貴方にとびきりの悪夢を   作:甘党派

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遠回り

 

 

背後に気配が増えていく。

 

彼は振り返ることも、足を止めることもないまま歩き続ける

 

するも、いくつもの足音が苛立った様に距離を詰めてくる。

 

「……またか、これで何回目?」

 

小さく呟く。

 

後方から腕が伸びる。

 

その腕を掴み、蹴りを叩き込む。

 

「いい加減さ.......」

 

そのまま、その集団の方へ振り向く。

 

「執拗いんじゃないかな?」

 

別の一人が詰めてくるが、焦りが先に出ている。

軽く触れるだけで体勢が崩れ、そのまま地面に膝をつく。

 

「数だけ増やしても、意味ないよね」

 

淡々とした声が落ちる。

 

背後で足音が乱れる。

揃っていない。連携もない。

 

彼はうんざりした様子で立ち止まる。

 

「最初は放っておいたんだけどね」

 

静かに続ける。

 

「ここまで続くと、さすがにイライラしてきちゃうよね」

 

わずかに間を置く。

 

「死穢八斎會だったっけ?」

 

小さく息を吐く。

 

「さすがに、邪魔だね」

 

一歩、踏み出す。

 

それだけで空気が沈む。

足が止まる。呼吸が浅くなる。

 

さらに一歩。

 

見えない重さが増していく。

 

誰も動けない。

 

「あんまり寄り道してる暇はないから」

 

彼の視線が初めて、彼らを捉えた。

 

「終わらせるよ」

 

腕を掲げ、振り下ろす。

 

「スタンプ」

 

空間が、落ちる。

 

逃げ場はない。

 

全員、同時に叩きつけられる。

 

音が潰れる。

呼吸も、動きも、その場で止まる。

 

それで終わりだった。

 

静寂が戻る。

 

彼はそれらに背を向け、浮かび上がる。

 

そして、その姿が夜空に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

進んでも、誰も出てこない。

 

「……静かだね」

 

さっきまで続いていたはずの通路は、途中で途切れている。

 

行き止まり。

 

「面倒だね」

 

振り返らずに別の道へ入る。

 

進んだ瞬間、背後で空気が動く。

 

道が閉じる。

 

音はほとんどない。

 

「迷路かなにか?」

 

気だるく呟く。

 

さらに進む。

 

今度は左右に分岐。

 

選ぶまでもない。

 

適当に片方へ入る。

 

数歩進むと、また構造が変わる。

 

さっき通ったはずの場所が、もうない。

 

「……」

 

足が止まる。

 

わずかに視線を上げる。

 

壁。

 

床。

 

天井。

 

全部が動いている。

 

意志を持っているみたいに。

 

「でも」

 

小さく息を吐く。

 

一歩、踏み出す。

 

空気が沈む。

 

「関係ないよね」

 

それだけ。

 

見えない重さが広がる。

 

通路が軋む。

 

壁がずれる前に止まる。

 

無理に動こうとして、歪む。

 

「動けなければ、同じだし」

 

そのまま歩く。

 

これでもう迷わない。

 

構造が変わる前に、潰れる。

 

閉じる前に、止まる。

 

分岐も関係ない。

 

進むだけでいい。

 

「……楽になった」

 

淡々と。

 

奥へ。

 

奥へ。

 

気配を増える。

 

隠れていない。

 

待ち伏せの様だ。

 

「止める気はあるんだ」

 

一人。

 

構える。

 

動きは悪くない。

 

けど。

 

遅い。

 

踏み込むより前に、足が止まる。

 

体が沈む。

 

「意味ないよ」

 

そのまま通り過ぎる。

 

振り返らない。

 

さらに奥。

 

二人。

 

三人。

 

同時に動く。

 

連携はある。

 

「少しはマシだね」

 

それでも。

 

足が止まる。

 

全員、同時に。

 

膝が落ちる。

 

呼吸が乱れる。

 

「でも、それだけ」

 

視線すら向けない。

 

そのまま進む。

 

抵抗は続かない。

 

意識が落ちる。

 

静かになる。

 

また、通路。

 

また、変わる。

 

けれど、もう遅い。

 

動く前に、押さえられている。

 

歩く。

 

ただ、それだけでいい。

 

やがて。

 

空気が変わる。

 

今までとは違う。

 

「ここか」

 

足が止まる。

 

目の前に、一枚の扉。

 

他とは違う。

 

中にいる。

 

隠していない。

 

「やっと」

 

手をかける。

 

中へ入る。

 

広い空間。

 

中央に、一人立っている。

 

動かない。

 

逃げない。

 

「……待ってたの?」

 

静かに言う。

 

一歩、踏み込む。

 

空気が張る。

 

「回り道させる割には、あっさりだね」

 

視線は外さない。

 

「まあいいか」

 

「邪魔だったし」

 

それだけ。

 

ただ、それで十分だった。

 

「終わらせるよ」

 

彼の個性は、すでにそれを捉えていた。

 

 

 

 

 

 

 

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