拳銃をもつその両手は震えていたが引き金に指をかけており、逆にいつ発砲されてもおかしくない状況であった為にシデンは舌打ちしながらユルゲンの拘束を諦めてほかの仲間と共に横たわっていた補給科の女の遺体をボディーバッグにいれると怯えていた補給科のパイロットの男を連れてジャガーノートに乗ってその場からさっさと立ち去ってしまった。立ち去っていく第1戦隊の後ろ姿を見ているとレーナの声がユルゲンには聞こえた。
「マイヤー大尉、今回の件では貴方に失望しました。私たち共和国が貴方達に行っている事が非人道的なのは承知です。それでも貴方のやった事は間違っています。」
「失望したのはこっちだよ、ミリーゼ。アンタは偉そうに振舞っているが肝心な事は殆ど手下のエイティシックスに任せきりじゃないか。そんなに俺を裁きたいなら野戦指揮官らしくちゃんとここまで来て俺を拘束なり銃殺なりしたらどうだ?」
ユルゲンの冷たい言葉にレーナはただ歯ぎしりするしかなかった。前のスピアヘッド戦隊の少年に自分達を人間扱いしていない、名前でちゃんと読んでくれない事を指摘された一件でレーナは己を正そうと部下のエイティシックス達を出来るだけ死なせず、彼等の本当の名を聞き、軍紀に違反してまで迎撃砲の無断使用や今回のユルゲン達の指揮をする等手を尽くしてきたつもりだったがまだ足りないというのか、とレーナは苦悩する。
「出来れば・・・出来れば私も貴方達と一緒に戦いたかった。私はかつて命を救われた事があります。エイティシックスとして戦わされながらも私に優しく接してくれた眼鏡の人でした・・・。私が将校になったのはその少しでもその方の恩義に報いたいから。だからこれ以上私を・・・」
悲しめないでほしい、失望させないでほしい。と言いたいところでレーナは口をつぐんだ。しかし何を言いたいかはユルゲンにも伝わり、彼もこれまで硬かった口調を少し和らげてレーナに答えた。
「俺達の本当の家族を、父さんと母さんを返してくれよ・・・。そしたらこんな事やめてやるよ。」
嘆願するようなユルゲンの物言いにレーナはハッと気づいた。彼等エイティシックスは戦場を除いてしまえば収容所ではほぼ絶滅といっていい状態だった。ユルゲンだけではない、恐らく部下のシデンももう家族がいない事にレーナは心を痛めて何も言葉を返せなかった。
ユルゲンは最後にそれだけいうとレーナとの同調を完全に切って第5戦隊の隊員に帰還命令を出した。ジャガーノートのエンジンを始動させて死んだ戦友の遺体を運びつつ、自分達の基地へと帰っていく。行軍中にダス・アイザーン戦隊がジャガーノートの共和国の紋章を上から塗りつぶして自分達で描いた白い髑髏の部隊章が夕焼けの光で僅かに光っていた。
ダス・アイザーン戦隊がレーナと共闘する話はこれにて終了です。ここまでお読み頂いてありがとうございます。