The Unsung Mission   作:Maat-ka-Usir

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書き切ることが出来て一安心しております。


名もなき王と、色褪せたクジラ

それは、絶対的な秩序という鉄の規律に縛られたキヴォトスという世界において。

 

たった一夜だけ。

最強と謳われた暴力と、完全なる理という神の領域に真っ向から牙を剥き、その純白の歴史に決して消えない、深く、昏い「砂の傷痕」を刻みつけた、一時の泡沫の『夢』。

 

愛した後輩の明日を守るため、己のすべてを懸けて神の絶対的な未来予知すらも撃ち抜いた、名もなき王の泥だらけのレジスタンス。

世界の誰も知らない、歴史の闇に葬られた神話の終焉。

 

――そして、映像は、砂嵐のような激しいブロックノイズと共に、寂寥たる暗転を迎える。

 

――キヴォトスのどこか、光さえも到達を拒む地下深く。

 

冷たく湿った空気が澱み、無機質な巨大サーバーの駆動音と、不快なオゾンの悪臭だけが支配する『ゲマトリア』の会合室。

分厚いコンクリートと鉛の壁に囲まれたその絶対の密室に、鼓膜を物理的に抉るような、ひどく耳障りで狂気に満ちた哄笑が響き渡っていた。

 

「……クフフ……アハハ、アーッハハハハハハッ!! 素晴らしい! 実に、素晴らしい……ッ!!」

 

一切の光を飲み込むような暗闇の中、黒服は両腕を天に捧げるように大きく広げ、異様な歓喜にその細い肩をガクガクと震わせていた。

彼の顔には、表情を形作るべき目も鼻もない。だが、そののっぺりとした暗黒の貌(かお)が、今まさに歓喜の絶頂に歪み、悍ましい嗤いの形を成していることだけは、誰の目にも明らかだった。

 

彼の目の前にそびえ立つ複数の巨大なモニター群。

そこに映し出されているのは、ブラックサイトの極秘データベースから強制的に抽出された、不気味な血色のノイズに塗れた『断片記録』である。

 

「まさか、あの掃き溜めのようなスラムで拾い上げた底辺の泥棒猫たちが、これほど極上の『餌』を咥えて帰ってくるとは……! 運命というものは、時に我々にとって極上のスパイスを用意してくれるものですねぇ」

 

黒服は、芝居がかった手つきで指揮棒を振るうように指を動かす。

モニターの下部で、ボロボロになり、恐怖で失禁し、泡を吹いて気絶しているヘルメット団の少女たちが転がっていた。

 

彼女たちは本来、連邦生徒会長の目を引くための単なる「陽動のノイズ」、あるいは使い捨ての駒に過ぎなかった。

だが、あの屋上で神と王が激突し、キヴォトスの理そのものが軋みを上げ、連邦生徒会長の『システム』がユメという巨大なバグの処理に全リソースを割かれた、あの数分間。

盤面の外に放置された羽虫たちは、生存本能と強欲さだけを頼りに、クラフトチェンバーの端末へと物理的にアクセスし、そこに眠っていた「禁忌のデータ」を抜き取るという奇跡的な任務を完遂してのけたのだ。

 

「さあ、見せていただきましょう。彼女が、あの箱庭の主が、自らの未来予知のシステムを総動員してまで隠蔽し、観測し続けていた『世界の裏側』を……!」

 

黒服の細い指が、キーボードを叩く。

瞬間、会合室のモニター群が一斉に不気味な赤色に明滅し、ノイズの奥から『別のキヴォトス』の光景が再生され始めた。

 

――天を衝くほどの鮮血のように、昏く赤く染まった空。

――まるで巨人の手で握り潰されたかのように粉々に砕け散り、不気味な紫色に発光する月。

――大地はひび割れ、生命の息吹は完全に絶え、キヴォトスという世界のすべてを侵食し、無へと還そうとする、どす黒い『色彩』の波が荒れ狂っている。

 

「……ああ、これです。これこそが、我々ゲマトリアが長年探求し、渇望してきた『神秘』の裏側。究極の反転、その実在の絶対的証明……ッ! まさか、あの万物生成器(クラフトチェンバー)の、光の届かぬ深淵の奥底に、このような絶望(真理)が大切に保管されていたとは!」

 

「なるほど、理解しましたよ。あの冷徹なる超人は、この『色彩』による世界の崩壊を観測し、それを未然に防ぐために、自らのシステムでキヴォトスを完璧な箱庭に造り替えようとしていた。……そして、その終末の引き金となる最大の不確定因子こそが、アビドスという死にゆく砂漠に眠る、あの小さな後輩だったというわけだ」

 

「……Magnifico(素晴らしい)。まさに、美の極致だ」

 

黒服の狂喜に呼応するように、暗闇の奥から、壮麗なオーケストラの指揮者のような身振りで、双頭の異形――マエストロが歩み出た。

彼はモニターに映る『色彩』の光景よりも、別のモニターで再生されている「ユメが連邦生徒会長の『Sophia』を粉砕した瞬間」の映像に、うっとりと見惚れていた。

 

「絶対なる秩序が、泥まみれの感情によって無惨に破壊されるその瞬間! その構造的な悲劇とカタルシス! 芸術的なタクトが鉄屑に成り下がる、この悍ましくも美しい『Mimesis』の反逆……! おお、あのアビドスの王が放った一撃こそ、私が生涯を懸けて追求する『崇高(Sublime)』に至るための、至高の芸術(ゲシュタルト)だ!」

 

「左様。テクストは、常に作者の意図を離れて暴走するものなのです」

 

どこからともなく、慇懃無礼な紳士の声が響いた。

暗闇から姿を現したのは、巨大な肖像画の額縁を顔の代わりに持つ男――ゴルコンデと、その額縁を抱える首無しの巨漢――デカルコマニーの二人組であった。

 

「連邦生徒会長という『作者』は、キヴォトスを悲劇のない完璧な箱庭(ユートピア)として記述しようとした。しかし、梔子ユメという一つの『記号』が、Damnatio Memoriae(記憶抹消)によって世界から意味を剥奪されながらも、物理的な法則を無視して論理の壁を打ち破った。……彼女の描いた完璧な物語(シナリオ)は、ここで修復不可能な論理破綻をきたしたわけです」

 

絵画の中の紳士、ゴルコンデが優雅にステッキを振るう。

 

「神秘(ヘイロー)の消失という現象すらも、物理的・概念的な『解釈』によって人為的に引き起こせる可能性が、ここに証明された。……ならば、この現象を新たな『テクスト』として再定義し、兵器として記述してはどうでしょう?」

 

「そういうこった! その『ヘイロー破壊爆弾』の完成は、このデカルコマニー様が引き受けてやる!」

 

首無しの巨漢、デカルコマニーが、地を這うような太い声で、新たな破滅の具現化を高らかに宣言した。

 

「ええ、実に興味深い。キヴォトスの生徒が持つ不可侵の象徴(ヘイロー)を、完全に破壊する爆弾。……その概念を実体化させた『テクスト』、貴女の教育に役立ててみてはいかがかな? ベアトリーチェ」

 

ゲマトリアの面々の視線の先。

会合室の空気が、突如として凍りつくような殺意と冷酷さに支配された。

闇の中から、豪奢なドレスに身を包み、いくつもの赤い目を不気味に光らせた悍ましい魔女

――ベアトリーチェが、冷たいヒールの音を響かせて現れた。

 

彼女の視線は、モニターの中で右腕を失いながらも笑うユメの姿を、まるで汚物でも見るかのように冷酷に見下ろしていた。

 

「後輩への愛? 泥だらけの明日? 虫唾が走るわ。そんな陳腐な感情ごときで世界の理が揺らぐなど……連邦生徒会長も、とんだ三流の神に成り下がったものね。……でも、ゴルコンデ、デカルコマニー。貴方たちが完成させるその『ヘイローを破壊する爆弾』、喜んで貰い受けてあげるわ」

 

ベアトリーチェの背後。暗闇のさらに奥底、モニターの光すら届かない深淵のモニター群に、ゲマトリアの他のメンバーにも秘匿された「もう一つの光景」が微かに映し出される。

 

それは、冷たい雨が降り頻る、光の届かない廃墟。

キヴォトスから見捨てられ、忘れ去られた地下のカタコンベ(地下墓地)。

そこには、ガスマスクで顔を隠し、感情を完全に消去された無数の兵士たち――『アリウス分校』の生徒たちが、亡霊のように整然と列をなして行軍していた。

 

「彼女は、証明してくれたわ。あの連邦生徒会長の秩序もまた、決して『無敵ではない』という事実をね。……ふふっ、これなら計画を早められそう」

 

ベアトリーチェの何十もの赤い目が、狂気と野心に細められる。

彼女はアリウスの子供たちを洗脳し、虚偽の憎悪を植え付け、自らの目的のための「捨て駒」として冷酷に育て上げていた。

 

「Vanitas vanitatum et omnia vanitas。あのアビドスの愚王は、自らの存在を抹消してまで後輩の明日を守ろうとしたけれど……無駄なことよ。デカルコマニー、貴方が作り上げる『死の爆弾』を、私のかわいい子供たち(アリウス)が起爆させた暁には」

 

ベアトリーチェは、高く、甲高い声で狂笑した。

 

「連邦生徒会長も、あの生意気なアビドスの後輩も……キヴォトスのすべてが、等しく血に沈み、私が招き入れる『色彩』によって平等な虚無へと還るのだから」

 

彼女の狙いは、連邦生徒会長が恐れたあの『色彩』を、自らの手で現世へと招き入れること。そのための生贄の儀式の場としてふさわしい機会に、透き通るような世界を血に染める準備を、着々と進めていたのだ。

 

黒服、マエストロ、ゴルコンデとデカルコマニー、そしてベアトリーチェ。

キヴォトスの法則を弄ぶ『ゲマトリア』の怪物たちは、それぞれの異なる欲望と狂気を抱えながら、血色のモニターの光の中で嗤い合う。

 

ユメ先輩が命を懸けて砕いた「完璧な箱庭」のひび割れ。

それは、後輩たちへの「明日」という希望の光を差し込ませると同時に、キヴォトスの外側に潜む、この悍ましい怪物たちの野心――「エデン条約」という史上最悪の悲劇を、一気に加速させるパンドラの箱の鍵でもあった。

 

「さあ……舞台の幕は、大きく上がりました。神の予言は砕け散り、運命の歯車は狂い始めた」

 

黒服は深く、優雅にお辞儀をした。

 

「アビドス最後のファラオよ。貴女の命を懸けた抵抗が、この世界にどのような『明日』をもたらすのか。……我々ゲマトリアは、この特等席で、じっくりと観測させていただきましょう」

 

静まり返った暗闇の地下深く。

誰も知らない世界(キヴォトス)の底で、終末を告げる滅びのテクストが、静かに、けれど確実に、不気味な産声を上げていた。

 

――一方、連邦生徒会、会長室。

 

サンクトゥムタワーの最上階。地上数千メートルの高さに位置するその空間は、キヴォトスの頂点であり、最も天(神)に近い不可侵の聖域であった。

 

防弾ガラスの向こう側に広がるのは、彼女が愛し、彼女自身がたった一人で統べようとしている巨大な学園都市の夜景。

無数のネオンや街灯が、まるで精密に計算され尽くした巨大な電子回路のように整然と瞬いている。争いも、不条理も、理不尽な悲劇も、この高みから見下ろせばすべては光の粒子に還元され、一つの「完璧な秩序」として美しく調和しているように見えた。

 

その完全なる秩序の下に輝く光の海を背にして。

キヴォトスの神とも呼べる超人は、一切の物音が排除された無菌室のような執務室の中央に、ただ一人、彫像のように静かに立ち尽くしていた。

 

室内には、キヴォトス全土の状況を演算する何百ものホログラム・ディスプレイが青白い光を放ちながら空中に展開されている。だが、今の彼女の瞳には、それらの膨大なデータ群は一切映っていなかった。

 

彼女の視線は、ただ一点。

己の純白の制服にこびりついた、微かな汚れへと注がれていた。

 

一点の曇りも、一糸の乱れも許されない、彼女の完璧な潔癖性を象徴するような純白の生地。

それが、朱色に染まり、一筋の黄金の砂さえこびりついている。

あの屋上での死闘の果て。彼女の絶対的な未来予知のタクト『Sophia』を粉砕した、あのアビドスの王が放った限界突破の強装弾――『マアト』の暴風が巻き上げた、泥臭い砂漠の欠片だった。

 

それは、本来であれば、彼女のシステムによって即座に『排除』されるべき、不快な汚れのはずだった。

手で払えば、一秒もかからずに床へと落ちる、ほんの数ミリの砂粒。

しかし、彼女はその砂を払おうとはしなかった。

 

――いや、払えなかったのだ。

 

彼女の左腕には、まだ『Sophia』をへし折られた時の、ひどく熱く、ひどく重たい物理的な衝撃の余韻が、幻肢痛のように生々しく残っている。

コンクリートが爆散する轟音、血と硝煙が入り混じった生温かい風の匂い。そして何より、カルトゥーシュを破壊され、ノイズに塗れて消えかかりながらも、最高にお人好しな笑顔を浮かべて引き金を引いた、あの少女の琥珀色の瞳。

 

そのすべての記憶が、この小さな一粒の砂に凝縮され、彼女の完璧な論理に致命的なエラーを吐き出させ続けていたのだ。

 

(……計算外。理解不能。……一切のロジックを持たない、純粋な混沌。)

 

感情を排し、世界を最適化するためのシステムとして在り続けた彼女の脳裏で、高速の思考が空転する。

 

なぜ、あの少女は笑えたのか。

なぜ、己の存在が歴史から完全に抹消されるという、死よりも残酷な絶望(Damnatio Memoriae)の淵にあって、あのような気高い一撃を放てたのか。

 

彼女がシステムで導き出した『未来』は絶対だったはずだ。

悲劇の芽である不確定因子を排除し、テラー化する小鳥遊ホシノの運命の分岐を未然に断ち切る。そうやって、いくつもの犠牲を払ってでも、キヴォトスという箱庭全体を無菌室のように美しく保つこと。

それが、連邦生徒会長である彼女がたった一人で背負った、世界全体に向けた「巨大で冷徹な愛」であり、絶対の正義だった。

 

(私の演算は、キヴォトスにおける最適解だったはず。……それなのに)

 

彼女の巨大な愛は、たった一人の後輩の明日を願う、泥だらけの小さな愛に、真正面から撃ち抜かれた。

 

『あたたかくて、ずっと見ていたい夢でも……朝が来たら、人は起きなくちゃいけないんだよ』

『人が生きていく世界は、誰かが決めた完璧な箱庭なんかじゃなくていい。泥だらけで、不格好で、間違えたり、傷ついたり……それでも、自分で選び取る「明日」じゃなきゃいけないんだよ』

 

あの少女の言葉が、耳の奥で呪いのように、あるいは福音のようにリフレインしている。

 

悲劇のない完璧な箱庭は、所詮は「夢」に過ぎないのだと、彼女は言った。

傷つくことを恐れて無菌室に閉じ込めるのではなく、傷つき、間違えながらも、自分の足で歩き出す「朝(現実)」をこそ、生徒たちは生きていかなければならないのだと。

 

(……私は、間違っていたというのですか。私がすべてを計算し、一人で最適化できると思っていたこの世界には、そもそも、完璧な秩序など存在しなかったと……?)

 

ゆっくりと。

まるで、触れてはいけない神聖な遺物に手を伸ばすように。

彼女の白魚のように細く、血の気のない指先が、肩口に乗った泥臭いアビドスの砂に、そっと触れた。

 

――ザラリ、と。

 

神の指先に伝わってきたのは、確かな質量を伴う、剥き出しの命の感触だった。

彼女がこれまでモニター越しの数字(データ)としてしか処理してこなかった、泥まみれで、不格好で、傷だらけの「生徒たちの現実」。

その砂粒は、あの底知れぬ熱量を持ったマグナム弾の熱を、あるいは、あの屋上で散った少女の血液の温度を未だに宿しているかのように、ひどく熱く感じられた。

 

常に無表情を貫き、一切の感情を排してきた純白の超人の瞳が、微かに、しかし確かに揺らいだ。

 

彼女の瞳の奥に宿ったのは、システムには到底処理しきれない、名前のない感情。

完璧な理を打ち砕かれたことへの「恐怖」。

人の持つ不合理な執念と愛の深さに対する「畏敬」。

 

その二つが入り混じった、絶対的な『畏怖』の念だった。

 

「…………っ」

 

超人の美しい唇が微かに震え、音にならない吐息が漏れる。

彼女は、肩の砂を払うどころか、その一粒の砂に触れた指先を、まるで祈るように自身の胸元へとゆっくりと引き寄せた。

 

それは、キヴォトスの偽神が、ただの人間の前に完全に屈服した瞬間だった。

 

彼女が築き上げようとした完璧なディストピアは、砂漠の片隅で名もなき王が放った一撃によって、決定的なひび割れを生じさせられた。

もう、彼女はキヴォトスを「自分一人の計算」で統べることはできない。計算外の奇跡を、泥だらけの意志の力を、この身をもって知ってしまったのだから。

 

(……梔子、ユメ)

 

声に出すことすらできず、ただ胸の内で、その歴史から抹消されたはずの少女の名を呼ぶ。

キヴォトスのすべてを見下ろす孤独な執務室で。

少女の胸の奥底に、たった一粒の砂が、残酷なまでに鮮烈で、そして永遠に消えることのない『敗北の記憶』を、深く、深く刻み込んでいた。

 

――そして、時は少しだけ流れ。

アビドス高等学校、夕暮れの生徒会室。

 

昨夜、キヴォトスの頂点であるサンクトゥムタワーの空で繰り広げられた規格外の激闘。偽神の理を砕き、存在を抹消され、名も無き王の命の灯火すらも燃やし尽くしたあの凄惨な神話の再現など、まるで最初から存在しなかった嘘のように。

 

窓の外では、いつもの穏やかで、少しだけ退屈なアビドスの砂嵐の音が、サラサラと規則正しく響いていた。

 

傾きかけた夕日が、ひび割れた窓ガラスを通して、埃っぽい部室をオレンジ色に染め上げている。

生徒会室の片隅、ギシギシと悲鳴を上げるボロボロのパイプ椅子に深く腰掛けた名も無き王は、目の前の長机に突っ伏している後輩のつむじを眺めながら、だらしなく頬を緩ませていた。

 

(……あはは。今日もホシノちゃんは、つむじまで可愛いなぁ)

 

名も無き王の身体は、本来であれば到底生きていられる状態ではない。

限界突破の強装弾(ホットロード)を撃ち放った右腕の骨と筋肉はズタズタに引き裂かれ、超人のカスール弾に貫かれた胸の風穴は、オシリスの神秘によって無理やり塞がれているだけだ。呼吸をするたびに肺が軋み、全身の神経が焼き切れるような激痛が、絶え間なく脳を苛み続けている。

制服の下には、痛々しいほどの分厚い包帯が何重にも巻かれ、真っ赤な血の滲みが広がっているはずだった。

 

しかし、名も無き王はそんな死の淵にいるような素振りを、微塵も見せない。

痛みを奥歯で噛み殺し、いつもの「ちょっと頼りなくて、お人好しで、ポンコツな先輩」の仮面を完璧に被り、ただただ、愛おしい後輩の姿を網膜に焼き付けるように見つめていた。

 

「……ユメ先輩。さっきから顔、緩みすぎですよ。締まりがないっていうか……だいたい、昨日は夜遅くまでどこほっつき歩いてたんですか。連絡もよこさないで」

 

突っ伏していた1年生の小鳥遊ホシノが、顔を半分だけ上げて、尖った口調で少しだけ面倒くさそうに毒づいた。

彼女の警戒心の強いオッドアイは、ニヤニヤしている名も無き王を怪訝そうに、そしてどこか「無事に帰ってきてホッとした」ような、隠しきれない安堵の色を滲ませて見つめていた。

 

「それに、だいたいその手にある古いカメラは何ですか? また変なガラクタ拾ってきたんですか?」

 

「えへへ……。違うよぉ、ホシノちゃん。今日はね、すっごく特別なプレゼントがあるんだよ!」

 

名も無き王は痛む右腕を庇いながら、背中に隠していた「それ」を、恭しくホシノの目の前へと差し出した。

 

ドドン!!と。

傷だらけの長机の上に置かれたのは。

ホシノがカタログを見てずっと欲しがっていたけれど、高くて手が出なかったはずの、真新しい『BIGクジラさんぬいぐるみ』だった。タグすら切られていない、完全な新品だ。

 

「あぇ……、BIGクジラさんぬいぐるみ? しかもこれ、新品……?」

 

ホシノのオッドアイが、信じられないものを見るように限界まで見開かれる。

 

「……えっ? なんで? ユメ先輩、お小遣いなんて全然ないはずじゃ……。まさか、また怪しいバイトに……」

 

「えへへ、買っちゃった! 色々あってね、ちょっとすっごく大変なお仕事をして、特別ボーナスが出たからねぇ。……ほら、受け取って?」

 

(――本当は、ヘリコプターのチャーター代金を前金で支払う為に、ホシノちゃんの大事な『別のクジラさんグッズ』をいくつか勝手に質に入れちゃったから、その罪滅ぼしなんだけど……絶対に、絶対に秘密だよぉ)

 

泥だらけのレジスタンス。偽神との死闘。右腕の代償。

そして、後輩には絶対に言えない、ポンコツな先輩としてのちょっとした罪悪感。

 

そのすべてを「ちょっと大変なお仕事」という底抜けに軽い言葉と笑顔で完全に隠し通し、名も無き王は真新しいぬいぐるみをホシノの胸へと押し付けた。決して、この子に余計な重圧や心配をかけないために。

ぬいぐるみからは、買いたてのふかふかの匂いと、それに混じって、微かに火薬の匂いと冷たい夜風の匂いがした。

 

状況が飲み込めず、ぬいぐるみを抱きしめたままキョトンとしているホシノ。

その、まるで迷子の子猫のような、無防備で可愛らしい顔に向けて。

 

名も無き王は、首から下げていた使い古されたフィルムカメラを構えた。

デジタルデータではない、物理的なフィルムに光を焼き付ける、時代遅れのアナログカメラ。

 

パシャ!

 

「嬉しいことがあった時、人は写真を撮って残すものなんだよぉ~」

 

名も無き王は緩みきった笑顔のまま、鈍いシャッター音を響かせ、手動でフィルムを巻き上げる。

 

昨夜、名も無き王が見たあの赤い空と、砕けた月のビジュアルなんて、どうでもいい。

キヴォトスを侵食しようとする『色彩』の脅威も、完全なる秩序を目指した連邦生徒会長の傲慢な正義も、地下深くで暗躍するゲマトリアの大人たちの狂気も、知ったことではない。

 

そんな、スケールの大きすぎる神話や世界の真理なんて、いまの名も無き王には何一つ価値がなかった。

 

レンズの向こう側にいる、この小さな女の子。

名も無き王がいなくなったら、世界を敵に回してでも孤独に戦い抜いてしまうような、危なっかしくて、不器用で、誰よりも優しい後輩。

彼女が今、真新しいBIGクジラさんぬいをギュッと抱え、キョトンとした顔で、ちょっとムスッとしながら、名も無き王の目の前で生きて、息をしている。

 

――ただ、それだけでいい。

 

名も無き王の存在(カルトゥーシュ)が『Damnatio Memoriae』によってキヴォトスの電子ネットワークから完全に抹消されようとも。

データが消えるなら、紙(フィルム)に焼き付ければいい。歴史が名も無き王を忘れるなら、この子が、少しだけ覚えていてくれればそれでいい。

 

何よりもかけがえのない『アビドスの未来』が、今、ファインダーのど真ん中に収まっているのだから。

 

「ちょっと、ユメ先輩! 勝手に撮らないでくださいってば……! 恥ずかしいし、私、今絶対変な顔してたし!」

 

慌ててふかふかのぬいぐるみを盾にして顔を隠そうとするホシノ。

 

「あははっ、ダメだよぉ、記念なんだから! ほら、ホシノちゃん、はい、チーズ! ……えへへ、すっごくいい顔、撮れちゃったもんねぇ!」

 

パシャッ、という小気味よいシャッター音が、静かな部室にもう一度響き渡る。

チカッと瞬いた白いフラッシュの光が、オレンジ色の夕日をかき消し、二人の、くだらなくて、暖かくて、愛おしい何気ない時間を、永遠のフィルムの海へと切り取った。

 

あの任務のことは、歴史の教科書には決して載らない。

 

神に等しい超人の未来予知を打ち破り、世界の滅びの分岐点を強引にねじ曲げた名も無き王の偉業は、連邦生徒会の公式記録から完全に抹消された。

誰も、アビドスのポンコツなファラオが成し遂げた、あの狂気的で神話のような死闘を知ることはない。名も無き王はキヴォトスの英雄にも、救世主にもならない。

 

けれど。

後に街の小さな写真屋で現像された、その不格好で、少しだけピントの甘い写真の中で。

 

バンドエイドを顔中に貼り、右腕を不自然に庇いながらも、満面の笑みでピースサインを決める『名もなき最強の王』の姿は。

 

泣き出しそうな、怒っているような、それでも真新しいクジラのぬいぐるみを大切そうに抱きしめる後輩の隣で――キヴォトスの歴史に名を残すどの偉大な英雄たちよりも、誇らしげで、そして、本当に幸せそうだった。

 

『―― ~The Unsung Mission~ Fin ――』

 

――アビドス・ダンス♪

 

――特H…

 

ブラウン管の画面がプツンと弾けるような音を立てて暗転し、後には無機質でざらついた砂嵐のノイズだけが、夕暮れの部室に虚しく響き渡っていた。

 

エンディングのスタッフロールやポストクレジットシーンの余韻に浸る間もなく。

張り詰めていた糸が切れたように、黒見セリカがバンッ! と長机を両手で力任せに叩いて立ち上がった。

 

「ちょっと! なによこれーッ!!」

 

ピンと限界まで逆立った猫耳と、小刻みに震える尻尾。彼女の顔には、混乱と興奮、そして得体の知れない巨大な感情がないまぜになったような色が浮かんでいた。

「死んだと思ったら不気味な光を出して生き返るし、連邦生徒会長のバケモノみたいな弾丸と真正面からドンパチやるし、腕が吹き飛んでるのに最後はへらへら笑って空から落ちていくし……! どうなってんのよあのファラオ! 無駄にリアルでタチの悪いB級アクション映画でしょ!?」

 

「ん。……すべてが常識外れ。物理法則も、戦術理論も、完全に無視してる」

砂狼シロコは腕を組み、砂嵐を映し続ける画面から一切目を離さずに、ひどく熱を帯びた声で冷静な分析を口にする。

「M29とM329。あのいびつな二丁拳銃を同時に乱射すれば、反動で腕の骨は粉々に砕ける。連邦生徒会長の.454カスール弾を防ぎきれるわけもない。……そして何より、心臓を撃ち抜かれてヘイローが消失した後の、死の超克した神秘。私の本能が、あれは絶対に覆らない『死』だったと告げているのに……あの王様は、それを気合と執念だけでねじ伏せた。……恐るべき戦士。でも、どうしてだろう。あの戦い方……すごく不格好で、非合理的なのに、どこか知っているような、ひどく懐かしい気がする……」

 

「ふふっ……、ぐすっ」

十六夜ノノミは、そっと目尻に浮かんだ大粒の涙を指先で拭いながら、どこか誇らしげに、慈愛に満ちた笑みを浮かべた。

「最初はただのチープで安っぽいB級映画かと思いましたけど……あの黄金の王様、とってもお人好しで、無鉄砲で、でも誰よりも後輩想いで……本当に、格好良かったです☆ なんだか、泥だらけになって借金を返そうとしている、私たちアビドスの生徒みたいでしたねぇ」

 

「で、でも……連邦生徒会の裏の顔に、ゲマトリア……それに、キヴォトス全体を滅ぼしてしまう『色彩』……」

奥空アヤネはタブレットを胸に強く抱きしめ、事の重大さと、自分たちが垣間見てしまったスケールの大きさに、ガタガタと肩を震わせている。

「映画にしては設定がリアルすぎて、生々しくて、少し怖いです……。私たちが見ている世界なんて、ほんの上澄みでしかなくて。それに最後、主人公の顔、激しいノイズがかかって全然見えなくなっちゃいましたし……あれじゃ、まるで本当に最初から『存在しなかった』みたいで……」

 

「――みんな、一旦落ち着こうか」

 

わちゃわちゃと騒ぎ始め、それぞれの感情を爆発させる生徒たちを静かに制するように、先生がソファーから立ち上がった。

大人の落ち着いた、けれどどこかひどく重々しい声に、4人の視線が一斉に集まる。

先生は年代物のテレビデオに歩み寄ると、ガチャン、と取り出しボタンを押し、内部で熱を持った黒いVHSテープをゆっくりと抜き取った。

 

手のひらに伝わる、古いプラスチックの熱と重み。

これはただの映画のテープなどではない。歴史から抹消され、誰の記憶からも消え去ろうとしている一人の少女が、己の命と存在を燃やし尽くしてアビドスの未来を守り抜いた、その泥だらけの生き様の『墓標』であり、『遺言』だった。

 

「このテープは、危ないから一旦先生が預かっておくよ。……出処も分からない不審物だし、あまり大っぴらにしていい内容じゃないからね」

 

そう言ってテープを鞄の奥底にしまうと、先生は振り返り、部室の扉へと向かった。

「少し、風に当たってくるよ。みんなは先にお茶にして、一息ついてて」

 

向かう先は、決まっていた。

あの子が一人で抱え込んでいる、冷たくて重すぎる過去の真実。それを垣間見てしまった大人として、今すぐに向かわなければならない場所があった。

 

オレンジ色に染まる旧校舎の廊下を抜け、重たい鉄の扉を押し開ける。

 

――校舎の屋上。

 

夕暮れの乾いた風が、鼓膜を打つように激しく吹き荒れる中。

パトロールに行ったはずのホシノは、そこにいた。

 

彼女は錆びついた金網に小さな背中を預け、少し色褪せて手垢のついた『BIGクジラさんのぬいぐるみ』を胸の前にぎゅっと抱きしめながら、茜色に染まるアビドスの果てしない砂漠を、ただ静かに見つめていた。

 

ギィ、と重たい屋上の扉が開く音が風に乗って響く。

足音で誰が来たのか察したのか、ホシノは振り返ることもせず、ぽつりと、いつもの気の抜けた声で呟いた。

 

「……うへぇ、先生。……見終わったの?」

 

先生は黙って歩み寄り、ホシノの隣に並んで金網に寄りかかった。

眼下に広がる砂漠は、あの映像の中で主人公が守ろうとしたものと同じ、ただひたすらに広大で、残酷で、美しい夕景だった。

 

「……ああ。すごいアクション映画だったよ。特に、主人公の王様がね」

 

先生がわざと、あくまで「映画の感想」という建前のオブラートに包んでぼかして語りかけると、ホシノは空を見上げたまま、胸のクジラのぬいぐるみをさらに強く抱きしめ直した。

 

「……そっか。まぁ、おじさんには難しすぎる話だから、パスして正解だったかな〜。映画はCGとか派手で疲れちゃうしねぇ」

 

いつも通りの、おじさんぶった緩い口調。飄々とした態度。

世界から存在を抹消されるという残酷な理(Damnatio Memoriae)によって、彼女の記憶からも『名も無き最強の王』ユメ先輩という明確な輪郭は既に奪い去られている。顔も、声も、ノイズに塗れてうまく思い出せない。

ただ一人ですべてを抱え込もうとする不器用な後輩に、これ以上『自分の死』という重荷を背負わせまいとした、不器用な先輩の最後の優しい呪い。

ホシノはそれに守られながらも、胸の奥底に開いた「絶対に埋まらない喪失感」をごまかすように、必死で平気を装っていた。

けれど、風に揺れる彼女の小さな背中は、どうしようもない孤独と寂しさに、微かに、けれどはっきりと震えていた。

 

「ホシノ」

 

先生は、必死に自分を偽り、ごまかそうとするその小さな背中へ向けて。

映画という建前をすべて脱ぎ捨て、真っ直ぐに、ありったけの敬意と愛を込めた言葉を投げかけた。

 

「君の先輩は……本当にかっこよかったよ」

 

その瞬間。

ビクッ、とホシノの肩が大きく跳ねた。

映画の感想という建前をすり抜け、先生だけは『すべてを知っている』と伝えたその一言。

自分の心の一番柔らかくて痛い部分に、大人が真っ直ぐに触れてくれたこと。

張り詰めていたホシノの感情のダムが、音を立てて決壊した。

 

彼女の警戒心の強いオッドアイから、堪えきれないようにポロリと一粒の大粒の涙がこぼれ落ち、夕日にキラキラと反射してコンクリートの床に染みを作る。

 

「……へへっ。あの映画のバカな王様さ」

 

ホシノの声は、ひどく掠れて、震えていた。

彼女は胸のクジラに顔を埋めるように俯きながら、途切れ途切れの言葉を紡ぎ出す。

 

「このクジラ……質に入れたやつを買い戻したんじゃないんだよ。あの人、ヘリコプターのチャーター代を前払いするために、私が大切にしてた『他のクジラさんグッズ』を、こっそり全部質に入れちゃってたんだ。……バカだよね」

 

ホシノの目から、次々と涙が溢れ出し、ぬいぐるみの生地に吸い込まれていく。

 

「それでさ……私が怒る前に買い戻してごまかすための時間稼ぎのつもりだったのか、それとも罪滅ぼしのつもりだったのか。……すっごく高くて、お小遣いなんかじゃ絶対買えないはずの、この『新品のBIGクジラさんぬいぐるみ』を、わざわざ買ってきてさ。……私のところに、強引に押し付けてきたんだよ」

 

映像の中で見た、限界を超えた死闘。

右腕の肉が弾け飛び、胸に風穴を開け、命の灯火を燃やし尽くして神の理を打ち砕いたあの『名も無き最強の王』。

 

「すっごくボロボロになって、全身に包帯巻いて、血と硝煙の匂いなんかプンプンさせてるのに……。痛い顔ひとつ見せないで、へらへら笑いながらさ。『特別ボーナスが出たんだよぉ』なんて、見え透いた嘘をついて……」

 

ホシノの両手が、ぬいぐるみを握りしめるあまり白く鬱血していた。

名前も、顔も、もうノイズに塗れてうまく思い出せない。

けれど、あの夕暮れの部室で、新品のぬいぐるみを押し付けてきた先輩の、不格好で、優しくて、どうしようもなく温かい『愛の温度』だけは、この腕の中に、魂の奥底に、鮮烈に焼き付いて離れないのだ。

 

「無茶苦茶で、ハラハラして……本当に、バカな人だねぇ……。あんなトンデモない連中を相手に、たった一人で背負い込んでさ。後輩に重たいもの、何一つ持たせないで……自分だけ、全部持ってっちゃってさ……っ」

 

――『アビドスは……可愛い後輩が、やっと見つけた「居場所」なんだよぉッ!!』

 

先生の脳裏にも、映像の中で己の存在を懸けて吠えた、あの泥臭くて誰よりも温かい『名も無き最強の王』の姿が鮮明に蘇る。

システムから存在を抹消されようと、歴史が名も無き王を忘れ去ろうと。名も無き王が身を挺して遺した「想い」という真理だけは、決して消え去ることなく、この小さな後輩の胸の中に、絶対に消えない確かな熱として生き続けている。

『 Damnatio Memoriae 』の残酷な理すらも、二人の絆を完全に断ち切ることはできなかったのだ。

 

「……名前も、顔も、もううまく思い出せないけどさ。でも……」

 

ホシノは、涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げ、夕日を受けて黄金色に輝く砂漠を真っ直ぐに見つめた。

その瞳には、悲しみを乗り越え、先輩が遺したアビドスを絶対に守り抜くという、気高い決意の光が宿っていた。

 

「やっぱり、私の……私たちの先輩はさ、世界一カッコいい『最高の先輩』だったよね…」

 

小さく、誇らしげに、そして愛おしそうに呟かれたホシノの言葉。

先生は何も言わず、ただ優しく微笑んで、一歩前へ出ると、肩を震わせるホシノの頭を、大きくて温かい掌でポンポンと撫でた。

 

「……うん。君の言う通りだ、ホシノ」

 

ホシノはもう、いつものようにおじさんぶって誤魔化すことも、身をよじって抵抗することもしなかった。

ただ静かに目を閉じ、新品だった頃の面影は薄れ、手垢と涙で色褪せたクジラのぬいぐるみに顔を埋めるようにして、先生の掌の温もりを、最高の先輩が遺してくれた優しい世界の一部として、素直に受け入れていた。

 

砂漠の風は、今日も厳しく、容赦なく吹き荒れている。

けれど、このアビドスという場所には、あの『最高の先輩』が己のすべてを懸けて不器用に、そして確かに守り抜いた、どこまでも暖かく、優しい時間が、今もこうして静かに流れていた。

 

吹き抜ける風の音の中に、あの底抜けに明るい「えへへ」という笑い声が、微かに混ざって聞こえた気がした。

 

 

 

 




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