ストック使い切ったのと、仕事の都合でここからは2~3日に1回投稿になるかと思います
うつつとレミリアの戦いは熾烈を極めた。
うつつが神話で語られるような剣を振るえば、レミリアは自身を無数の蝙蝠に分散させることで回避する。
レミリアが苛烈な紅い弾幕を展開すれば、うつつは不可思議な防壁によって攻撃をシャットアウトする。
二人の戦いは互角のように思えたが、そう長くは続かなかった。
「アハハハ! いいわね、楽しいわ!」
「そりゃどう…も!」
何度目になるかわからない攻撃の衝突。
お互い倒すつもりで全力の攻撃を行っているものの、決定打には繋がらない。
それが繰り返されて、最終的に有利なのはレミリアの方だった。
「だいぶ動きに乱れが見えてきたんじゃない?」
「さてどうだろうな?」
レミリアがうつつを挑発する。うつつは強がりながらそう返すも、明らかに肩で息をしている。剣を握る手にも、先ほどまでの力強さはない。
実際うつつの能力は、一時的に神にも届かんとする力をその身に宿す行為だ。
そんな力を無制限に振るうことができるはずもなく、体が限界を訴え始めている。
持って、次の一撃が限度だろう。うつつは一つ覚悟を決めた。
「強がっちゃって。夜の女王相手にここまで抗ったことは褒めてあげるわ。そして敬意を持ってお前を殺してあげる。光栄に思いなさい!」
レミリアの右手に妖力が渦を巻き、空気が震える。初撃と同様の紅い槍が形を成し、凄まじい殺意を纏う。
それを見たうつつも剣を構え直す。
「おいおい、またグングニルか? それでは俺は殺せないぞ」
「でしょうね。だから今度はお前の心臓を確実に貫くための一撃よ」
必殺「ハートブレイク」
レミリアが地面を蹴り砕き、槍を携えたまま紅い閃光と化す。
うつつはそれを剣で迎撃する——かに思われた。
だが刃が振るわれることはなかった。構えていたはずの剣は淡い光とともに霧散し、うつつの体は紅の槍に貫かれていた。
スペルカードルールのため実際には怪我はしていないが、全身を駆け抜ける衝撃にうつつの膝が折れかける。精神的にも体力的にも、致命的な一撃だった。
その光景を見た魔理沙が思わず駆け寄る。
レミリアは勝利を確信して高笑いを上げる。
「うつつ!」
「あら、案外あっけなかったわね。もう私の一撃に反応する気力もなかったかしら? 構えもせず無防備に貫かれるなんて……」
そこまで呟いて、レミリアは違和感を感じた。
無防備に貫かれた? いや待て、こいつは確かに剣を構えて迎撃を狙っていたはずだ。
それなのになぜ迎撃しなかった? そもそも、なぜ剣を捨てた?
考えを巡らせていると、眼の前の少年の左手がレミリアの背中を力強く引き寄せる。
それによって傷口が深くなることも厭わずに。
「捕まえた」
一言呟くと、うつつは残った右手に妖力を集める。同時に、再度彼に光が収束する。
うつつの右手に生成されるはまたも槍状の武器。
しかし、最初にグングニルとして放ったものとはまた違う形状のものだ。
「これは直接相手に刺さないと効果がなくてね。貴方を挑発した甲斐があったよ」
「クソッ!離せ!!!」
レミリアは拘束から必死に抜け出そうとする。普段であれば確実に力負けしない力量差のはずが、うつつの能力と火事場の底力で増幅された力がここで拮抗している。
「貴方は強い。だから貴方に敬意を込めて、僕の敗北と引き換えにこの一撃を捧げるよ」
うつつは、そのまま右手の槍をレミリアに突き立てる。
再現「逆転する封災の槍」
日本神話に伝わる、荒ぶる災厄を沈めたとされる槍、天之逆鉾。
その権能を模した力が、レミリアの圧倒的な力の一部を強引に封じる。
「あとは……」
そこで限界が来たのか、うつつは何かを呟きながらもそのまま意識を手放すように崩れ落ちた。
レミリアは力の抜けたうつつを突き飛ばし、自身に刺さった槍を引き抜く。
「最後に小癪な真似をしてくれたわね……」
レミリアは冷静に自身の状態を確認する。魔封じの効果で能力こそ制限されたが、完全に封じられたわけではない。弱った巫女と人間の魔法使い程度であれば、まだ十分に仕留められる——そう確信した。
「ふふ、このまま死に損ないの巫女と魔法使いを仕留めて……」
「誰が死に損ないですって?」
振り返ると、そこには十分な霊力を取り戻した霊夢が立っていた。
どうやら、うつつの時間稼ぎは十分機能したようだ。
「お前、ほとんど力を使い果たしていたはずでは」
「お生憎様。あいつが稼いでくれた時間でこっちは復活したわよ。……正直、あいつがいないと勝てなかったし、美味しいところを持っていくようであんまり気分が良くないけど、それでも託されたからにはきっちり勝たせてもらうわよ」
霊夢の体からまばゆいばかりの光の奔流が放たれ、レミリアを襲う。
霊符「夢想封印」
妖怪が最も嫌う霊力による光と、それに追随する封印札がレミリアに襲いかかる。
当然レミリアも黙って受けるつもりはない。迫りくる光弾を回避するべく空へと飛び立とうとしたその瞬間、周囲に星型の魔法陣が幾つも展開され、脱出経路を封じる。
黒魔「イベントホライズン」
「おっと、私のことを忘れてもらっちゃ困るぜ。大人しく霊夢の封印を食らってな!」
全力状態であれば強引に突破する余地もあったかもしれないが、それはうつつの置き土産が許さない。
「おのれおのれおのれぇぇぇ!」
悔しそうな断末魔を上げるレミリアだったが、光が収まる頃には力なく倒れ伏した。
「ふぅ。これで一件落着、かしらね?」
「だな。うつつの戦い、レベルが高すぎて見てるくらいしかできなかったぜ」
「まあ、妖怪同士の対決に人間が割り込むのは危なすぎるわ。良い判断だったと思うわよ」
「そうか……そうかもな。ひとまず、今回のMVPの手当をしてやろうぜ」
魔理沙はうつつに駆け寄り、体の様子を確認する。
戦いの影響であちこちに小さな傷を負っているが、大きな外傷はない。
幻想郷全体を巻き込んだ異変も、やがて収束に向かっていくだろう。