カイジがデスノートを拾った世界 ~死神黙示録 カイジ 鉄骨渡り編~ 作:梅酒24
「いや……」
佐原、周囲を警戒しながら続ける。
「俺たち……さっき」
「黒服に名前で呼ばれてましたよね?」
(……!)
脳に、映像がフラッシュする。
黒服。
無機質な声。
そして――
手元の“何か”。
「つまり……」
「あるんすよ」
「なにが……?」
「名簿です」
――――
(あっ!!!!)
閃光……!
(そうだ……!)
黒服は……
見ていた……!
黒い板……
あれは……
名簿……!
ざわ……ざわ……
(天才……!)
(佐原……!)
一気に開ける視界。
(これを奪えば……!)
フルネーム……!
全員分……!
完全勝利……!
だが――
(待て……)
次の問題。
(どうやって……奪う?)
黒服。
複数……
監視……
不用意に近づけば――
即、排除。
(無理……!)
ざわ……
そのとき――
背後。
ククク……
低い笑い。
リューク。
「面白くなってきたなァ……」
(チッ……)
「なぁカイジ……」
「いつでも“目”と交換してやるぜ?」
(……!)
死神の目。
顔を見れば――
名前と寿命が見える。
(確実……)
(だが……)
歯を食いしばる。
「するもんか……!」
「寿命の半分を……」
「こんなところでくれてたまるか……!」
リューク、肩をすくめる。
「クク……人間らしいな」
ざわ……
(他に……!)
(他に方法……!)
脳がフル回転。
(直接奪うのは無理……)
(なら……間接……!)
その瞬間――
繋がる。
(……!)
さっき――
フルネームを聞いた男。
(あいつ……!)
名前が分かっている……!
(なら……!)
デスノート。
操れる……!
ざわっ……!
(いける……!)
(あいつに……奪わせる……!)
脳内で構築されるシナリオ。
・黒服に接近
・名簿を奪う
・騒ぎを起こさず
・俺に渡す
・その後、鉄骨で死亡
(完璧……!)
(不自然じゃない……!)
(鉄骨から落ちる……自然死……!)
震える手で――
書く。
名前。
そして――
行動。
(いけ……!)
そのとき――
「……カイジさん?」
(……!)
佐原。
じっと見ている。
「さっきから……」
「何書いてるんすか?」
ざわっ……!
(まずい……!)
心臓が跳ねる。
(見られたか……!?)
(いや……まだだ……!)
とっさに隠す。
「……いや」
「作戦だ……」
苦し紛れ。
「作戦?」
「鉄骨の……」
「渡り方……」
(薄い……!)
(苦しい……!)
佐原の目が細まる。
「……そうっすか」
一拍。
(バレたか……!?)
(終わりか……!?)
だが――
「さすがっすね……」
笑う。
(……!)
(通った……?)
「俺……正直ビビってて」
「そういうの考えられるの……すげぇっす」
(……セーフ……!)
だが――
完全ではない。
胸の奥に残る――
違和感。
(今の……)
(誤魔化せたのか……?)
ざわ……ざわ……
時間――
残り、わずか。
そして――
黒服に、動き。
(来るか……!?)
運命の歯車が――
静かに回り始める。
ざわ……ざわ……
(やる……!)
決断。
震える手。
デスノートを開く。
山本 太郎
さっき、フルネームを聞き出せた男。
(お前だ……!)
書く。
“黒服に近づき――
名簿を奪い――
誰にもバレずに伊藤カイジに渡す――
その後、鉄骨渡り中に落下し死亡”
ペン先が止まる。
(成立する……!)
デスノートのルール。
可能な範囲なら実行される……!
今は夜。
ざわめく群衆。
死角はいくらでもある。
(いける……!)
ノートを閉じる。
待つ。
ざわ……ざわ……
心臓の音がうるさい。
ドクン……ドクン……
(来い……!)
(来い……!)
そのとき――
すっ……
何かが触れる。
(……!)
視線を落とす。
黒い冊子。
名簿……!
(来た……!)
一瞬だけ顔を上げる。
山本。
何事もなかったかのように列に戻る。
(成功……!)
(完全……!)
喉が震える。
「計画通り……!!」
心の中で絶叫。
ざわ……ざわ……
ページをめくる。
並ぶ――
名前……名前……名前……
(埋める……!)
足りなかったピース。
フルネーム。
これで――
全員、殺せる……!
勝利。
確定。
のはずだった。
――だが。
手が、止まる。
(……待て)
違和感。
ざわ……
(これ……)
ページを見つめる。
名前だけ。
ただの文字列。
(誰が誰だ……?)
ざわっ……!
(顔写真……ない……!)
(どれが……どいつの名前だ……!?)
冷や汗。
(苗字だけ聞いたやつ……)
そいつらは、繋がる。
だが――
それ以外。
答えなかった連中。
(完全に……不明……!)
ざわ……ざわ……
(終わった……)
手に入れたはずの“勝ち”が――
ただの紙屑に変わる。
(宝の持ち腐れ……!)
(豚に真珠……!)
全員の名前があるのに――
使えない……!
(クソ……!)
残り時間――
5分。
(どうする……!?)
思考が崩れる。
そのとき――
「カイジさん?」
(……!)
佐原。
覗き込む。
「どうしたんすか?」
躊躇。
(言うか……?)
(いや……でも……)
時間がない。
「……名前だけじゃ」
絞り出す。
「誰なのか分からねぇ……」
「は?」
「この名簿……」
「顔がねぇんだよ……!」
沈黙。
ざわ……
佐原の目が変わる。
さっきまでの軽さが消える。
「……なるほど」
低い声。
(考えてる……!)
(頼む……!)
(何か……!)
佐原、視線を巡らせる。
人。
列。
配置。
ざわ……ざわ……
「……カイジさん」
ゆっくりと口を開く。
「一つ……あるかもしれないっす」
(……!?)
希望。
再点火。
「ただ……」
「ちょっと……危ない橋っす」
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