心読みの逆転探偵録 カイジVS名探偵コナン   作:梅酒24

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ファイル5:アイドル密室殺人事件 後編①

電話が鳴る。

 

――最悪の音だ。

 

昨日は徹夜で麻雀。

 

そのまま倒れ込んで、気づけば夜。

 

頭ぼーっとしたまま出ると――

 

「目暮だ」

 

(終わった……)

 

この時点で嫌な予感しかしない。

 

だいたい警察からの電話なんてロクなもんじゃない。

 

だが――

 

話を聞くと、意外な方向だった。

 

ヨーコちゃんの部屋で――殺人事件。

 

そして容疑者は4人。

 

その中に――

 

俺。

 

(は?)

 

いやいやいや……まあいい。

 

で、さらに聞く。

 

他の3人はすでに現場にいる。

 

しかも――

 

「毛利君も来ている」

 

(きたああああああ!!)

 

こうちゃんいる。

 

つまり――

 

ヨーコちゃんもいる。

 

(勝ち……!)

 

一気に流れが変わる。

 

今回の状況――

 

容疑者全員集合。

 

つまりシンプル。

 

Aが犯人と思えばA。

 

BならB。

 

極論――全員共犯でもいい。

 

(俺の“心読み”+こうちゃん)

 

このコンボで――

 

詰み。

 

完全に詰み。

 

犯人、逃げ場なし。

 

(イージーゲーム……!)

 

しかも――

 

ヨーコちゃんに会える。

 

見せ場もある。

 

連絡先も聞ける。

 

(完璧……!)

 

テンションが一気に上がる。

 

最近の俺――

 

絶好調。

 

豪華客船で活躍。

 

拍手喝采。

 

評価うなぎ登り。

 

(殺人事件?)

 

(むしろ得意分野だろ……!)

 

俺はフーデリで稼いだ金を叩いて、

 

タキシードに着替える。

 

ビシッと決める。

 

(いくぞ……)

 

外に出る。

 

ふと、隣の電気屋のテレビが目に入る。

 

――映っていた。

 

俺の顔。

 

でかでかと。

 

「緊急指名手配」

 

(……え?)

 

ざわ……

 

ざわ……

 

(いやいやいやいや)

 

おかしい。

 

俺まだ呼ばれただけ。

 

容疑者の一人。

 

参考人レベル。

 

(なんで全国デビューしてんだよ……!)

 

理解が追いつかない。

 

その瞬間――

 

「いたぞ!!」

 

警察が走ってくる。

 

「伊藤カイジ確保!!」

 

(早ええええええええ!!!)

 

一瞬で取り囲まれる。

 

そのまま――

 

ガシッ。

 

確保。

 

(いや雑!!扱い雑!!)

 

でも――

 

冷静に考える。

 

(まぁいいか……)

 

タクシー代浮く。

 

そのまま現場直行。

 

むしろラッキー。

 

(今回……マジでイージー)

 

容疑者全員集合。

 

現場未到着。

 

凶器なし。

 

動機なし。

 

ヨーコちゃんとはむしろ好感度あり。

 

(風……吹いてる……!)

 

完全に俺に向いてる。

 

(これはもう……)

 

「重要参考人」どころか――

 

ヒーロー。

 

そうなる未来しか見えない。

 

パトカーの中で、

 

ふと思い出す。

 

ヨーコちゃんの部屋。

 

お茶。

 

会話。

 

あの笑顔。

 

(……いい匂いだったな……)

 

にやける。

 

止まらない。

 

(よし……)

 

この事件――

 

ちゃちゃっと解決して、

 

そのまま自然に――

 

連絡先。

 

完璧な流れ。

 

(決める……!)

 

伊藤カイジ――

 

今、絶好調。

 

……ただし。

 

“自分が指名手配されてる”という一点を除いて。

 

ざわ……ざわ……。

 

部屋に入った瞬間――

 

空気が重い。

 

(ああ、これこれ……)

 

殺人現場特有の、あの圧。

 

でも――

 

俺の中では真逆。

 

(むしろボーナスステージ……!)

 

そう思った、そのとき。

 

バタバタッ――!

 

小さい影が一直線にこっちへ来る。

 

コナンだ。

 

「カイジ兄ちゃん!!」

 

いきなり腕を掴まれる。

 

「消去法で犯人だよ!!どうしよう!!」

 

(マジでやばいんだよ……この状況……でもカイジさんなら切り抜けられる……)

 

――は?

 

(いやいやいや)

 

何言ってんだこのガキ。

 

(全然やばくねえだろ……)

 

むしろ逆。

 

状況聞く限り――

 

(俺無双確定だろ……)

 

容疑者全員集合。

 

証拠は出揃ってる。

 

あとは“読む”だけ。

 

(子供だなぁ……)

 

軽く頭を撫でる。

 

「大丈夫だって」

 

余裕の一言。

 

そして――

 

視線を前へ。

 

いた。

 

沖野ヨーコ。

 

(……やっぱ可愛い……)

 

一瞬でテンション上がる。

 

俺はタキシードの襟を軽く整え、

 

ビシッと決める。

 

――ウインク。

 

(決まった……!)

 

そのまま歩きながら、

 

それっぽく低い声で言う。

 

「心配しなくていい……全部、俺が解決する」

 

(くぅ〜〜〜〜〜!!)

 

自分で言ってて痺れる。

 

完璧。

 

完全に主人公。

 

だが――

 

「バカモン!!!」

 

空気がぶち壊れる。

 

目暮警部。

 

顔真っ赤。

 

「カイジ!!やはりあの時逮捕していれば……!!」

 

「人を殺しやがって!!」

 

(は?)

 

いやいやいや。

 

またそれ?

 

いつものやつ?

 

(もういいってそのボケ……)

 

俺は軽くため息。

 

「いや警部、それ毎回言ってますけど――」

 

(今回は違う)

 

今回は――

 

状況が違う。

 

完全に俺有利。

 

(むしろ……)

 

ここで重要なのは、

 

“最初から正解を出すこと”じゃない。

 

(追い詰められてる奴を見つけて――)

 

(そこから一気に畳みかける)

 

いつものスタイル。

 

心を読む。

 

揺れてる奴を見つける。

 

そこから推理を“作る”。

 

(その方が――)

 

“カッコいい”

 

そして視線を巡らせる。

 

ヨーコ。

 

マネージャー。

 

ゆう子。

 

そして警部。

 

(さあ……)

 

(誰だ……?)

 

(追い詰められてるのは……)

 

ざわ……

 

ざわ……

 

(ここからが本番だ……!)

 

(落ち着け……)

 

(こういうときこそ前提確認……!)

 

俺は一度、深く息を吐く。

 

いつもそうだ。

 

どこかで“凡ミス”。

 

条件の見落とし。

 

それで足元をすくわれる。

 

(今回は違う……)

 

ここは丁寧にいく。

 

“心を読む”――

 

この能力は万能じゃない。

 

コツがいる。

 

(犯人が“自分は犯人だ”って意識してないと……)

 

(声は拾えない……!)

 

だから必要なのは――

 

会話。

 

揺さぶり。

 

炙り出し。

 

(まずは土台……)

 

俺はこうちゃん――毛利小五郎に向き直る。

 

「こうちゃん」

 

一拍。

 

「容疑者は4名で……全員この中にいるでいいんだよな?」

 

場の視線が集まる。

 

小五郎は一瞬だけ俺を見て――

 

すぐに答える。

 

「ああ、そうだ」

 

(よし……)

 

「沖野ヨーコちゃん」

 

「マネージャーの山岸」

 

「アイドル仲間のゆう子」

 

「そして――お前だ」

 

(はいはい俺ね)

 

想定内。

 

むしろ好都合。

 

「ラッキー」

 

軽く笑う。

 

「ヨーコちゃんは犯人外していいよな?」

 

ここは重要。

 

絶対にブレちゃいけない軸。

 

すると――

 

こうちゃんは迷いなく言い切る。

 

「ヨーコちゃんは犯人じゃない」

 

(きた……!)

 

「俺が保証する」

 

(確定……!)

 

さらに畳みかけるように――

 

「ちなみに鑑識も部屋の隅々まで調べた」

 

(さすがこうちゃん……)

 

抜かりなし。

 

準備万端。

 

完全に舞台が整ってる。

 

(ってことは……)

 

頭の中で一気に整理される。

 

容疑者4人。

 

ヨーコ除外。

 

残り3。

 

俺はシロ。

 

(つまり……)

 

山岸。

 

ゆう子。

 

この2人。

 

(早っ……)

 

まだ5分も経ってないのに――

 

もうここまで絞れてる。

 

可能性は――

 

山岸の単独犯。

 

ゆう子の単独犯。

 

二人の共犯。

 

(3択……)

 

(楽勝じゃねえか……!)

 

口元が緩む。

 

「OK」

 

軽く頷く。

 

「他に補足事項あったら教えて」

 

(材料は多いほどいい……)

 

(あとは“揺れてる心”を拾うだけ……!)

 

すると――

 

こうちゃんが腕を組み、

 

少しだけ真剣な顔になる。

 

そして、

 

ここまでの情報を整理するように語り始めた――

 

ざわ……

 

ざわ……

 

こうちゃんが腕を組んで――

 

語り出す。

 

低く、落ち着いた声。

 

さっきまでの酔いはどこへやら。

 

(やっぱこの人……切り替わると別人だな……)

 

「まず現場の状況だ」

 

空気が締まる。

 

「被害者は背中を包丁で刺されて死亡」

 

「その包丁は――ヨーコちゃんのもの」

 

(テンプレだな……)

 

「そして部屋は密室状態」

 

(はいはい……外部犯行否定ね)

 

「さらに部屋の温度が異常に高かった」

 

(時間操作か……?)

 

「死体の周囲にはわずかな水の跡」

 

(……水?)

 

少し引っかかる。

 

だがまだ整理優先。

 

こうちゃんは続ける。

 

「それと――」

 

一拍。

 

「ベッド周辺から大量の長い黒髪が発見されている」

 

(黒髪……長髪……)

 

「ただしヨーコちゃんは茶髪だ」

 

(つまり別人)

 

「さらに指紋は男のものと見られる」

 

(男……?)

 

一瞬、思考が止まる。

 

だが続く。

 

「死亡推定時刻も出ている」

 

「その時間帯――」

 

「ヨーコちゃん、山岸、ゆう子」

 

「全員にアリバイがある」

 

(は?)

 

一気に違和感。

 

(全員アリバイ……?)

 

「つまり現時点では――」

 

こうちゃんがゆっくり言う。

 

「“この3人以外の誰か”が犯人の可能性が高い」

 

(おいおいおい……)

 

ざわ……

 

ざわ……

 

頭の中が揺れる。

 

(ちょっと待て……)

 

さっきの整理――

 

崩れる。

 

完全に。

 

(3択じゃねえ……)

 

(4人目がいる……?)

 

さらに追い打ち。

 

「そして――」

 

こうちゃんがちらっと俺を見る。

 

嫌な予感。

 

「その“4人目”として浮上しているのが……」

 

(やめろ……)

 

「伊藤カイジ」

 

(やっぱ俺かああああああああああ!!)

 

ざわ……!!

 

ざわ……!!

 

周囲の視線が一斉に刺さる。

 

(ちげえだろ……!)

 

(俺今来たばっかだぞ……!)

 

だが現実は違う。

 

条件だけ並べれば――

 

・長髪

・アリバイなし

 

(いやいやいやいや)

 

(これ……)

 

(状況最悪じゃねえか……!!)

 

さっきまでの余裕。

 

無双気分。

 

全部――

 

吹き飛ぶ。

 

(ふざけんな……)

 

(イージーゲームじゃねえのかよ……!!)

 

心の中で叫ぶ。

 

だが同時に――

 

スイッチが入る。

 

(いいだろ……)

 

(なら逆に利用してやる……!)

 

(“追い詰められてる犯人”を炙り出す……!)

 

ざわ……

 

ざわ……。

ざわ……

 

ざわ……

 

空気が一気に変わる。

 

目暮警部の言葉。

 

重い。

 

逃げ場なし。

 

「今回、ほぼ全員が消去法により――」

 

一拍。

 

「4人目のカイジ、お前が犯人だと言っている」

 

(来たな……)

 

視線が刺さる。

 

全員。

 

完全包囲。

 

「この意味、わかるな?」

 

(わかるに決まってるだろ……)

 

逃げ道ゼロ。

 

論理上の“犯人”。

 

それが俺。

 

さらに追い打ち。

 

「毛利君は今回、お前のアシストをしない」

 

(……チッ)

 

横を見る。

 

こうちゃんは腕を組んで、目を閉じている。

 

完全に“中立”。

 

「疑っているからな」

 

(マジかよ……)

 

だが――

 

次の一言。

 

「ただし」

 

「3人は犯人ではないが、カイジが“可能性がある”段階で――」

 

「“絶対犯人”とは言っていない」

 

(……まだだ)

 

(完全に詰みじゃねえ……!)

 

そして警部。

 

トドメ。

 

「ワシは当然、お前がやったと考える」

 

「状況的にそうだろ」

 

ざわ……

 

ざわ……

 

(いいぜ……)

 

ゆっくり顔を上げる。

 

(こういうの……嫌いじゃねえ……!)

 

むしろ――

 

燃える。

 

「へぇ……」

 

軽く笑う。

 

「つまり警部は――」

 

一歩前に出る。

 

「“証拠ゼロ”で俺を犯人にするってことか?」

 

ピクリ。

 

警部の眉が動く。

 

「証拠がないとは言っていない」

 

「状況証拠は揃っている」

 

(きたきた……)

 

この流れ。

 

俺の土俵。

 

「状況証拠、ねえ……」

 

首を鳴らす。

 

「じゃあ聞くけどよ」

 

指を一本立てる。

 

「俺が犯人だとして――」

 

「どうやってこの部屋に入った?」

 

一瞬の沈黙。

 

警部は即答する。

 

「合鍵、もしくは侵入経路があったはずだ」

 

(曖昧……!)

 

逃さない。

 

「はず、ねえ……」

 

ニヤリ。

 

「で?その証拠は?」

 

ざわ……

 

ざわ……

 

警部の顔がわずかに歪む。

 

「……それは現在捜査中だ」

 

(はい一個)

 

(穴ぁ……!)

 

畳みかける。

 

「じゃあ次」

 

「凶器はヨーコちゃんの包丁」

 

「俺がやったなら――」

 

一歩詰める。

 

「なんで自分の武器持ってこねえんだ?」

 

(普通持つだろ……)

 

「わざわざ現地調達?」

 

「リスク高すぎねえか?」

 

ざわ……!

 

空気が揺れる。

 

警部、わずかに沈黙。

 

(効いてる……!)

 

だが――

 

「現場にあった物を使うのは珍しくない」

 

(まだ来るか……!)

 

(いいぜ……!)

 

さらに踏み込む。

 

「じゃあ決定的なこと言うわ」

 

声を落とす。

 

「黒髪、長髪、男」

 

一語ずつ。

 

「これ――俺か?」

 

ざわ……!!

 

ざわ……!!

 

空気が爆発する。

 

ざわ……

 

ざわ……

 

「……ああ、その髪はお前ので確定だ」

 

(は?)

 

一瞬、思考停止。

 

(終わった……)

 

ざわ……ざわ……

 

空気が一気に“確信”に傾く。

 

(やべええええええええ!!)

 

完全に――

 

自爆。

 

「まじか……」

 

乾いた声。

 

(落ち着け……まだ終わってねえ……!)

 

(ここで折れたら終わり……!)

 

警部の追撃。

 

「なぁ、カイジ、今日何してた?」

 

(来た……アリバイ……!)

 

頭フル回転。

 

だが――

 

出てこない。

 

(思い出せねえ……!)

 

一瞬の空白。

 

(あっ……)

 

「……ずっと寝てた」

 

ざわ……!!!

 

ざわ……!!!

 

(言っちまったああああああ!!)

 

横を見る。

 

こうちゃん――

 

頭抱えてる。

 

(え?やばいのこれ……?)

 

警部、間髪入れず。

 

「つまりアリバイなし」

 

(ぐっ……)

 

「なんでずっと寝ているんだ?おかしいだろ」

 

(何がだよ……!)

 

「おかしくないだろ」

 

即答。

 

「眠たかったんだ、だから寝てた」

 

(正論……!)

 

だが――

 

通じない。

 

「何をしていたんだ?昨日」

 

(来る……)

 

嫌な流れ。

 

「徹夜で麻雀だ」

 

(言った……!)

 

一瞬の静寂。

 

そして――

 

「まさか賭けてたのか?」

 

ざわ……!!

 

ざわ……!!

 

(終わったああああああああ!!)

 

(そこ来るよなああああ!!)

 

脳内フル回転。

 

(言ったらアウト……!)

 

(言わなくても怪しい……!)

 

(詰み……!)

 

だが――

 

ここは押すしかない。

 

「そんなことないだろ?」

 

強引に笑う。

 

「法律違反だ!健全な麻雀だよ」

 

(通れ……!)

 

(頼む……!)

 

警部、間髪入れずに刺す。

 

「深夜に麻雀しているのが健全なのか?」

 

(うっ……)

 

「お前、賭けてただろ?」

 

(くそ……!しつけえ……!)

 

「だから法律違反だからしねーよ!」

 

(押し通す……!)

 

(ここは一点突破……!)

 

しかし――

 

警部の目が細くなる。

 

「賭け麻雀が法律違反なのは知っているということだな」

 

(あ……)

 

一瞬で理解。

 

(誘導……!)

 

(ハメられた……!)

 

ざわ……!!

 

ざわ……!!

 

周囲の視線がさらに冷たくなる。

 

(まずい……)

 

(完全に“黒寄り”に傾いてる……!)

 

(このままだと――)

 

(殺人犯+賭博野郎……!)

 

(ダブル役満……!)

 

背中に汗。

 

止まらない。

 

(どうする……)

 

(どうする俺……!)

 

だがそのとき――

 

ふと気づく。

 

(……待て)

 

(今の会話……)

 

(全部“事件と関係ない”……)

 

ざわ……

 

ざわ……

 

(そうだ……!)

 

(俺……乗せられてる……!)

 

ゆっくり顔を上げる。

 

(ここから……)

 

(流れ、ぶった斬る……!)

 

ざわ……

 

ざわ……

 

(……よし、流れ切る……!)

 

「事件と麻雀は別日だろ?事件に関係ないだろ」

 

(これで話題リセット……!)

 

だが――

 

警部の目が細まる。

 

「ん?なんで別日だと知っている?」

 

(……あ?)

 

「誰もそれには触れてない」

 

(は?)

 

思考停止――

 

(え……言ってなかったっけ?)

 

ざわ……

 

ざわ……

 

(やべえ……)

 

(これ……心の声で拾った情報……!)

 

(無意識に使ってる……!)

 

(チート能力が……裏目……!)

 

背中に冷たい汗。

 

(どうする……)

 

(このままだと“知り得ない情報を知ってる奴”=犯人……!)

 

「え?そうか……」

 

強引に話を切る。

 

「ちょっとヤニを吸わせてくれ」

 

(落ち着け……一回リセット……!)

 

ポケットからタバコ。

 

――だが

 

(ライターねえ……!)

 

きょろきょろ……

 

そのとき――

 

(そのオブジェがライターよ)

 

ゆう子の声。

 

(あ……)

 

何も考えず――

 

手に取る。

 

スパー……

 

煙。

 

(ふぅぅぅ……)

 

目を閉じる。

 

(落ち着け……)

 

(まだいける……)

 

ゆっくり目を開く――

 

全員の視線。

 

突き刺さる。

 

ざわ……

 

ざわ……

 

(……なんだこの空気)

 

(おかしい……)

 

(やばい匂いしかしねえ……)

 

(なんでそのオブジェがライターだと知っているんだ?)

 

(……は?)

 

脳内フリーズ。

 

(やべええええええええ!!)

 

(まただ……!)

 

(無意識……!)

 

(完全にアウトムーブ……!)

 

「おい、カイジ」

 

警部の低い声。

 

「なんでそれがライターだと知っているんだ」

 

(詰みかけ……!)

 

(ここは誤魔化すしかねえ……!)

 

「いや……」

 

必死に絞り出す。

 

「友達んちに置いてあったライターと同じだったんすよ」

 

(通れ……!)

 

(頼む……!)

 

しかし――

 

即、否定。

 

「その言い訳、さっきも聞いた!」

 

(……は?)

 

「ゆう子さんからな」

 

(あ……)

 

血の気が引く。

 

「これ特注品で世界に一個しかないんだぞ」

 

ざわ……!!!!

 

ざわ……!!!!

 

(終わったああああああああ!!)

 

(完全に詰みルート……!)

 

(同じ嘘+唯一無二=完全否定……!)

 

「いや……その……」

 

言葉が出ない。

 

(やばい……)

 

(マジでやばい……)

 

警部、追撃。

 

「ヨーコ君、彼にライターの事は?」

 

(やめろ……!)

 

「教えておりません」

 

(……確定)

 

ざわ……

 

ざわ……

 

空気が変わる。

 

完全に――

 

“犯人を見る目”。

 

(あれ……?)

 

(おかしい……)

 

(今回……無双の流れじゃなかったのか……?)

 

(なんで……こんな……)

 

(全部……裏目……)

 

頭の中がぐちゃぐちゃになる。

 

(心読む→ミス)

 

(発言→墓穴)

 

(行動→証拠)

 

(全部逆噴射……!)

 

(なんだこのクソゲー……!)

 

(バグってる……!)

 

だが――

 

その極限の中で、

 

ふと、気づく。

 

(……待て)

 

(今の俺……)

 

(“知ってるはずのないこと”を知ってる動きしてる……)

 

 

 

ざわ……

 

ざわ……

 

 

――カイジ 圧倒的自爆!!

 

ざわ……

 

ざわ……

 

(落ち着け……)

 

(落ち着けカイジ……)

 

(まだ終わってねえ……)

 

深呼吸――

 

(俺には……ある)

 

(心を読む力……!)

 

(この状況でも……使える……!)

 

視線をゆっくり巡らせる。

 

(犯人は……この中)

 

(そして現状……)

 

(俺・山岸・ゆう子……)

 

(実質3択……いや違う)

 

(ヨーコちゃんはこうちゃんが保証……除外)

 

(つまり……)

 

(2択……!)

 

(山岸か……ゆう子……!)

 

(だったら……)

 

(どっちを潰す?)

 

一瞬で判断。

 

(山岸は地味……崩しにくい……)

 

(対して――)

 

(ゆう子……)

 

(感情型……揺れる……)

 

(いける……!)

 

顔を上げる。

 

「今の話……おかしくないか?」

 

ざわ……

 

視線が集まる。

 

「何がだ」

 

警部の声。

 

(いい……乗ってきた……!)

 

「ゆう子さんも同じ発言をした」

 

(核心……!)

 

「つまりライターを使った……」

 

空気が一瞬、止まる。

 

「知るはずのないことを知っていた……そうだよな?」

 

「ああ……」

 

(よし……!)

 

「やましいことがあるんだよな?」

 

ざわざわ……

 

ざわざわ……

 

周囲の視線が一斉にゆう子へ――

 

(は……?)

 

(私を標的?)

 

(なにこいつ……?)

 

心の声――拾う。

 

(いい反応……)

 

(動揺……ある……!)

 

(押せる……!)

 

「俺はな……やってねえ」

 

一歩、踏み込む。

 

「だから必ずどこかにからくりがある」

 

(信念で押す……!)

 

「俺以外にアリバイがある……おかしいだろ?」

 

ざわ……

 

ざわ……

 

「だから――」

 

指を突きつける。

 

「お姉さん」

 

(ここだ……!)

 

「俺と同じ土俵に降りてこいよ」

 

空気が張り詰める。

 

(逃げるな……)

 

(こい……!)

 

ゆう子の表情が歪む。

 

(こいつ……)

 

(何も証拠ないくせに……)

 

(でも……)

 

(この状況……マズい……)

 

(疑いが……こっちに……)

 

(どうする……?)

 

(反論……?)

 

(それとも……)

 

(押し返す……?)

 

カイジ、確信。

 

(来る……!)

 

(ここが分岐点……!)

 

(この一手で――)

 

(天国か地獄……!)

 

拳を握る。

 

(いいぜ……)

 

(ギャンブルだ……!)

 

(どっちでもいい……)

 

(“片方を落とせば勝ち”……!)

 

(これが……)

 

(消去法ギャンブル……!)

 

ざわ……

 

ざわ……

 

(さあ来い……!)

 

(倍プッシュの時間だ……!)

 

ざわ……

 

ざわ……

 

空気が重い……!

 

視線が――

 

俺とゆう子に集中している……!

 

(ここで……決める……!)

 

俺はゆう子を睨みつける。

 

「というか……ゆう子さん」

 

一拍――

 

「なんでライターのこと知ってるんだ?」

 

ざわ……!

 

一瞬で場がざわつく。

 

ゆう子、即座に切り返す。

 

「それを言うなら……あんたもそうでしょ?」

 

(来た……!)

 

(当然のカウンター……!)

 

だが――

 

ここは想定内……!

 

「いや、俺はあえてはぐらかしたんだけどさ」

 

(堂々と……行け……!)

 

「タバコ吸おうとして、ライターねえなって思ってきょろきょろしてたら――」

 

指を差す。

 

「“あんた”、俺を見てからオブジェ見てたんだぜ」

 

ざわ……!

 

(通せ……このストーリー……!)

 

「だからそれ使ったんだよ」

 

(自然……自然だ……!)

 

「説明すんの面倒で嘘ついた」

 

一歩踏み込む。

 

「でも――あんたは違うよな?」

 

静寂。

 

(どうだ……!)

 

(通るか……!?)

 

心の声――

 

(そうそうカイジさん……調子いい)

 

(それそれ……)

 

(なぜか分からないけどカイジさんは他と異なる視点で見ている……それが強み)

 

(――コナン坊主……!ナイスすぎる援護……!)

 

だが――

 

ゆう子、顔を歪める。

 

「違うわ……」

 

(来るか……?)

 

「でもそれ……今考えたこじつけでしょ」

 

グサッ――

 

「人間離れしてるわ」

 

(ぐっ……!)

 

(痛いとこ突く……!)

 

(確かに……無理はある……!)

 

ざわざわ……

 

ざわざわ……

 

空気が揺れる――

 

(まずい……流れが……!)

 

その時――

 

「えーでもさ!」

 

軽い声――

 

コナン……!

 

「カイジお兄ちゃん、この前の豪華客船でキッドの目の色とか歩き方で見抜いたんだよ!」

 

ざわ……!

 

(きたあああああああ!!)

 

「だから他の人には分からない細かいところ見ててもおかしくないと思うな!」

 

(完璧……!)

 

(これ以上ないフォロー……!)

 

一気に空気が揺れ戻る――!

 

「警部殿」

 

低い声――

 

こうちゃん……!

 

「私もカイジの観察力は認めています」

 

(おいおいおい……!)

 

(中立どこいった……!?)

 

「常人では気づけない視点を持っている……あり得る話です」

 

ざわ……!

 

ざわ……!

 

(勝ち筋……見えた……!)

 

目暮警部、腕を組む。

 

「ふむ……」

 

(よし……!)

 

(疑い……分散した……!)

 

(この流れ……!)

 

(押し切れる……!)

 

ゆう子の心の声――

 

(なによ……)

 

(なんで……こいつ……)

 

(こんなに擁護されてるのよ……!)

 

(まずい……)

 

(このままだと……)

 

(疑いが……私に……)

 

(……)

 

(でも……まだ……)

 

(決定打はない……!)

 

カイジ、確信。

 

(効いてる……!)

 

(揺れてる……!)

 

(あと一撃……!)

 

拳を握る。

 

(ここで仕留める……!)

――来た……流れ……!

 

「という訳で俺の言い分は通った……なぁ、あんたはどうだ?どうして知っている?」

 

ざわ……ざわ……

 

(くそくそくそ……この状況で私は言わないといけないの……合鍵を持っていることを……)

 

――来たああああああ!!

 

キーワード……“合鍵”……!

重要……圧倒的ヒント……!

 

繋がる……一気に線が一本に……!

 

だが直球は危険……!

ここはカイジ流……外から攻めて、内側を崩す……!

 

「ヨーコちゃんは、誰かに見張られている、誰かに入られているって言ってたよな……」

 

間を置く……視線を泳がせる……あえて断定しない……!

 

「ヨーコちゃんって……合鍵、持ってます?」

 

ざわ……

 

「……最近、無くしてます」

 

――確定!!

 

「繋がりました」

 

場の空気が張り詰める……!

 

「あんたはヨーコちゃんの合鍵を盗んだか、拾ったかして……この部屋に入り、何かを調べていた」

 

ざわ……ざわ……ざわ……

 

(くっ……!殺人事件と違うところを……私はやっていない……でも……やましいことはしている……!)

 

――はい、終了。

 

非犯人……確定……!

 

つまり残るは――

マネージャー……山岸……!

 

だがここで終わりじゃない……!

ここは“加点ポイント”……信頼を取りにいく局面……!

 

「どう考えてもやましいことはしている」

 

一歩踏み込む……逃がさない……!

 

「というか身体検査すれば合鍵出てくるだろ?

殺人してないなら、あんたがやったことちゃんと話した方が印象いいぜ?」

 

圧……圧……圧……!

 

「悪いが俺が犯人って言われてる状況だ……とことん詰めていくぜ……!」

 

ざわざわ……!

 

(カイジさん……いいぞ……!

合鍵の存在を見つけて、自白ラインまで持っていった……!

でも……この事件……まだ裏がある……

俺はカイジさんは犯人じゃないと思っている……

となると……犯人がいない……?

まだピースが足りない……)

 

――コナン……!

 

こいつ……本当に小学一年生か……?

 

いや違う……あのガキの後ろには――

こうちゃん……毛利小五郎……!

 

あいつが育ててる……なら納得……!

 

英才教育……化け物養成所……!

 

……だとしたら――

 

やっぱすげえな、こうちゃん……!

 

――ざわ……ざわ……

 

部屋の空気が張りつめる……

全員の視線が一点に集中……ゆう子……

 

俺はその中心で、冷静を装う……内心は綱渡り……

一歩踏み外せば――即、奈落……!

 

ゆう子が口を開く……

 

「……確かに、この部屋には入ったわよ。楽屋で盗んだ合鍵を使ってね……」

 

ざわ……ざわ……

 

(来た……認めた……!)

 

「ヨーコのスキャンダルを探してただけ……殺してなんかない!」

 

必死……だが……その必死さ……

嘘か……本当か……見極める……!

 

(落ち着け……ここで詰めすぎるな……会話だ……引き出せ……!)

 

俺は一歩前に出る……

 

「じゃあ確認だ……今日、この部屋に来た時間は?」

 

「昼よ……昼過ぎくらい……」

 

(昼……死亡推定時刻と被る可能性……ある……!)

 

「で、その時にその男と鉢合わせたってわけか?」

 

「あいつ……いきなり入ってきて……襲いかかってきたのよ!」

 

(恐怖……本物っぽい……演技じゃねえ……?)

 

「ちょっと待て……」

 

俺は割って入る……

 

「その男……お前を狙ってたのか?それともたまたまか?」

 

「知らないわよそんなの!でも明らかに普通じゃなかった!」

 

(“普通じゃない”……曖昧……でも嘘っぽくはない……)

 

「で、どうした?」

 

「抵抗して……逃げたのよ!殺してなんかない!」

 

ざわ……

 

小五郎が食い下がる……

 

「本当にそれだけか?勢い余って刺したんじゃねえのか?」

 

「違うって言ってるでしょ!!」

 

(……この反応……)

 

俺は目を細める……

 

(“やってない”側の反応だ……少なくとも……殺しは……)

 

なら――

 

(こいつはクロじゃねえ……)

 

つまり……

 

(残りは……山岸……!)

 

だがまだ詰める……

油断は即死……!

 

「じゃあイヤリングは?」

 

「あの時よ!揉み合ってる時に落ちたの!」

 

「その後は?」

 

「すぐ逃げた……怖くて……振り返りもせずに……!」

 

(逃げた……なら死体を確認してない……)

 

つまり――

 

(この女、“死んだ瞬間”を見てない……!)

 

ここ重要……!

 

俺はさらに踏み込む……

 

「お前……その男が死んだの見たか?」

 

「……見てない……」

 

(よし……!)

 

(こいつは“殺してない”可能性が高い……!)

 

ざわ……ざわ……

 

その時――

 

ガチャ……

 

別の警官が入ってくる……

 

「報告します!被害者の身元が判明しました!」

 

空気が一変……

 

(来た……次のピース……!)

 

俺はニヤリとする……

 

(いいぞ……盤面が整ってきた……)

 

(あと一手……あと一手で……詰む……!)

 

――ざわ……ざわ……

 

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