第5戦隊ダス・アイザーン レーナ編   作:生値命

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第4話 銃殺刑 後編

悲鳴をあげているパイロットの男など意にも介さずユルゲンは横たわっていた補給科の女の死体に唾を吐いてそう言い放った。直後にシデンがユルゲンのつなぎ服の胸倉を強く掴む。ユルゲンには彼女が怒っているのが顔からハッキリと分かる。

 

「何て事をしたのです、マイヤー大尉!貴方という人は・・・!」

 

パラレイド越しに伝わるレーナの声には怒り、嫌悪そして何より困惑の感情が入り混じっていた事がユルゲンには理解できた。ユルゲンは淡々とレーナに答えた。

 

「何のことはない。こいつらは戦友の死を侮辱した。だから処刑しただけの事だ。」

 

「だからっていきなり殺す事は無いだろ!アンタ、イカれているのか!?」

 

胸倉をつかんだままシデンはユルゲンに怒声を浴びせる。そんなシデンをユルゲンが子供を見る様などこか呆れた様に見つめている間にハヤテが建物の中へと入ると横たわっていた補給科の女の死体と今にも殴りそうな勢いでユルゲンの胸倉をつかんでいたシデンの姿があった。不味い、とでも言いたげな深刻な顔つきになってハヤテはユルゲンを問いただした。

 

「ユルゲン、お前が撃ったのか!?」

 

「戦死した戦友を侮辱したら最悪銃殺刑だ。うちの戦隊ではそういう掟だろう?」

 

「違います!」

 

ユルゲンとハヤテの会話にレーナが間に挟み込んだ。さっさと知覚同調を切らなかった事を後悔しつつもユルゲンはレーナの言いたい事に耳を傾けた。

 

「マイヤー大尉、貴方のやった事は間違っている。故意の射殺という重大な軍紀違反で貴方を軍法会議にかけます。理解できましたか?」

 

「レーナのいう事は分かるよな?大人しくお縄につけよ、この殺人野郎。」

 

「プッ。アハハハハハ!」

 

平静を少し取り戻したレーナがユルゲンを軍法会議にかけるというとユルゲンは突如笑い始めた。シデンも、パラレイド越しのレーナも何故ユルゲンが笑い出したのか分からず困惑していた。

 

「この野郎!何が可笑しい!」

 

「いやイーダ、可笑しいだろ?そもそもミリーゼ殿はどうやって俺を軍法会議にかけるつもりなんだ?俺をグラン・ミュールにでも移送するか?そもそも俺達エイティシックスにはまともな軍籍どころか基本的人権もないんだ。・・・都合のいい時だけまとも人間扱いしやがって虫唾が走るんだよ、後方の豚(エタッペンシュヴァイン)が。」

 

そう言われてレーナもシデンも言葉を返す事が出来なかった。2人の目にはユルゲンの行った補給科の女への射殺は軍紀違反どころか許されざる犯罪と定義できる行為だった。しかしエイティシックスと定義された非白色(コロラータ)種の人間が共和国では人権を剥奪されている事もまた事実だった。レーナもシデンもユルゲンの吐いた事に全く納得はしていなかった。しかし人権を剥奪した癖に軍法会議の時だけ正規の軍人扱いするなというユルゲンの理論は理解する所はあった。だがここで安易に認めてしまってはならないと考えたレーナはユルゲンに対して苦しく言葉を返す。

 

「それでも・・・それでも抵抗できない人間を射殺した貴方の行為は間違っています。貴方には公正な裁きを下します。」

 

「裁きを下します、か。じゃあ目の前にいる手下のイーダで俺を拘束するか、処刑するか?よく見ればこの女も拳銃をもっているからな。」

 

シデンを使って自分を裁くか?というユルゲンの問いにレーナははっきり「そのつもりです。」と答えたのでユルゲンは何処か複雑そうな顔で自分を拘束しようとするシデンの顔を見つめているとカチッと拳銃の撃鉄を起こす音が聞こえた。ハヤテがシデン目掛けてその拳銃を向けていたのだ。

 

「うちの戦隊長を拘束するつもりなら俺はアンタを撃つぞ、イーダ!それは困るよな、ミリーゼ大尉!」

 

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