今回、これからも登場することになるネームドオリキャラが出て来ます。
暗殺旅行も終わり、E組全員が残された宿題、或いは残りの時間を楽しむ中、白利は1人巨大なベッドに寝転がっていた。
部屋に響く無機質な電子音、見渡せば高価な物であると一目でわかるカーテンや机などが目に入る。
「……初日は緊張してたのに、慣れるもんだな…人って。」
膝にかけられた布団をポンポンと叩きながら吐き出す。
寝転がるベッドも布団も家の物とは段違いに品質が良く、白利が置かれている状況はVIP待遇と言えるだろう。
事は5日前、暗殺旅行から帰宅すると直様烏間先生から、
『ここが君に入院してもらう病院だ。ご家族には俺から説明しておくから、君は身体を休めておいてくれ。』
と連絡がありしばらく店の手伝いをして過ごし、いざ入院の日がやってきて目的に地向かうと…
「でっかぁ……」
思わずスマホに表示されている地図と現実を往復してしまうほどの大病院が視界に映る。
防衛省が抱える病院なのだからそりゃ立派なはずだとわかってはいたが、いざ目の前にしてみると医療ドラマの舞台でしか見たことがない場所に妙な威圧感を感じてしまう。
白利が立ち尽くしていると、大病院の入り口が開き見慣れた黒スーツ姿の烏間先生が現れた。
「来てもらってすまない月乃君、本来ならこちらから迎えに行かなければならなかったのだが。」
「あ、烏間先生どうも。流石に大事にするわけにもいかないですし大丈夫ですよ。」
「そうか…改めてすまない。さて、気を取り直して行くとしよう。」
烏間先生の背を追って大病院に入ると、幼い頃から通っている病院の数倍はあるであろう人や忙しなく足を進める白衣を纏った医者が目に飛び込む。
緊張のあまり鴨のヒナのように烏間先生の背から離れぬように着いていくと、いつの間にか受け付けへと辿り着いていた。
「月乃君、少しここで待っていてくれ。上の者に連絡を通して君の病室まで案内しよう。」
「必要ないよ烏間、賓客にはこちらから顔を出すのが礼儀だろ?」
「…………待っていろと言ったはずだが?」
「んふふ〜そうだったっけ?まぁ良いじゃないか、私は彼の主治医なんだ顔合わせは早い方が良いだろう?」
主治医と言う言葉に目を見開きながら、改めて目の前に立つ女性に目を向ける。
星空のように輝く黒色の長い髪と前髪に隠された右目、覗く左目は紫色に輝き目尻は鋭く顔立ちは端正。
身長は烏間先生とほぼ同じ…スラリとした長い脚が支える170cm後半はあるであろう高身長。
一部そういう性癖持ちの女性……男性にも人気がありそうなビジュアルをしている。
「主治医…ですか?」
「そう、私が君の主治医『
「羽織ちゃん?……月乃白利です、これからお世話になります御影先生。」
「ふむ…ま、これからよろしく少年!しかし……なるほどねぇ。」
「?」
「んんっ!少々クセはあるが、御影が信頼に足る人物であることは俺が保証する。………御影、わざわざこっちまで来たんだ、月乃君の病室まで案内しろ。」
「はいは〜い、着いておいで少年、詳しい話は部屋でしようか。」
呆れ気味の烏間先生を意にも介さず白衣を翻す御影先生、飄々とした主治医との初対面を終え目につかぬようにVIPルームに通され諸々の検査をしたのが記憶に新しい。
「まぁなんだ…
そう、白利の身体検査において検査を担当したのは全て御影先生だったのだ。
自身の身体が特殊なのは重々承知だし、隠匿しなければならないのもわかる、だが分野の違うであろう機械を淡々と操作していく様は只者ではないことを感じさせる。
(烏間先生が信頼する人物か、少なくとも防衛省に深く関わっている人物……烏間先生と古くからの付き合いってこともあるか?)
主治医の正体について頭を捻らせていると、仰々しい扉のノック音が響く。
『少年、起きてるかい?』
(暗殺旅行での一件を含めて俺の現状を伝えて良い地位…殺せんせーのことを知ってる可能性もあるか?)
『お〜い、朝だぞ〜夏休みだからって寝坊助は良くないぞ〜』
(烏間先生から信頼されていて殺せんせーの存在を知っている医者…?いや、そんなわけない…何か別の顔が…)
『しょうね〜ん?………何かあったか?いや、意識が落ちるような事はないと烏間も言っていたし処置もしてない。………あ〜いや、そうか〜少年も男の子だもんな〜』
考え込んで声が届いてない白利と何か別の考えを馳せる御影先生、致命的に噛み合わない双方の扉を開いたのは後者だった。
「忙しい中失礼するよ少年!大丈夫だ、私は
「うおぉっ!?御影先生!?」
「…?なんだ、《自主規制》してなかったか。」
「何言ってんだアンタ!?」
朝一顔を合わせて早々にド下ネタを放った御影先生にいつもの調子でツッコんでしまう。
『手取り足取り指導する気だったんだけどな』と続ける
「………ゔゔん!さっきの発言は聞かなかったことにして…ノックして入って来てくださいよ。」
「ちゃんと声もかけたしノックもしたよ?ただ少年から返答がなかったから《自主規制》してるのかなって思って、色々溜まってるだろうしね?」
「ノックに反応しなかったのは俺のせいですけど、後半の思考になるのはおかしいでしょう!?しかも《自主規制》してたとして、それがわかってて入って来たんですか!?」
「え、うん。」
「………」
ビッチ先生と同等クラスのヤベー奴の出現に絶句してしまう。
いや、ビッチ先生は彼女の暗殺方法から来るモノと割り切れなくもない、だが御影先生はナチュラルセクハラ思考&セクハラ発言をしてくるもっとヤベー奴かもしれない。
「少年?スマホを取り出してどうしたんだい?」
「烏間先生にSOSを。」
「ちょちょちょ!?待ってくれ少年、誰にでもするわけじゃないんだ!少年だからするんだよ!?」
「もっとダメだよ!!?助けて〜!烏間先生〜!!」
自身の主治医が犯罪者予備軍であることに震え烏間先生に救いを求めようともがくことしばらく、結局救いを呼ぶ事はせず息を切らしながら御影先生と向かい合っていた。
「はぁ…はぁ…それ以上近づかないで下さい御影さん……」
「先生から格落ちした!?ごめんってしょうね〜ん、堅苦しいのもアレだから気を緩めたかっただけなんだよ〜!君くらいの歳だと下ネタとか好きでしょ〜?」
「だいぶ人によるでしょう…!?」
「そっか……私なりに水着グラビアとかを病室に置いといたんだけどダメだったかぁ…ページカピカピじゃなかったもんね…」
「毎朝来るたびにグラビア雑誌開いてたのそんな理由なのかよ…てっきりソッチの趣味かと…」
「女だってデカい乳は好きなんだよ少年、特に私はぺったんこだからね。憧れというモノが……もしかして、少年は貧乳派かい?いや〜配慮が足りなくてごめんね、今度はそっちに変えておくよ!」
「………」
『配慮が無いのはそっちの頭だろ』という言葉をなんとか飲み込む。
諸々の発言から白利の中でいよいよ敬意の無いビッチ先生くらいの地位まで落ちた御影先生を睨みつつ、その手に持たれたファイルに視線を移した。
「……それで、本題はなんですか?」
「ん?あぁ、今までの検査の結果が出たんだ。時間がかかってしまってすまなかったね、1人で全部やるとなるとね?」
「……尊敬できるはずなのに、素直にできないな。」
「アッハハ…ごめんって…それじゃ、検査結果を言ってくね。
《まず少年の細胞について》
今までの健康検査等で引っかからなかったのを聞いていたが、今回詳しく調べてみると一般人の細胞と大差ない至って普通の状態だったよ。
過去とこの前の旅行で受けた仕打ちを聞いたが…細胞に変化無し、普通に病院の検査を受けられると思うね。
《次に少年の肉体の変化について》
南雲修に薬を投与された後、少年は超生物のような高速移動や鞭のような軟化をしたそうだね?
一言で表すなら『人間の骨格と筋肉を持った鞭』ってところかな。
鞭のようにしなやかだけど、筋肉と骨を持つおかげで人間のように立って稼働することができるのだろう。
この現象についてだが、その力を使おうという『意志』によって分泌された物質が骨や筋肉の軟化を誘発し、軟化からの硬化を行うことで高速移動を実現……してるのだと思う。
あやふやですまないけど、到底現代医学で証明できないんだよ。
幼少期から薬を投与され続けて普通の肉体を保ってるのも、本来はおかしいと言わざるを得ないんだ。
《別途で少年の髪が発光したことについて&傷の再生について》
これは烏間から聞いた話だが…正直これが1番わけがわからない。
髪を数本もらって検査したが、結果は普通。
恐らくは前述の分泌された物質の量によって起こされている変化だってのが今の私の考えかな。
そして銃撃された腹部については、弾丸はそのまま突き抜けたみたいだね。
烏間から聞かされた箇所を何度か調べをさせてもらったけど、銃撃を受けたと思わしき箇所には傷は無し、内臓系も同様だった。
本当に銃撃を受けたのか疑わしいレベルだ、それほどまで完璧に再生されたんだろうね。
この再生を誘発したのも、前述の物質に起因するもの…だと思われる。
……それで、私的にはコレが1番重要な要素だね。
《南雲修の手によって少年に投与された薬について》
薬の出所についてだが…私の研究室から持ち出された物、劇薬ゆえに厳重に管理していたが鍵ごと破壊されて持ち出されていた。
……いや、これは言い訳だな。
話を戻して問題なのは劇薬の影響ではなく解毒方法の方、少年の学友である速水凛香ちゃんが解毒薬を飲ませたそうだが……はっきり言っておくよ、あの薬の解毒薬なんて研究室には無かったんだ。
速水凛香ちゃんが飲ませたのは恐らく純水…ただ水だ。
つまるところ君は自力で解毒したことになる、それは……本来あり得ない。
あの致死量の薬を投与されて…生きていられるわけがないんだ。
……すまない、主治医である私が患者を不安にさせるのはダメだね。
解毒について不思議に思ってしまっただけだ、君の体内に毒素は残ってない、そこは安心してほしい。」
「なんと…言うか……俺って、形が人間なだけの化け物にみたいになってるんですね。」
御影先生から告げられた検査結果を聞いて最初に出て来た言葉はそれだった。
見て見ぬふりをしていた現実を突きつけられ無意識に手を握り込むが、御影先生は宥めるように首を横に振った。
「いいや、少年は確かに人間だ。データも私の目も、それを証明している。……
「………はぁ、スリーサイズとかは遠慮しときます。……親父の薬の出所は御影さんの研究室なんですよね?御影さんと親父の関係性とか…御影さん自身のことについて聞かせてください。」
御影先生が検査結果を告げていく中で気になった『薬の出所は研究室』という発言。
なぜ親父は御影先生の研究室を知っていたのか、烏間先生から信頼されている御影先生は何者なのか、そのことについて聞いてみると少し躊躇った表情を浮かべた後に口を開いた。
「……そうだね、そろそろ言うべきかな。まず私の正体から、表向きはこの病院の医者だけど実態は防衛省に属する裏の人間、そこまではわかってるんじゃないかな?」
「防衛省の抱える病院で烏間先生から信頼されてるってことは、まぁそういうことかな…と。」
「加えて言うなら少年達の担任『殺せんせー』についても知ってるよ。そんな国家機密まで知らされてる裏の人間…私はね、元暗殺者なんだ。」
「元…暗殺者…!」
思わず身体が強張る。
飄々としていてセクハラ発言をしてくる主治医の正体が元暗殺者、その事実と共に目の前の人間が纏う雰囲気が変わったような気がした。
「小さい頃、両親と海外に行った時に犯罪組織に攫われた上に両親も殺されてね、もうダメか〜って思った時に助けてくれた…いや、依頼でトップを殺しに来たのがロヴロって人だったんだ。」
「ッロヴロさん!それじゃあ、御影さんはその後ロヴロさんに拾われて?」
「あぁそっか、君達を指導したことがあったんだっけ。そ、師匠に拾われて暗殺者として活動してたんだけど…まぁ色々あって引退した後裏の人間として防衛省で働いてるってワ〜ケ。」
「身分を保証する代わりに裏の仕事をさせられる…みたいな感じか。」
前に烏間先生やロヴロさんから暗殺者について聞いたことがあるが、日本人の暗殺者は極端に少ないらしい。
『平和な国で暗殺者に堕ちることはない』という理由らしいが、御影先生は日本の外で起きてしまった事象のようだ。
「私の身の上話はここまでにして、私と南雲修の関係性についてだったね。……南雲修はね…防衛省の裏、さらにその深淵の存在なんだ。」
「…………ッ」
「空挺団の頃から目立っていた異常性に目をつけた上層部の人間が、完璧な使い捨ての駒として抱えていたんだよ。コレを知らされていたのは私を含めごく一部、烏間が知ったのは少年達が旅行から帰って来た辺りじゃないかな。」
「………汚いですね。」
「そうだね…汚いんだよ、大人は。烏間に知らせてなかったのも、絶対に反対されるからだろうしね。」
南雲が防衛省に最初から潜んでいた、その事実にもはや何も言う気力が湧いてこない。
鷹岡に連れられてE組に来た時も、暗殺旅行の時も全て筒抜けだったのだ。
拳を握り俯き伏せていると、御影先生はベッドの淵に腰を下ろすと白利の頭を抱き寄せそのままゆっくりと撫で始める。
「少年、その怒りを飲み込んではダメだよ。君はその怒りをぶつける権利があるし、防衛省はその怒りを受け止める責任がある。」
「…御影さん。」
「言いにくいなら、私や烏間を通してもらって構わない。少年の代わりに、汚い大人達へその怒りをぶつけてやろう。……君はまだ子供だ、もう少し自分の感情に素直になっても良いんだよ。」
身体に流れ込んでくる御影先生の温もりと言葉に、揺らいでいた心中が落ち着きを取り戻していく。
確かに防衛省について怒りはある、だが…
「俺は…充分です。防衛省の闇については言いたいことはありますけど、その闇のおかげで親父に勝ち逃げさせず、この手で終わらせることができたんです。だから……良いんですよ。」
「少年……君は大人すぎる。…いや、大人にならざるを得なかったんだね。汚い闇を怒って良いんだ、理不尽な現実に嘆いて良いんだ、それなのに君は……」
「御影さん、俺は大丈夫ですから。………それと、もう一つ聞きたいことが増えました。」
「なんだい?言ってみてくれ。」
「暗殺者時代の御影さんの暗殺方法を聞かせてもらいたいです。」
語っておきながら予想外だったのか御影先生は目を見開いた後、口角を上げて笑い声を上げた。
「……アッハハハ!少年は好奇心旺盛、いや勤勉とすら呼べるかな?過去の復讐よりも今の暗殺かぁ、これは少し予想外だったな。わかった、ちょっと準備してくるから少年はこのまま待っててくれ。」
「…?わかりました…?」
背中をバシバシと叩いて部屋を去っていく御影先生を見送って数分後、適当にグラビア雑誌を読んでいると扉がノックされた。
扉の向こうから声はしないが、この部屋自体訪れるのが烏間先生か御影先生だけなので『どうぞ』と声を張る。
「烏間先生、どうも。」
「………」
「烏間先生?」
扉から姿を現したのは見慣れたスーツ姿の烏間先生、軽く挨拶をするが烏間先生は無言のままこちらへと歩み寄り、
「……ガッ!?」
「………」
白利の首を掴んだ。
ベッドへと押し付けられ首が絞められる苦痛と困惑が脳内を支配する。
『なぜ烏間先生がこんなことを?』という思考が脳埋め尽くしながらも、なんとか逃れようとする肉体が無意識に烏間先生の腹部に蹴りを放つ。
「………!」
素早く飛び退かれ当たることはなかったがなんとか拘束からは流れ、息を整えながら烏間先生を睨む。
先ほどは突然のことで混乱してしまったが烏間先生がこんなことをするはずがない、つまり目の前にいるのは偽者であろうことはわかる。
だが、だとすると奴は何者なのか。
殺せんせーを暗殺するために自身を攫いに来た暗殺者?
だとしたらなぜ自分なのか、わざわざ大病院なんて人の多い場所でするリスクの高さをわかっていないわけではないだろう。
なにより、そんな暗殺者を烏間先生が雇うとは到底思えない。
必死に思考を巡らせていると、突如として烏間先生の偽者の顔にピシッと一筋の
「さて、身をもってわかって貰えたんじゃないかな
「……え?」
やがて顔の亀裂は全身へと伝わり、先ほどまで聞いていた声が響いた途端
「じゃじゃ〜ん!これが私の現役時代の暗殺方法、殺し屋『ミラーフェイス』の殺し方だよ。」
「ミラーフェイス…変装…じゃ、ないですよね…?」
「そうだね、変装のさらに上のモノって感じかな?私には道具も衣装も必要ない、ただこの身一つで数多の人間に成ることができる。言葉の通り、生きた鏡だよ。」
その場でくるりと回ってみせる御影先生、確かにそこには烏間先生が立っていたはずなのに気づけば御影先生に
まさしくその身一つで違和感なく烏間先生に化けて見せたのだ。
「それは…一体どうなって…?」
「う〜〜ん、本来は企業秘密だけど…少年だけの特別だよ?私のこの技はね、自分の纏う雰囲気を相手の良く知る人物へと変えてるだけなんだ。人間の脳って結構いい加減でね、文章でちょっと文字が入れ替わってても脳が勝手に補完して違和感なく読めちゃったりするだろう?それを人単位で起こしてるってこと。」
「人単位って…それじゃあさっきの俺は、生身で入って来た御影さんを烏間先生だと脳が勝手に補完して誤認してたってことですか?」
「そゆこと、実際は烏間の雰囲気とか動き方をトレースしてたってことさ。今回は首を絞めただけだけど本来ならナイフを一突きで終わりだよ。さてここで少年に問題!この技には弱点があります、それはなんでしょう?配当100点!」
「えっ」
唐突に出された御影先生からの問題に、慌てて思考を切り替えて先ほどの情景を浮かばせる。
見知った顔に化けて懐に潜り込みナイフで一突き、シンプルながら恐ろしい暗殺方法だが…
「弱点は、喋れないこと…ですかね?」
烏間先生の姿で入って来た時の違和感、あの時一向に口を開こうとしない烏間先生に白利は確かな違和感を抱いた。
「そうだね、この技は相手の脳を誤認させるだけの技。声は私のままだから、喋ると一気に誤認が解けちゃうんだよね。50点獲得!」
「50点だけですか…だとすると他の弱点は…」
「さっき私の言ったこと思い出してみて、そこにヒントがあるはずだよ?」
「………」
さらに思考を巡らせる。
この技の説明の時、御影先生はなんと言っていた?
『雰囲気を相手の良く知る人物へと変えている』
「……相手が知らない人物には化けられない?」
「あ〜惜しい!それもあるけど正しくは『私を視界に入れてる人によって異なること』なんだ。私の暗殺方法は相手の親しい人だと誤認させて近づくこと、だけど親しい人…例えば
「……あ、そっか当然周りの人も影響を受けるし、脳を誤認させてるだけなんだからその『誤認させる記録』が無ければ前提から崩れるのか。」
「うんうん、飲み込みが早いね。すぐさま受け入れられる思考の柔軟性は君の同年代でも得難いものだよ少年。」
大満足そうな様子で頷いた御影先生はベッド横に置かれていた椅子に腰を下ろすと、紫色の瞳で白利の顔をジッと見つめる。
「さ〜てと、あと私から少年に伝えておくことは……ひとまず君の入院は終わりってことかな。これからも経過観察を続けつつコッチに足を運んでもらうことになるけど、残りの夏休みは自宅で自由に過ごしてもらって構わない。」
「………わかりました。」
「そんな顔するな少年。これから先で解決作が見つかるよう私も模索していくし、必ずしも最悪が起こるとは限らない。だから……決して悲観的になってはいけないよ。夏祭りにでも行って気分転換したらどうかな?」
夏祭り、速水と約束していた大切な日。
「そう…ですね、夏祭り行ってみようと思います。」
「うん、それが良い。……しかし、妙に表情が柔らかくなったね?もしかして彼女…好きな子と行く約束でもしてたかい!?かーっ青いねぇ!!相手は?クラスメイト?速水凛香ちゃんだったりする!?」
「全部台無しだよ!!」
殺せんせーとビッチ先生を混ぜたような妙に鋭いところがあるセクハラ主治医に叫びながら、『これからコレと付き合って行くのか…』という呆れにも似た感情を抱きながら入院生活に幕が下ろされたのだった。
ご覧いただきありがとうございました!
【月乃白利の秘密】
烏間先生に御影先生のことについて苦言を呈するか迷っている。