はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
アランヤ村――
今ここで、錬金術士の到達点の一つである賢者の石が作成された。
「できた……」
「できましたか!?」
「ああ……今のところは、変化ないね」
出来上がった賢者の石。
その状態を確認するマリーだったが、特に何の変化も起こらない。
「だけど、クライスやエリーが生まれたのも少し時間が経ってからだった。もしかしたら……」
「なら明日まで待ってみましょう」
「……怖いものなしだね、トトリは」
はぁ、と溜息をつくマリー。
そんな彼女を、賢者の石は静かに見守るように置かれていた。
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
次の日――
「………………」
「………………」
「……なにも、起きてないね」
「起きてませんね」
次の日、置かれていた賢者の石は、変わらずにそこにあった。
「やっぱり! マリーさんが作れば賢者の石は変質しないんですよ!」
「そ、そうなのかな……」
「確かもう一つ材料ありましたよね!?」
「ま、また作るの……?」
「いえ! でしたら、私に挑戦させてください!」
「ええ!?」
トトリの発言に、マリーが素で驚く。
「ちょ、ちょっと実力が足りないんじゃないのかい……?」
「かもしれません! でも挑戦できるならやってみたいです!」
「う、ううん……まあ最悪コンテナは2倍にすれば十分容量は足りるだろうけど」
失敗した時のことを考えてあれこれと検討した結果――
「……わかった。あんまり成功率は高くないかもしれないけど、挑戦するのは止めないよ」
「やったぁ!」
「今回はあたしの材料を使っていいけど、次は自分で用意するんだよ?」
「はい!」
マリーは許可してしまった。
してしまったのである。
これは、変化しなかった賢者の石に安堵して『誰が作ってホムンクルスが生まれたか』を忘れた二人のうっかりミスであった。
多分失敗するだろうとマリーが見越していた部分も大きい。
だが――
「できたぁ!」
できた。
できてしまったのである。
「え? マジで?」
「はい!」
コンテナの拡張作業をしていたマリーは、思わず振り返った。
振り返った先にいたトトリの手には、まごうことなき賢者の石があった。
「えええ……うそでしょ?」
「嘘じゃないですよ! ほら!」
トトリはマリーに手渡す。
マリーはそれを見て、さかさまに持ち、詳しく調べて――机に置いた。
「マジか……すごいね。ロロナがこれを作った時ですらもう少し実力つけてからだったのに」
「えへへ……」
マリーの言葉に、トトリが笑う。
と――
「ただいマリー!」
「おかぁエリー!」
エリーが帰ってきた。
ついでにいつものあいさつに反射して答えるマリー。
「タールの実取ってきましたよー!」
「エリー、すごいよ。トトリが賢者の石作った」
「え? 今のトトリが? 嘘でしょう?」
「ほんとでーす!」
エリーが素で驚き、トトリがにこやかに反論する。
「ほら、これです!」
「どれどれ。はー、ほー……へー? え? 本当にこれトトリが!?」
「そうです!」
マリー同様に賢者の石を調べたエリーが、トトリを見て再度驚く。
エリーは机に賢者の石を置いて、トトリの頭を撫でた。
「すごいね……本当にすごいよ、トトリ」
「えへへ……」
「あ……でもいいんですか、マリーさん」
「なにが?」
「賢者の石は……」
「ああ。実はもう一つ作ったんだけどね。何の変化もなかったんだよ」
「あー……だから」
「そう。だから多分もうだいじょう、ぶかな、と……」
マリーがそう言いながら、顔が驚愕に変わっていく。
「? どうしたんです?」
「あ、か、ば、ばか、な……」
「え?」
「え、エリーちゃん!」
「え? なに?」
マリーの顔に驚き、トトリの悲鳴に振り返ったエリー。
その視線の先には――光り輝く賢者の石が。
「こ、これは!」
「あああああああああああああ! クレイスとエリーの時と一緒だぁ!」
「ええええええええええええええええええ!?」
マリーとエリーの悲鳴の間にも、光は強くなっていき――
ピカッ!
「「「 まぶしっ! 」」」
ドサッ!
その瞬間、机に何かが落ちる音がした。
「………………」
「………………」
「目がー! 目がー!」
マリーとエリーは目を腕で覆ったが、目を閉じただけだったトトリは光で目をやられたらしい。
そしてそこには……
「………………マジかあ」
「うそ………………」
マリーとエリーがそこに現れた人物を見て驚く。
いつも通り、そこに現れたのは幼い子供。
それは二人がよく知る人物だった。
「なんで……なんであなたがくるのよ。アイゼル……」
はい、来たのはアイゼルでした。
予想できた人もいたと思います。