心読みの逆転探偵録 カイジVS名探偵コナン   作:梅酒24

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ファイル5:アイドル密室殺人事件 後編②

ざわ……ざわ……

空気が変わる……

次の一手……来た……!

警官が読み上げる。

「被害者は……藤江明義、22歳。港南高校卒業後、**商事勤務――」

(藤江……)

(名前……普通……だが……)

その瞬間――

こうちゃんが反応。

「港南高校……確かヨーコちゃんの母校だよな?」

ざわ……!

(は?ノータイムで)

(そんなの覚えてんのかよ……名探偵すごすぎだろ)

ヨーコちゃんの表情が固まる……

(あ……これ……)

(来るぞ……何か……!)

山岸が慌ててフォロー。

「偶然ですよ、なあヨーコ?」

(必死……!)

(隠したい……!)

(つまり……関係ある……!)

ヨーコちゃん、震える唇――

そして――

「……知ってます」

ざわああああああああ!!

「その人のこと……知ってる!」

(来たあああああ!!)

一気に核心へ――!

「知ってるどころじゃ……ありません……」

一呼吸――

「高校時代……付き合ってました……」

――静寂。

からの――

「「なんだってぇえええ!!?」」

ざわ……ざわ……ざわ……

(全員同時リアクション……!)

(漫画かよ……!)

(いや現実だ……!)

(だがでかい……この情報……!)

俺の脳が高速回転――

(元カレ……)

うわあああああああああああああああああああああ

視線を山岸に向ける――

(やっぱり知ってたか……隠そうとしてた……)

山岸の心の声――

(バレた……まずい……ヨーコのイメージが……)

(やっぱりな……)

じゃあ……

(藤江は……なぜここに来た……?)

(偶然じゃねえ……絶対に目的がある……!)

ヨーコちゃんの心の声――

(どうして……今さら……)

(もう終わったはずなのに……)

(やめてって言ったのに……)

(……ん?)

(“やめてって言った”?)

(つまり……接触は最近もあった……!)

(過去じゃねえ……現在進行形……!)

背筋に電流――!

(これだ……!)

(事件の芯……!)

俺は一歩踏み出す……

「なあヨーコちゃん」

ざわ……

「そいつ……最近もヨーコちゃんに会いに来てたんじゃねえか?」

空気が凍る――

ヨーコ、息を呑む……

(図星……!)

(決まりだ……!)

(藤江は“侵入者”……!)

(つまり……)

(この事件……)

(まだ一段階裏がある……!)

拳を握る――

(面白くなってきたじゃねえか……!)

(ここからが本番……!)

ざわ……ざわ……

ざわ……ざわ……

 

(流れ……来てたはず……!)

 

(ゆう子はシロ寄り……)

 

(山岸も怪しいが……“守り”……)

 

(あと一歩で……核心……!)

 

――そう思った瞬間。

 

「昔の男関係を清算するために……」

 

目暮のオッサンの一言――

 

空気が一変……!

 

「違います!!」

 

ヨーコちゃん、即否定。

 

(強い……!)

 

(この反応……作りじゃねえ……!)

 

「当時……振ったのは……藤江のほうです……」

 

――え?

 

(は?)

 

(そんなこと……あるか……?)

 

(アイドルを振る男……?)

 

(いや……)

 

(心の声……聞け……!)

 

(嘘じゃねえ……)

 

(本当だ……)

 

(つまり……)

 

(ヨーコちゃん側に動機は薄い……!)

 

(よし……整理できてきた――)

 

――その瞬間。

 

「やはりカイジ、お前が犯人だ」

 

……は?

 

(えええええええええええ!?)

 

(なんで戻るんだよおおおお!!)

 

(さっきの流れ全部リセット!?)

 

「なんでだよ!!」

 

「おかしいだろ!!」

 

目暮、冷静。

 

「それは……嘘発見器を使えば分かることだ」

 

(あ……)

 

(忘れてた……それ……)

 

(最悪のやつ……!)

 

(心読む俺にとって天敵……!)

 

機械を装着される――

 

(やべえ……)

 

(俺、嘘つきまくりの人生……)

 

(反応……絶対出る……!)

 

「必ず“いいえ”で答えろ」

 

(無理ゲー……!)

 

「カイジ……お前、ヨーコ君のことを気にしているだろ?」

 

(はああああああ!?)

 

(なんだこの質問!?)

 

(公開処刑か!?)

 

(やめろ……!)

 

「……いいえ」

 

ぴぴーーーーーっ!!!

 

(終わったああああああ!!)

 

「嘘だな。つまり気にしている」

 

ざわ……ざわ……

 

(いやそれはそうだけど!!)

 

(今言うことじゃねえだろ!!)

 

「だから被害者と鉢合わせた……動機成立だ」

 

(無理やりすぎるだろ!!)

 

「次だ」

 

(まだあるのかよ……!)

 

「ヨーコ君のベッドの上で何もしていない」

 

(あっ……)

 

(やばい……)

 

(俺……)

 

(ゴロゴロした……)

 

(匂いかいだ……)

 

(幸せとか思ってた……)

 

(完全アウト……!)

 

「……いいえ」

 

ぴぴーーーーーーーーっ!!!

 

さっきよりデカい警報音!!

 

(うわああああああああ!!)

 

(社会的に死ぬ音!!)

 

「ベッドの上でやましい気持ちを持っていた」

 

(やめろおおおおおお!!)

 

(それ以上掘るなあああああ!!)

 

(俺の尊厳がああああ!!)

 

「いいえ」

 

びいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!!!

 

(完全終了……!)

 

ざわ……ざわ……

 

(視線……!)

 

(冷たい……!)

 

(終わった……)

 

(殺人犯どころか……)

 

(ただの変態確定……!)

 

(くそ……くそ……くそ……!)

 

(なんでだよ……!)

 

(俺やってねえのに……!)

 

(なんでこんな辱め……!)

 

(でも……)

 

(待て……)

 

(落ち着け……)

 

(これ……逆に……)

 

(“殺人とは無関係な反応”ばっかじゃねえか……?)

 

(恋心……)

 

(ベッド……)

 

(全部……別件……!)

 

(つまり……)

 

(殺しとは繋がってない……!)

 

目が開く――

 

(いける……!)

 

(ここから……逆転できる……!)

 

拳を握る――

 

(見てろよ……)

 

(この状況……)

 

(ひっくり返してやる……!)

 

ざわ……ざわ……

 

(まだ終わってねえ……!)

 

ざわ……ざわ……

 

「カイジ、ヨーコ君に彼氏がいることを知って被害者に対して怒りを感じた」

 

(……また来た……)

 

(もうやめろ……)

 

(これ以上……俺の中を覗くな……!)

 

「……いいえ」

 

ブブブーーーーーーッ!!!

 

――崩壊。

 

(くそぉ……なんなんだよ……)

 

(俺……何もしてねえのに……)

 

(なんでここまで……)

 

(無双のはずだったんだぞ……?)

 

(ヨーコちゃんに会えて……活躍して……評価上げて……)

 

(それが……)

 

(全国指名手配……?)

 

(公開処刑……?)

 

(心の中まで晒されて……)

 

(くそくそくそくそ……!)

 

頭がぐにゃあああああああ……って歪む……

 

思考がまとまらねえ……!

 

その時――

 

(やはりカイジが犯人か……消去法だし仕方ない)

 

――山岸の声。

 

(……は?)

 

ぐにゃああああああああああああ!!!

 

(え?)

 

(今なんて言った……?)

 

(犯人……俺……?)

 

(いやいやいやいやいや……)

 

(おかしいだろ……!)

 

(お前じゃねえのかよ……!)

 

(なんで……俺なんだよ……!)

 

(なんだこの世界……!)

 

(全部……全部ひっくり返ってる……!)

 

――最悪。

 

本当に最悪だ……!

 

胸が潰れる……

 

呼吸が重い……

 

立ってられねえ……

 

俺は――

 

ひざから崩れる……

 

ドサッ……

 

(……もう無理だ……)

 

視線が落ちる……

 

床……

 

濡れてる……

 

(……涙?)

 

(……違う……)

 

(なんだこれ……水……?)

 

しかも――

 

(へこんでる……?)

 

(なんでだ……?)

 

(床が……歪んでる……?)

 

――でも今はどうでもいい。

 

そんなことより……

 

(終わった……)

 

(俺……終わった……)

 

(誰も……俺の話……聞いてねえ……)

 

(犯人じゃねえって……言ってるのに……)

 

(誰も……信じてくれねえ……)

 

ギリッ……

 

歯を食いしばる……

 

視線を上げる――

 

目暮警部。

 

(あんたのせいだ……)

 

(全部……)

 

(あんたが……決めつけるから……!)

 

(あんたが……俺を犯人にした……!)

 

(証拠もねえのに……!)

 

(感情で……押し潰して……!)

 

心の奥から――

 

黒い感情が湧く……

 

(ふざけんなよ……)

 

(俺は……やってねえ……)

 

(なのに……)

 

(なんで俺がこんな目に……!)

 

拳が震える……

 

(いっそ……)

 

(ここで全部終わらせてやるか……)

 

(この場で……)

 

(自殺して……)

 

(全部……あんたのせいにして……)

 

(そうすりゃ……)

 

(少しは……この理不尽……残るだろ……)

 

でも――

 

視界の端に映る……

 

ヨーコちゃん……

 

――そして、カイジ閃く。

 

(……あれ?)

 

(今……俺……大事なことを……)

 

思考が、ぐにゃりと歪んだ中で――

一点だけ、異様にクリアになる……!

 

(犯人は……この中にいなかった……?)

 

(アリバイないのは……俺だけ……)

 

(もう死ぬしかない……)

 

(むかつく目暮警部のせいにして……)

 

――その瞬間。

 

ああああああああああああああああああ!!!

 

脳内で何かが“繋がる”……!

 

バラバラだったピースが……

一気に噛み合う……!

 

(繋がる……全部……!)

 

(この事件……!)

 

(俺の“心を読む能力”と……相性が悪すぎる……!!)

 

ガバッと顔を上げる――!

 

「自殺だ……」

 

ざわ……!

 

「自殺しやがった……この被害者……!!」

 

――静寂。

 

(あああああああああ……!!)

 

(それしかない……!)

 

(犯人だと思う人……0人……!)

 

(容疑者はこの中……なのに……)

 

(誰の心も……“殺した”って言ってねえ……!)

 

(当然だ……)

 

(死体の声は……聞こえない……!!)

 

うあああああああああああああああああああ!!!

 

(盲点……!)

 

(完全な盲点……!!)

 

(死体……!)

 

(そいつが……答えだったのかよ……!!)

 

頭を抱える――

 

(まじか……)

 

(これ……気付けてる奴……いるはずねえ……!)

 

(というか……)

 

(こうちゃん……)

 

(あいつ最初から3人は犯人じゃないって断定してたじゃねえか……!)

 

(つまり……)

 

(俺じゃない……)

 

(なら答えは一つ……!)

 

(自殺確定……!!)

 

歯を食いしばる――

 

(くそ……!!)

 

(これは明らかに……俺の凡ミス……!!)

 

(こんなの……)

 

(到着1分で解ける事件だろ……!!)

 

拳が震える……!

 

(だが……まだ終わってねえ……!)

 

(目暮警部に追い詰められて……)

 

(被害者の思考に立ったから……見えた……!)

 

(焦るな……)

 

(落ち着け……)

 

(これ……気付けるの……)

 

(この場で……)

 

(俺だけだ……!!)

 

ゆっくり立ち上がる――

 

ざわ……ざわ……

 

(ここからだ……!)

 

(全部……ひっくり返す……!!)

 

ざわ……ざわ……

 

(見えた……)

 

(見えたぞ……全部……!)

 

頭の中でピースが――

カチッ……カチッ……と音を立ててハマっていく……!

 

(被害者……藤江……)

 

(こいつ……当然ヨーコちゃんに未練があった……)

 

(でもおかしい……)

 

(ヨーコちゃんは“振られた”って言った……)

 

(なのに……なんで今さら……?)

 

眉間にシワ――

 

(必要だ……もう一つ……何か……)

 

(だが……ほぼ完成してる……)

 

(あと一押し……!)

 

脳内で再構築――

 

(ヨーコちゃんの部屋に侵入……)

 

(拒絶……)

 

(そして……絶望……)

 

(ああ……そうか……)

 

拳を握る――

 

(ヨーコちゃんに拒絶された……)

 

(だから……)

 

(恨んだ……)

 

(そして……)

 

(この部屋で……自殺……!!)

 

ゾワッ……

 

全身に鳥肌――!

 

(そうだ……!)

 

(全部……繋がる……!)

 

「髪の毛……」

 

思い出す――

 

(コナンが言ってた……)

 

(ヨーコちゃんの髪を被害者が握ってた……)

 

(山岸がそれを抜き取った……)

 

(つまり……)

 

(“争った証拠”を演出……!)

 

(被害者は……)

 

(ヨーコちゃんのヘアブラシ……)

 

(風呂場……)

 

(そこから髪を入手して……)

 

(自分の手に握らせた……!)

 

(殺されたように見せるために……!)

 

歯を食いしばる――

 

(やりやがる……!)

 

(死に際に……ここまで仕込むか……!)

 

だが――

 

(まだだ……)

 

(一番の疑問……)

 

(包丁……どうやって刺した……?)

 

視線が床へ――

 

濡れている……

 

へこんでいる……

 

(……これだ)

 

(これが答え……!)

 

脳内で再現――

 

(氷……!)

 

(氷にナイフを固定……)

 

(そして――)

 

(ダイブ……!!)

 

「……死へのダイブ……」

 

背筋が冷える――

 

(氷は溶ける……)

 

(水が残る……)

 

(床が濡れる……へこむ……)

 

(ナイフだけが残る……)

 

(完全な自殺トリック……!)

 

息が荒くなる――

 

(すげえ……)

 

(狂ってる……)

 

(でも……成立してる……!)

 

(絶望からの自殺……)

 

(そして……)

 

(最後に選ぶ相手は……)

 

(感情を最も支配している存在……)

 

視線がヨーコちゃんへ――

 

(それが……ヨーコちゃん……)

 

ざわ……ざわ……

 

(だが……まだ終わりじゃねえ……)

 

(最後のピース……)

 

(最大の矛盾……)

 

(ヨーコちゃんは“振られた”……)

 

(なのに……)

 

(被害者は“未練タラタラ”……)

 

(このズレ……)

 

(ここを突けば……)

 

拳を強く握る――!

 

(全部……崩れる……!)

 

(この事件……完全に終わる……!)

 

一歩踏み出す――

 

(決める……!)

 

(ここで……全部暴く……!)

 

ざわ……ざわ……

 

(逆転……完全成立……!)

 

ざわ……ざわ……

 

空気が張り詰める中――

俺はゆっくりと口を開く。

 

「おい山岸……お前とは話していなかったな……」

 

全員の視線が集まる……!

 

(逃げ場はねえ……)

 

(ここで決める……!)

 

「俺は事件の真相を今、95%まで辿り着いた」

 

ざわ……

 

「俺が最初に気付いていれば……1分で解けた事件……」

 

(クソ……!)

 

(完全に俺のミス……!)

 

「俺のせいで長引いた……だから今回は俺の手で全てを終わらせる……!」

 

沈黙――

 

「え……カイジ君が犯人でしょ?どう見ても」

 

(……まだ言うか)

 

「いや……今は犯人が誰かは忘れてくれ」

 

一歩踏み込む――

 

「もういいんだ……それよりも……」

 

鋭く睨む――

 

「被害者の手から髪の毛抜き取ったよな……ヨーコちゃんの」

 

「え??」

 

(動揺……)

 

(ビンゴ……!)

 

(いや……あんたいなかっただろ、あのとき)

 

心の声――確定。

 

「知ってたんだよな……被害者のこと」

 

「え……ああ……」

 

(俺が、あいつにヨーコちゃんと別れてくれとお願いしたんだからな)

 

――来た。

 

(最後のピース……)

 

深く息を吸う……

 

スー……ハー……

 

(揃った……!)

 

「歯切れが悪いな……なぁ……」

 

一歩、詰める――

 

「あんたが被害者に“別れてくれ”って言ったんだろ……?」

 

「それを言ってくれたら……全部揃う……事件解決なんだ……なぁ……」

 

ざわ……

 

(ん……カイジさん……事件解決?え?俺犯人まだ特定していないぞ)

 

――コナンの心の声。

 

(いい反応だ……)

 

(だがもう答えは出てる……!)

 

「すみませんでした……そのとおりです……でも俺は殺していません」

 

「分かってるよ……」

 

即答。

 

「ピースは揃った……」

 

視線を横へ――

 

「こうちゃん……ここまでの流れを聞いても、容疑者3人は犯人じゃないでいいんだな?」

 

「ああ、当たり前だ。名探偵に二言はねーよ」

 

(よし……確定……!)

 

「俺もそれで合っている……ここまでは同じだ」

 

空気が固まる――

 

「つまりカイジ、お前が犯人だな……決まった……やっとお前を逮捕できる」

 

――ガチャン。

 

冷たい感触……

 

銀色の輪が……俺の手首にはまる。

 

ざわ……ざわ……

 

(普通なら……ここで終わり……)

 

(崩れる……絶望……)

 

――だが。

 

ニヤッ……

 

「なぁ、目暮警部……」

 

静かに顔を上げる――

 

「誤認逮捕したいのか?」

 

「いや……容疑者3人が犯人じゃないなら、犯人は決まっているだろ」

 

ざわざわ……

 

――その瞬間。

 

(あああああああ……カイジさん辿り着いた……俺より先に……そうか……自殺か……)

 

コナンの心の声――確信。

 

(やっぱりな……)

 

(これ……見えてるのは俺だけじゃねえ……)

 

(だが……言葉にできるのは……俺だけだ……!)

 

ゆっくりと口を開く――

 

「被害者は――」

 

一拍。

 

「自殺だ」

 

――静寂。

 

ざわ……ざわ……

 

空気が一気に揺れる……!

 

(終わりだ……)

 

(このクソみてえな流れ……)

 

(全部……ここでひっくり返す……!)

 

ざわ……ざわ……

 

全員の視線が俺に突き刺さる――

だがもう迷いはねえ。

 

(全部……繋がった……!)

 

俺はゆっくりと口を開く。

 

「いいか……順番に話すぞ……」

 

「まず前提だ……この部屋にいた容疑者は4人……」

 

指を折る――

 

「ヨーコちゃん……山岸……ゆう子……そして俺」

 

「で……この3人は犯人じゃない」

 

ざわ……

 

「これはこうちゃん……名探偵のお墨付きだ」

 

(ここは絶対の土台……揺るがねえ……!)

 

「次に……“状況”だ」

 

「密室……凶器はヨーコちゃんの包丁……被害者の手にはヨーコちゃんの髪……」

 

「どう見ても“ヨーコちゃんが殺した”ように見える」

 

「だが違う……」

 

(ここが罠……)

 

「まずゆう子さん」

 

視線を向ける――

 

「確かにあんたは合鍵を使ってこの部屋に侵入してた……」

 

「だが目的はスキャンダル探し……殺しじゃない」

 

「実際、あんたは被害者に襲われて逃げている」

 

「イヤリングもそのとき落とした」

 

ざわ……

 

「次に山岸……」

 

「被害者の手から髪を抜き取ったな」

 

「つまり……証拠を“隠そうとした”」

 

「だがそれは犯人だからじゃない」

 

「ヨーコちゃんを守るためだ」

 

(ここで動機が繋がる……)

 

「しかもあんたは被害者を知っていた……」

 

「ヨーコちゃんの元カレ……藤江……」

 

「ここが重要だ……!」

 

一歩踏み出す――

 

「藤江はヨーコちゃんに未練があった」

 

「だがヨーコちゃんは“振られた”と言っている」

 

「つまり関係は一方的に終わってる」

 

「なのに藤江はまだ執着していた……」

 

(この歪み……これが核……!)

 

「そしてヨーコちゃんの部屋に侵入……」

 

「拒絶される……」

 

「ここで完全に折れた……!」

 

拳を握る――

 

「絶望……!」

 

「そして選んだ行動が――」

 

「自殺だ……!」

 

ざわああああ……

 

「だがただの自殺じゃない……」

 

「“殺されたように見せる自殺”だ」

 

「まず髪の毛……」

 

「ヨーコちゃんのヘアブラシや風呂場から事前に入手」

 

「それを自分の手に握らせることで“争ったように見せる”」

 

「次に凶器……包丁」

 

「ここがトリックだ」

 

全員の視線が床へ――

 

「この部屋……暑かったよな?」

 

「床……濡れてたよな?」

 

「しかもへこんでる」

 

(答えは一つ……!)

 

「氷だ……!」

 

ざわ……

 

「氷に包丁を固定して……その上にセット」

 

「そして――」

 

大きく手を振る――

 

「自分から突っ込んだ……!」

 

「死へのダイブだ……!」

 

「氷は溶ける……」

 

「水になる……」

 

「床が濡れる……へこむ……」

 

「だが包丁だけは残る」

 

「結果……“刺された死体”が完成する……!」

 

ざわ……ざわ……

 

「つまりこの事件……」

 

ゆっくりと見渡す――

 

「最初から犯人なんていない……」

 

「いるのは……」

 

一拍――

 

「自分で死んで……他人に罪をなすりつけようとした被害者だけだ……!」

 

(決まった……)

 

(これで……全部終わり……!)

 

「以上だ……」

 

静かに吐き出す――

 

「これが……この事件の真相だ……!」

 

ざわあああああ……

 

(論理……完全成立……!)

 

(逆転……完了……!)

 

ざわ……ざわ……

 

――そして、決着。

 

後日――

被害者の自宅から見つかったもの。

 

ヨーコちゃんへの“愛の日記”……

そして“後悔の日記”……。

 

ページをめくるたびに滲む感情……

未練……執着……歪んだ愛……。

 

(やっぱりな……)

 

さらに――

 

・俺と接触した証拠は一切なし

・氷を使った自殺を裏付ける痕跡

・現場状況とも完全一致

 

そして決定打――

 

「うむ、その線で間違いないでしょうな」

 

名探偵、こうちゃん――毛利小五郎の一言。

 

(つええ……)

 

(あの一言で全部決まる……)

 

こうして事件は――

“悲しい自殺事件”として幕を閉じた。

 

エピローグ

 

その夜――

 

「今日は本当にありがとうございました」

 

ヨーコちゃんの一言から始まった打ち上げ。

 

店は少し落ち着いた雰囲気のレストラン……

柔らかい照明……いい匂い……。

 

(やべえ……)

 

(俺……アイドルと飯食ってる……)

 

目の前には――

沖野ヨーコちゃん。

 

私服も可愛い……

仕草も可愛い……

笑顔……破壊力……!

 

(現実か……?これ……)

 

「カイジさんって、休みの日何してるんですか?」

 

(来た……会話……!)

 

「え、えっと……動物見たり(競馬)球遊び(パチンコ)とか……まあ色々……こうちゃんと同じです」

「え、そうですそうです!カイジは親友なんです。ナハハハハハハ」

 

「すごいですね。今回も本当に助かりました」

 

(うおおおおおおおおおおお)

 

(褒められた……!!)

 

(人生初レベル……!!)

 

横を見ると――

 

こうちゃん、酒が進んでる。

 

「いや〜今回も私がいなきゃダメだったな〜ガハハ!」

 

 

(その通り。3人犯人じゃないで95%解決してた……名探偵流石だよ)

 

雑談は続く――

 

事件の話、芸能界の話、どうでもいい話……

でも全部が楽しい。

 

(こういう時間……)

 

(悪くねえな……)

 

そして――

 

帰り際。

 

「よかったら……これ」

 

ヨーコちゃんがスマホを差し出す。

 

(え……?)

 

(まさか……)

 

連絡先――

 

(うおおおおおおおおおおおおおおお!!!)

 

(勝った……!!)

 

(完全勝利……!!)

 

震える手で登録――

 

だが――

 

横を見る。

 

こうちゃん、すでにスマホをいじっている。

 

「ヨーコちゃん?この前も連絡したじゃないですか〜」

 

(え……)

 

(もう……持ってる……?)

 

(しかも……“この前”……?)

 

(格が違う……!!)

 

圧倒的格差――!!

 

(まあ……いい……)

 

(今回は……俺にも落ち度があった……)

 

(最初に気付いてれば1分で終わった事件……)

 

(無駄に苦しんだ……)

 

(だが……)

 

ポケットのスマホを握る。

 

(ヨーコちゃんの連絡先……)

 

(これがあるなら……)

 

ニヤリ――

 

(全部……チャラだろ……!)

 

(カイジ……)

 

(今回も……なんとか生還……!)

 

エンド アイドルとの思い出

 




犯人がいる場合でも、自殺による事件であっても、もはやカイジにとってはイージーな殺人事件だ。
アイドル・沖野ヨーコの連絡先を手に入れ、無敵状態のカイジ――!!

しかし、カイジ……やってしまう……!!
今回は、まさかのカイジ自身が犯人――想定外の展開!!

ファイル6:伊藤カイジ ちんこ露出事件 前編

面白いと思っていただけたら、ぜひ評価していただけると嬉しいです!!
評価が高いほど、現在連載中の作品の更新頻度も上がります!

5話の中で一番面白かったのは?

  • ジェットコースター殺人事件
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  • 怪盗キッドの祝杯
  • アイドル密室殺人事件
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