〉へと向かう。
出来るだけ人目の無い道を通るため遠回りになってしまうが、それでも数分で着くだろう。
案の定すぐ着いた。
レアを丁重に降ろし、警備の者にガルドの家の場所を尋ねようとするが、突然椅子から立ち上がった。
「カイ様、お待ちしておりました! どうぞ中へお入りください! この先真っ直ぐにガルド様の家があります」
「お、おう。分かった。ありがとう」
吃驚したな。
そういえば、昨日俺の顔を見ているのか。
まあ、俺は覚えていないが。
「流石村の救世主、だね」
言われた通り歩いているとレアが話しかけてくる。
「そんな高尚な事をした覚えは無い。それに、お前もだぞ」
「とどめを刺したのはカイでしょ。私はその手助けをしただけだから」
「お前がいなければ俺は死んでたけどな。俺にはレアが必要だ」
「ふふ、そうだよ。私にもっと執着して?」
まあ、俺はもうレアを手放せないし、手放したくも無いが。
そんな風に話している内にもうガルドの家らしきものの前に着く。
周りの家が長屋な中、この家だけ二階建てなので恐らく合っている。
「おーい、ガルドー。来たぞー」
ドアをガンガンと叩き、ガルドを呼ぶ。
昨日のリプレイかの様に、ドタバタと音がしながらガルドが出てくる。
「カイさん、ようこそ〈グレイヴ村〉へ! 皆心待ちにしていましたよ!」
「おう、そうか。で、例の祀り物とやらはどこだ?」
「この家の裏の広場に祭壇にあります。ご案内しますよ」
さて、《大罪》に関する情報はどんなもんだろうか。
石と紙にそんな重大な情報を残すとは思えないが。
家の裏に回ると、確かに広場の中心に祭壇があった。
こじんまりとしているが、確かに何かが祀られている。
本当にこれ持って行って良いのか?
少し忍びないな。
「どうぞ、こちらが祀り物です。お受け取り下さい」
「ありがとう。だが、少し申し訳ないな」
「いえいえ、誰もこんな物気にしていませんので。それに、俺の一族にずっと言われ続けている事なんですが、いつかこれに触れ、何かを感じる者がいれば譲渡しろと」
「そうか。であれば遠慮せず貰う事にしよう」
そう言いながら祀り物の紙に手を触れた瞬間、《大罪》の共鳴が始まり、ルクスとレアの脳内に女性の声が走る。
『――《大罪》の継承者よ。汝らに悪意が降りかかる事の無いよう、新たな力を授けます。願わくば、世界を正しき道へと導く者であれ』
新たな力?
特に何も感じて無いが。
「レア、なんか変わったか?」
「ううん。何も。もしかしたら、そっちの石の方じゃない?」
確かになと思い石の方に触れると、またも《大罪》の共鳴が始まった。
今度は男性の声、それも怒剣と同じ声だった。
『――《大罪》の継承者よ。汝らが善の道へと進む時、世界は汝らの味方となるだろう。これは、悪には行使出来ぬ力である』
石から黒や紫、赤、緑などの光が溢れ出し、ルクスとレアの身体へと吸い込まれていく。
刹那――
ゴゥンと辺りに魔力が広まり、収束する。
どうやら《
今ここに、《憤怒》と《嫉妬》が真なる共同体へと成った。
「おお……力が溢れるようだ……」
「凄い……。まるで、最初からこれが想定されていたみたい……」
ガルドは突然の事に驚くが、まあそんな事もあるかと無理矢理納得した。
祀り物を送る相手は間違っていなかったと、そう強く感じた。
「やはり、貴方達は“選ばれし者”だったんですね……」
「ガルド、何か知っているのか?」
一般人が選ばれし者について知っているはずがない。
まだ情報があるならば聞いておいた方が良いだろう。
「はい、少しだけですが。口伝でのみ継がれている秘匿情報に、“選ばれし者、いずれ来たる異常を鎮める者なり。正なる英雄は、誠なる者にあり”というものがあります」
んー、よく分からないな。
レアの方を見てみるが、レアもそこまでピンと来てないようだ。
いずれ来たる異常……《大罪》が何かを引き起こすのだろうか?
「俺達は、貴方達こそが正なる英雄であると確信しています。我ら〈グレイヴ村〉の民は、いつまでも貴方達の味方である事を誓います」
「お、おう……そうか」
そう言われてもな……。
俺らには全く分からん。
だが、味方が増えるのであれば構わない。
まあ、頼る事は無いだろうが。
「それじゃあ、用件は済んだから俺達は〈ヴァルグレイア〉に戻る」
「はい。我々はいつでも、貴方達の帰還をお待ちしております」
いつの間にか広場に集まっていた村民全員が礼をしている。
どことなく気まずいのでさっさと帰る事にしよう。
「よし、レア。行くぞ」
「うん。また、仲間が増えたね」
完全に信用はしてないがな。
俺はただ魔物を倒しただけ。
それだけで何が変わるというのだろう。
とりあえず《
「帰ったら準備も兼ねて店巡ってみよう。何か面白いものがあるかもしれないしな」
「ん。あ、ルクスに服選んでほしいな」
「えー。俺にそこまでセンスは無いんだが……、文句は言うなよ」
「言わないよ。ルクスが選んでくれたものなら、何でも嬉しいもん」
中々嬉しい事言ってくれるじゃないか。
ならば俺の脳をフル稼働させて最善を選ぼう。
またも数分程で帰って来た。
しかし馬の数倍で走れるとは、何とも人離れしたものだな。
しかも、先程よりも余裕が生まれている。
あの石から得た新たな力が何なのかは分からないが、魔力効率や身体能力など諸々の力が強化されたのは分かる。
ちなみにあの紙と石は魔力反応を失ったので、持っておく必要も無いかと置いて来た。
「呉服屋はどこにあるんだ? 確か中央広場に地図があったはずだから、そっち行ってみるか」
「商業都市っていうくらいだから、どんな服があるか楽しみ」
ご機嫌に隣を歩くレアについ見惚れてしまう。
そのせいで前が見えておらず、人にぶつかってしまった。
「あ、やべ。すまん……ん? お前、まさか――!」
その姿には、非常に見覚えがあった。