古明地うつつは忘れたい   作:sea_forest

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エタってませんからね!!!

紅魔館終了までのアイディアがだいぶ固まったのでなるべく早く続きかけるようにします


第7話 一件落着です。……本当に?

――遥か遠くから、誰かが自分を呼んでいる。

微睡みの海を彷徨っていた意識は声の方に引き寄せられる。

自分は、何をしていたのだったか。

ああそうだ、レミリアと戦って負けたのだった。いやはや、ついさっきのことも曖昧になってしまうとは、記憶が錆びつき過ぎではないだろうか?

――再び、誰かが自分を呼ぶ声がする。

先程よりも近く、そしてはっきりとした声。聞き馴染みのある声。

ああ、多くを忘れている自分でもよく覚えている。

その声に呼ばれるように、意識が急速に浮上する。

 

意識がはっきりして、最初に感じたのは体中の痛みだった。

あれだけの無茶をしたので当然なのだが、今になって実感が湧いてくる。

「——つつ、おい、うつつ!」

うつつが完全に目を開けると、心配そうに覗き込む魔理沙の姿を捉える。

一緒に霊夢もいるところを見るに、上手くやってくれたのか?

 

「レミリアは……?」

「安心しなさい、私がちゃんと倒したわ。あいつの目が覚めたらこの霧を止めさせて、それで異変は解決よ」

「それは良かった……」

 

懸命に体を起こそうとしていたうつつだったが、安堵のせいか再び倒れ込む。

 

「まったく、だいぶ無理をしたもんだぜ」

「スペルカードルールで戦っている限りは大丈夫だろうって思ってたんだけど、流石に妖力で貫かれるのはきついね……」

「何にせよこれで異変は解決だし、しばらく休んでいるといいぜ」

 

三人の間には束の間の穏やかな空気が流れていた。

 

「それにしても、この霧いつ晴れるんだろうな」

「あの吸血鬼が起きたら止めさせるわよ。それまでは……」

「……その必要はないわ」

 

低い声が割り込む。見れば、レミリアがゆっくりと身を起こしていた。

先程までの緩やかな空気とは一転、各々が瞬時に臨戦態勢を取る。うつつも体を半身だけ起こして構える。

 

「安心しなさい。私はもう負けた身。今更みっともない悪あがきをする気は無いわよ」

「あら、殊勝な心がけね」

「吸血鬼は誇り高い種族よ。当然私を負かした相手には敬意は払うわよ」

「あ、そこは負けを認めない!とかじゃないんだね」

「ふん。お互い全力で、真剣勝負で戦った。それを認めないほうが醜いわ。悔しいけども。すっごく悔しいけども」

 

レミリアの宣言に思わず感心してしまう。もっとも、最後の一言がなければもう少し格好がついたのだが。

 

「そんで、負けを認めた吸血鬼さんはこの霧を止めてくれるのかしら?」

「鼻につく言い方ね……!まあいいわ。私は寛大だからそれくらいの戯言は許してあげる」

「はいはい。そんで、止められるの?」

「……私が出した霧だから止めようと思えば止まるわ。少し準備がいるから待ってなさい」

 

レミリアは額に青筋を浮かべながらも霧を止める準備を始める。

今いる屋上の足元をよく見ると、大きな魔法陣が敷かれていた。どうやらここから霧が少しずつ放出されていたらしい。

レミリアがなにやら呪文を唱えると魔法陣が光りだす。

ようやく忙しかった一日も終わるのだ。明日になったら今日のことは忘れていると思うと少し寂しいが、これだけ強烈な一日であればもしかしたら数日くらいは覚えているかもしれない。

 

「そういやレミリア。なんでこんな霧をばらまこうと思ったんだ?」

「ああ。それは吸血鬼の苦手な日光を遮るためではあるのだけれど、一番の目的は……」

 

レミリアが異変を起こした理由を語ろうとしたその時だった。

突如、轟音と共に屋上の外壁が吹き飛ぶ。

土煙の中から現れたのは、金色に輝く髪に爛々と赤く光る瞳、そして奇妙な羽を生やした少女だった。

 

「アハ、面白そうなことしてるじゃない。独り占めは許さないわよ、お姉様」

「フラン……どうしてここに」

「あんたが私に秘密でコソコソやってるのは前から気づいてたけど、あれだけ大きな妖力のぶつかり合いを感じたらいても立ってもいられなくなっちゃった。ねえ?」

 

――私とも遊んでよ!

 

フランと呼ばれた少女は、手始めにレミリアが使ったものと同じ紅い弾幕を放つ。

狙われたレミリアは、先程の戦闘による疲れを全く感じない軽やかさで避ける。

 

「フラン、あなたね……!」

「フフフ、ずるいお姉様。いつも私には隠し事ばかり!」

 

今が好機だ。

突如として始まった姉妹同士の戦いの隙に、うつつは人格の入れ替えを行う。

体が淡く光ったかと思うと、みるみるうちに彼の怪我が治っていく。

彼が宿した人格の中に、癒しの力を持つものがあった。

何はともあれ、消耗した妖力の回復こそできていないものの、少なくとも体力や怪我は戦えるくらいの水準には戻った。

ちょうどその時、フランがこちらの存在に気づいたのか、動きを止めた。

 

「アハハハハハ! 久しぶりのお外は楽しいわ! ……あら?他にも人間がいたのね。そっちは妖怪かしら。うーん、四人を一人で相手にするのは難しいわ。そうだ!」

 

少女の姿が一瞬だけブレたかと思うと、次の瞬間にはこちらを見つめる赤い瞳が八つに増えていた。全く同じ姿をした少女が四人に増えている。

 

「これでみんなと遊べるわ。一人遊びにはもう飽きたの」

「お姉様はいつもそう、自分ばっかり遊んで私のことは知らんぷり」

「大丈夫、壊れても直してあげるわ。私何度もお人形で試したの」

「どうしてそんなに怖い顔をしているの?これから楽しい遊びが始まるの!」

 

紅い瞳に狂気を湛えた四人の少女は無邪気にこちらを見つめる。

次の瞬間には襲ってきてもおかしくない。

あまりにも唐突すぎる展開にうつつが思わず叫ぶ。

 

「ちょっと!あの子レミリアの妹!? 一体どんな教育してるのさ!」

「ええ。あの子はフラン。フランドール・スカーレット。正真正銘私の妹よ。少し事情があってずっと地下に幽閉していたのだけれど、今回の騒ぎを聞きつけて出てきてしまったみたいね……」

「あいつ、今にも襲ってこようとしてるんだが、どうするんだぜ?」

「家族の問題に巻き込んでしまって申し訳ないのだけれど、私の頼みを聞いてくれるかしら。……あの子を止めるのを手伝ってほしい」

「そんなのお断りよ」

 

レミリアの寂しそうなお願いを霊夢はバッサリと切り捨てる。

 

「おい霊夢」

「いいの。そういう反応が普通だと思うわ……」

「あんたの手伝いなんてまっぴらごめんだけど、でもあの子が暴れてこの幻想郷の秩序を乱そうとしているのであれば、博麗の巫女の名に賭けて彼女を退治するわ」

「……ありがとう」

「霊夢はツンデレだね」

「まったくだぜ。素直じゃなくて可愛げがない」

「どつくわよあんた達……」

「お喋りはもういいかしら? それじゃあ、私を楽しませてね。簡単に壊れないでよ!」

 

瞬間、四つの虹色の流星が迸る。

紅い夜すら飲み込んでしまいそうな狂気が、今解き放たれた。

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