草木も眠る丑三つ時……よりかはまだまだ早い時間帯。趣味のゴスロリドレスを身に纏い、夜闇に紛れて日課の徘徊を行っているとどこからか騒々しい音が聞こえてきた。オノマトペで表したらドカーンッ!バキバキィッ!って感じの。……騒々しい音と言うよりかは破壊音だな、これじゃ。
しかし、こんな真夜中に工事なんて普通するだろうか?疑問に思いつつも好奇心を大いに刺激されてしまい、のこのこと足を向けてしまい、
「グオオオオオッ!!」
「くっ!このままじゃジリ貧ね!」
どデカい爬虫類みたいな化物と戦う、魔法少女の姿を目撃してしまったのだった。
「……へ?なにあれぇ」
コンクリートブロックの塀を砕き、電柱をポッキーのように容易くへし折り、モンスター爬虫類が暴れまわって手足どころか尻尾まで振り回しているのを、ニチアサのプリティでキュアッキュアな感じの衣装をまとった少女がひらりひらりと飛んで交わして、隙きをついてパンプスを履いた御御足で細長い爬虫類の横っ面へとつま先をめり込ませた。
「ブグォッ!?」
ドバッとよだれを撒き散らしながら蹴りの勢いに負けて横倒しになるモンスター爬虫類。その横顔の鱗には放射線状にひび割れが広がっていた。
「ふぅ、これでとどめよ!」
フワリと重力を感じさせない動きで軽やかに着地した魔法少女はどこから取り出したのかわからない短杖を構えるとまるで指揮者の振るうタクトのように宙に紋様?印?を描く。
と、その時、
ズバァァァァンッ!
「えっ、きゃあっ!?」
魔法少女の足元から路面を突き破って伸びた緑色の鞭状の物、恐らく、蔓。
それが不意を突いて魔法少女の脇腹へと吸い込まれる様に命中し、魔法少女を弾き飛ばした。
「ぐ、うぅ……」
水切りの石の如く数回バウンドして地面に体を叩き付けた魔法少女は、横たわったまま、痛みに呻いていた。
「み、みどり!大丈夫フェア!?」
どこに隠れていたのか、ピンク色のぬいぐるみみたいな見た目の不思議生物が魔法少女の下へとふわふわと飛んできて、その身を心配していた。多分、お供妖精とかそんな感じのマスコットなのだろう。
「キシャシャシャシャッ!」
「グルォオオッ!」
メリメリズポンッ!と感じにコンクリートを突き破って姿を表した、魔法少女を吹き飛ばした蔓の持ち主であろう、赤いバラの中心に口が付いた植物の化物と、ノックダウンから立ち直ったであろう爬虫類の化物が横並びになって魔法少女へと視線(植物の方に目はないが)を向けた。
「キシャアッ!」
伸びる蔓が魔法少女の柔らかな肢体を貫こうと迫る。が、
「うわっと!」
こっそり移動した物陰から飛び出して、倒れ伏していた魔法少女ともつれ合うように転がって蔓攻撃をなんとか躱す。
「き、キミは……!?」
「ふぅー、ギリギリセーフ!」
我ながらMVP級のファインプレーに惚れ惚れしながらも、化物2体を見据える。
今のは不意打ち2割、豪運8割の奇跡だ。次も無事とは限らない。
「アナタ、何で……」
「気が付いてたら身体が動いてたの、それに可愛い女の子が死ぬなんて、世界の損失じゃん」
ふわりと肩に掛かるツインテールを払いながらカッコつけて言うと、「馬鹿みたい」と苦笑する彼女。
さて、ここで彼女が正義のヒロインらしく再び立ち上がって逆転するのを期待するか、魔法少女の増援が来るのか。
大穴として、ボクの秘められた力が解放される……てものがあるが、期待薄だろう。
なんて、現実逃避気味にそんな事を考えていると、「き、キミー!」と例のマスコットが飛んできた。
「キミ、魔法少女にならないかい!」
「はっ!?」
「えっ?」
突然の提案に、魔法少女ちゃん共々戸惑う。まさかの大穴が的中なのか……。
「まあ、このままだと死んじゃいそうだし、なるよ!」
「よし、それじゃあ……」
「けど……」
嬉々としておそらく変身アイテムであろう、丸っこくて可愛いフォルムの携帯電話、それも懐かしきガラケーを取り出す妖精に、聞いて置かなければならないことを聞く。
「ボク、男だけど魔法少女になれるの?」
ゴスロリドレスを身に纏い、深夜徘徊が趣味のボク。名前は有栖院 宗次郎。女装が趣味の男の子である。
続きは書きません。