モンスターハンター ライズ  ~明けの双星~   作:佐藤 磊童

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其ノ四

 きりっ!

 

 どこかで凛々しい雰囲気を感じてユウは周囲を見渡す。

 

「あ、……アカメ?」

 

 普段弱気なアカメが、ヌコヌコが跨っている時だけ頼もしく感じる。

 ユウは妙な違和感を、まあいいかと視線をヌコヌコに移した。

 

「さぁて、どうするんだにゃ?」 

 

 ヌコヌコが低い声で面白そうに問う。

 

「……僕があいつをやる」

 

 ユウはそう言って火竜を指さした。

 

「ぬわーっははは!」

 

 ヌコヌコは豪快に笑い、そして――。

 

「お前みたいなバカは嫌いじゃないにゃ」

 

 その漢らしい鼓舞に、ユウも口角が自然と上がる。

 

「そうと決まれば……」

 

 ヌコヌコは閃光玉を取り出し二頭に投げつける。

 空中で強烈な閃光を放ち、二頭を分断。

 リオレウスは汚泥をまき散らせながら、地響きと共に地に堕ちる。

 

 堕ちた衝撃でもがいている火竜に向かって跳躍。

 

 翔蟲を使って高度を増し、体重を乗せた一閃。

 

 だが、身体をくねらせ、尾により反撃をくらう。

 

 再び翔蟲の糸で姿勢を変えて着地。

 

 剣モードへ移行する金属音が、静かに響いた。

 

 ユウと火竜が互いに間合いを削り。

 視界に火花を走らせる。

 

 ジンオウガの時のように属性充填カウンターは使えない。

 あれは本来、今の自分では扱えない。

 

 ――ならば。

 今自分にできる最大限をもって、火竜に向き合わないといけない。

 

 ユウは、呼吸を火竜に合わせる。

 

 リオレウスは飛び跳ねるように空中へと舞い、直後にユウへと急降下――。

 

 毒を纏った強靭な爪を間一髪避け、尾へと一撃を入れる。

 

 固い鱗に阻まれながらも、確かに傷がついた。

 

 手ごたえが、剣斧を通して骨肉に伝わる。

 

 だが、リオレウスは普段よりも長く炎を溜め、三発の火弾を三方向へと放つ。

 

 巻き起こる水蒸気爆発がユウの視界を阻む。

 

 しまったと思った瞬間――。

 上がる水柱の中から現れた火竜の爪が、ユウの身体を空中へとつかみ上げた。

 

 ――一方。

 

 雌火竜の火弾を横に避けながら、円を狭めるように接近する。

 

「はーっははは!」

 

 ヌコヌコは跨ったアカメの機動力を最大限に発揮させ、

陸の女王を翻弄していた。

 

 執拗に脚を狙った攻撃で、ついにリオレイアの首が下がる。

 苛立ちながら、口を開けた瞬間、

どこから取り出したのか分からない大タル爆弾を口の中に突っ込み、――点火。

 爆発の衝撃で巨体がぐらついた。

 

 その爆発音を聞いたリオレウスの注意が、僅かにユウから逸れた。

 爪が緩んだ隙をつき、翔蟲の糸で空中へと脱出。

 

 更に糸を引き、王者の背中へと着地した。

 

 ――懐から翔蟲の糸玉を解放。

 リオレウスの至る箇所に付着し。

 空気に触れる事ですぐに張り詰めていく。

 

 荒れ狂うリオレウスの背。

 その上で、ユウが口から細く息を吐き出し、指先へと力を込める。

 

 これぞ、カムラの秘儀、繰竜――。

 翔蟲の糸を用い、モンスターを自在に繰り駆る秘伝なり。

 

 鱗に張り付いた無数の糸の呪縛から逃れようと渾身の力で藻掻き抗う。

 

 圧倒的な力に、ユウの指が引きちぎれそうになる。

 全身を揺さぶられながら、ユウの意識は指先に集中していた。

 力の、流れを見極める為に。

 

 ――ここだ!

 

 リオレウス。

 その筋肉の流れが指の一本一本へと伝わる。

 完全に流れを見極め、ついに火竜の主導権を掴み取った。

 

 だが、火竜はそれを許さない。

 身悶えながら、繰竜の糸に必死に抗い続ける。

 

 自分はミイのように上手く、器用に立ち回れない。

 歯を食いしばりながら、必死に不器用に大雑把に。

 

 全身を使い、リオレウスの巨体を地上へと落としていく。

 その先に、瀕死のリオレイアの身体――。

 

 地を割るかのような竜落とし。

 糸がちぎれたのと同時に火竜の背から跳躍し、ヌコヌコの下へと着地する。

 

「やるにゃ、坊主!」 

 

 ユウが剣斧で斬り付け。

 同時に剣モードで重心を手元へずらし、更に斬り付ける。

 

 苦しそうな声を上げる雌火竜。

 

 集中が、さらに研ぎ澄まされていく。

 それに呼応するようにスラッシュアックスから青い光がほとばしる。

 

 割れた鱗に剣の切っ先が突き刺さる。

 

 それが、

陸の女王の止めとなった。

 

 息を切らし、動かなくなっていく雌火竜を見つめるユウ。

 その眼差しに、ヌコヌコはかつての相棒の横顔を重ねた。

 

 だが、今更だなと感傷に浸るのを止め、アカメを走らせた。

 

 番いを殺された怒りでリオレウスが咆哮を上げ、瀑布の飛沫が虹を作る。

 

 火竜は再び空へと舞い上がり、火炎放射であたり一帯を焼き払う。

 

 それを読んでいたヌコヌコは高台へ駆け上がる。

 更にアカメの背を使い、火竜の翼、その付け根に自身の剣を突き立てる。

 

 空中でぐらついたところを、ユウが翔蟲を使って飛翔。

 

 リオレウスと目が合った。

 

 ――だが、それでも。

 

 命を守るために、命を絶つ決意をする。

 

 ユウはリオレウスの脳天に剣モードの剣斧を突き刺し、機工を解放した。

 

 ビンに内包されたエネルギー。

 それを一気に放出する零距離解放突きを爆発させる。

 

 段階的に爆ぜ、のたうち回るリオレウス。

 その頭に必死にしがみつきながら、

 

「気焔万丈!」

 

 気合と共に、最後の大爆発が飛沫を熱へ変えていく。

 ユウの身体が衝撃で弾き飛ばされる。

 

 数多の水滴が宙を舞い。

 その視界には、真っ青な空。

 

 ――空の王者が地に堕ちた。

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