カイジがデスノートを拾った世界 ~死神黙示録 カイジ 鉄骨渡り編~ 作:梅酒24
ざわ……ざわ……
ざわ……ざわ……
集められた……
まただ……!
この嫌な感覚……
地下とは違う……だが同じ匂い……
金と命が秤にかけられる場所の、あの独特の湿った空気……!
俺は立っている。
見知らぬ連中に囲まれながら。
どいつもこいつも……
目が死んでる……
いや――
違う……
ギラついてる……!
金だ……!
全員、金に取り憑かれてる……!
俺も含めて……!
(2億ペリカ……)
地下で掴んだ大金……
普通なら終わり……
だが俺は来た……!
ここへ……!
なぜか……?
(足りねぇ……!)
あの金を手にしても……
安心なんてできなかった……
むしろ――
もっと欲しくなった……!
ざわ……
ざわ……
そのとき――
黒服が現れる。
「静かにしろ……!」
ピタリと止まる空気。
支配……
完全な支配……!
「これから行うのは――」
一拍。
「鉄骨渡りだ……」
ざわっ……!!
鉄骨……?
ざわざわざわ……!
「地上数十メートルに設置された鉄骨を渡りきれば勝ち……」
(は……?)
「落ちれば――死」
ざわああああああっ!!
来た……
やっぱりだ……!
まともじゃねぇ……!
ただのギャンブルじゃない……
これは――
処刑台……!
「なお……途中で他者を妨害する行為は自由……」
ざわ……
(自由……!?)
つまり――
蹴落とせる……!
合法的に……!
(狂ってやがる……!)
だが同時に――
理解する……
(これ……勝てるやついるのか……?)
バランス……
精神力……
そして――
人を蹴落とす覚悟……!
普通の人間じゃ無理だ……
そのとき――
横から声。
「……あんたも来ちまったか」
振り向く。
石田のおっさん……!
「おっさん……!」
少しだけ……
心が軽くなる……
「バカだな……お前……」
おっさんは苦笑い。
「せっかく地下から抜けたのに……」
「……ああ……」
言葉が続かねぇ……
分かってる……
分かってるんだ……
それでも――
来ちまった……!
「……でもよ」
おっさんが小さく呟く。
「ここで勝てば……もう終わりだろ……?」
終わり……
(終わり……か)
その言葉に、心が揺れる。
「終わりにしたいよな……」
ぽつりと出た本音。
そのとき――
別の声。
「終わりにできる保証なんてないですよ」
冷たい声。
佐原……!
「甘いですよ……このゲーム」
(こいつ……)
相変わらずだ……
冷静……
いや――
冷酷……!
「どういう意味だよ……」
「簡単です」
「これは“運”じゃない」
「“選別”ですよ」
ざわ……
「生き残る人間を選ぶ……それだけの装置です」
ゾクッ……
背筋に走る寒気……
「つまり……」
佐原は続ける。
「勝つやつは最初から決まっている」
(決まってる……!?)
「精神的に壊れるやつ……躊躇するやつ……」
「そういうのから落ちていく」
淡々と……
事実のように言う……
「じゃあ……お前はどうなんだよ……」
「僕ですか?」
一瞬の沈黙。
「生き残りますよ」
迷いゼロ……!
(なんだこいつ……)
だが――
(頼もしい……!)
同時に思う……
この二人……
使える……!
いや――
(使う……!)
この狂ったゲーム……
一人じゃ無理だ……
協力……
裏切り……
利用……
全部込みで――
勝つ……!
そして俺は思う。
(鉄骨……)
(落ちたら終わり……)
(でも……)
心の奥で――
別の声がする。
(勝てる……!)
理由はまだ言葉にならない……
だが確信だけはある……
ざわ……ざわ……
ゲームは始まる……
***
ざわ……ざわ……
鉄骨。
その説明を聞いた瞬間――
俺の中で何かが弾けた。
(……いける……!)
悪魔的発想……!
地下では使えなかった……
デスノート。
突然死は怪しすぎる……!
疑われる……!
崩れる……!
だが――
今回は違う……!
鉄骨渡り。
落ちれば死ぬ……
それが“当然”の世界……!
なら――
(鉄骨から落ちて死ぬ……!)
不自然じゃない……!
むしろ自然……!
(書ける……!)
「○○ 鉄骨から転落死」
これで終わり……!
触れずに勝てる……!
(楽勝……!)
心が軽くなる……
いや――
軽すぎる……!
(神……!)
いる……!
これは……
神が味方している……!
いや――
死神……!
ククク……
頭の奥で笑い声がするような気がした。
勝ち確……!
だが――
「……待てよ」
ふと、現実に引き戻される。
ざわ……ざわ……
周囲のざわめき。
人の気配。
視線。
(名前……)
そうだ……
必要だ……
デスノートは――
本名が必要……!
(……聞く……?)
一人ずつ……?
ざわ……
無理だ……!
(時間が足りねぇ……!)
鉄骨渡り開始まで、わずかな時間……
数十人……
全員の名前を……?
不可能……!
(いや……待て……!)
考えろ……!
こういうときだ……
カイジ……!
追い詰められてからが本番だろ……!
ざわ……ざわ……
俺は周囲を見る。
連中はざわついている……
恐怖……
不安……
ひとつ、浮かぶ。
(使うか……?)
脳裏に浮かぶのは――
金。
(2億ペリカ……)
ある……!
俺にはある……!
(これを使えば……)
ざわ……
石田のおっさん……
佐原……
(あの二人なら……)
信用……?
いや違う……
利用できる……!
「おっさん……佐原……」
二人を引き寄せる。
「話がある……」
ざわ……
声を潜める……
「……一人100万円出す」
ピクリ。
反応……!
当然だ……!
この状況での100万……
重い……!
「名前を聞き出してほしい」
一瞬――
沈黙。
ざわ……
空気が変わる……
(……やっぱりか)
石田のおっさんが眉をひそめる。
「……なんでだ?」
来た……
当然の疑問……!
(どう答える……!?)
「いや……その……」
言葉が詰まる……
ざわ……ざわ……
(理由……!)
用意してねぇ……!
(クソ……!)
甘かった……!
デスノート前提の発想……
普通じゃねぇ……!
(100万で名前を聞け……?)
冷静に考えろ……
怪しすぎる……!
ざわ……
こんな状況で――
名前なんてどうでもいい……
普通は……
生き残ることを考える……!
それなのに――
名前……?
しかも報酬付き……?
(異常……!)
(不自然……!)
(露骨……!)
心臓が跳ねる。
(やばい……)
これは――
バレる……!
何かを企んでいると……
(デスノートの存在は分からなくても……)
(“何か”は確実に疑われる……!)
佐原が口を開く。
「……リスクと釣り合ってないですね」
(……!)
「名前を聞くだけで100万……」
「普通じゃない」
ズバリ……!
(見抜いてやがる……!)
ざわ……
「何かあるんでしょう?」
静かに刺してくる……
(こいつ……!)
やっぱり危険……!
(でも……)
(ここで引いたら終わりだ……!)
鉄骨勝負……
運ゲー……
(それだけは避けたい……!)
なら――
押すしかねぇ……!
「……お前らも分かってるだろ」
無理やり言葉を繋ぐ。
「このゲーム……まともにやったら死ぬ」
ざわ……
「少しでも情報が欲しいんだよ……」
(通るか……!?)
(この言い訳……!)
石田のおっさんは黙る……
考えている……
佐原は――
じっと俺を見る……
(読まれてる……!)
心の奥まで……!
ざわ……ざわ……
(ダメか……?)
(やっぱりやりすぎたか……!?)
そのとき――
「……わかったよ、カイジ君」
石田のおっさん。
(……!)
「全部は無理だが……」
「何人かなら聞けるかもしれねぇ」
救い……!
だが――
(まだだ……)
佐原。
こいつが問題……!
「……僕は条件付きで」
来た……!
「何人分必要です?」
(乗った……!?)
「できるだけ……」
「曖昧ですね」
(……!)
「目的が分からないと動けません」
核心……!
(クソ……!)
ここで詰むか……!?
ざわ……ざわ……
(どうする……カイジ……!)
頭が回る……
回りすぎる……
(正直に言うか……?)
いや――
無理……!
(なら……)
賭ける……!
「……生き残るためだ」
低く言う。
「それ以上でも以下でもねぇ」
沈黙。
ざわ……
数秒……
いや数十秒にも感じる……
「……分かりました」
(……!)
「やりましょう」
通った……!
だが――
(これでいいのか……?)
胸の奥がざわつく。
ざわ……ざわ……
(怪しい……)
(怪しすぎる……)
この作戦……
デスノートがあるから思いついた……
合理的……
だが――
普通じゃない……!
(これ……本当に大丈夫か……?)
疑念が膨らむ……
だが時間はない……
鉄骨開始まで――
あとわずか……!
(やるしかねぇ……!)
俺はペンを握る……
神の力……
デスノート……
だがその裏で――
確実に芽生え始めていた……
違和感という名の不安……!
ざわ……ざわ……
ざわ……ざわ……
(時間……ねぇ……!)
残り――15分。
短い……
あまりにも短い……!
(名前……!)
これさえあれば――
勝ち確……!
なのに――
手に入らない……!
ざわ……
(クソ……!)
石田のおっさんも佐原も散っている……
だが――
普通に聞いたら怪しい……
警戒される……
(自然に……)
自然に聞き出す……
「なぁ……」
声をかける。
適当な男に。
「お前……名前なんだ?」
「は?」
警戒。
当然……!
「いや……こういうのってよ……」
必死に言葉を繋ぐ。
「せめて名前くらい知らねぇと……」
「……意味わかんねぇ」
切られる。
(ダメだ……!)
甘い……!
こんな状況で名乗るやつはいない……!
(クソ……!)
焦る……
時間が減る……!
(どうする……!)
「ダメだ……全然口割らねぇ……」
石田のおっさんが戻ってくる。
(やっぱりか……!)
当然……!
こんな状況で――
他人に名前を教える……?
あり得ねぇ……!
(俺の発想が甘かったか……!?)
ざわ……
いや――違う……!
(これは……)
掴めるはずの勝ち……!
逃したら終わり……!
ギャンブル……
この世界じゃ――
「勝ち確を取り逃す=死」
(ここは……絶対に取る……!)
歯を食いしばる。
(自然に……)
(自然に聞き出す……)
だが――
(どうやって……!?)
普通に聞けば怪しい……
探れば警戒……
詰み……!
ざわ……ざわ……
視線が泳ぐ……
誰もが――
疑っている……
(全員敵……!)
そのとき――
視界に入る。
黒服。
鉄骨の説明をしていた男たち……
そして――
参加者のざわめき。
恐怖……
不安……
「落ちたら終わりかよ……」
「ふざけんなよ……」
(……!)
ひとつ、繋がる。
(そうか……)
この空気……
恐怖でバラバラ……!
だからダメなんだ……
(なら……)
逆にまとめる……!
ざわ……
(全員に共通するもの……)
恐怖……
それを利用する……!
「おい……!」
カイジ、声を張る。
ざわ……!?
一斉に視線が集まる。
(来た……!)
「このままじゃ全員死ぬぞ……!」
空気が止まる。
「鉄骨だぞ……!?」
「一歩ミスったら終わり……!」
「なのに――」
間を置く。
「誰も協力しねぇのかよ……!」
ざわ……ざわ……
動く……!
「はぁ?」
「何言ってんだこいつ……」
当然の反応……
(ここからだ……!)
「いいか……!」
「こういうのはよ……」
「情報戦だ……!」
(乗れ……!)
「せめて名前くらい共有して――」
「落ちたやつの順番……!」
「クセ……!」
「全部見ていけば――」
「生き残る確率上がる……!」
ざわ……!
(揺れた……!)
「……確かに」
一人が呟く。
(よし……!)
「名乗るだけだ……!」
「減るもんじゃねぇ!」
「ここで孤立して死ぬか――」
「協力して生き残るかだ!」
ざわ……ざわ……
空気が変わる……
(いける……!)
(あと一押し……!)
だが――
「……いや待て」
一人の男。
鋭い目。
「なんでお前が仕切ってんだ?」
(……!)
刺さる……!
「名前集めてどうすんだ?」
(来た……!)
核心……!
ざわ……
空気が一気に冷える。
(ヤバい……)
(崩れる……!)
だが――
ここで引けば終わり……!
(押せ……!)
「決まってんだろ……!」
「生き残るためだ……!」
「それ以上でも以下でもねぇ!」
睨み返す。
沈黙……
ざわ……
数秒。
「……チッ」
男は目を逸らす。
(通った……!?)
「……俺は秋山だ」
(……!)
名乗った……!
一人……!
だが――
デカい……!
「俺は春田……」
「冬木だ……」
連鎖……!
ざわ……ざわ……
(来た……来た来た……!)
ペンを握る手が震える。
(書け……!)
(今のうちに……!)
だが――
胸の奥で――
別のざわめき。
(……本当に全員本名か?)
一瞬の疑念。
だが――
(そんなの後だ……!)
今は――
集める……!
それだけ……!
時間――残り10分。
(間に合え……!)
だがこのとき――
カイジはまだ知らない。
この中に――
偽名を名乗る者がいることを……!
ざわ……ざわ……
ざわ……ざわ……
(集まった……!)
名前――
いや、“名前らしきもの”……!
「秋山」「春田」「冬木」……
紙に並ぶ文字列……
(勝ち……!)
一瞬、脳が甘く痺れる。
(これで……終わり……!)
鉄骨が始まれば――
あとは順番に……
落ちる……!
勝ち確……!
ざわ……
その時――
ピタリ、と。
思考が止まる。
(……待て)
違和感。
(何か……足りねぇ……)
ざわ……ざわ……
脳の奥で、警鐘。
(何だ……?)
視線が、ノートに落ちる。
「秋山」
「春田」
「冬木」
(……これでいいのか?)
――いや。
違う。
違う違う違う……!
ざわっ……!
(デスノート……!)
条件――
“本名”……!
フルネーム……!
(苗字だけじゃ……ダメ……!)
冷や汗が、背中を伝う。
(俺は今……)
致命的なミスをした……!
ざわ……ざわ……
(バカか……俺は……!)
焦りで視界が歪む。
(どうする……!?)
残り時間――
8分……!
(今から……聞く……?)
無理……!
どう考えても怪しい……!
「名前教えてくれ」まではギリ通った……
だが――
「下の名前も教えろ」……?
(通るか……!)
ざわ……
むしろ――
一発で黒……!
(何かある……)
(何か……自然な流れ……!)
考えろ……!
考えろ……!
だが――
時間が削る……
思考を……
(クソ……!)
焦りが先行する。
そして――
やってしまう。
「なぁ……」
また声をかける。
さっきの男。
「さっきの続きなんだけどよ……」
「フルネームで教えてくれねぇか?」
沈黙。
ざわ……
男の目が細くなる。
「……は?」
(やばい……!)
空気が変わる。
「なんでそこまで聞く必要あんだよ?」
(詰んだ……!)
「いや……その……」
言葉が詰まる。
(言い訳……!)
出てこねぇ……!
「さっき情報戦って言ってただろ……!」
苦し紛れ。
「名前のフルで……」
「管理した方が……」
「は?意味わかんねぇ」
バッサリ。
(ダメだ……!)
ざわ……ざわ……
周囲の視線が刺さる。
疑い……
警戒……
(完全に怪しい動き……!)
別の男も口を開く。
「さっきからこいつ……」
「名前ばっか聞いてねぇか?」
ざわっ……!
(最悪……!)
広がる……!
疑念が……!
「何企んでんだよ……」
(違う……!)
(違うんだ……!)
だが――
言えない。
デスノートの存在なんて……!
ざわ……ざわ……
石田のおっさんが小声で。
「やめとけ……」
(……!)
「それ以上やると……」
「完全に浮く……」
歯を食いしばる。
(でも……!)
(ここで引いたら……)
全員生きる……!
(つまり……)
俺が負ける……!
ざわ……
(どうする……!?)
(押すか……引くか……!)
残り――
5分……
(時間が……ねぇ……!)
だが――
もう遅い。
一度広がった疑念は――
消えない。
「俺は名乗らねぇ」
「俺もだ」
次々と、拒否。
(終わった……!)
さっきまでの流れが嘘のように――
完全停止。
ざわ……ざわ……
(クソ……!)
手に入れたはずの“勝ち”が――
指の隙間から零れ落ちていく……
(まだだ……!)
(まだ……終わってねぇ……!)
だがその時――
ざわ……ざわ……
(終わった……)
鉄骨開始直前。
手元には――
苗字だけの羅列。
(これじゃ……殺せねぇ……!)
デスノートは――
フルネーム……!
詰み……
そのとき――
「カイジさん……」
佐原。
低い声。
「フルネームを知る方法……」
「あるっす」
(……!?)
顔を上げる。
「えっ?」
続きが見たいか?
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はい
-
いいえ