心読みの逆転探偵録 カイジVS名探偵コナン   作:梅酒24

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ファイル6:伊藤カイジ ちんこ露出事件 後編

 

 

「がっかりだ……カイジ……」

 

(……え?)

 

その一言。

 

重い。

 

想像していた怒号でも、叱責でもない。

 

“失望”。

 

「ワシは、自分を責めた。ワシはカイジの昔を重ね合わせて、お前はやっていると疑っていた」

 

胸に刺さる。

 

じわじわと……

逃げ場なく……染み込むように……!

 

「もちろん刑事だから疑うのは当然。それでもいつもお前は必死にあらがい、真犯人を見つけ出した……」

 

(やめろ……)

 

「だからワシは間違っていたと思った。カイジ、お前は改心したんだと」

 

(やめてくれ……)

 

「だからさっき子供たちの意見を聞いたときもカイジはそんなことしていない……改心したんだ……だから今回はカイジはやっていないと思って聞いた……」

 

(違う……違うんだ……)

 

「でも違ったんだな……高木……」

 

終わりの合図。

 

「はいっ!!!!」

 

「今のカイジの証言録音したよな?」

 

「もちろんです」

 

ざわ……ざわ……

 

(……は?)

 

頭が追いつかない。

 

(俺……何言った……?)

 

記憶を辿る。

 

さっきの俺。

 

即否定……

勢い……

連打……!

 

そして――

 

(あ……)

 

「俺はズボンを下ろした!見せた!!!!」

 

(ああああああああああああああああああああああ!!)

 

自爆じゃない。

 

(自白……!!)

 

完全な――

逃げようのない――

 

証拠付きの――

 

(終了宣言……!!)

 

ぐにゃあああああああああああああああああああ!!

 

警部、帽子を深く被る。

 

「まさかワシの手で手錠をはめることになるとはな」

 

ガシャリ――

 

銀の輪。

 

冷たい。

 

重い。

 

現実。

 

(終わった……)

 

今回は違う。

 

いつもの“ギリギリセーフ”じゃない。

 

(俺が……やってる……)

 

(しかも……自分で認めた……)

 

(しかも……録音……)

 

完全終了。

 

逃げ道ゼロ。

 

そのとき――

 

ずりっ……

 

(……え?)

 

緩んでいたズボンが――

 

完全に落ちる。

 

(あ……)

 

トランクス、露出。

 

「カイジ……ふざけているのか!!」

 

怒号。

 

ざわ……ざわ……

 

ざわ……ざわ……

 

(現行犯……)

 

(証拠あり……)

 

(録音あり……)

 

(詰み……)

 

完全に。

 

完全に。

 

完全に――

 

(終わった……)

 

頭の中に浮かぶ未来。

 

ニュース。

 

SNS。

 

拡散。

 

炎上。

 

嘲笑。

 

(世界のおもちゃ……)

 

誰も止められない。

 

誰も助けない。

 

ただ一人――

 

落ちていく。

 

ざわ……ざわ……

 

カイジ――

 

完全敗北。

 

ざわ……ざわ……

 

――終わったはずだった。

 

完全に。

 

完全に詰み。

 

(録音……手錠……露出……)

 

(どこにも逃げ道ねえ……)

 

俺の人生、ここで終了。

 

そう思った――その瞬間。

 

(……ん?)

 

小さな声。

 

だが、この場の流れを切り裂くには十分な一言。

 

(カイジさんは、優秀。だからこそどんな風になるか見守り分析したかったが、今回は助け船を出すか……)

 

(……!?)

 

コナン……!

 

「ねえ、目暮警部」

 

(おい……やめろ……余計なことするな……!)

 

(いや……待て……今のは……)

 

「どうしたんだい?コナン君」

 

「カイジさんが言ったのは【見せた】というだけで何を見せたか言ってないよね?」

 

ざわ……ざわ……

 

(……え?)

 

頭が一瞬、真っ白になる。

 

「そうだな」

 

「それで逮捕は早くないかな?」

 

「うむ……確かに……カイジどうなんだ?」

 

(え……え……?)

 

(これ……)

 

(生きてる……?)

 

(まだ……繋がってる……?)

 

さっきまで確定していた“終わり”が――

 

ほんの一瞬で“未確定”に変わる。

 

(うそだろ……)

 

(こんな細い糸……残ってたのかよ……)

 

震える。

 

膝が笑う。

 

心臓が暴れる。

 

だが――

 

ここで止まったら終わり。

 

(繋げ……!!)

 

(この命のバトン……!!)

 

「目暮警部……焦りすぎだぜ……まだ1回の裏が終わったばかりだぜ……」

 

声、震えてないか……?

いや関係ねえ……!

 

「どういうことだ……?」

 

(来た……!)

 

(ここから……俺のターン……!)

 

「俺、いつも疑われる……」

 

一歩、前へ。

 

「だから最初に事実を話したんだ……」

 

(繋げ……繋げ……!)

 

「後から疑われるくらいなら先制パンチ……」

 

目を逸らすな……!

 

「警部だからちゃんと伝えた……」

 

そして――

 

「俺、目暮警部のこと信頼しているんだぜ」

 

ざわ……

 

(言った……)

 

(全部乗せた……)

 

「なんだいきなり……お前に言われても嬉しくなんか……」

 

帽子を深く被る。

 

だが――

 

その奥。

 

(照れてる……?)

 

(いける……!!)

 

完全に折れたはずの流れ。

 

だが今――

 

(まだ終わってねえ……!!)

 

カイジ、

 

奇跡の“延命”――!!

 

ざわ……ざわ……

 

まだだ……まだ終わってねえ……!

 

細い……細すぎる糸……

だが確実に“生きてる”……!

 

「俺、今トランクス……この意味わかるか?」

 

勝負に出る。

 

もう隠すな……全部出す……!

 

「お前露出狂だったんだな」

 

(来た……!)

 

(だがここは――!)

 

「違う……!!!!」

 

(押す……!)

 

(ここは事実で押す……!)

 

(最悪のスタート……だがこれ以上は落ちねえ……!!)

 

「違わないだろ」

 

「違うんだ……俺、ベルトを忘れた」

 

ざわ……ざわ……

 

空気が揺れる。

 

わずかに……流れが変わる……!

 

「は?どういうことだ?」

 

(繋げ……繋げ……!)

 

「俺、ここから500m先の“銀の匙”って店で飲んでた……そこでベルト外したんだ」

 

夜の街――

 

ネオンがぼやける視界。

アルコールで緩んだ身体。

 

笑い声、グラスのぶつかる音、

油と酒の混ざった匂い……!

 

(あのとき確かに……外した……!)

 

「高木……今すぐ、“銀の匙”に確認を……」

 

頼む……!

 

繋がれ……この線……!!

 

数分――いや、数十秒か。

 

体感は永遠。

 

「警部!!!!確かにベルトの忘れ物ありました!!!!」

 

(きたあああああああああああああ!!)

 

繋がる……!

 

バラバラだったピースが……!

 

「だから緩んでいた……確かにタイミング悪くズボンが落ちた……そして見せちまった……」

 

(ここだ……押し切れ……!!)

 

「トランクスを……」

 

ざわ……ざわ……

 

「言い訳はしない……そして通報……これは事故だ!!!!」

 

言い切る……!

 

逃げない……!

 

「ぐっ。いや、お前は銀の匙でベルトを外し、小学生に露出するために外したと考えられる」

 

(まだ来るか……!)

 

(だが――!)

 

「違う!!!!」

 

一歩踏み込む。

 

「飲み放題を頼んだ……当然腹は膨れてくる……だから緩めのズボンで臨んだ!そしてベルトを外した……疑うなら確認してくれ!!」

 

(頼む……通れ……!!)

 

「高木……確認を!!!!」

 

再び、時間が止まる。

 

「警部!!!!カイジさんは飲み放題頼んでました!ビールを20杯飲んでいます!!」

 

(20杯……言うな……!!)

 

(いや……今はいい……!!)

 

ざわ……ざわ……

 

繋がる……!

 

完全に……一本の線に……!

 

(なんだこれ……)

 

(俺……犯人なのに……)

 

(なんか……流れ来てる……?)

 

目暮警部の表情が変わる。

 

(そうか……ワシの勘違いか……そうだな……カイジはやってないんだ)

 

(……!!)

 

(きた……!)

 

(落ちた……!!)

 

おっ……いい反応……!

 

(これで……終わる……!!)

 

カイジ、まさかの“無罪ライン”到達……!?

 

ざわ……ざわ……

 

――終わった、と思った。

 

あの流れ。

あの空気。

 

完全に“助かった側”に乗ったはずだった……!

 

(いける……逃げ切れる……!)

 

そう確信しかけた――その瞬間。

 

「いえ、この人嘘ついてます」

 

(……え?)

 

光彦。

 

冷静すぎる声。

 

一切ブレない目。

 

(なんでだよ……おい……)

 

「なぜなら、僕も一瞬ですが、ズボンを下ろしていたときに、肌色のような何かを手で抑えていました」

 

ざわっ……

 

(やべえ……!!)

 

「あっ、歩美もそれ見た!!!!」

 

「何ぃいぃいぃぃ」

 

(終わった……見られてた……!!)

 

さっきまで繋がっていた導線が――

 

音を立てて崩れる……!

 

「そうだ……最近、このあたりに露出狂が現れると先生言ってたんですね……確か20数件報告があり、カイジさんと同じくらいの身長で年齢です!!!!」

 

(は……?)

 

(ちょっと待て……)

 

(それ……俺じゃねえ……!!)

 

(なんで乗せてくるんだよその罪まで……!!)

 

「カイジ……どういうことだ?余罪があり、やはり見せたのか?」

 

ざわ……ざわ……

 

(やべえ……完全に流れ持ってかれた……)

 

さっきまでの“無罪ライン”。

 

完全消滅。

 

(落ちる……!一気に落ちる……!!)

 

「ち……違うんだ……」

 

声、震える。

 

「違う……?では説明してください」

 

光彦、間髪入れない。

 

逃がさない。

 

(こいつ……詰め方がプロ……!!)

 

「肌色の何かを抑えていた……これはどういうことですか?」

 

(言えるか……!!)

 

(言ったら終わる……!!)

 

「そ、それは……その……」

 

「言えないんですか?」

 

(やばい……詰まった……)

 

「では僕が言いましょうか?」

 

一歩、詰められる。

 

「あなたは“見せてはいけないもの”を隠そうとした……違いますか?」

 

ざわ……ざわ……

 

(ぐにゃああああああああああああああ!!)

 

完全に読まれてる……!

 

動き……挙動……全部……!

 

「さらに、露出狂の特徴とも一致している……偶然にしては出来すぎです」

 

(やめろ……やめろ……!)

 

「違うなら、はっきり否定してください」

 

(できるか……!!)

 

「あなたは過去にも同じことをしていませんか?」

 

(違う……!!)

 

(違うけど……証明できねえ……!!)

 

「沈黙……ですか」

 

ざわ……ざわ……

 

空気が完全に“黒”へ傾く。

 

(終わる……)

 

(今度こそ完全に……終わる……!!)

 

「カイジ……答えろ」

 

目暮警部の声。

 

重い。

 

逃げ場なし。

 

(どうする……どうする……!!)

 

(もう逃げられない……)

 

(でも……認めたら終わり……!!)

 

心臓が爆発しそうだ。

 

呼吸が浅い。

 

視界が揺れる。

 

(なんなんだよ……)

 

(なんで……こんなことに……)

 

さっきまで“助かる側”にいたはずなのに――

 

(気づいたら……)

 

(また崖の下……!!)

 

カイジ――

 

完全包囲、再び……!!

 

ざわ……ざわ……

 

――詰んだ。

 

完全に。

 

言い逃れ不能。

 

証言、状況、目撃……全部揃ってる。

 

(無理だ……)

 

(ここからは……無理……)

 

思考が止まりかける。

 

そのとき――

 

(腹減ったな……くんくん、なんかこの兄さんのポケットからいいにおいがするな)

 

(……?)

 

誰だ……?

 

いや、元太か……!

 

(ポケット……?)

 

(あ……)

 

(魚肉ソーセージ……!!)

 

そうだ――!

 

飲み屋で残したやつ……

もったいなくて……ポケットに……!

 

(待て……これ……)

 

(肌色……)

 

(握ってた……)

 

(繋がる……!!)

 

(これだあああああああああああああ!!)

 

土壇場の閃き――!

 

「どう違うんだ?」

 

警部の圧。

 

逃げ場なし。

 

(今しかねえ……!!)

 

「俺、あのタイミングでポケットに入っていた魚肉ソーセージ食べてました!!握っていたのはそれです!!」

 

ざわっ……!!

 

ポケットに手を突っ込む。

 

証拠――!

 

魚肉ソーセージ、2本。

 

うち1本、かじりかけ。

 

(いけ……!!)

 

(通れ……!!)

 

「おいおい、おかしいだろ……こんなところで魚肉ソーセージをかじるとか」

 

(ぐっ……)

 

だが――

 

ここで引くな……!

 

「待てよ……ありえるだろ」

 

自分で言ってて思う。

 

(ねえよ……!!)

 

(こんな状況で食うやついねえ……!!)

 

でも――

 

(押し通せ……!!)

 

「いや……そんな状況ない……一度もない……でもここは押し通す……!」

 

自分に言い聞かせる。

 

「高木君、そういう経験あるか?」

 

(やめろ……聞くな……!!)

 

「いえ、僕はありません」

 

(終わったあああああああああああああああ!!)

 

「だそうだ!ありえないんだよ、カイジ」

 

ざわ……ざわ……

 

(くそ……やっぱり無理か……)

 

だが――

 

ここで折れるな……!

 

「待てよ警部……!」

 

一歩踏み込む。

 

震える足。

 

だが止まるな。

 

「俺みたいな人間はな……“もったいない”で生きてるんだよ……!」

 

(何言ってんだ俺……!)

 

「飲み屋で残した……だから持って帰った……腹減った……だから食った……それだけだろ!!」

 

(通れ……!通れ……!)

 

「状況がおかしい?当たり前だろ!!俺は“おかしい側”の人間なんだよ!!」

 

ざわ……

 

空気が、揺れる。

 

「普通じゃないから疑う……それはいい……!」

 

指を突きつける。

 

「でもな警部……“普通じゃない=犯罪”じゃねえだろ……!!」

 

(頼む……!!)

 

「俺はズボンを下ろした……それは認める……!」

 

(あ……)

 

(また余計なことを……!)

 

「でもな……!!」

 

「見せた“中身”が何かは別問題だろ……!!」

 

静寂。

 

(どうだ……?)

 

警部の目が細まる。

 

(揺れたか……?)

 

「……カイジ」

 

低い声。

 

「お前の言い分は分かった」

 

(来たか……!?)

 

ざわ……ざわ……

 

――詰みかけている。

 

いや、もうほぼ詰んでる。

 

「でも夜に1人で魚肉ソーセージありえないんだ、ありえることを証明できるか?」

 

(来た……トドメ……)

 

論理で潰しに来た……!

 

逃げ道を完全に封鎖する一手……!

 

(無理だろ……そんな証明……)

 

(誰がいるんだよ……夜に外で魚肉ソーセージ食うやつなんて……)

 

だが――

 

ここで折れたら終わり。

 

「いやいや、ありえるんです!人気のないところで魚肉ソーセージを食べることは!分かりました証明します!!」

 

(言った……)

 

(もう後には引けねえ……!)

 

これは――

 

完全に“いちかばちか”。

 

「どうやってだ?」

 

「スマホで調べます。夜 外 魚肉ソーセージ で!これでそういう人がいたらありえないはありえるに変わる……それでいいですよね?」

 

(頼む……!)

 

(通れ……!!)

 

「ああ」

 

(よし……!!)

 

「高木……調べろ」

 

スマホを取り出す音。

 

タップ音。

 

スクロール。

 

(頼む……頼む……頼む……!!)

 

心臓がうるさい。

 

呼吸が浅い。

 

時間が遅い。

 

(誰か……いてくれ……!!)

 

(変なやつでいい……むしろ変なやつ来い……!!)

 

「……1件ヒットしました」

 

(……!!)

 

「Xアカウント @meitanteikogorou」

 

(え……?)

 

「“名探偵の俺、夜空見ながら魚肉ソーセージを貪る!うめえ!夜風に当たりながら最高!”」

 

――沈黙。

 

「毛利君っ」

 

(こうちゃん……!!!!)

 

(きたああああああああああああああああああ!!)

 

鳥肌。

 

全身が震える。

 

(なんだこの奇跡……!!)

 

(このタイミングで……!!)

 

(しかもあいつ……!)

 

(現場にいなくても俺を救うのかよ……!!)

 

(化け物か……!!)

 

一気に流れが変わる。

 

「なぁ、警部」

 

息を整える。

 

だが内心は爆発寸前。

 

「これでありえないはありえたに変わった!!!!」

 

ざわ……ざわ……

 

空気が揺れる。

 

(通った……!!)

 

(理屈……通った……!!)

 

警部の顔が歪む。

 

(押せ……!今だ……!!)

 

「“ありえない”ってのはな……ただの思い込みだ……!」

 

「例外が一つでもあれば、それは“可能性”になる……!!」

 

(いけ……!決めろ……!)

 

「俺はその例外側の人間だ……!!」

 

沈黙。

 

(どうだ……?)

 

(これで……まだ戦えるか……!?)

 

カイジ――

奇跡の“論理逆転”成功……!!

 

ざわ……ざわ……

 

「ああ。それは認める……だが、お前の家はこの300m先……なにもこんなところで食べる必要ないだろ……」

 

(……終わった)

 

(そこ突くか……!!)

 

頭の中が真っ白になる。

 

(そうだ……)

 

(家、近いじゃねえか……!!)

 

(なんでこんなところで食ってんだって話になるだろ……普通……!!)

 

ざわ……ざわ……

 

(やべえ……)

 

(論理が……崩れる……!!)

 

一気に引き戻される。

 

さっきまでの流れが、嘘みたいに消える。

 

(思い出せ……なんでここで……)

 

――そうだ。

 

ガキの頃。

 

この辺りで遊んでた。

 

家が近いから。

 

ただそれだけ。

 

(違う……弱い……!!)

 

(そんな理由じゃ通らねえ……!!)

 

(くそっ……!!)

 

(考えたら負けだ……)

 

(ここは……押し通すしかねえ……!!)

 

「俺酒飲んでたんです。その後に急に塩分欲しくなりません?」

 

(いけ……!)

 

「そんなことない」

 

(え?)

 

(否定……!?)

 

(やばい……止まるな……!!)

 

「待ってくれ!!」

 

一歩踏み込む。

 

声を張る。

 

「事件解決して高木刑事と飲みにいく!盛り上がる……そして帰り道、ラーメン屋行ったことあるでしょ?」

 

(具体的に……イメージさせろ……!!)

 

「ビール飲んで、つまみ食って……満腹のはずなのに……」

 

「なぜか行く……ラーメン……!!」

 

ざわ……ざわ……

 

(来い……!共感……!!)

 

「塩分……欲しくなるだろ……!!」

 

空気が揺れる。

 

高木刑事、ピクリと反応。

 

「あっ……たまに居酒屋後にラーメン、目暮警部といきます!分かります、その気持ち」

 

(刺さったあああああああああああああああ!!)

 

(勝ち筋……!!)

 

一気に流れが戻る。

 

「だろ!!」

 

(いけ……押し切れ……!!)

 

「それと同じだ……!!」

 

「俺はラーメンじゃなく……魚肉ソーセージだっただけだ……!!」

 

(無理あるか……?)

 

(いや……関係ねえ……!!)

 

「場所?関係ねえ!!」

 

「その場で食いたくなる……それが人間だろ……!!」

 

ざわ……ざわ……

 

(どうだ……?)

 

目暮警部、黙る。

 

(揺れてる……!)

 

「確かに……ありえるのか……」

 

(きた……!!)

 

(論理じゃねえ……感情で押し切った……!!)

 

心臓が跳ねる。

 

全身が熱い。

 

(まだ……戦える……!!)

 

(このまま……押し切る……!!)

 

カイジ、綱渡りの“共感トリック”成功……!!

 

ざわ……ざわ……

 

(いける……)

 

(流れ……戻ってきた……!!)

 

魚肉ソーセージ。

 

塩分理論。

 

共感。

 

全部が、繋がってきている……!

 

(だが……まだ足りねえ……)

 

このままじゃ“グレー”。

 

無罪じゃない。

 

(決めろ……ここで……!!)

 

頭の奥で、ひとつの記憶が浮かぶ。

 

――うそ発見器。

 

(あれ……)

 

(あの屈辱……!!)

 

心の中を暴かれて。

 

ヨーコちゃんへの気持ちまで晒されて。

 

笑われて。

 

追い詰められて。

 

(あのときは……最悪だった……)

 

だが――

 

(違う……)

 

(あれは今のための“伏線”だ……!!)

 

一気に思考が繋がる。

 

(そうだ……)

 

(あれは……今ここで使うためのカード……!!)

 

「なぁ、この前うそ発見器使っただろ?」

 

静かに切り出す。

 

「使ったな」

 

(よし……乗った……!!)

 

(ここだ……決めろ……!!)

 

「俺は小学生に興味ない……」

 

一瞬、間を置く。

 

(言うぞ……!!)

 

「俺が興味あるのは沖野ヨーコちゃんだ!!!!」

 

ざわっ……!!

 

空気が震える。

 

(来い……!!)

 

「それを証明したのは、あんただろ!!!!」

 

沈黙。

 

ざわ……ざわ……

 

(刺さった……!!)

 

警部の顔が止まる。

 

完全に。

 

(ブーメラン……!!)

 

(あのときの“事実”が……今ここで直撃……!!)

 

「……確かに」

 

(よし……!!)

 

「すまなかった……カイジ……」

 

(来た……来た来た来た……!!)

 

「お前……無実!!!!」

 

ざわああああああああああああああああああ!!

 

(勝ったああああああああああああああああああ!!)

 

全身の力が抜ける。

 

膝が笑う。

 

(繋がった……全部……!!)

 

魚肉ソーセージ。

 

塩分。

 

共感。

 

そして――うそ発見器。

 

(全部……無駄じゃなかった……!!)

 

ギリギリ。

 

本当にギリギリ。

 

(あと一歩ズレてたら……終わってた……)

 

だが今は――

 

(生きてる……!!)

 

カイジ――

奇跡の“伏線回収逆転劇”、完全成立……!!

 

ざわ……ざわ……

 

――終わった。

 

本当に……終わった。

 

(助かった……)

 

(生き延びた……!!)

 

全身の力が一気に抜ける。

 

膝がガクガクしてる。

 

でも――

 

今は、それすら心地いい。

 

(俺……勝ったのか……?)

 

さっきまで“世界の敵”だった俺が、

 

今は――

 

「そうだ、元太!俺の魚肉ソーセージやる」

 

自分でも驚くくらい、自然に言葉が出る。

 

「わーいやったぁ」

 

(……いい顔するな)

 

さっきまで俺を追い詰めてた空気が、

 

少しずつ、ほどけていく。

 

「光彦、お前、頭の回転はやいな優秀な探偵になる」

 

本音だ。

 

あいつはやばい。

 

あの詰め方、小学生じゃねえ。

 

「え~本当ですか?」

 

(素直かよ……)

 

「歩美ちゃん怖い思いさせてごめんな。俺事件に巻き込まれやすいから少年探偵団なら、今度事件が起こりそうなところ連れていってやる」

 

(何言ってんだ俺……)

 

(でも……悪くねえな……)

 

「わーい、約束だよ」

 

(約束……か)

 

「コナン、サンキューな」

 

あいつがいなかったら――

 

確実に終わってた。

 

(ほんと……何者だよあいつ……)

 

そして――

 

目暮警部。

 

「君たち、このカイジは卑劣な行動したと思うか?」

 

(……来るか?最後の審判)

 

「歩美してないと思う」

 

(……!)

 

「僕の推理によると夜だったので見間違えです。すみません」

 

(光彦……お前……)

 

「兄ちゃん魚肉ソーセージくれたし悪い奴じゃねえ」

 

(基準それかよ……でも助かる……!)

 

「僕もカイジさんは信用していいと思う!だったあの名探偵毛利小五郎の一番弟子だもん」

 

(こうちゃん……お前の名前……強すぎるだろ……!!)

 

ざわ……

 

空気が変わる。

 

完全に。

 

(いける……)

 

(これで……決まる……!!)

 

「目暮警部……この事件どうしますか?」

 

一瞬の静寂。

 

「ノーカン!!事件なんてなかった!!!!」

 

――来た。

 

(勝利……!!)

 

全てが、吹き飛ぶ。

 

緊張も、恐怖も、絶望も。

 

そして俺は――

 

「ノーカン!!!!!!!!!」

 

叫ぶ。

 

腹の底から。

 

夜に響く。

 

(生きてる……!!)

 

(まだ……俺はやれる……!!)

 

カイジ――

奇跡の“ノーカン逆転劇”、完全勝利……!!

 

――終わったはずだった。

 

完全勝利。

 

ノーカン。

 

生還。

 

(完璧……だった……)

 

そう思った――その瞬間。

 

「あれ?おかしいですね」

 

(……ん?)

 

光彦。

 

あの冷静な目。

 

「なんで僕たちの名前や少年探偵団であること知っているんですか?」

 

ざわ……ざわ……

 

(やべえ……)

 

(それ……完全に……)

 

(心の声で拾った情報だ……!!)

 

一気に血の気が引く。

 

さっきまでの勝利の余韻が、

 

一瞬で凍りつく。

 

(ここでミスるか……普通……!!)

 

(詰めが甘い……!!俺……!!)

 

脳がフル回転する。

 

言い訳。

 

論理。

 

整合性。

 

(作れ……!!今すぐ……!!)

 

「それは、よくこうちゃんやコナンが話をしているからだよ」

 

(いけるか……?)

 

(いや……まだ弱い……)

 

「でも歩美たちの顔はみたことないよね?」

 

(ぐっ……!!)

 

(確かに……!!)

 

(今のは……“特定してる言い方”だった……!!)

 

(やべえ……詰んだか……?)

 

空気がまた変わる。

 

さっきとは違う意味で。

 

(終わる……ここで……?)

 

そのとき――

 

「何言ってんだよ、お前ら」

 

(……!?)

 

コナン。

 

「カイジさんは数々の事件を解決している人」

 

(おい……)

 

「俺といる時点で少年探偵団だと分かるし」

 

(……!!)

 

「あとは雰囲気や言葉の端々で誰かくらい簡単に推理できるだろ?」

 

(きた……!!)

 

「ですよね、カイジ兄さん」

 

(神……!!)

 

一瞬で道が開ける。

 

論理が繋がる。

 

(これなら……通る……!!)

 

「ああ」

 

短く、強く。

 

ざわ……

 

空気が、納得に変わる。

 

(助かったあああああああああああああああ!!)

 

(マジで……危なかった……!!)

 

心臓がバクバクしてる。

 

さっきの比じゃない。

 

(こうちゃんの居候……やばすぎるだろ……)

 

(あいつ……全部見えてんのか……?)

 

(敵に回したら……終わりだな……)

 

でも今は違う。

 

(味方……!!)

 

「あぶねええええ……」

 

心の底から漏れる。

 

勝利の後に来る、

 

“もう一度の崖”。

 

それを――

 

ギリギリで渡り切った。

 

カイジ――

二度目の“致命的ミス”、奇跡のリカバリー成功……!!

 

エンド 魚肉ソーセージを持っておけ!




次回、歩美ちゃんとの伏線回収!

ファイル7:図書館殺人事件 前編

今回のようにカイジが犯人のお話はあり?

  • またみたい
  • もういい
  • オリジナル回でお願い
  • 元ネタ回ありでお願い
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