「戦隊長(ハプトストルムフューラー)見てください!」
歯磨きの後にゆすいだ口に含んでいたものを鏡の壊れた洗面所で吐き終えたタイミグで外に隊員から声がかかったので金髪の戦隊長は洗面所の窓から何が起きたのかと顔を出してみるとグラン・ミュールの方から来たと思われる共和国軍のヘリコプターが下に何かを吊るしながらホバリングしているではないか。
2階から降りて最寄りの出口へと向かうとスキンヘッドで副隊長のハヤテと鉢会う。
「ユルゲン、お前もあのヘリを見たのか?」
「あんな荷物を下に吊るしていたら誰だって気付くわ。とにかく様子を見に行くぞ。」
戦隊長ことユルゲンはハヤテと共に戦隊が基地としていた古い小学校から出て行って荷物を抱えた大型ヘリがホバリングしていた運動場にたどり着く途中でヘリは宙づりにしていた荷物を切り離して地面にドスンと落としていくと何も言わずに逃げる様にグラン・ミュールの方角へと戻っていった。その様子をユルゲンとハヤテの2人は呆れた顔で見ていた。
共和国の補給科はいつもこうだ。航空機で必要な物資を輸送したら何も言わずに空中投下してさっさとその場から去るか、降りて来たかと思うとこちらをいちいち「豚」よばわりして来ないと気が済まないらしい。しかし今回は一点違う事があった。実は今日は物資補充の日ではなかったのだ。それにも関わらず、落とされた荷物の大きな箱には「砲弾」、「車両用燃料」と「加給品」と大きく書かれてあった。戦隊の皆が好奇心と猜疑心の入り混じった顔でその補給物資を見つめていた。
そのままじっとしていても埒があかないのでハヤテはユルゲンに促して彼に命令を出す様に肩を軽く叩いた。気づいたユルゲンは即座に戦隊員に命令を出した。
「各員、警戒して慎重に箱を開けろ。不良品が入っているかもしれん」
補給物資の周りに集まっていた隊員達はユルゲンの命令に従ってブラスチックでできた補給物資用の箱を警戒しながらゆっくりと開けていった。すると隊員のデ・シルバという少年が大声でユルゲンに報告した。
「戦隊長(ハプトストルムフューラー)、補給物資は砲弾と燃料に・・・どういうわけか冷凍保存されたシュークリームです!」
「砲弾はゆっくり取り出して破損や凹みの様な欠陥がないか確認!燃料も一応入っているかチェックしろ!」
戦隊員がユルゲンの命令を受けて砲弾を1つずつ取り出して砲弾に欠陥がないかの確認をしていく。その様子をユルゲンとハヤテの2人は眺めつつ会話をしていた。
「ユルゲンどう思うよ、この急な補給?俺たちの方から補給を申請しても殆どなかったってのに。」
「まぁ嫌な予感はするな。頼んでもいないシュークリームまで用意するとは何か無茶苦茶な突撃命令が下されるとしか思えないよ、副隊長。」
「パラレイド、アクティベート、同調対象、「第5防衛戦隊」のプロセッサー!」
一瞬誰かの声が聞こえたかと思うといつの間にかユルゲン達戦隊員が耳にくっつけられた通信装置のパラレイドが同調モードになっているではないか。驚く暇もなく澄んだ女の声が語り掛ける様に話始める。
「第1戦区第5防衛戦隊「ペガサス」の皆様ですね?私はハンドラー1のミリーゼ大尉です。戦隊長のシャプロン・ルージュはいますか?」
ミリーゼとはもしや鮮血の女王(ブラッディレジーナ)という妙なあだ名を付けられたあの女のハンドラーの事かと隊員達に動揺が走る中、ユルゲンは取り乱す事なくデバイス越しに返答した。
「ハンドラー1へ、こちらシャプロン・ルージュ。指揮権は本来ハンドラー5にある筈だが何があったか確認して構わないか?」
「ハンドラー5のデバイスは故障した為、臨時に私が執る事になりました。」
これは嘘だろうとユルゲンも話を聞いていたハヤテも勘づいていた。防衛戦隊の管制を行うハンドラーは大体が自分たちを豚あつかいして無理やり突撃させるサディストか、やる気があっても稚拙な命令しか出せない者ばかりのいわば無能な将校の左遷先と言って差し支えないポストだった。尤も正直ハンドラーが誰に変わろうと戦隊の皆にとってはどうでも良い話なのでユルゲンはそのままデバイス越しのハンドラーと会話を続けた。
「了解した、ハンドラー1。今回はどんな作戦だ?」
「時間がないので端的に言います。私の指揮下の第1戦隊が昨夜からおよそ80体のレギオンの猛攻にさらされています。場所はそこから300km北で貴方達ペガサス戦隊が現在最も近い為、早速救援に向かってください。」