アニメ第一話
ジェットコースター殺人事件 参照
■容疑者たち(乗車前)
①小山内奈々(おさない なな)
長い髪の女。被害者の元恋人。
(どうして……どうしてあんなこと……)
(許さない……絶対に……)
(……強ぇな……この殺意……)
②岸田(きしだ)
被害者の友人。軽い性格。
(まぁまぁ、落ち着けって……)
(めんどくせぇな……)
(……軽い……だが無関心すぎる……)
③愛子(あいこ)
グループの女性。
(また始まった……最悪……)
(早く終わって……)
(……巻き込まれただけか……?)
④被害者・谷口(たにぐち)
問題の男。
(別にいいだろ……もう終わった話だ……)
(あいつも新しい相手見つければいいだけ……)
(……クズだな……こいつ……)
俺は伊藤開司。
いつからか――いや、ちょうど一か月前くらいか……突如として、人の「心の声」が聞こえるようになっていた。
最初はよかった。
そりゃそうだ……他人の本音が丸裸。
ギャンブルでも、人間関係でも、優位に立てる。
(ああ、こいつビビってる……)
(嘘ついてやがる……)
……楽しかった。
だが――
「うるせぇ……!」
思わず舌打ちする。
電車の中。
街中。
コンビニ。
どこにいても――
(だりぃ……)
(あいつムカつく……)
(金ねぇ……)
(死にてぇ……)
ノイズ、ノイズ、ノイズ……!
人間のドロドロした本音が、四六時中、頭に流れ込んでくる。
(こんなもん……聞こえねぇ方がマシだ……)
気づけば、俺は人混みを避けるようになっていた。
だが完全に避けることはできない。
――そんな時、ふと思い出した。
(……遊園地……)
ガヤガヤしている場所。
叫び声、音楽、雑音。
(あそこなら……心の声もかき消されるはず……)
――そして俺は、遊園地に来ていた。
人で溢れる園内。
予想通り――
「……おお……」
(何言ってるか……分かんねぇ……)
叫び声と音楽にかき消され、心の声は断片的にしか聞こえない。
久々の“静けさ”だった。
(これだ……これが欲しかった……)
自然と足取りが軽くなる。
だが――
ふと、視界に入る。
黒い服の男たち。
全身黒づくめ。サングラス。異様な雰囲気。
(……なんだ、あいつら……)
一瞬だけ、心の声が拾える。
(取引は夜だ……)
(余計なことはするな……)
(……物騒だな……関わりたくねぇ……)
俺は目を逸らす。
さらに歩くと、あるアトラクションの前で足が止まる。
ジェットコースター。
(……これにするか……)
並ぼうとした、その時――
近くで口論が聞こえる。
男女のグループ。
空気が重い。
男が一人、軽薄そうな笑みを浮かべている。
その周りに三人。
俺の耳に、微かに心の声が流れ込む。
俺は一歩引いて全体を見る。
(……人間関係ドロドロ……)
(ありがちな修羅場……だが……)
その中で、一人の女だけが異質だった。
(殺す……今日……ここで……)
(……おいおい……マジかよ……)
その時、別の声が聞こえる。
「ねぇ新一、早く乗ろうよ!」
振り向くと、高校生くらいの男女。
男は妙に落ち着いている。
俺は一瞬だけその男を見る。
(……冷静……周りを見てる……)
だがすぐに興味を失う。
(どうでもいい……今は静かに楽しみたいだけだ……)
列が進む。
俺は、あのグループの後ろに並ぶことになる。
(……嫌な予感しかしねぇ……)
だが、逃げる理由もない。
(どうせ……ただの痴話喧嘩……)
ジェットコースターがホームに滑り込む。
ギギギ……と音を立てて停止。
係員の声。
「次の方どうぞー!」
俺は座席に腰を下ろす。
前にはあのグループ。
後ろには――黒づくめの男たち。
(……最悪の配置だな……)
安全バーが降りる。
カチリ、と音が鳴る。
その瞬間――
女の心の声が、はっきりと響いた。
(――ここで終わりよ)
俺は目を細める。
(……やっぱり来るか……)
カタカタと、車体が動き出す。
***
カタカタカタ……
ゆっくりと頂上へ引き上げられていく。
そして――落ちる。
「――っ!」
風が顔面に叩きつけてくる。
視界が歪む。
身体がシートに押し付けられる。
(すげぇ……!)
久しぶりだ。
何も考えず、ただ感じるだけのこの感覚。
(気持ちいい……!)
風の音。
レールの振動。
周りの絶叫。
俺の頭を埋め尽くしていた“心の声”は――消えている。
(これだ……これなんだよ……!)
あのうるさいノイズがない世界。
ただの“現実”。
(生きてるって感じがする……!)
スピードはさらに上がる。
身体が浮く。
(最高だ……!)
――その瞬間。
トンネルに入る。
一気に闇。
音だけが支配する世界。
ゴオオオオオオオオ――!
その中で――
――死ねっ
(……!)
刺さる。
頭の奥に突き刺さる、はっきりとした“声”。
(やばい……)
(これはやばい……!)
ただの雑音じゃない。
本物の殺意。
(来る……!)
その直後――
俺の隣から、
「……うごっ」
鈍い声。
(……は?)
(今の……なんだ……?)
一瞬、思考が止まる。
だがすぐに繋がる。
(――殺人……?)
(このジェットコースターの中で……!?)
ざわ……ざわ……
頭の中が一気に騒がしくなる。
消えていたはずの“声”が押し寄せてくる。
(やばい……やばい……やばい……!)
(止めろ……!)
気づけば叫んでいた。
「やめろおおおおおおお!!!」
だが――止まらない。
コースターはそのまま走り続ける。
そして――
トンネルを抜ける。
光が突き刺さる。
「――っ!」
その瞬間――
ぷしゅうううううううう――
温かい何かが、俺の頬にかかる。
赤い。
隣の男の首から――血が噴き出していた。
「ぎゃあああああああ!!!」
「いやあああああ!!!」
「なんだこれえええ!!」
絶叫。混乱。
(……マジかよ……)
(本当にやりやがった……)
俺は動けない。
ただ現実を見ているだけだ。
やがてコースターは止まり、俺たちは降ろされる。
現場はすぐに封鎖。
警察が来る。
ざわざわ……ざわざわ……
だが俺には、別の“声”が聞こえていた。
(――これでよかったの……)
(あいつが浮気をしたから……)
(……やっぱりあの女か……)
確信。
犯人も動機も、全部揃った。
(俺からすりゃ……もう事件は終わってる……)
(ミステリー小説なら最悪だな……)
(こんな能力……味気なさすぎる……)
だが――
(バレたら終わりだ……)
心が読める?
そんなもん知られたら――
(研究所送りだ……モルモットだ……)
(絶対に言えねぇ……!)
「全員、持ち物検査を行います!」
(……まあ、当然か……)
順番に荷物が調べられていく。
そして――俺の番。
「次、お前だ」
(来たか……)
鞄を差し出す。
ガサ……ガサ……
警官の手が止まる。
(……?)
取り出されたのは――
血のついた包丁。
(…………は?)
ざわ……ざわ……
空気が一変する。
(こいつが犯人か……?)
(やばいだろ……)
(ふざけんな……!)
頭が真っ白になる。
(誰だ……?)
(いつ入れやがった……!?)
そして――
「……お前がやったのか?」
目の前に立つ警部。
目暮十三が、俺を睨んでいる。
(やばい……)
ざわ……ざわ……
外も中も、全部が騒がしい。
(違う……俺じゃねぇ……!)
(でも証拠が……!)
冷や汗が流れる。
(詰んだか……?)
(いや……待て……!)
思考が加速する。
(犯人は分かってる……!)
(あの女……!)
(だが……どう証明する……!?)
ざわ……ざわ……
(ここでミスったら終わりだ……!)
俺はゆっくり顔を上げる。
(――切り抜けろ……)
(この状況を……!)
***
(……落ち着け……)
俺はゆっくり息を吐く。
(犯人は分かってる……)
あの女だ。間違いない。
あの殺意、あの安堵――全部一致してる。
(だからこの包丁は偽物……誰かが仕込んだ……)
だが――
(……問題はそこじゃねぇ……)
頭の中に、嫌な言葉が浮かぶ。
(誤認逮捕……)
ニュースで何度か見た。
やってもいない罪で捕まる人間。
(……今の俺、そのど真ん中じゃねぇか……?)
周囲の視線が刺さる。
(こいつが犯人だ……)
(怪しすぎるだろ……)
(血のついた包丁だぞ……)
(……そりゃそうだ……)
冷静に考えれば、状況は最悪。
(凶器がある……)
(被害者の隣に座ってた……)
(……普通に考えたら……俺が犯人……)
喉が乾く。
(でも俺はやってねぇ……!)
(それに犯人も分かってる……!)
だが――
(どうやって殺した……?)
そこが抜けている。
(トンネルの中……一瞬……)
(首を切断……?そんな芸当……)
(分からねぇ……!)
さらに――
(犯人を言ったところで……)
「なんでその人が犯人なんですか?」
――絶対こうなる。
(心の声が聞こえたから……?)
(通じるか、馬鹿……!)
(仮に通じたとしても……)
白い部屋。
拘束具。
研究者。
(モルモット一直線だ……!)
(ダメだ……この能力は絶対に隠す……!)
つまり――
(自力で説明するしかねぇ……!)
だが今は――
(思いつかねぇ……!)
結論。
(……ごねるしかねぇ……!)
「……お前がやったのか?」
目暮十三が低く問いかける。
俺は即座に顔を上げる。
「いや、おかしいでしょ!」
声が少し裏返る。
「見ず知らずの人を殺すとか、意味分かんないでしょ!」
ざわ……
周囲がどよめく。
(いいぞ……まずは常識から崩せ……!)
目暮警部は表情を変えない。
「動機はこれから調べる。問題は証拠だ」
「証拠って……!」
俺は指を突きつける。
「じゃあ聞きますけど、凶器をそのまま鞄に入れて持ってる犯人います?」
(いけるか……?この理屈……!)
「普通、捨てるでしょ!?トンネルの中とかで!」
警部の目が細くなる。
「捨てる余裕がなかった可能性もあるな」
(ぐっ……!)
(来る……論理で詰めてくる……!)
「それに、お前は被害者の隣に座っていた」
「……っ」
「犯行の機会は十分にある」
(くそっ……!)
(全部事実だから否定しづらい……!)
「いやいやいや!」
俺は首を振る。
「無理でしょ!俺、包丁とか使えないし!」
「……ほう?」
「首切り落とすとか無理無理!素人にできるわけないでしょ!」
ざわ……ざわ……
(どうだ……!?)
(リアリティ……!常識的な無理……!)
だが――
「だが実際に切断されている」
冷静な一言。
「つまり、できた人間がいるということだ」
(……ぐっ……!)
(論理が……逃げ場がねぇ……!)
「お前の鞄から凶器が出ている以上、疑うのは当然だ」
「……っ……!」
言葉に詰まる。
(やばい……)
(完全に流れが悪い……)
頭の中がざわつく。
(どうする……!?)
(このままだと……)
逮捕。
手錠。
終わり。
(……ふざけんな……!)
(こんなことで終わってたまるか……!)
俺は歯を食いしばる。
(まだだ……!)
(まだ何かあるはず……!)
(あの女……犯人……)
(どうやってやった……?)
記憶を必死に掘り返す。
トンネル。
一瞬の暗闇。
あの「死ねっ」という声。
(……あの瞬間……何かあった……)
だが――まだ繋がらない。
「どうした?何か言いたいことがあるのか?」
目暮警部の声。
(……時間がねぇ……!)
ざわ……ざわ……
(考えろ……!)
(ここを乗り切れ……!)
俺は拳を握りしめる。
(――逆転しろ……この場を……!)
「……お前、職業は何だ?」
低く、重い声。
俺の目の前に立つのは、目暮十三。
完全に“疑っている目”だ。
(……来たか……)
一瞬、迷う。
(無難に誤魔化すか……?)
(いや……下手に嘘つくとボロが出る……)
俺は口を開く。
「……博打師だ」
一瞬、空気が止まる。
ざわ……
(……しまったか……?)
目暮警部の眉がわずかに動く。
「博打師……?」
(来る……!)
「つまり、賭博で金を得ているということか?」
(……あっ……)
(これ……まずい流れだ……!)
「いや……その……」
言葉が詰まる。
「賭博は違法性がある場合もあるが……」
静かに詰めてくる。
(墓穴……!完全に墓穴だ……!)
(なんで正直に言った俺……!)
「……いや、違う……!パチンコだ!」
とっさに言い直す。
「パチンコで……生計立ててる……!」
ざわ……
(……苦しいか……?いや、ギリいけるか……?)
目暮警部はじっと俺を見る。
「なるほど……」
一歩、距離を詰めてくる。
「つまり、安定した収入はない……」
「……っ」
「日々の生活も不安定……」
(やめろ……その分析……!)
「そして今日、遊園地に来ている」
(……あ?)
一瞬、違和感。
だが次の言葉で理解する。
「周囲には楽しそうな男女のカップル」
(……!)
「自分とは違う生活」
(やめろ……)
「満たされている人間と、自分との差」
(やめろ……!)
「むしゃくしゃすることもあるだろう」
ざわ……ざわ……
周囲の視線が変わる。
(ああ、なるほどな……)
(そういう“ストーリー”を作ってきたか……!)
「そして衝動的に殺す」
目暮警部の声は冷静だ。
「動機としては十分にあり得る」
(……くそっ……!)
「特に――」
指が俺を指す。
「被害者の隣に座っていたお前ならな」
(完全にハマってる……!)
(状況、動機、証拠……全部繋げてきやがった……!)
「さらに凶器も所持していた」
(……終わってる……)
「犯人と考えるには十分だ」
静かな断定。
ざわ……ざわ……
(違う……!俺じゃねぇ……!)
だが言葉が出ない。
(論理で固められてる……!)
(反論しても……全部潰される……!)
「どうだ?」
目暮警部が一歩踏み込む。
「まだ否定するか?」
(……くそっ……!)
(完全に向こうが上だ……!)
(俺はただの無職同然のギャンブラー……)
(向こうは場数踏んだ警部……!)
(言葉の重みが違う……!)
「……違う……」
絞り出すように言う。
「俺じゃねぇ……」
だが弱い。
(自分でも分かる……説得力ゼロ……)
(このままじゃ……押し切られる……!)
頭の中が高速で回る。
(どうする……?)
(このまま終わるのか……?)
(いや……まだだ……!)
(何か……何かあるはずだ……!)
トンネル。
暗闇。
あの一瞬。
(……あの時……!)
だが、まだ繋がらない。
目暮警部の視線が突き刺さる。
(やばい……時間がねぇ……!)
ざわ……ざわ……
(考えろ……!)
(逆転しろ……!)
俺は歯を食いしばる。
(ここで終わったら……本当に終わりだ……!)
(……待て……)
目暮警部の言葉が、頭の中で反芻される。
“むしゃくしゃして殺した”
“衝動的犯行”
“動機として十分”
(……おかしい……)
違和感が、じわじわと広がる。
(何かが……ズレてる……)
そして――
(ああ……そうか……!)
俺はゆっくり顔を上げる。
「……ちょっといいですか、警部」
目暮十三が目を細める。
「なんだ」
俺は一歩踏み出す。
(ここだ……)
(麻雀で言えば……押し引きの分岐……)
(――押せる……!)
「そもそも、その主張……おかしくないですか?」
場の空気がわずかに変わる。
「何がだ?」
低い声。
だがさっきまでの“確信”が、ほんの少し揺らいでいる。
(……いいぞ……効いてる……!)
「むしゃくしゃして殺した……って、本気で言ってます?」
ざわ……
周囲がざわつく。
「ああ」
警部は即答する。
「突発的な犯行としては十分に――」
「そう」
俺は遮る。
「そこですよ」
(刺せ……!論理の穴を……!)
「突発的な犯行……つまり、その場の感情でやっちまったってことですよね?」
「……そうだ」
一瞬の間。
(よし……認めた……!)
「じゃあ――おかしい」
空気がピリつく。
「何がだ?」
俺は一歩踏み込む。
心臓がバクバク鳴っている。
(行け……!ここは攻め時……!)
「なんで俺、包丁なんか持ってるんです?」
「……!」
一瞬――
目暮警部の表情が止まる。
(……来た……!)
「突発的なんでしょ?」
畳みかける。
「むしゃくしゃして、その場で殺したんでしょ?」
「……ああ」
「じゃあ準備してるのおかしくないですか?」
ざわ……ざわ……
空気が一気に変わる。
(押せ……!止まるな……!)
「計画的なら分かる!」
声が自然と大きくなる。
「でも突発的なんでしょ!?」
指を突きつける。
「だったら――」
「なんで俺は、最初から凶器なんか持ってるんです?」
沈黙。
(……効いてる……!)
(完全に論理の穴だ……!)
目暮警部がわずかに目を伏せる。
(ひるんだ……!)
(ここだ……!)
(麻雀なら――)
(テンパイ……押し切れる局面……!)
「それに!」
さらに踏み込む。
「本当に俺が犯人なら、そんなもん持ち歩きます?」
「……」
「トンネルの中で捨てりゃいいでしょ!」
「……確かに、それは――」
警部の言葉が一瞬詰まる。
(よし……崩れてきた……!)
「わざわざ証拠抱えたまま降りてくるとか……」
首を振る。
「そんなバカな犯人います?」
ざわ……ざわ……
周囲の空気が、完全に“疑い”から“揺らぎ”に変わる。
(いいぞ……流れが来てる……!)
(押せ……押し切れ……!)
目暮警部は黙って俺を見ている。
さっきまでの圧は、わずかに弱まっている。
(……まだだ……)
(完全には崩れてない……!)
(だが……確実に一歩前進……!)
俺は息を整える。
(このまま……一気に逆転……!)
だが同時に、頭の奥で別の声がする。
(……いや……まだ足りねぇ……)
(“じゃあ誰がやったか”……そこまで行かねぇと……)
(完全勝利にはならねぇ……!)
拳を握る。
(でも今はいい……!)
(まずはこの場を凌ぐ……!)
(――生き残れ……!)
(……効いてる……)
さっきの一撃。
“突発的犯行なのに凶器を持っている矛盾”。
確実に、目暮十三の足を止めた。
(なら……ここは一気に行く……!)
(麻雀で言えば……押し込み……!)
(中途半端に引いたら負ける……!)
俺は一歩踏み込む。
「警部……あんた、俺を“色眼鏡”で見てるだけじゃないですか?」
ざわ……
空気がまた揺れる。
「……どういう意味だ?」
低い声。だが、さっきより圧が弱い。
(いいぞ……揺れてる……!)
「パチンコで生きてるから」
指を軽く自分に向ける。
「見た目が冴えないから」
一歩詰める。
「社会不適合者っぽいから」
視線を真正面からぶつける。
「――だから“こいつならやりかねない”って決めつけてるだけでしょ?」
ざわ……ざわ……
周囲の空気が、完全に“疑い一色”ではなくなる。
(流れ……来てる……!)
目暮警部は黙っている。
(……よし……止まってる……!)
「むしゃくしゃして殺した……」
俺はゆっくり言う。
「いいですよ、それは」
「……」
「でもその場合――突発的ですよね?」
「……ああ」
(認めた……!)
「じゃあおかしい」
間を置かず叩き込む。
「なんで俺は包丁なんか持ってるんです?」
警部は黙る。
(さらに……!)
「計画的なら――」
指を振る。
「なおさらおかしいでしょ」
「……どういうことだ」
「計画的なら、証拠残さないですよね?」
一歩、さらに踏み込む。
「トンネルの中で捨てればいい」
「……」
「それすらしないで、わざわざ鞄に入れて持ち歩く?」
首を横に振る。
「そんな犯人います?」
ざわ……ざわ……
(いい……完全に場が揺れてる……!)
(だがまだ足りねぇ……もう一押し……!)
「それに――」
声を強める。
「そもそもおかしくないですか?」
「……何がだ」
「ジェットコースターで殺す意味」
空気が止まる。
(刺され……!)
「隣に座ってる人間殺したら――」
間を置く。
「どう考えても、すぐバレるでしょ?」
「……」
「逃げ場もない」
「証拠も残りやすい」
「周り全員、目撃者」
一つ一つ、積み上げる。
「そんな場所でわざわざ殺す?」
(どうだ……!)
(論理で潰してる……!)
「だったら――」
決定打。
「乗り物なんか乗らずに、人混みの中でやった方がよくないですか?」
ざわああ……
明らかに空気が変わる。
(……来た……!)
(完全に傾いた……!)
目暮警部の口が、わずかに開く。
「……それは……」
言葉が続かない。
(止まった……!)
(完全に止めた……!)
「……どうなんですか、警部」
俺は静かに言う。
「その状況で、“俺が犯人”って断定できます?」
沈黙。
ざわ……ざわ……
(勝ってる……今は完全に……!)
(だが――)
頭の奥で冷静な声。
(まだ終わってねぇ……)
(“じゃあ誰がやったか”が出てない……)
(完全勝利じゃない……)
だが、それでもいい。
(今は十分だ……)
(逮捕の流れは止めた……!)
俺は小さく息を吐く。
(……生き延びたか……一旦……)
だが目暮警部は、まだ俺を見ている。
完全には崩れていない目。
(……油断するな……)
(次で決まる……)
ざわ……ざわ……
(来るぞ……次の一手が……!)
(……まだ足りねぇ……)
空気はこっちに傾いてる。
だが決定打にはなってない。
(もう一発……必要だ……)
俺は一瞬、あの時の状況を思い返す。
座席。
安全バー。
身体は固定。
(……!)
(そうか……これだ……!)
俺は顔を上げる。
「警部、もう一ついいですか?」
目暮十三がこちらを見る。
「……何だ」
(行け……ここで仕留める……!)
「俺、右利きなんですよ」
「……それがどうした」
「被害者は俺のどっち側に座ってました?」
一瞬の間。
「……左だな」
(よし……乗ってきた……!)
「ですよね」
俺は一歩踏み出す。
「で、俺たち――」
腕を動かす仕草。
「安全バーでガッチリ固定されてましたよね?」
「……ああ」
(詰めろ……逃がすな……!)
「その状態で――」
声を強める。
「右利きの俺が、左側にいる人間の首を切断する」
間を置く。
「……無理でしょ?」
ざわ……
空気が止まる。
(来た……!)
目暮警部がわずかに眉をひそめる。
「……不可能とは言い切れん」
(まだ来るか……!)
(なら――押し切る……!)
「じゃあ聞きますよ」
一気に距離を詰める。
「警部、やったことあります?」
「……何?」
「その状態で、首切るっていう動き」
ざわ……ざわ……
(強引でいい……印象を叩き込め……!)
「ロックされて、身動き取れない状態で」
腕を縛られているように動かす。
「利き手と逆方向に」
さらに強調する。
「しかも“首を切断”ですよ?」
一拍。
「やったことあります?」
「……あるわけないだろう」
(よし……!)
(そこだ……!)
「ですよね?」
即座に畳みかける。
「やったことないんですよね?」
「……ああ」
「じゃあ分かりますよね」
声を低くする。
「無理だって」
ざわ……ざわ……
空気が完全にこちらに寄る。
(押せ……!今だ……!)
「腕は固定されてる」
「体も自由に動かせない」
「利き手は逆方向」
指を折りながら並べる。
「その状態で、あのレベルの切断」
首を振る。
「――無理でしょ」
沈黙。
目暮警部の目が揺れる。
(……効いてる……!)
(完全にイメージさせた……!)
「どうなんですか、警部」
静かに追い込む。
「それ、本当に可能だと思います?」
長い沈黙。
ざわ……ざわ……
周囲の視線が、警部に集まる。
(さあ……どう出る……?)
数秒――いや、もっと長く感じる時間。
そして。
「……確かに」
低く、重い声。
「その体勢での犯行は……困難だな」
(――来た!)
(勝ちだ……!)
心の中で、強く拳を握る。
(これで……俺は外れた……!)
完全じゃない。
だが十分。
(容疑者からは……降りた……!)
同時に、次の思考が走る。
(あとは……誘導……)
(あの女に……)
視線をゆっくり向ける。
(犯人は分かってる……)
(あとは……どうやってやったか……それを繋げるだけ……!)
ざわ……ざわ……
空気は完全に変わった。
さっきまでの“犯人扱い”は消えている。
(……生き残った……!)
だがまだ終わりじゃない。
(ここからが本番だ……!)
(……?)
ふと、違和感。
(さっきから……)
俺は今まで、目暮十三とのやり取りに集中していた。
心の声なんて、ほとんど聞いていなかった。
だが――
(誰か……考えてやがった……)
やけに静かに、深く。
(……いたな……)
その存在を思い出した瞬間――
コツ……コツ……
足音。
俺たちの方へ歩いてくる一人の男。
高校生くらい。
だが、その目は妙に鋭い。
(……なんだこいつ……?)
その瞬間、周囲の“声”が流れ込んでくる。
(来た……工藤新一だ……)
(あの有名な高校生探偵……)
(事件解決しまくってるやつだろ……)
(……は?有名……?)
(工藤新一……?)
工藤新一
(……知らねぇ……)
だが、心の声で理解する。
(なるほど……有名人ってやつか……)
男――工藤新一が口を開く。
「目暮警部……二人の討論が面白くて見学させてもらいました」
(……面白くて……?)
(こっちは命かかってんだぞ……!)
「俺も彼はやってないと思ってます。彼の主張は最もです」
ざわ……
空気がまた動く。
「おお工藤君……そうか君も乗っていたのか」
「ええ」
落ち着いた声。
「そもそも包丁で人の首を切断するのは彼の言う通り不可能です」
(……助かった……)
内心、少しだけ息をつく。
「そして彼が右利きなのも分かります」
「ほう?」
「時計やペンの使い方など、色々見れば分かります。左で包丁は無理ですね」
(……観察力……えぐいな……)
「分かっていたなら早く言ってくれ」
「すみません……」
一拍。
その目が、俺に向く。
(……なんだ……その目……)
「いやね。彼のこと……カイジさんでしたっけ?」
(……来るか……?)
「犯人ではないと思いますが、怪しい部分があったので様子見してました」
ざわ……ざわ……
(怪しい……?)
(なんだ……?)
(まさか……)
一瞬、嫌な予感。
(心の声……バレた……?)
(いや……そんなはず……!)
「怪しい部分とは?」
目暮警部が問う。
工藤は静かに続ける。
「あの暗いトンネルで――」
心臓が跳ねる。
「“やめろおおおおおおおお”と叫んだのは、カイジさんですよね?」
(……!)
(来た……!)
(そこか……!)
「今の警部との討論の声と似ていたので分かりました」
(……くそ……!)
(余計なとこで繋げやがる……!)
「だからこそ、変なんですよ」
空気が一気に冷える。
「変とは?」
「最初、被害者だと思いました。声の主は」
(……そりゃそうだ……)
「でも――」
一歩、踏み出す。
「あの暗いトンネルの中で、なぜカイジさんは“やめろ”と言っていたのか?」
(……やめろ……!)
「これを言うのは――」
静かに、確実に追い詰めてくる。
「やられた被害者か、犯行を目撃した人間ですよね?」
ざわ……!
(……くっ……!)
「しかし被害者は既にいる」
「つまり――」
指が、俺を指す。
「カイジさんは“目撃者”になる」
(……まずい……)
「では、あの見えない状況で――」
一拍。
「何が見えていたのか?」
完全な沈黙。
「僕の疑問はそこなんです」
(……終わった……)
「はっ……そうだ!」
目暮警部が声を上げる。
「どういうことかね?カイジ!」
ざわ……ざわ……
一斉に視線が集まる。
(……この探偵……やばい……)
(完全に突いてきやがった……!)
(あの一言……)
(完全にミス……!)
心臓がドクドク鳴る。
(どうする……?)
(なんて言う……?)
(“心の声が聞こえた”……?)
(バカか……!)
(そんなもん言ったら終わりだ……!)
研究所。
拘束。
モルモット。
(絶対ダメだ……!)
汗が流れる。
(じゃあ……どうする……!?)
(なんでだ……)
(犯人じゃねぇのに……)
(なんで俺が追い詰められてる……!?)
ざわ……ざわ……
(時間がねぇ……!)
工藤の目が、まっすぐ俺を射抜く。
(こいつ……全部見抜く気だ……!)
(……詰んだか……?)
(いや……!)
歯を食いしばる。
(まだだ……!)
(まだ終わってねぇ……!)
(何か……何かあるはずだ……!)
ざわ……ざわ……
(……まずい……)
このまま正面からやり合ったら――
(絶対にバレる……)
心の声。
この“力”。
(あの探偵……勘が良すぎる……!)
(普通に答えたら……絶対どこかで詰む……!)
結論――
(ハッタリで押し切る……!)
(犯人を言い当てて……事件を終わらせる……!)
(それで全部うやむやにする……!)
俺は息を整える。
「……ああ、確かに言った」
ざわ……
(ここは認める……!)
(否定したら余計怪しくなる……!)
「なぜだ?」
目暮十三の問い。
(……来た……)
(ここが勝負……!)
(犯人は分かってる……!)
(なら――)
(イチかバチかだ……!)
俺は指を向ける。
「……小山内奈々さん」
空気が止まる。
「あんたが犯人だ」
ざわあああ……
一斉にどよめく。
(行った……!)
(もう引けねぇ……!)
「……何だと?」
警部の声が低くなる。
俺は続ける。
「俺……見たわけじゃない」
(凶器が分からねぇ……)
(だから誤魔化す……!)
「感じたんです」
「感じた?」
「後ろから近づく人の気配」
ざわ……
(いい……それっぽい……!)
「そして――」
手を動かす。
「首に、見えない何かをした」
「……」
「直感で分かったんすよ」
「殺しだって」
(どうだ……!?)
(押し切れるか……!?)
その時――
「なるほど……」
静かな声。
工藤新一だ。
(……来た……こいつ……!)
「でも、なぜ彼女なんです?」
一歩、踏み出してくる。
「確かに被害者の後ろは僕で、その後ろが小山内奈々さんでした」
(……!)
「ですがカイジさんから見れば」
視線が刺さる。
「僕がやった可能性もありますよね?」
ざわ……ざわ……
(……確かに……)
(やべぇ……)
(そこ考えてなかった……!)
(犯人分かってる前提で話してた……!)
(理由がねぇ……!)
(どうする……!?)
頭が高速回転する。
(なぜ……なぜ奈々だと断定した……?)
(理由……理由……)
――その時。
(……あっ……!)
一つの記憶。
(香水……)
あの時、聞こえた心の声。
(“香水つけた”って……言ってた……!)
(……使える……!)
俺は顔を上げる。
「……香水だ」
ざわ……
「香水?」
工藤が目を細める。
(行け……押し切れ……!)
「アナスイの香水」
(何それ……知らねぇけど……!)
(でもそれっぽい……!)
「匂いがしたんだよ」
「……ほう?」
(頼む……通ってくれ……!)
「俺、鼻いいんで」
(大嘘だ……!)
(全然良くねぇ……!)
「トンネルの中で……一瞬だけ」
「その匂いがした」
ざわ……ざわ……
(どうだ……!?)
「で、今ここにいる中で――」
指を向ける。
「同じ匂いがするのは……あんただけだ」
空気が張り詰める。
(行け……!)
(押し切れ……!)
「だから分かった」
言い切る。
「小山内奈々さん……あんたが犯人だ」
ざわあああ……
(……いけるか……?)
(いや……まだ分からねぇ……)
工藤が黙って俺を見ている。
(こいつ……見抜いてくるタイプだ……)
(嘘、バレるか……?)
心臓がドクドク鳴る。
(頼む……!)
(ここは通ってくれ……!)
ざわ……ざわ……
空気が揺れる。
(勝つか……)
(それとも……終わるか……)
(――運命の一手……!)
(……まだだ……)
今のは“可能性”を示しただけ。
決定打じゃない。
(ここで止まったら終わる……)
(押せ……!)
(俺への疑いじゃなく……犯人に目を向けさせる……!)
(動機は分かってる……!)
(なら――行ける……!)
俺は一歩踏み出す。
「……お姉さん」
小山内奈々を睨む。
「あんた……被害者の元恋人だろ?」
ざわ……!
(心の声で聞いた……だがそんなことは言えねぇ……!)
奈々は――押し黙る。
(……いい反応だ……!)
(動揺してる……!)
俺はさらに踏み込む。
「俺、今容疑者にされてるんだよ」
声を低くする。
「なぁ……答えろよ?」
視線をぶつける。
「やましいことがないならな」
一拍。
「警察が調べりゃ、どうせ分かることだろ?」
ざわ……ざわ……
数秒の沈黙。
そして――
「……はい」
小さな声。
「元恋人でした」
ざわああ……
(よし……!)
(一つ通した……!)
だが――
「へぇ……」
静かな声。
振り向くと、工藤新一。
「カイジさん、なんで分かったんですか?」
ざわ……ざわ……
(……は?)
(なんで俺の方来る……!?)
(普通そこは“元恋人”に注目だろ……!)
(くそ……鋭すぎる……!)
(確かに……なんで分かるんだって話になる……)
(どうする……?)
一瞬で考える。
(……ハッタリだ……!)
「……見てたんだよ」
「見てた?」
「ああ」
腕を組む。
「さっき、お姉さんのこと」
(適当だ……だが押す……!)
「被害者の方、チラチラ見てただろ?」
奈々の肩がビクッと動く。
(……当たってる……?いや――)
(当たってなくても問題ない……!)
「で、被害者が振り向くと――」
手で視線を逸らす仕草。
「目、そらしてた」
ざわ……
「友達なら、そんなことしないだろ?」
沈黙。
(いい……!)
(“無意識だった”って思わせれば勝ち……!)
奈々は何も言わない。
(……よし……自然にハマった……!)
(なら――さらに押す……!)
「そして――」
空気を引き締める。
「動機だ」
ざわ……
「浮気」
その一言で空気が凍る。
「この被害者――」
指を向ける。
「愛子さんと、こっそり付き合ってたんだろ?」
ざわああ……
(心の声で聞いた……)
(キスマーク……遊園地……)
(全部繋がる……!)
「理由は簡単だ」
ゆっくり言う。
「被害者のシャツの下」
「……!」
「キスマークがある」
周囲がどよめく。
「しかも――」
視線を愛子に向ける。
「その色」
一拍。
「紫」
ざわ……
「愛子さんの唇の色と同じだ」
(……知らんけど……!)
(でも押し切る……!)
「つまり――」
手を広げる。
「元恋人と、今の女」
「友達同士での……泥沼の恋愛関係」
沈黙。
「それが――」
奈々を見る。
「引き金だ」
ざわあああ……
空気が完全に揺れる。
(……どうだ……!?)
(行ったか……!?)
奈々の表情が歪む。
愛子も動揺している。
周囲の視線は――完全に“そっち”へ向いている。
(……よし……!)
(俺から外れた……!)
だが――
視線を感じる。
(……あ?)
横を見る。
工藤新一。
(……こいつ……)
(まだ……見てやがる……)
(嘘……どこまで通じてる……?)
心臓が鳴る。
(頼む……)
(ここは……押し切れてくれ……!)
ざわ……ざわ……
(勝ったか……)
(それとも――)
(まだ続くのか……この勝負……!)
ざわ……ざわ……
(……どうだ……?)
俺のハッタリ混じりの推理。
空気は完全に奈々に傾いている。
(このまま押し切れるか……?)
その時――
「カイジさんの推理……」
静かな声。
振り向く。
工藤新一。
(……来たか……)
「僕と違う視点ですが……合ってますよ」
(……は?)
一瞬、思考が止まる。
「物事の見方が違うだけです」
淡々と続ける。
「例えば、シャーロック・ホームズは“誰ができるか”に焦点を置いて犯人を追い詰める」
(……なんだその例え……)
「一方で明智小五郎は“動機が誰にあるか”で追う」
「結論は同じでも、過程が違う」
視線が俺に向く。
「僕とカイジさんも同じです」
(……こいつ……)
「過程は違う……でも結論は同じ」
一歩踏み出す。
「そしてカイジさんの話で――」
空気が張り詰める。
「僕の推理も、結論が出ました」
(……決めに来た……!)
指が伸びる。
「犯人は――」
一拍。
「小山内奈々さん、あなただ!!!!」
ざわああああ……
(……決まった……!)
空気が完全にひっくり返る。
「僕も“何者かの存在”を感じていました」
「トンネルの中で」
(……!)
(こいつもか……!)
「一つは――微かな匂い」
「これはカイジさんの言う通り、香水でしょう」
(……通った……!)
(俺のハッタリが……!)
「犯人が動いたときのもの」
「そして――」
少しだけ表情が変わる。
「トンネルの中で、僕は頬に“雫”を感じました」
ざわ……
「……雫?」
「ええ」
静かに言い切る。
「犯人の涙です」
(……涙……?)
「昔好きだった人を殺す」
「その感情から、無意識に流れたもの」
奈々の肩が震える。
(……図星か……)
「カイジさんは“首に何かをした”と言っていましたが」
「おそらく――ワイヤーかピアノ線」
ざわ……!
(……なるほど……!)
(そういうことか……!)
「犯人はロックされるときに鞄を挟み」
「完全に固定されないようにしていた」
(……そんな手が……!)
「そしてトンネル内でバランスを取りながら」
「ワイヤーを被害者の首にかけ」
「それをトンネルのどこかに引っ掛ける」
空気が凍る。
「ジェットコースターの加速力で――」
一拍。
「首を切断した」
ざわあああ……
(……とんでもねぇトリックだ……!)
「さらに――」
新一の目が奈々の手に向く。
「彼女の手」
「……?」
「おそらく体操選手でしょう」
ざわ……
「だからこそ、あの不安定な状況でバランスを取れた」
(……全部繋がってやがる……!)
「そして凶器は――」
こちらを見る。
「カイジさんの言う通り、外に捨てた」
(……完全に拾われてる……!)
「警部」
新一が振り向く。
「ワイヤーかピアノ線がトンネル内にあるはずです」
「探してください」
「よし、探せ!」
目暮十三が指示を飛ばす。
数分後。
「ありました!」
血のついたワイヤー。
ざわあああ……
(……終わった……)
さらに――
「この周辺……指紋が多数検出されました!」
「小山内奈々のものです!」
(……完全だ……)
「バランスを取るために触れたんでしょう」
新一が静かに言う。
「トンネル内は短時間……指紋を消す余裕はなかった」
奈々が崩れ落ちる。
(……決着……)
ざわ……ざわ……
事件は一段落。
俺は小さく息を吐く。
(……助かった……)
(ギリギリだった……)
(ハッタリ……通ったな……)
だが――
(……いや……)
視線を横にずらす。
(結局……あの探偵に全部持ってかれたか……)
苦笑いが漏れる。
(まあいい……)
(生き残った……それで十分だ……)
だがその時――
ふと、頭に引っかかる。
(……そういえば……)
あの時。
黒づくめの男たち。
(取引は夜だ……)
(余計なことはするな……)
(……あれ……)
(なんだったんだ……?)
ざわ……
心の奥がざわつく。
(ただの偶然……じゃねぇ気がする……)
遠くでサイレンの音。
だが俺の意識は、別の“何か”に引っ張られていた。
(……まだ……終わってねぇのか……?)
エンド:「始まりを告げる鐘」
Q、ミステリー小説ですか?
A、いいえ、ギャグ小説です。
ミステリーにギャグ成分混ぜてみましたがどうですか?
-
かなりあり
-
なかなかいい感じ
-
普通
-
ミステリーにギャグいらん
-
ありえん!