夏休みに帰省したひかげが駄菓子屋で怪しげな飴を口にして、身体が縮んじゃう話です。
あとこのみ姉に可愛がられる

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これだ!これだわ!



怪しげなお菓子によってひか姉の身体が縮んじゃう話

 

 ある夏の日のこと

 

「あー……何もやる気起きねぇ…」

 

 誰もが羨むような都会ガールこと私宮内ひかげは、現在長期休みを利用して実家に帰省し、田舎の空気を満喫していた。都会の喧騒に疲れ切った私には休息が必要なのだよ。

 まあ、やることなさすぎて時間を持て余してる感があるけど、それはそれで贅沢な感じがしていいんだよねぇ。

 

 しかし、家でゴロゴロしておくだけでは流石に飽きがくる。暇を潰そうにも、私の家のネット回線は貧弱すぎて、短めの動画一本でさえまともに視聴できない。

 

 おまけに私のスマホは回線も非常に制限されているため、モバイル通信を起動することすら憚られる。おかげで帰省してからは猫を集めるゲームしかプレイしていない。猫缶補充しなきゃな……。

 

 その内完全にやることがなくなった私は、夏海の家に遊びに行くことにした。あいつもどうせ宿題やってないだろし、暇だろ多分。あ、そうだ。この前行った遠足の写真見せてやろ。

 ここの学校には遠足=田植えとかいう狂った価値観があったが、今振り返ってみるとそれがいかに異常だったか気付かされる。

 

 

 ピンポーン

 

「おーい、夏海ー」

 

 越谷家に到着したので早速チャイムを鳴らす。しばらく待ってみたが、ドアが開く気配はなく、中に人がいるような気配もない。

 

「おーい!夏海ー!小鞠ー!」

 

 ダメだ。留守っぽい。せっかく歩いてきたのにこれじゃ無駄足だ。事前に電話しときゃよかったかな……。

 

「おーい、このみー。……このみもいないのか……」

 

 流れるように隣のこのみの家にも向かったが、同じくこちらも留守のようだ。まさかあいつら私を置いてどこか遊びに行ってるんじゃないだろうな。

 私だけ除け者にされるのは悔しいので、あとでこのみに聞いてお土産でもねだっておこう。

 

 しかし夏海もこのみもいないとなると、いよいよやることがなくなってしまった。だからといって課題をする気もさらさらない。

 そこで私が導き出した結論は……

 

「…うし、駄菓子屋行こ」

 

 ワンチャン駄菓子屋にあいつらがいるかもしれないし、まあいなかったらいなかったで駄菓子屋の部屋でテレビでも見よう。そう考えて私は駄菓子屋へと足を運んだ。

 

 

「……ここも誰もいねえのかよ!」

 

 夏海達はおろか駄菓子屋まで留守だった。本当に私以外のみんなで遊びに行ってるんじゃないだろうな。

 というか、盗られるものないからって店開けたままにすんなよ駄菓子屋……。

 

 はーあ。結局無駄足だったか。これなら家でダラダラしてた方が良かったよまったくー。

 取り敢えず腹いせに、駄菓子でも買って家でヤケ食いしてやることにする。

 

「私が小学生の時から本当にラインナップ変わってないなここ……」

 

 適当な駄菓子を目に入った順に手に取っていく。価格設定が昔のままなのはプラスポイントだ。

 

「まあこんなもんかな……ん?」

 

 財布を開いてレジに向かう際、気になるパッケージが目に入った。

 

「ベビーキャンディ……なんだこれ」

 

 気になって手に取ってみる。説明らしきものは記載されてないが、パッケージに白いキャンディのイメージ画像があることから、ミルキー的なあれだろう。数年前はこんなお菓子はなかったはず。

 私はこの妙にレトロで可愛いフォントのお菓子に惹かれていた。まあせっかく手に取ったんだしこれもそのまま買ってしまおう。ちょっと味も気になるし。

 そのまま購入分の代金をレジに置き、私は店を後にする。

 

「あー……歩くのだりぃー」

 

 夏休みだよ夏休み。……くっそ、こんな暑い日に外に出るんじゃなかった。帰ったらクーラーガンガンにつけてやる。

 気分転換といってはなんだが、先程買った駄菓子でも食べて気を紛らわせようか。ガサガサと袋の中を漁って適当にお菓子を取り出す。

 

「ん……」

 

 手に握っていたのは、先程から気になっていた「ベビーキャンディ」

 新しいお菓子が入荷したと言って、れんげにでもあげようと思っていたが、取り出してしまったものは仕方ない。私がいただこう。

 

「ふんふん……ふーんふん」

 

 包装から飴を取り出し、口の中に入れる。一体どんな味がくるのかと身構えていたが、実のところなんの変哲もないただの美味しいミルクキャンディだった。

 少し期待が裏切られた気がしなくもないが、ミルクキャンディとしては悪くない。今度来た時もっと買ってこよう。

 

「…………」

 

 ……それにしても暑い。暑すぎる。ここってこんなに暑かったっけ……。

 東京も暑かったが、ここまでではなかった。そして心なしか、視界もぼやけてきた。足取りもおぼつかない。

 

 ……これ、熱中症なのでは。……まずい、こんなところで倒れでもしたらマジでシャレにならない。丸一日見つからない可能性だってあるぞ……。

 息も上がってきた。熱中症だこれ絶対……視界もグラグラしてきたし、汗も噴き出してきた。誰か、誰かに連絡しないと……そうだこのみ!このみに連絡しよう。熱中症とだけ書いて送信すればあいつなら察してくれるはず。ねっちゅうしょう…………あっ

 

「……ここネット繋がんねえじゃん」

 

 やっぱり田舎は嫌いだ。倒れる直前に最後にそう思い残し、私の意識は途絶えた。

 

 

 

「はっ!私……」

 

 意識が覚醒し、即座に倒れる直前の状況を思い出す。確か歩いてる途中で意識が朦朧とし始めて、そのままぶっ倒れて……

 

 周りを見渡すと、先程まで歩いていた場所とまったく同じ風景。よかった、あの世にいった訳ではなさそうだ。

 腰元にスマホが落ちていたので、時刻を確認してみる。駄菓子屋を出発した時から20分程度しか経過していない。実際に意識を失っていた時間は5分程だろうか。

 

 一先ず体調も治ってきたし、また倒れる前に急いで家に帰らないと。

 そう思って立ち上がった瞬間、強い違和感。

 

(あれ、私こんな背小さかったっけ。それに服もなんか凄いだぼだぼ……)

 

 気のせいかと思って歩き出すが、進めば進むほど自分の身体に違和感が湧いてくる。5歩進むたびにずり落ちるズボンと服を直しているし、いくらなんでもこんなに目線は低くなかったはずだ。

 

 少し嫌な予感がして、スマホのカメラを起動する。そして内カメで自分の姿を確認してみると、そこには推定年齢10歳程度の、可愛らしい少女が立っていた。

 ……というか幼い頃の私だこれ。家に飾ってある写真と完全に一致している。ちっちゃい頃の私ってこんな可愛かったんだな……

 

「いや、感心してる場合じゃねぇ!」

 

 うわっ、声まで若返ってる!私の声ってこんなに高かったんだな……いやだから感心してる場合じゃないんだ。今の状況をどうにかしないと。

 

 取り敢えず、この格好を誰かに見られるのはなるべく避けたい。現在の私の格好について、身につけていた服が全てだぼだぼになってしまったせいで結構際どい格好になってしまっているのだ。上着やズボンはまだしも、下着類が相当まずい。

 

 幸い、夏海の家の近くまで来ているので、とにかく一旦そこに向かうことにする。ついでにもし帰ってきていたら、そのまま私の身体が治るまで匿ってもらおう。

 

「よし、ついた……。おーいなつみー、なつみー!」

 

 返事がない。くそ、まだ帰ってきてないのか。となるとこのみも帰ってきてないか……?

 一応このみの家にも向かったが、やはり留守のようだった。

 

 一体どうしたものかと悩んでいると、胸元で挟んでいたスマホから通知音が鳴った。……思い出した、この前このみの家に遊びに来た時、私のスマホとこのみ家のWi-Fiを接続したんだった。

 何故かこのみの家だけ回線めちゃくちゃ強いんだよな……。ズルい。

 

 違う、今はそこじゃない。今喜ぶべきは、このみの家の近くに来たことによって私のスマホがネットに接続されたのだ。

 急いで先程の通知を見てみると、このみからのメッセージが受信されていた。

 

このみ『ごめん!伝え忘れてたけど、なっちゃん達と買い物に行ってるので、お昼の間は家にはいません。言い忘れててごめんね』

 

 くそ、やっぱりか。一応お土産は買ってきてくれるらしいので許すことにする。

 

ひかげ『なんで私も誘ってくれなかったの』

このみ『だってひかげちゃん夏休みの課題まだ終わってないでしょ?』

ひかげ『それはそうだけど……夏海だって終わってないだろ。昨日見たぞ』

このみ『…………』

ひかげ『既読スルーするな!!』

 

 こいつめ……

 

ひかげ『というか、それどころじゃない。助けてほしい』

このみ『どうしたの?』

ひかげ『身体が小さくなった。昔に戻った』

このみ『ごめん、あんまりよく分からないかも』

 

 確かに文面だけで伝えられても意味が分からないと思うので、急いで自撮りをしてメッセージに写真を添付する。

 

ひかげ『写真』

ひかげ『こうなった。理由はわからん』

このみ『……すぐ向かう。待っててね』

 

 このみのメッセージにリアクションをつけて会話が終了する。一先ず、すぐ向かってくれるらしいので一安心だ。このみが来るまでは、玄関で座りながらスマホでもいじって待っておこう。

 

「ひかげちゃん大丈夫!?!?!?!?!?」

「早っ!!!!!!!!!!!」

 

 地面に腰掛けた瞬間、このみがぜあはあと肩で息をしながら目の前にスライドインしてきた。早すぎて怖いんだけど。心なしか目も見開いていて余計に怖い。

 

「うわっ、本当だ!本当に小さくなってる!昔のひかげちゃんだ〜可愛い〜」

 

 そう目を輝かせながらこのみは私に近づいてくる。頭を撫でるな頬を撫でるな。

 

「ははは……。道で倒れて起きたらこうなってた……」

「えっ、何それ。ひかげちゃん大丈夫なの?」

「うん、今はなんとも。身体はちっちゃくなったけど」

 

 原因を探ろうにも特に思い当たる節がない。駄菓子屋行って、飴舐めながら帰って…………。…って、これってもしかして……

 

「ひかげちゃん、考えてるとこ悪いけど一旦中入ろ?……そのー、結構際どい格好になっちゃってるから」

「へ?」

 

 再度自分の服装を見下ろしてみると、下着が完全にズレててほぼアウトな部分まで露出していた。急いで上着をずり上げて大事な所を隠す。やばい、自分の顔がみるみる内に赤くなっていくのを感じる。

 

「んふふー。これから気をつけないとね。それじゃあ中入ろ?よいしょっ」

「うわわわっ!?」

 

 そう言って立ち上がったと思えば、私まで一緒に持ち上げられてしまった。いや抱っこじゃんこれ。おんぶならまだしも抱っこじゃんこれ。

 

「ちょっ、は、離せ!恥ずかしいって!」

「えー?だってひかげちゃん今身体ちっちゃいもん。転んだら危ないからさ。それに今は誰も見てないからいいでしょ?」

「そういう問題じゃ……!」

「はいはーい、おうちに入りましょうね〜」

「離せー!」

 

 じたばた動こうにもガッチリホールドされて殆ど身動きが取れない。畜生、めちゃくちゃ恥ずかしい。

 ついこの前れんげとの赤ちゃんごっこを蛍に目撃されたばかりだっていうのに、またこんな目に会ってしまうのか。

 しかしこのみには離してくれる気はさらさら無さそうなので、私は諦めて落っこちないようにこのみの背中に腕を回す。おい、笑顔になるな。

 

 

「それで、どうしてこうなったの?」

「それが私にもわかんなくて……あるとすれば、さっき食べた変なお菓子かなぁ……」

「お菓子?」

 

 袋に入れていた包装パッケージを取り出す。今思えばこの飴を舐めた直後から体調がおかしくなっていたようなが気がする。

 

「ふーん。ベビーキャンディ、かぁ。あんまり信じられないけど、それ以外の原因は思いつかないんだよね」

 

 そうなのだ。飴を舐めただけで身体が縮むなんて信じられないが、これ以外の原因が全く思い浮かばない。

 

「取り敢えず、楓ちゃんには連絡しておかないとだね」

「そうだな……あーなんでこんなことに……」

 

 ………………

 

「………あー、そんでこのみさん………なーんで私は今膝の上に乗っけられてるんすかね……?」

「え?だって普段のひかげちゃんじゃ大きくて乗せられないもん」

 

 普段から乗っけようとしてたのかよコイツ。

 相手を自分の膝の上に乗せたくなる気持ちはあまり理解できないが、正直居心地は悪くないのでここは思い切って身体を委ねてしまおう。

 

「よーしよし。それじゃあひかげちゃんは私と一緒にお昼寝しましょうね〜」

「だから子供扱いするなって……!」

 

 口ではそう言ったが、実のところうっすら眠気がきていて、頭も軽く揺れている。くそ、授業中昼寝ばっかしてたのがこんなタイミングで再現されるとは……!

 

「あー……なんか本当に眠たそうだね。よし!じゃあ一緒にベッドでお昼寝しよっか!」

「うあー……」

 

 ふわりと身体を持ち上げられ、視線も上へと上昇する。そしてそのまま身体全体がベッドの柔らかい感触に包まれる。あぁ〜……

 

「このみ、苦しい……」

「この方がぐっすり寝れるよ。ほらほらひかげちゃんも!」

 

 コイツ、私のことを都合のいい抱き枕かなんかだと勘違いしてないか?確かに、この方が安心するけども……。

 

「それじゃあ、1時間後くらいに起こしてあげるねー」

 

 そう言って部屋の電気を消す。……あー、誰かと並んで寝るこの感覚、懐かしいな……。しばらく東京にいたから忘れてたかもしんない……。

 

 

 

 目が覚める。時計を見ると針は2時を指していた。あれから丁度1時間経ったらしい。すっきりした目覚めだったが、当のこのみは隣で私を抱きしめながら爆睡している。なんでお前がぐっすりなんだよ……

 

「おーいこのみー、おきろー!」

「あとちょっとだけー……ふふふ」

「お前起きてるだろ!!」

 

 ぐいぐい身を捩っていると、「仕方ないなぁ」と言いながらこのみは抱擁から解放してくれた。全く、また服がズレたじゃんか……

 

「あーこのみ、あればで良いんだけどさ、替えの服、持ってない?出来れば小さめの……」

「あ、それなら小鞠ちゃんに渡す用として取っておいた服があるよ!サイズ的にも丁度いいんじゃないかな」

 

 そう言ってクローゼットをガサゴソと漁り、替えの着替え一式が揃う。

 

「うおーありがとう!これで常に服を抑えなくて済む!」

「どういたしまして。他にもあるから気に入らなかったら教えてねー」

「おーう」

 

 渡された服を手に取って、いざお着替え……

 

「………………」

「…………」

「……あー、じゃあ、今から着替えよーっと」

「うん!」

「…………」

「…………」

 

 ……いや、あの、着替えるので一旦出て行って欲しいんですが……。なんでそんな「?」みたいな顔ができるのん……?

 

「……あのー、流石の私でも、着替えを見られるのは恥ずかしいので、一旦席を外していただければなーと……」

「あはは、大丈夫大丈夫。私しか見てないから安心してよ!」

「だからお前が見てんだよ!!!」

 

 いくら抗議しても全く聞き入れる様子がなく、結局私が後ろの方を向いて着替える羽目になった。一応匿ってもらっている立場だから文句は言えないけどさ……。

 

「……これで、よし。どうだこのみ。どこか変なとこある?」

「うわぁー!ひかげちゃん可愛いー!」

 

 そう言いながらこちらにスマホを向けるこのみ。おいパシャパシャ言ってんぞ。恥ずかしいから撮るな。

 

「よし!じゃあそのままお散歩でもしよっか!」

「はあ!?なんでだよ、外行く必要ないだろ!」

「あ、そう?別に私は家のままでもいいけど……」

 

 …うーむ……なんだかそれはそれで危険な気がしてきたな……。薄々勘付いてはいたが、先程からこのみの私に対する扱いが常人のそれじゃないのだ。

 さっきだって抱き枕にされつつこっそり胸を揉まれてたし、膝上に乗っていた時も髪の匂いを嗅がれてたしで普通にやることをやってるのだこの女は。

 

「いや……やっぱり外行く。身の危険を感じた」

「……なんのことか分かんないけど、オッケー!」

 

 

 

 しかし少し目線が変わるだけでこうも世界は変わって見えるのか。多分小鞠くらいちっちゃくなっちゃったなこれは……。頭一つ分大きいこのみを見上げながら思う。

 

「それでどっか目的地はあるの?それとも本当にただの散歩?」

「まあその辺ぶらぶらするついでに、楓ちゃんの所に行こうかなーって。もしかしたら、元に戻る方法が見つかるかもしれないし!」

「あー、確かに。それもそうか」

 

 元の原因がお菓子なら、それを治すお菓子があっても不思議ではない。出来れば早いとこ駄菓子屋に行って元の身体に戻りたいところだが……。

 

「……なあ、向こうにいるのって夏海達じゃないか?」

「あ、本当だ。おーいなっちゃーん!」

「あ、ちょっ、このみ!」

 

 不味い、あんまり夏海達にはこの姿は見られたくない。理由は間違いなく弄ってくるから。

 こちらに気づいた夏海達が走ってきたので、私は急いでこのみの後ろへと姿を隠す。

 

「さっきは急に帰っちゃってごめんねなっちゃん!ちょっと急用が出来ちゃって」

「いや、それはいいけどさこのみ姉……その、後ろにいるのって……」

「なんかちっちゃい子が隠れてるけど……というかなんかどこかで見たことあるような…」

 

 あー、ダメだ。隠し通そうと思ったが流石に厳しそうだこれは。

 観念した私は夏海達の前に姿を現す。

 

「……え、ひか姉?」

「……なんか、気づいたら背縮んじゃってた……」

 

「「ええぇー……???」」

 

 大声をあげて叫ぶ訳でもなく、ただただ引く。存外そのリアクションが1番心に来るかもしれない。

 

「つまり、どういう……?」

「えーっとね、楓ちゃんの所で買った飴を舐めた途端急に身体が縮んじゃったらしくて、今から原因を探りにもう一回楓ちゃんのとこに向かってる所なの」

「あーそうなんだ。……あー、いやー、なんか、異常すぎて逆に驚かないというか驚けないというか……」

「あっ!もしかしてひか姉私より背ちっちゃいんじゃない?ちょっと背中合わせてみようよ!」

 

 なんなんだこいつら……年齢の割に落ち着きすぎだろ。仮にも姉のような存在である私の身体に異常が発生したというのになんだこの冷静さは……。

 

「いやー、ひか姉ならあり得るかなって。なんとなく」

「んだよそれ!私の扱いどうなってんだよ!」

「うわー!私の方がおっきい!2センチくらいおっきいよ!」

 

 後ろではしゃいでる小鞠は無視する。というか小学生の時の私に勝っても別に嬉しくないだろ。

 

「という訳で、私たちは楓ちゃんのとこ向かおうと思ってるんだけどー……なっちゃん達も来る?」

「あー、ウチも特にやることないし、暇だから着いてくよ」

「私も私も!ねえねえひか姉、私のことお姉ちゃんで呼んでみて!お姉ちゃんって」

「はいはい、お姉ちゃん小鞠お姉ちゃん」

「ぶっは!ひか姉が姉ちゃんのことお姉ちゃんって……!あはははは!」

 

 ……余計元に戻りたくなったから、早く行こう。

 

 

 

「よーし着いたー。まさか1日に2回も駄菓子屋に来るとはなぁ」

「ねえひか姉、もう元に戻っちゃうの?もう少しこのままでも良いんじゃない?」

 

 どんだけ仲間が欲しいんだコイツは……。それにまだ戻れると決まった訳でもないし。

 

「いらっしゃーい……ってお前らか。このみと夏海と小鞠と………は?」

 

 こちらに視線を向けてギョッとする駄菓子屋。「は?」とは失礼な。

 

「おい駄菓子屋ー!お宅の駄菓子食べたせいでこんな身体になっちゃったんですけどー!?どう落とし前つけてくれんだー!おーい!」

「いやいやちょっと待ってくれ、その前に一旦落ち着かせてくれ……」

 

 その後このみが丁寧にここまで経緯を説明してくれた。毎回説明役を任せてしまって少し申し訳ない。

 

「……いや、ウチはベビーキャンディなんて商品置いてないぞ?聞いたこともない」

「え?いや、レジの近くにあったじゃん。ミルクキャンディっぽいやつ」

 

 そう言いながら店内に入り、レジの方へと向かってみると……

 

「あれ……ない……」

 

 おかしい。昼に来た時は確実に箱ごと置かれていたはずなのに、跡形もなく綺麗さっぱり消えてしまっている。

 ふと聞きなってポケットに入れていた包装パッケージを取り出す。やっぱり、このお菓子があったことには間違いなさそうだけど……。

 

「うーん、見た感じ本当にありそうな商品だな。ただ、やっぱり見たことも聞いたこともない」

「うえぇ……?」

 

 一体何が起きてるんだ。少しだけ寒気がしてきた。

 

「うーん、ネットで検索してもヒットしないね。ひかげちゃんが食べたその飴って現実の物だったのかな?」

「えっ?どういうこと?」

「いや、冷静に考えて飴を舐めただけで身体が縮まるなんてあり得ないし、なにか非科学的なことが起きてるんじゃないかなーって」

 

 えっ、何それ。私神様とか幽霊とか信じてないし、そういうのはちょっと苦手なんですけど……。

 

「……ねえひか姉、あれ……」

「……え?」

 

 夏海がブルブル腕を振るわせながら、ある方向を指差す。その方向とは先程のレジの方向で、そこには何もなかったはずなのだが……

 

「飴が、置かれてる……」

 

 危うく叫びそうになった。何もなかったはずのレジに今度は飴玉がぽつんと一つ鎮座していた。一瞬の目を離している隙にこんなことが起こるなんて、本当に非科学的なことが起きている可能性がある。……いや、実際起きているのだろう。

 恐る恐るその飴を手に取ってみると、包装パッケージには「ベビィキャンディ・リバース」と記載されていた。

 

「ひかげちゃん……これって……」

「うん……多分これを舐めたら元に戻るんだと思う」

 

 そう言いながら私は包装を剥がして中の飴玉を手に取る。そうしてその飴を口に入れる瞬間

 

「ひかげちゃんちょっと待って!」

「な、何!?」

 

「最後に数枚写真撮らせて」

「お前なぁ……」

 

 仕方ない。どうせこれが最後だし好きに撮らせてやろう。

 適当にポーズをとりながら撮影を進めていく私。最後には夏海と小鞠まで入ってきやがった。

 

「よしっこれでOK。食べていいよー!」

「まったく…………あむっ」

 

 口の中で飴玉をころころ転がす。うん、やっぱり普通に美味しいミルクキャンディ味。こんな副作用がなければいくらでも買うんだけどなぁ。

 呑気にこんなことを考えていると、あの時と同じような現象がやってきた。

 暑い、身体が暑い。身体の芯から熱されているような暑さを感じる。視界も朧げで、足元もフラフラしてきた。

 

「ひか姉大丈夫!?」

「お、おいひかげ!平気か!?」

「だ、大丈夫大丈夫……多分正常な反応だからさ……」

 

 あ、倒れる。今度は横にじゃなくて真後ろに。これはちょっと危ないかも……!?

 ガツン。という衝撃はやってこなかった。代わりに来たのは柔らかい肌の感触。

 

「こ、このみ……」

「ふふふー。ふらふらして倒れちゃうなんて、ひかげちゃんはまだまだお子様だね〜」

「だから……子供扱いすんなって……」

 

 このみの笑顔を最後に、私の意識は再び途絶えた。

 

 

 

「…………ん」

 

 バサッ!意識が覚醒した瞬間、私は自身の身体を手で触りながら確認する。……よし、元に戻ってる……!

 

「よっしゃこのみ!無事に元に戻ったぜ!」

「あははー、良かったねー」

 

 ……なんでコイツはまたスマホを向けてるんだ。せっかく元に戻ったっていうのに。それに心なしが他のみんなもあまり目を合わせようとしない。なんなんだこいつら。

 まあいい。一先ず無事に元に戻ったんだし、家でお昼ご飯でも食べよう。色んなことが起きすぎて完全に昼飯の存在を忘れていた。

 若干重くなった身体を起こして、駄菓子屋から出ようとすると……

 

「ちょ、ちょっと待ってひか姉!」

「え?」

「いやー、そのーなんだ。あー……」

「何?私お腹空いたんだけどー……」

 

 腹に手を当てるジェスチャーをして、ふと気づく。その手は服ではなく直接肌を撫でていることを。

 

(あれ?そういや身体が縮んだ時は服がだぼだぼになったけど、逆に身体が大きくなったってことは……)

 

 改めて自分の身体を見下ろしてみる。小さかった上着は胸下までに縮んでおり、スカートもミニスカどころの騒ぎではない短さにまでなっている。

 私の身体が大きくなっていくにつれ、その服が占める布面積の大きさが相対的に小さくなってしまったのだ。

 

 こ、こんな格好で外にでも出た日には私は……

 

「完全にえっちなお姉さんだね〜」

「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 真っ赤な顔を手で隠しながらその場にへたりこむ私。

 くそっ。やっぱり外になんか出ないで、家でダラダラしておけばよかったんだ。家でゴロゴロしておけば良かったんだ!!!

 

「はい、ひかげちゃん撮るよー。ピースしてー」

「やめろ!!!!!!!!!!!!」

 

 パシャッ

 


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