氷下の命脈ー放っておくには、雪が冷たすぎたー 作:冷やかし中華
だが、誇り高き脚でさえ、雪という絶対的な質量には抗えない。
今夜、白い山が彼女の足を奪い、遠き真実から遠ざけていく。
先遣隊が戻ってきたのは、日が完全に落ちた後だった。
玄関扉が開いた瞬間、冷気が廊下まで流れ込んだ。四人で出て、四人で戻ってきた。それだけで、アサマは結果の一部を理解した。誰かを連れて戻るには、顔の色が違った。全員の頬と耳が、霜焼けで赤黒く変色している。末端から熱を奪われた人間の顔だ。
隊長格の男が、外套のポケットに手を入れた。何かを取り出そうとして、指が動かないのか、しばらくそのままでいた。
アサマはその間を、待った。急かさなかった。急かせば、言葉が出てくる前に何かが崩れる気がした。この男が言葉を選んでいる間だけは、まだ何も決まっていない。その感覚を、手放したくなかった。
「……原生林の入り口付近まで行きました」
「足跡は」
スピードシンボリが聞いた。
「確認できませんでした。雪が深すぎて」
予想していた答えだった。それでも、声に出して言われると重さが違った。膝下まで積もった湿雪の中では、数時間前の痕跡など残るはずがない。わかっていた。わかっていたのに、どこかで期待していた自分に気づいて、スピードシンボリは目を伏せた。
「ただ——」
隊長が続けた。
「入り口から凡そ五百メートルほど奥に入ったところで、木の幹に引っかかっているものを見つけました」
外套のポケットから、透明な袋を取り出した。中に、布の切れ端が入っていた。薄い生地だった。淡い色をしている。
アサマが受け取った。
袋越しに、その布を見た。薄手のカーディガンの生地だった。枝に引っかかって裂けたのだろう、端がほつれている。汚れている。雪と泥と、それから——赤いものが、少し滲んでいた。
今朝淹れたばかりの紅茶と、同じ色をしていた。
袋越しであるはずなのに、凍てつく空気の中から、生暖かい鉄の匂いが立ち昇るような錯覚が走った。
アサマは袋を持ったまま、動かなかった。
今朝、この庭でお茶を飲んでいた。三人がはしゃいでいる声が聞こえていた。その声の中に、ラモーヌの声があった。薄手のカーディガンを着ていた。今年はもう少し厚いものを着なさいと言おうとして、言いそびれた。言いそびれたまま、あの子は防風林の奥へ消えた。
今この手の中にある布は、そのカーディガンだ。
アサマにはわかった。見るまでもなかった。淡い色。薄い生地。端のほつれ方。全部、知っていた。何年もこの家で見てきた。
動かなかった。
動けなかったのではなかった。動かなかった。動いてしまえば、この布を持っている自分が現実になる。今はまだ、この袋を持って立っているだけだ。それだけだ。そう思いながら、指先に力が入っていた。袋が、わずかに歪んだ。
スピードシンボリに差し出した。
スピードシンボリは受け取り、一瞥した。それから目を逸らした。逸らした先に何があるわけでもなかった。ただ、それ以上見ていられなかった。
「他には」
「羆の痕跡を確認しました」
隊長の声が、わずかに変わった。報告の声ではなく、何かを抑えている声になった。
「爪痕です。入り口から奥に向かって、断続的に。木の幹の、かなり高い位置に残っていました。それと——地面に窪みがあった。雪が積もっていても、形がわかった。大きかったです」
「どれくらい」
「掌ほど。いや、それ以上かもしれません。間隔は一メートル半から二メートル」
歩いている。急いでいない。
スピードシンボリはその事実が何を意味するのかを、考えないようにした。考えかけて、止めた。止めなければ、今夜この場所で立っていられなくなる気がした。
電話口の男の声が、耳の奥に残っていた。
——計算次第です。
間隔が一メートル半から二メートル。歩いている。急いでいない。急がなくていいと、あの個体は知っている。知っていて、奥へ向かっている。まっすぐ。
「足跡の方向は」
アサマが聞いた。声は平静だった。
「奥へ向かっています。まっすぐ」
アサマは袋をポケットにしまった。しまう時、一度だけ目を閉じた。一秒だけ閉じて、また開いた。開いた目で、隊長を見た。隊長の顔が、こちらを見ていた。何かを待っている顔だった。指示を待っている。次に何をすればいいかを、待っている。
この人たちは、自分を見ている。
アサマは、それを改めて理解した。今夜この場所で、自分が崩れれば、全員が崩れる。崩れている場合ではない。まだ、崩れてはいけない。
「体を温めなさい。温かいものを飲んで、手足の感覚を確かめてください」
声は、平静だった。
四人が頭を下げた。廊下の奥へ消えていく足音が、遠ざかっていく。その足音が完全に聞こえなくなるまで、アサマは動かなかった。動かずに、足音を聞いていた。
ホールに、アサマとスピードシンボリだけが残った。
スピードシンボリはポケットに手を入れた。袋を渡したのはアサマだから、自分の手は空のはずだった。それでも、手を入れずにいられなかった。何かを掴んでいなければ、この場所に立っていられなかった。
「スピード」
「わかってる」
遮るように言った。アサマが何を言おうとしているかは、わかっていた。今夜できることはない。夜明けを待つしかない。それは正しい判断だ。正しいとわかっている。
ここはメジロの家だ、とスピードシンボリは思った。
隣に立つアサマが、今夜一番何を案じているか。それはわかっていた。シンボリ家の子たちのことも、頭にある。ルドルフのことも、シリウスのことも。でも今この場所で、隣に立っているのはアサマだ。
見つかったのが、ラモーヌのものだった。
その事実が、一瞬だけ、スピードシンボリの胸の中で何かを緩めた。緩めた瞬間に、気づいた。自分が何に安堵しかけたのかを。シンボリ家の子たちの痕跡が、見つからなかったことに。
アサマから目を逸らした。逸らした先に何があるわけでもなかった。ただ、今のこの顔を、アサマに見せてはいけなかった。
「ラモーヌは」
スピードシンボリは言いかけた。止まった。続きを選べなかった。ラモーヌは、という主語の後に続けられる言葉が、今夜はどれも怖かった。怖くない言葉が、一つも見つからなかった。
「足跡が、奥へ向かっていた」
別の言葉を選んだ。
「止まっていなかった」
根拠にならないとわかっていた。足跡が奥へ向かっていたからといって、それが何の証拠になるのか。逃げている足跡かもしれない。転んだ痕跡が残っていないだけかもしれない。根拠にならない。でも、言わずにいられなかった。
アサマはしばらく黙っていた。それから、静かに言った。
「ええ」
それだけだった。答えではなかった。慰めでもなかった。ただ、受け取った、という声だった。スピードシンボリが手放せずにいるものを、アサマも同じように手放せずにいる。その声だった。
テーブルの上のティーポットは、まだそのままだった。ラモーヌの席の食べかけのクッキーも、まだそこにあった。誰も片付けようとしなかった。使用人たちは、アサマが何も言わないから、片付けなかった。アサマは、片付けると言えなかった。
片付ければ、何かが終わる気がした。終わらせたくなかった。あの子が席を立つ時、きっと戻るつもりだったのだろう。戻るつもりで、食べかけのまま残したのだろう。戻るつもりで残したものを、片付ける権利は自分にはない。
そういう理屈ではないとわかっていた。それでも、手が動かなかった。
*
「一時退却します」
アサマが言った。
外の吹雪が、声をすぐに飲み込んだ。それでも、捜索隊の全員に届いた。届いたとわかった。一人も動かなかったからだ。動けなかったのではない。動かなかった。アサマの言葉を、全員が受け取っていた。
「しかし——」
「この状況で山に入れば、二次遭難が起きます。捜索できる人数が減れば、夜明け後の対応が遅れる」
声は平静だった。しかし両手は、着物の袂の中で握りしめられていた。指が掌に食い込んでいる。それを悟られないように、袂の外からは何も見えないように、アサマは立っていた。
玄関前の石畳が、すでに足首まで埋もれていた。吹雪が顔を叩く。睫毛に雪が張り付く。それでもアサマは動かなかった。全員の顔を、順番に見た。
若い子がいた。唇を噛んでいた。目が赤くなっていた。それでも何も言わなかった。言えなかった。アサマの判断が正しいとわかっていたから。正しいとわかっているから、余計に、何も言えなかった。
その顔を、アサマは見た。見てから、続けた。
「夜明けと同時に、警察の山岳救助隊と合流します。猟友会にも同行を依頼しています。それまで各自、体を温めて備えなさい」
捜索隊が、一人ずつ邸宅へ引き返していく。
誰も足音を立てなかった。重い雪靴で石畳を踏んでいるのに、全員が静かだった。声もなかった。俯いた顔が、玄関の灯りの下を次々と通り過ぎていく。
最後の一人が扉をくぐった。
スピードシンボリは、外に残っていた。
吹雪の向こう、黒い山の稜線を見ていた。何かを感じ取ろうとしているわけではない。ただ目を離せなかった。あの子たちが消えた方角から、目を離すことが、どうしてもできなかった。
耳が、動いた。
意識してのことではなかった。吹雪の音の奥に、何かを探していた。聞こえるはずがない。この距離で、この吹雪の中で、聞こえるはずがない。それでも耳は止まらなかった。止められなかった。現役の頃、どんな悪条件でも走り続けた脚が、今夜は雪の中で無力だった。でも耳だけは、まだ何かをしようとしていた。
聞こえなかった。
吹雪の音だけが、答えの代わりに届き続けていた。
「スピード」
アサマが呼んだ。
「……わかってる」
一言だけ言って、スピードシンボリは背を向けた。
邸宅の灯りが、吹雪の中で滲んでいた。温かそうに見えた。その温かさが、今夜は少し、腹立たしかった。
*
応接間に戻ったアサマは、椅子に腰を下ろした。
ティーポットに手を触れた。冷たかった。当然だった。何時間も、そのままにしていたのだから。冷たい、とわかった瞬間に、午後のお茶の匂いが戻ってきた。温かい紅茶の匂い。三人がはしゃいでいた声。あの時間と、今この冷たさが、同じ器の中にある。
手を離した。
スピードシンボリが入ってきて、向かいの椅子に座った。二人とも、何も言わなかった。廊下の奥で、柱時計が鳴っていた。カチ、カチ、と規則正しい音が、静寂を一秒ずつ刻んでいた。
「あなたは、現役の頃——」
アサマが言った。少し間を置いてから続けた。
「怖いと思ったことはありましたか」
スピードシンボリは答えなかった。すぐには。
「ありました」と、しばらくして言った。「海外遠征の時。土地も気候も勝手が違う場所で、レースに向かう時。怖かった」
「それでも走った」
「走るしかなかったから」
スピードシンボリは自分の手を見た。
「走っている間は、怖さより先に脚が動く。止まっている時の方が、怖かった」
アサマは何も言わなかった。しばらくして、静かに言った。
「私も、そうでした」
スピードシンボリが顔を上げた。
アサマは窓の外を見ていた。雪の降る窓を。
「レースの前夜は、いつも怖かった。それでも朝が来れば走った。走るしか、なかったから」
一度だけ、目を閉じた。
「今夜は、走れない」
それだけだった。それ以上は言わなかった。
スピードシンボリは何も言わなかった。ただ、窓の外を、アサマと同じ方角を、見た。
止まっている時の方が、怖い。今夜ほど、その言葉の意味を知った夜はなかった。
しばらくして、アサマは窓の外を見た。
庭が、白一色に埋もれていた。庭師が丹精込めた植え込みも、秋の終わりに芽吹き始めていた蝋梅の株も、全部、同じ白さの下に消えていた。
ラモーヌが好きな花だった。毎年冬になると、庭に出て眺めていた。今年も咲いたら見に来るわ、と先週言っていた。
「ラモーヌのご両親には、連絡が取れましたか」
アサマが先に言った。スピードシンボリが聞く前に、自分から言った。
「取れました。ただ——アルダンが体調を崩していて、別邸を離れられない状況です。向こうでできる手配はしてくださっています」
スピードシンボリは何も言わなかった。
我が子が行方不明になっても、もう一人の子のそばを離れられない。その両方が、今夜同時にある。言葉にできることは、何もなかった。
「ルドルフのお父様には」
「連絡は取れています。ただ今夜中は難しいと。明朝、最初の便で動くと」
「シリウスの——」
「夜明けには到着できると。二人とも」
アサマは、それだけ聞いた。それ以上は聞かなかった。
*
夜明けまで、あと何時間もなかった。
廊下の時計が、まだ鳴っていた。アサマは応接間の椅子から動かなかった。スピードシンボリも、向かいの椅子から動かなかった。眠れる状態でもなかった。ただ、そこにいた。そこにいることが、今夜の自分たちの仕事だった。
使用人が何度か扉の前で止まった。お茶を持ってくる者がいた。毛布を持ってくる者がいた。アサマはそのたびに小さく頷いた。断らなかった。断ることに使う力が、今夜はなかった。
窓の外が、少しずつ変わっていた。暗さの質が変わっていた。真夜中の黒さではなく、夜明け前の濃い藍色になっていた。吹雪が弱まっていた。風が止んでいた。雪だけが、音もなく降り続けていた。
アサマは窓を見ていた。夜明けが来れば、何かがわかる。
その「何か」を、今夜のアサマはまだ、知りたくなかった。
廊下から、足音がした。
使用人の足音ではなかった。急いでいた。でも取り乱してはいなかった。急ぎながら、品を保っている足音だった。二人分だった。
扉が開いた。
外套に雪をまとったまま入ってきた二人を見て、スピードシンボリは立ち上がった。
シリウスの父親だった。無言だった。シンボリの分家として、夜通し移動してきた人間の顔だった。その隣に、スイートエプソムがいた。外套の前を、両手でしっかりと掴んでいた。その手が、わずかに震えていた。夫の腕に触れた。触れて、また離れた。
エプソムは一度だけ、廊下の奥へ視線を向けた。
姉がまだ来ていないことを、静かに確かめるように。
「到着しました」
シリウスの父親が、それだけ言った。
短かった。報告でも挨拶でもなかった。ここに来た、という事実だけを、言葉にした声だった。
アサマは立ち上がった。
「よく来てくださいました」
それだけ言った。それ以上の言葉が、すぐには出てこなかった。出てこなかったのではなく、今はまだ、言葉より先にすることがあった。
「体を温めてください。温かいものを——」
「現状を教えてください」
エプソムが言った。震える手を、外套の前から離して、まっすぐアサマを見た。声は落ち着いていた。落ち着かせようとしている声だった。
アサマは頷いた。
わかっていることを、順番に話した。センサーのログ。防風林の先に消えた痕跡。先遣隊が持ち帰ったカーディガン。羆の爪痕。足跡の方向。猟友会の男の言葉。夜明けに再開する捜索の計画。
話しながら、自分の声が妙に遠く聞こえた。
「現時点で、安否は——」
「わかりません」
アサマは言った。誤魔化さなかった。希望的な言葉で包まなかった。この人たちに、嘘をつく権利は自分にはない。
エプソムが、口元を押さえた。声は出なかった。シリウスの父親が、一度だけ目を閉じた。閉じた時間が、少し長かった。目を開けた時には、何かが決まっていた。今夜ここにいる。できることをする。夜明けが来れば動く。その覚悟が、開いた目の中にあった。口数の少ない人間の、言葉より重い決意だった。
「全力を尽くします」
アサマが言った。
言えた。今夜初めて、最後まで言えた。必ず、という言葉は出なかった。でも、全力を尽くします、という言葉は、出た。
シリウスの父親が、静かに頷いた。
*
空が、白み始めた。
いつ変わったのか、アサマにはわからなかった。ずっと窓を見ていたはずなのに、暗さが薄れる瞬間を、見届けられなかった。気がついたら、窓の向こうに青みが差していた。山の稜線が、墨で引いたような輪郭で、空との境を取り戻していた。
時計を見た。六時二十分だった。
廊下から、足音が増え始めた。重い靴底が石の床を踏む音。装備を確かめる金属の触れ合う音。夜明けを待っていた人間たちが、一斉に動き始める音だった。
「天候が回復しています」
玄関ホールから、警備隊の隊長の声がした。「視界が出ました。捜索班、出発できます」
「行きなさい」
アサマは振り返らずに言った。
山の稜線を見ていた。昨夜、吹雪の中に溶けて見えなくなっていた稜線が、今朝は鋭く空に刻まれていた。白かった。昨日より白かった。一晩で、また積もったのだろう。三人が消えた北東の方角。防風林の黒い影。その奥に何があるのか、ここからは何もわからない。
足音が遠ざかっていった。玄関扉が開き、冷気が廊下の奥まで流れ込んでくる気配がした。それから閉まった。複数の足音が、外の雪を踏んでいく音が、壁越しに聞こえた。遠ざかる。遠ざかる。やがて、聞こえなくなった。
山が、朝の光を受けて白く光っていた。
美しかった。腹立たしいほど、美しかった。
その時、玄関の外から、別の足音が来た。
捜索班が出ていった足音とは違う。急いでいた。でも取り乱してはいなかった。急ぎながら、品を保っている足音だった。一人分だった。
扉が開いた。
雪をまとったまま入ってきた人物を見て、スピードシンボリは一瞬だけ、息を止めた。
スイートルナだった。
外套の肩に雪が積み重なっていた。急いで来たのだとわかった。ヒールの片方の踵が、折れていた。それに気づいていないのか、気づいていても止まれなかったのか。それでも姿勢は崩れていなかった。崩れないようにしている、ということが、かえって見ていられなかった。
その目が、真っ直ぐアサマを見た。
「ルドルフは」
それだけだった。挨拶もなかった。前置きもなかった。この場所に来るまでの間、ずっとその言葉だけを持ってきた、という目だった。
「現時点で、安否は確認できていません」
アサマは繰り返した。同じ言葉を、もう一度言った。
スイートルナの目が、わずかに揺れた。揺れないようにしていたものが、一瞬だけ限界に近づいた。それだけだった。次の瞬間には、また静かになっていた。
エプソムが立ち上がった。
姉妹が、向かい合った。
何も言わなかった。言葉は要らなかった。二人の間に、言葉より先に何かが通った。我が子を待っている、という同じ重さが、二人の間にあった。
エプソムが、ルナの外套についた雪を、静かに払った。
その瞬間だけ、ルナの目が変わった。気高さが、一瞬だけ溶けた。シンボリの名を背負った目ではなく、妹にだけ見せる、一人の姉の目になった。それはほんの一瞬だった。次の瞬間には、また元に戻っていた。
でもアサマは見た。スピードシンボリも、見た。
「捜索班が、今朝出ました」
アサマが言った。
ルナはアサマを見た。
「夜明けと同時に」
それだけだった。それだけで、十分だった。
ルナは一度だけ、目を閉じた。開いた時には、何かが決まっていた。
窓の外で、捜索班の姿が防風林の方角へ消えていくのが見えた。小さくなっていく背中を、この部屋にいる全員が見ていた。
山が、朝の光の中に、ただそこにあった。
答えなかった。ただ白く、静かに、そこにあった。
昨日も、一昨日も、そして今日も。
本作では、スイートルナ(ルドルフの母)とスイートエプソム(シリウスの母)を姉妹設定としました。
公式でラモーヌとアルダンが姉妹であることを踏まえ、少しだけ独自解釈を加えてました。