なるほど、なるほどAFO殺せば解決じゃね? 作:イズモ様 カワ(・∀・)イイ!!
二人で檻から逃げ出し幾数十年、最初の頃はたった一人、数年経ってだだ二人、途方もないそんな時間をかけ、様々な人達との関わり、スラムの無秩序に真っ向から殴り合い、昔はスラムと呼ばれた場所の基礎になる法を敷き、名前の無い実験体はクルスと名乗るようになり、それに付いた脚の折れた少女はナノ呼ばれ、元のモルモットが随分と人間らしくなった、そんな吸血鬼は生き残るため、仲間を作り、それは組織になり、最初の二人が精神的に大人に成った時には、それなりの人数で、活動するようになっていた…………、
「殿下!あの白菜会とか何とかな組のモンが、ウチのシマで、ブーストとか言うヤクをザバいてやがる。いい加減〆てもいいんじゃないすか?」
「殿下、ヒーローが最近、このあたりに潜伏しているようだ、しばらくは放置でいいが、対策は頼んだ」
「殿下、新しい武器作ったんだけど、戦闘室借りていい?」
「殿下、殿下、殿下」
だけどさぁ、なんでこうなるかな?
私はただの慈善団体を作りたかったのに、いつの間にか反社になってるし。
でも皆、法に触れる事はあんまりしてないし。
……まあ、“あんまり”って時点でダメなんだけど。
だけどね、助かってる人が多いのは本当なのよ。
そこは、少しだけ誇ってもいいと思うの。
……でもさ。
私が目指したの、ロドス・アイランドみたいな場所だったはずなのに。
いつからこんな、シマだの縄張りだのって話をするようになったのかしらね。
まるでシラクザーノじゃない。
はぁ……本当に、どうしてこうなったのかしら。
「殿下?」
呼ばれて顔を上げる。
目の前には、書類の山と、報告待ちの部下たち。
ああ、そうよね。
悩んでる暇なんて、ないのよね。
「……順番にいきましょうか」
私は軽く手を叩いて、話を整理することにしたの。
「まず、ブーストの件だけど」
あれは放っておくと、確実に死人が出るタイプな以上放置と言う選択はあり得ない。
「潰すわ。ただし——」
私は少しだけ間を置いた。
「売ってる連中じゃなくて、流してる元を確定させなさい、まぁそのままだろうけど」
どうせ、末端を叩いても意味がないもの。
「できれば、取り込むか、消すかの二択にしたいわね」
にこやかに言うと、何人かがちょっとだけ引いた顔をしたのが分かった。
あら、優しく言ったつもりだったのだけれど。
「次、ヒーローの件」
これは……少し面倒ね。
「しばらくは放置でいいわ。どうせ死穢八斎會のを追ったらこっちに飛び火しだだけでしょう、ただし——」
視線を一人に向ける。
「ルイ、お願い。戦うにしても逃がすにしても、情報が足りないわ」
「了解」
短い返事。
本当に頼りになる子、あとでワシャワシャしてあげよう
「最後に武器の件だけど」
これは少しだけ、楽しみね。
「いいわよ、使って。ただし安全確認はちゃんとしてね」
「やった!」
元気な声。
ああ、こういうところは可愛いのよね、本当に、持ってる武器が有機的で牙が生えてなければ。
「——以上でいいかしら?」
そう言うと、皆がそれぞれ動き出す。
騒がしかった部屋が、一気に仕事の空気に変わる。
……ねえ。
私、ちゃんとやれてるのかしら。
ふと、そんなことを思ったの。
あの時みたいに。
霧の中で、あの子に手を差し出した時みたいに。
「……ナノ」
小さく名前を呼ぶ。
今でも、覚えてるわよ。
あの子の手の温度も、
あの時の空気も、
全部。
だから——
「せめて、ここだけは」
誰も苦しまない場所にしたいのよ…
なんでこんなナイーヴなんだっけ?
はぁ、そろそろだけど……、はやくナノ起きないかな〜
なんてね。
口に出すと、ちょっとだけ寂しくなるのよ。あの子、寝てるだけなんだけど。分かってるんだけどね。
半年。
たった半年、されど半年。
組織を回すだけなら、問題はないし。むしろ、みんな優秀だから助かってるくらい、だけれど。なんて言えばいいのかしら。重さが違うのよね。あの子がいる時と、いない時で。
「殿下、ブーストの流通経路、ある程度掴めました」
ルイの声で、意識を引き戻される。
「あら、早いわね」
さすが、って言おうとしたけど。まあ、本人は当然って顔してるからやめておこう。…本当に有能ねこのイケメン
「元はやっぱり例の連中です。流れとしては——」
頭ではちゃんと理解してる、少しだけ、ほんの少しだけ、上の空だったの。
「……殿下?」
あら、いけない。
「ごめんなさい、続けて」
軽く微笑んで誤魔化す、こういうの、あんまり良くないわね。次から気をつけよ!
ナノなら、気づいてたわね。
「……」
ねえ。私、あの子に頼りすぎてたのかしら。ただ、一人が寂しかっただけだったのよ。それで手を取って。 気づいたら、隣にいるのが当たり前になってて。——それが、なくなると。……こんなにも、静かなのね。
「殿下、対象の確保班、出しますか?」
現実に引き戻される。ええ、そうね。今はそれどころじゃないわ。
「出していいわ。ただし——」
私は椅子に深く座り直して、いつもの“クイーン”に戻る。それだけで、空気が少し締まるのが分かる。
「無駄に殺さないでね。最悪でも血液パックとして使えるしね」
「了解」
いい子たち、本当に、……だからこそ。
「——絶対に壊させないわよ」
小さく、誰にも聞こえないくらいの声で呟く。
この場所も、この子たちも、全部。私が守るって決めたんだから。
その時……
―――!
小さな音とても小さくて、普通なら聞き逃すくらいの。
けど私がそれを聞き逃すはず、ないでしょう?
ゆっくりと顔を上げる。部屋の奥。医療区画へと続く扉の向こう。
……ああ。思わず、笑ってしまったの。
「フフ、ちょっと、ごめんなさいね」
そう言って立ち上がる。
「後は任せてもいいかしら?」
返事なんて聞くまでもないわ。みんな、ちゃんと分かってるもの、足が。
自然と早くなる、別に急いでないわよ?
本当よ?
ただ——
「……ナノ?」
扉を開けた先。
ベッドの上で、ゆっくりと上体を起こす影。
ああ、本当に。
「おはよう」
やっと、帰ってきたのね。