美少女しかいない部活で、部員全員から「私だけは味方だからね」と耳打ちされたんだが 作:古野ジョン
「あれ? 何か話してました?」
「えっと、それは……」
愛宕の単純な疑問に、言葉を詰まらせている瀬峰。そりゃ、自分のことが可愛いかどうか聞いていた――なんて、後輩に言えるわけがないか。でも……何も言わないのも不自然だし、代わりに答えておこう。
「瀬峰が、『私のことを可愛いと思うのか』って――」
「ちっ、違う! そんなこと言ってないっ!」
「えっ?」
「私が遊佐くんにそんなこと聞くわけないじゃん! ひまりさん、気にしないで」
「なら、いいですけど……」
愛宕は首をかしげつつ、ブース内に入ってきた。俺の近くに置いてあったリュックサックのファスナーを開け、中からノートや筆箱を取り出している。
「すいませんっ、荷物を取りに来ただけなのでっ! また行ってきますっ!」
「そっか。気をつけて」
「じゃっ、失礼します!」
慌ただしい奴だな、なんて思いながら愛宕の背中を見送る。ふと視線をやると、瀬峰はやや頬を赤く染めつつ……じっと俺の方を見ていた。
「そっ、それで……私のこと、可愛いと思う?」
「『遊佐くんにそんなこと聞くわけない』とか言ってなかった?」
「きっ、気のせい! 気のせいだからっ!」
「ええ……」
必死に両手を振って否定する瀬峰を見て、半分唖然としたように口を開いてしまう。一分も経たないうちに矛盾した発言をするのはやめてくれないかな……。
「でっ? 可愛いと思う?」
「……いや、その」
瀬峰は二人きりだと本当に態度が変わる。他の二人がいるときは事務的な対応に終始しているのに、俺しかいない時は(誤解を恐れずに言えば)ちょっと面倒な女の子という感じだ。……ちょっとやり返してみてもいいかもしれない。
「『可愛い』って言ったらどうするんだ」
「えっ?」
「俺が瀬峰のことを可愛いって言ったら……何があるんだ?」
「えっと、それは……」
言い返されるとは思っていなかったのか、瀬峰は俯いて何も言えなくなっていた。やっぱり可愛い。クラスにいたらついつい目で追ってしまう、まさしくそんな存在だな。さて、意地悪するのもこれくらいに――
「二人ともっ、お疲れ様~っ!」
「「!?」」
ブースのドアが開いたかと思えば、今度は志津川先輩が部屋に入ってきた。どうやら委員会の仕事が終わったらしく、ルンルンとした足取りでこちらに向かってくる。
「ごめんね、意外と長引いちゃった。さあ咲季ちゃん、練習しましょう?」
「あっ……はい。そうしましょうか……」
自分に背を向けて準備をしている志津川先輩のことを、瀬峰はやや不満げに見つめていた。結局、可愛いかどうかを伝えることは出来なかったけど……まあ、いじらしい瀬峰を見ることが出来たからよしとするか。
パソコンの画面に向き直りつつ、背後から聞こえる瀬峰の声に耳を傾けたのだった。