善意で、見つけた"喋る魚"を世界に広めた私。だがその行動は、知らぬ間に多くの犠牲を生んでいた――
深い海の底で、私は自分の選択の意味を知る。

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沈む善意

 

私は1人で、深い深い海の底にまで来ていた。

肺には酸素が無く、今にも水圧に押しつぶされそうで、瞼を閉じかける。

 

「やぁ!人間かい?」

 

だが、それは目の前の魚に阻止された。

 

「ゴボッ、」

 

あぁ、口にある酸素も出てしまった。

 

「そんなに焦んなくていいさ。他の人も連れてきてくれるならね」

 

よくわからない。幻覚かもしれない。

もう、この世とはおさらばか……

―――

「ゴホッ、ゴホッ、はぁ、」

なんだ?生きてる。

誰かに助けられたのか、運がいいな。

周りに人影は見えない。帰ってしまったのだろう。

 

だが、私が見たものは真実か、幻覚かはわからない。

ならばまた、見に行くということだ。

好奇心には誰でも負ける。

―――

私は前回と同じ場所に、潜水艦で来ていた。

もちろん、写真はいつでもOKだ。

 

「やぁ、前と同じ人間かい?」

 

ガタガタガタ!

 

「いたた……」

思わず椅子から転げ落ちる。まさか本当に居たとは。

 

「えっと、あなたは喋る魚?」

「そうだよ!喋る魚さ!」

「写真を撮っていい?世界に公表したいんだ、このことを……」

「もちろんさ!全然OKだ!」

 

いい収穫だ!これは世界の進歩につながる!

―――

私は世界に、喋る魚を新種として公表した。

 

しかし、公表したのはいいものの、予想以上に喋る魚にがめつい人々。喋る魚の数はどんどん減っていった。

そこで私は、自然を大切にするべく、喋る魚の巣を守ることにした。

 

「それが君が今ここに居る理由?」

「うん!時間があるときはまた来るからね!」

「それはありがたいよ!」

 

きちんと守ろう、と心の中で宣言した。

―――

随分と年月が過ぎていた。

あの時、自分に言いたい。「まだ続けているよ」と。

喋る魚の数は元と同じくらいになった。

でも、不安なニュースは絶えない。2年前から行方不明者が急増しているらしい。

どうしようもない。でも、自分の身は自分で守ろう。

―――

「やっほー、今日も来たよ!」

「やっほー!今日は伝えたいことがあるんだ」

「え!なになに?」

「2つある。一つは、人間をここにたくさん連れてきてくれたこと」

「えっと、そんなことしたっけ?」

「世界に公表しただろ?それでだよ」

 

人間がたくさん来てくれたので、仲間も大喜びだったらしい。

「それは良かった!」

だが、そのせいで喋る魚がとても減ってしまった。申し訳ない……

 

「2つ目は、今日から食べられる人間の数がもっと増えるということ」

「……え?それはどういうこと?」

「君が毎日来るから、ここに来る人間が少ないんだよ」

 

人間を……食べていたのか?

いやいや、こいつらに限ってそんなことない、はず……

 

「大丈夫か?自分が食べられるからって困惑することないだろ」

「え?私を食べる?」

「あぁ、食べられるないはずが無い、とでも思った?」

「ざーんねーん!美味しく頂くよ!」

―――

いっぱい喋る魚がいるなぁ。

ふふ、不思議と痛みはない。

気持ちがふわふわしているのかもしれない。

よく見ると、骨が底に沈んでいる。

 

私の善意は間違いだったのか……。

全部、善意で行動したのに。

でも、もういいか。

 

「ありがと!君は美味しいね!」

 


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