古明地うつつは忘れたい   作:sea_forest

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前話が間話で話が進んでいないので、本日は2投稿することにしました。
本来、紅霧異変は文月の頃らしいですが、ここでは初夏当たりに発生したものとしています。

評価や感想を残してくれた方、ありがとうございます。執筆の励みになります。


紅魔郷
第3話 調査開始です。しぶしぶと。


こいしを連れ戻して数日が経ち、幻想郷にもすっかり初夏の気配が漂ってきた。

当初、こいしはすぐどこかへ行ってしまうものだと思っていたが、意外にも大人しくしている。定期的に「お願い」という名のワガママを聞いてあげているからだろうか。

相変わらずさとりとの関係性はどこかギクシャクしているが、それでも大きな問題にはなっていない。どこであの二人の関係がこじれたのか、元々こじれていたのか。うつつには知る術もない。……本当に?

 

さて、今は大人しく従ってくれているとはいえ、いつまでもこいしを縛り付けておくわけにもいかない。本質的に彼女は自由奔放な性格であるが故、いついなくなってもおかしくないのだ。

さとりにも相談して、この霧の原因を調査したほうがいいだろうか。

うつつがそう考えていると、部屋の扉が急に開く。

 

「お兄ちゃん!外見た!?」

 

少し興奮した様子のこいしが入ってくる。

 

「ノックくらいしてよこいしちゃん……それで外?何かあった?」

「すごいよ!まだお昼なのに空が真っ赤!」

「真っ赤?」

 

早く早く、とこいしがうつつの袖を引っ張って外に連れ出す。

地底から地上に出てみると、そこは絵の具の赤をひっくり返したような薄気味悪い空が広がっている。

……数日前から広がっていた、と日記に書いていた霧はこれの前触れだったのか?

しかも前は魔力でできた霧だったのに、この紅い霧には妖力が込められている。人間には間違いなく悪影響だし、力の弱い妖怪にとっても害になる。

 

「こいしちゃん、体調は問題ない?」

「私はへーき。でもこの妖気だと弱い子たちは参っちゃうかもね」

「そうだな…」

 

いまのところ、うつつたち家族に影響はなさそうだが、あまり放置もしていられない。

荒事はあまり好きではないが、本格的に調査せざるを得なくなってきたか。

 

「こいしちゃん、僕がちょっと調べてくるから、大人しく待っていられる?」

「なんで?私別に平気だよ?」

「まあそうなんだけど。でもこれ以上妖気が強くなったら、僕らも危ないかもしれない」

 

こいしに危害が及ぶ可能性は少ないほうがうつつも安心できる。

調査に出ても、こいしが出歩くのであればそんなに意味がない。

 

「……お兄ちゃんは、もし私がこの霧で体調悪くなったら、悲しい?」

「へ?当たり前じゃん。何言ってんの?」

「そっか、そうだよね。……しょうがないな、お兄ちゃんに免じて、私はもう少し大人しくしておくことにします。その代わり、またカレー作ってね」

「はいはい」

 

よくわからないが、とにかくこいしは出歩かないことを約束してくれた。

さとりに状況を伝えて調査に出る許可を貰うか、とうつつは地霊殿に戻ることにした。

 

 

 

「というわけで、この異常天候の調査をしたいんだけど」

 

早速うつつはさとりにそう切り出す。

別に何も言わずに出ていってもいいが、あまり余計な心配をかけたくはない。

 

「こいしは?」

「さっき話してきた。残ってくれるって」

「そう……」

 

さとりは少し考え込むようにして、そしてサードアイと共にこちらを見つめる。

 

「……はぁ、家族に傷ついて欲しくない、って思ってるのはあなただけじゃないんだからね」

 

少し呆れたように彼女がつぶやく。うつつの心を読んだらしい。

 

「まあ、地底に影響が出ないとも限らないし、調査は許可します。ただし、無茶はしないこと、いいわね?」

 

うつつはそれに頷き、無事に調査する許可を得ることができた。

あまりさとりに迷惑や心配をかけないように頑張らねば、と考えながらうつつはさとりの部屋を後にする。

閉まった扉に向けて、さとりが小さく呟く。

 

「……バカね、そんなこと気にしなくていいのに。弟なんだから」

 

 

 

改めて地上に出るも状況は変わらず、空は紅で覆われている。

さて、なんの手がかりもないがどうしよう。

日記を見返してみるも、霧のことに言及はされていても原因までは分かってなさそうだ。地道に調べるしかない。

 

どこから調べよう、そう考えたうつつの脳内には1人の白黒の魔女の姿が浮かぶ。

……あの人なら、面白いことが起こってるってノリノリで調査してそうだな。

そうでなくても、人間である彼女がこの霧の被害にあっていないか心配である。

そうと決まれば、と魔法の森へと進路を決定した。

魔理沙の家を訪れると、予想どおり異変の調査に乗り出す準備をしていた。

 

「お?うつつじゃないか。お前から来るのは珍しいな」

「やあ魔理沙。魔理沙もこの異変の調査を?」

「ああ、こんな楽しそうな事件調べない方が損だぜ」

「魔理沙ならそう言うと思った」

 

案の定だったが、念のため体調も気にしておく。

 

「この霧、妖力が込められてるけど魔理沙は大丈夫?」

「ああ、こんな霧でダウンするようなヤワな体はしてないぜ」

「それはよかった」

「それで、うつつは心当たりはあるのか?」

「それがさっぱりなんだよねぇ」

 

どうやら、魔理沙も原因を知らないらしい。まあ簡単にわかっていたら苦労はしない。

しかし困った。完全に手掛かりがない。

 

「霧、といえば霧の湖だよな。もしかしたら妖精の悪戯かも知れないぜ?」

「安直な気がするけど……。まあ他に心当たりもないし行ってみようか」

 

魔理沙の後ろにうつつ、といういつもの構図で箒に跨ると、あっという間に二人は空へと飛び立った。

 

 

間もなく霧の湖に到着すると、そこには特に何の変哲もない湖が広がっていた。

いつもと変わらない風景、なのだろう。

一応、霧が立ち込めてはいるのだが、別にこの霧は赤くはないごく普通の霧だ。

もっとも、さらに上空に立ち込める霧は相も変わらず紅を主張し、水面すらも赤く染め上げているのだが。

 

「特に変な感じはしないぜ。当てが外れたか?」

「まあ、そう簡単に原因がわかるとは思ってなかったけどね」

 

そんな会話をしていると、背後から声を掛けられる。

 

「あー!うつつじゃん! 魔理沙も一緒?」

 

そこには氷の妖精であるチルノがいた。

 

「げ、チルノ」

「げ、って何よ。失礼ね」

「だってお前会うたびに僕にいたずらしてくるらしいじゃん」

「あんただって毎回お返ししてくるからおあいこでしょ!」

 

うつつとチルノは会うたびにいたずらバトルを繰り広げている。

自己防衛の為に何度かやりかえしているうちに、不本意ながらチルノのことは記憶に残ってしまった。

 

「お前ら、仲良かったんだな」

「「良くない!」」

 

魔理沙が意外そうな表情を浮かべる。

うつつとしては被害者なので仲がいいと言われるのはかなり不服である。

 

「悪いけど、今日はいたずら合戦してる場合じゃないんだ。チルノはこの赤い霧についてなんか知ってることない?」

「ああこれね。急に空が変な色になっちゃってびっくり。私としては、気温が下がって過ごしやすいからこのまま続いてほしいけどね」

「つまり、何も知らないと?」

「私が原因知るわけないじゃん」

 

こいつ(チルノ)に聞いたのがバカだった、とうなだれるうつつだったが、それを気にせずにチルノは続ける。

 

「ああ、でもこの霧の出所っぽいところなら知ってるよ」

「それを早く言え」

「ふふーん、タダでしゃべると思う?」

 

ドヤ顔で宣う様子に苛立ったうつつはとりあえずこいつ(チルノ)をボコることにした。

 

「わかった。素直に言わなかったことを後悔させてやる」

「やれるもんならやってみなさいよ!」

 

売り言葉に買い言葉とばかりに、チルノはすぐさま臨戦態勢をとる。

チルノからすればいつも通りの光景である。

本人の「冷気を操る程度の能力」を最大限に使った氷の弾幕で攻めたてようとするチルノに対して、うつつはすでに右手を前に突き出して構えている。

 

「魔理沙、先に謝っとく。ちょっと借りるぜ」

「え?」

 

魔理沙に一言断って、スペルカードを宣言する。

 

模倣『マスタースパーク』

 

右の掌から魔理沙の十八番であるマスタースパークが飛び出し、チルノは反応する間もなく直撃。そのままふらふらと地面に墜落する。

 

「ばたんきゅ~」

「お前の能力ってそういうこともできるんだな……」

「ま、ちょっとした応用だぜ」

「口調まで私に引っ張られてないか?」

「人の力を使うとこうなっちゃうんだよね。もう解除したから大丈夫。さて、チルノを起こしてこの霧の手がかりとやらを吐かせなきゃ」

 

ようやくこの異変への調査が少し進みそうだ。

ふと空を見上げると、先ほどより紅が濃くなっているように錯覚した。

 

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