学園都市の決闘者   作:逆襲

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4つ買って ハチ公、メカ、メカ、青魔道具でした...
ハチ公はドキ強発表日に組んでたので実質2ダブり...


ユウカ、ドキドキする。

既に夜の帳が降りた頃。

ミレニアムの一角にある部屋の電気がまた一つ消える。

 

「ふぁああ……」

 

思わずあくびが漏れる。

今日もあれこれと立て込んで、帰る時間は随分と遅くなってしまった。明日が休日でなければ、今ごろもっと気が重かったに違いない。

 

壁にかかった無機質な時計へと視線を向ける。

部屋の明かりは落ちていたが、差し込む月明かりのおかげで、針の位置だけはどうにか判別できた。

 

時刻は、すでに22時を回っている。

ミレニアムの建物内も、研究室や整備室を除けば、ほとんどが消灯していた。新素材開発部やエンジニア部の一部がまだ残っているのだろう、とぼんやり考える。

 

ふと、スマホを開く。

溜まっていた通知を順に流し見ていくと——

 

「あ」

 

その中の一件に、思わず指が止まった。

 

-----------------------------

 

<ユウカ、明日って何か予定はある?

 

-----------------------------

 

先生からのモモトークだった。

 

それを見た瞬間、歩みが止まる。

 

いつもなら、自分から誘うのにも一苦労で、右往左往してしまうくせに。

先生の方からこうして連絡してくるのは、決して珍しくはないにせよ、やはり少しだけ意外だった。(領収証の整理のような用件ならともかく)

 

すぐさまロックを解除してモモトークを開く。

 

-----------------------------

 

明日は特には予定は無いです>

 

何か用がありましたか?>

 

-----------------------------

 

送信する文面に動揺が出ないよう、できるだけ平静を装って打ち込む。

指先だけが、わずかに速く動いていた。

 

送った直後、すぐに既読が付き——間を置かずに返信が返ってくる。

 

-----------------------------

 

<良いものが手に入ったんだ

 

<良かったら、明日シャーレに来れる?

 

-----------------------------

 

良いもの、とは何だろうか。

少しだけ気になったが、それ以上に、先生の方からこうして誘ってくれたことが素直に嬉しかった。

 

-----------------------------

 

はい。わかりました。>

 

何時頃にお伺いすれば良いですか?>

 

<私は一日中シャーレにいるから、ユウカの都合のいい時間で良いよ。

 

-----------------------------

 

その一文を見た瞬間、ふっと頬が緩む。

 

(……そうと決まったら、早く帰らなきゃ)

 

そうして再びユウカは歩き出す。

さっきまで重かった足取りが、いつの間にか軽くなっていた。

 

 

その日は思うように眠ることができなかった。

 

 

 

 

 

 

次の日

 

幸い寝坊はせず、いつも通りの時刻に目を覚ました。

 

--------------------------

 

今からそちらに向かいますね>

 

<了解!

 

<車に気を付けてね

 

--------------------------

 

短いやり取りを終え、スマホを閉じる。

 

いつもの制服ではなく、私服に袖を通し、寮の扉を開ける。

休日のミレニアムの通りは、相変わらず人で賑わっていた。

 

そんな中を抜けて、いつものシャーレへと続く道を進む。

足取りはどこか弾んでいて、気が付けばあっという間にシャーレの建物の前へと辿り着いていた。

 

 

 

 

 

 

到着したことをモモトークで伝えると、「休憩室にいるから来て」とすぐに返信が返ってくる。

ユウカはいつものエレベーターに乗り、当番のときとは違う方向へと足を向けた。

 

休憩室の前まで来ると、すでに中の明かりが点いているのが分かる。

軽くノックをすると、

 

「あ、入っていいよ~」

 

中から気の抜けたような声が返ってきた。

 

ユウカはドアノブを回し、扉を開ける。

 

「おはようございます、先生」

 

「おはよう、ユウカ……あ、それって前に買ってた服?似合ってるよ」

 

柔らかく微笑みながら、何気ない調子で言う。

 

「あっ……ありがとうございます……」

 

思わず言葉が少しだけ詰まる。

 

(こういうところは妙に鋭いのに……どうして肝心なところは鈍いのかしら)

 

内心でそんなことを思いながらも、褒められたこと自体は素直に嬉しくて、ほんの少しだけ視線を逸らした。

 

 

「それで……昨日言っていた“良いもの”って何ですか?」

 

ユウカは先生の隣に腰を下ろし、そのまま顔を向けて問いかける。

 

「ふっふっふ……実はね、昨日あるものを買えたんだ……!」

 

意味ありげに笑うと、先生は立ち上がり、休憩室の棚を開ける。

中からレジ袋を取り出し、そのままこちらへと持ってきた。

 

「ねぇユウカ。コユキとノアから聞いたんだけど、二人とデュエマしてたんだってね」

 

「へっ……?」

 

思っていたのとはまったく違う話題に、不意を突かれて間の抜けた声が漏れる。

 

「あっ……はい。まぁ、その……成り行きといいますか……」

 

少しだけ言葉を濁しながら答えると、先生は楽しそうに続けた。

 

「どうだった?楽しかった?」

 

「まぁ……楽しくは、ありましたね」

 

少しだけ間を置いて、正直に答える。

楽しんでいた自分がいたのは、否定できなかった。

 

「それは良かった。でも、ユウカってまだデッキ一つしか持ってないよね?」

 

「はい。この前いただいた“力の王道”っていうのしか……」

 

「じゃあさ、新しいデッキも使ってみよう!ってことで——」

 

そう言って、先生はレジ袋の中身を取り出し、ユウカの前に掲げる。

 

「『ドキドキ強いデッキ 25の王道』!!」

 

やけにテンションの高い声。

思わず瞬きをしてしまう。

 

「ドキドキ……なんですか、それ?」

 

「25種類のデッキの中から、ランダムで1つ入ってるやつだよ。過去に大会で結果を出してる構築とか、初心者でも使いやすいデッキが揃ってるんだ!」

 

「へぇ……」

 

感心したように頷きながらも、どこか冷静に受け止める。

 

「ってことで!この中からまず1つ選んでみて!それで対戦しよう!」

 

楽しげに袋を差し出してくる先生。

 

「えっ……でも、私そのデッキについてよく分からないのですが……」

 

「大丈夫だよ。解説サイトもあるし、一回やった後にちゃんと教えるからさ!」

 

軽い調子で返され、思わず小さく息をつく。

自分が想像していた“良いもの”とは少し違っていたけれど——それでも、楽しそうにしている先生の表情を見ると、不思議と悪い気はしなかった。

 

二人は袋の中から、それぞれ一つずつ手に取る。

ほぼ同時に封を切り、中身を確認する。

 

「あっ……なるほど、このデッキかぁ」

 

先生は中を見て、納得したように呟いた。

 

ユウカもカードを取り出し、一番上にあった一枚へと視線を落とす。

 

(えっ……何この効果……)

 

思わず目を疑うような内容に、ほんの一瞬だけ思考が止まる。

 

そのとき、スマホから小さく通知音が鳴った。

 

「ユウカ、モモトークに使い方が載ってるサイト送ったから、それでざっくり見てみて」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

短く礼を言い、画面に目を通す。

 

 

 

 

 

 

簡単に目を通し終えた頃、先生は立ち上がり、隣から対面の席へと移動していた。

 

「じゃ、さっそくやろうか!」

 

「はい!」

 

軽く頷き、カードを整える。

 

そして——

 

「「デュエマ!スタート!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

先行 先生 マナ4 シールド5 場:《Q.Q.QX.(キューキュラーキュラックス)

後攻 ユウカ マナ4 シールド5 場:無し

 

 

ツインパクトカード

クリーチャー面

Q.Q.QX.(キューキュラーキュラックス) コスト4 パワー4000 グランセクト 自然

5.S.D(ファイブ・センス・ダウン):このクリーチャーがシールドをブレイクする時、相手はそのシールドのカードを手札に加えるかわりに、自身の山札の上から4枚目の位置に、横向きに刺す。

・相手は、自身の山札の横向きのカードを手札に加えた時、ゲームに負ける。

・相手は、自身の山札を見たり、順番を入れ替えたりできない。

・このクリーチャーがバトルゾーンを離れた時、相手は自身の山札をシャッフルする。

 

呪文側

終葬 5.S.D(ファイブ・センス・ダウン) コスト8 呪文 自然

・相手のクリーチャーを1体選ぶ。相手はそれを、自身の山札の上から4枚目の位置に、横向きに刺す。

・このカードをバトルゾーンに出す。

 

先生 ターン4

 

(見た感じ……あのカードが切り札ね。山札を見られないのは、かなり厄介だわ……)

 

ユウカは盤面の《Q.Q.QX.(キューキュラーキュラックス)》と、自分の手札を交互に見比べながら状況を整理する。

 

すると——

 

「じゃあユウカ!悪いけど、このターンで勝ちに行くよ!」

 

「えっ!?」

 

あまりにも唐突な勝利宣言に、思わず声が上ずる。

 

「4コスト!《特攻の忠剣ハチ公》を召喚!」

 

勢いよく叩きつけられたカードが、軽快に場へと現れる。

 

特攻(ぶっこみ)の忠剣ハチ公 コスト4 パワー4000 フレイム・コマンド/フレイム・モンスター/ハンター 火

・このカードは、4枚より多くデッキに入れることができる。

・スピードアタッカー

・このクリーチャーの攻撃の終わりに、相手とガチンコ・ジャッジする。自分が勝ったら、自分の山札を見る。その中から、《特攻の忠剣ハチ公》を1体、バトルゾーンに出してもよい。その後、山札をシャッフルする。

 

 

「パワー4000の……1ブレイカー?」

 

思わず疑問が口に出る。

あれだけ大きく“勝ちに行く”と宣言しておきながら、出てきたのは一見すると平凡なクリーチャーだった。

 

(これで……勝ちに来る?)

 

違和感が、じわりと広がる。

 

「このカードの恐ろしさ、ちゃんと味わってもらうよ!まずはキュラックスで攻撃!そのシールドを山札の4番目に入れてね」

 

「4番目、ですか」

 

先生に言われるとおりにシールドを4番目に入れる。

 

「これは(シールド)・トリガーは使えない…ってことで合っていますか?」

 

「うん。ユウカはそのカードをドローしたら、負けになるから気を付けてね」

 

(やっぱり...このカードが切り札ね。どうにか除去をしなきゃ)

 

そう思っている最中に続いて先生が動く。

 

「続いてハチ公で攻撃!」

 

迷いのない宣言とともに、一直線に攻撃が通る。

シールドが一枚、静かに割れた。

 

(シールド)・トリガーは無いです」

 

そう言ってカードを手札に加えた、その瞬間――

先生の目が、わずかに細められた。

 

「その時! ハチ公の効果で、ガチンコ・ジャッジをするよ!」

 

「ガ、ガチンコ・ジャッジ?」

 

聞きなれない単語に、ユウカは思わず首をかしげる。

 

「お互いに山札の上をめくって、コストが大きい方が勝ちになるんだ」

 

「勝ったら、どうなるんです?」

 

「ユウカが勝っても何も無いんだけど…私が勝ったら山札からハチ公をもう一体出せるんだ」

 

「なるほど……デッキに何枚でも入るので、それでハチ公を増やして一気に押し切るということですか」

 

ユウカは納得したようにうなずき、山札の上に手を伸ばす。

 

「でも!勝てなければ意味が無いですよ!」

 

だが、先生はその手を遮るように、静かに続けた。

 

「その前に、《Q.Q.QX.(キューキュラーキュラックス)》の効果について説明しよう」

 

「《Q.Q.QX.(キューキュラーキュラックス)》の……?」

 

さっき見たばかりのカードに視線を落とす。

だが、今はまだ発動していないはずだ。

 

「確か、攻撃したシールドを山札に入れるんじゃ……」

 

「大事なのはこっちだよ」

 

先生は《Q.Q.QX.(キューキュラーキュラックス)》の能力欄を指でなぞる。

 

「『相手は自身の山札を見たり、順番を入れ替えたりできない』。ここ」

 

「……それが、どうしたんですか?」

 

「ガチンコ・ジャッジって、山札の上をめくるよね?」

 

「……?はい」

 

「でも、キュラックスの効果で、ユウカは山札を見たり動かしたりできない」

 

ユウカはもう一度、盤面の《Q.Q.QX.(キューキュラーキュラックス)》を見直した。

確かに、そう書いてある。

 

「……あ」

 

そこでようやく、ユウカの表情が変わる。

 

「めくれないから、ガチンコジャッジができない...?」

 

「ガチンコ・ジャッジができない場合は、数字は0として扱うんだ」

 

その瞬間、ユウカの顔から血の気が引いた。

 

先を想像してしまう。

いや、何なら見えてしまった。

 

「……まさか、(シールド)・トリガーが無いと、このまま終わり……ですか?」

 

恐る恐る問うユウカに、先生はにっこりと笑う。

 

「その通り!続いて2体目のハチ公で攻撃する時!」

 

先生は手札から1枚のカードを場に出す。

 

「《轟く革命 レッドギラゾーン》革命チェンジだ!」

 

 

轟く革命 レッドギラゾーン コスト7 パワー11000 ソニック・コマンド・ドラゴン/革命軍 火

 

・革命チェンジ:自分の水、火または自然のコマンドが攻撃する時、そのクリーチャーと手札にあるこのクリーチャーを入れ替えてもよい

・W・ブレイカー

・自分のコマンドはすべて「スピードアタッカー」と「マッハファイター」を持ち、ブロックされない。

・ファイナル革命:このクリーチャーが「革命チェンジ」によって出た時、そのターン中に他の「ファイナル革命」をまだ使っていなければ、自分の他のクリーチャーをすべてアンタップする。

 

 

「レッドギラゾーン!?」

 

ユウカの知っている“レッドゾーン”と似た姿。

だが、その登場の仕方も、場に与える圧もまるで別物だった。

 

「ユウカ、革命チェンジとかファイナル革命は知ってる?」

 

「あっ、はい。アリスちゃんに貸してもらったカードに、《ドギラゴン剣》というのがありました」

 

「じゃあ説明は省略するね! レッドギラゾーンのファイナル革命、発動! 自分の他のクリーチャーをすべてアンタップする!」

 

その一言で、すでに攻撃を終えていたクリーチャーたちが一斉に起き上がる。

 

「えっ!?」

 

一瞬、思考が追いつかない。

 

「そのままW・ブレイクだ!」

 

容赦のない追撃。

シールドに手を伸ばすユウカの指先が、わずかに震える。

 

(ここで(シールド)・トリガーが無かったら……終わる……!)

 

キュラックスの攻撃が通れば、残り1枚も山札に入れられて敗北は確定する。

祈るような気持ちでカードを手に取り、その効果へと視線を落とす。

 

(……ん?)

 

そのテキストの中に、見覚えのある一文があった。

胸の奥から、一気に熱がこみ上げる。

 

「シ、(シールド)・トリガー発動!《切札勝太&カツキング-熱血の物語-》!」

 

 

切札勝太&カツキング-熱血の物語- コスト5 パワー5000+ アウトレイジ・ドラゴン/ヒューマノイド 火・水・自然

マッハファイター

・このクリーチャーが出た時、自分の山札の上から5枚を見る。そのうちの1枚を相手に見せてから手札に加え、残りを好きな順で山札の下に置く。こうして見せたカードが火または自然なら、クリーチャーを1体選び、持ち主の手札に戻してもよい。

革命2:自分のシールドが2つ以下なら、自分のシールドゾーンから手札に加えるこのクリーチャーに「(シールド)・トリガー」を与える。

革命0:自分のシールドが1つもなければ、このクリーチャーのパワーを+10000し、「スピードアタッカー」と「T・ブレイカー」を与える。

 

 

「効果で山札を……あっ!」

 

山札へ伸ばしかけた手が、ぴたりと止まる。

 

「そう、キュラックスの効果で山札は見れないよ」

 

「そんな……!」

 

希望だったはずのカードは、ただのパワー5000のドラゴンへと変わる。

ブロッカーもない。追撃を防ぐ術は何も無かった。

 

「キュラックスで最後のシールドを攻撃!」

 

容赦なく振り下ろされる一撃。

最後のシールドが砕け、ユウカはそれを山札の4枚目に差し込む。

 

もう、できることは残っていない。

そう思いながら——最後に、手札へと視線を落とす。

 

「あ……!」

 

一枚のカードが、目に留まる。

 

諦めかけていた心に、昨日のアリスの声がよみがえる。

 

『諦めたら、そこで終わりなんです!』

 

その瞬間、ユウカの瞳に力が戻る。

 

 

 

 

「ハチ公でダイレクトアタック!」

 

最後の一撃がユウカに届く、その瞬間。

ユウカはカードを1枚見せた。

 

「鬼エンドの効果で、《百鬼の邪王門》を発動します!」

 

 

百鬼の邪王門 コスト6 パワー11000 呪文 火・闇

<鬼エンド>クリーチャーが攻撃する時、シールドが1つもないプレイヤーがいて、自分のマナゾーンに闇のカードと火のカードがそれぞれ1枚以上あれば、この呪文を自分の手札からコストを支払わずに唱えてもよい。

・自分の山札の上から4枚を墓地に置く。こうして墓地に置いたカードの中から、闇または火のコスト6以下の進化ではないクリーチャーを1体選び、出す。その後、相手のクリーチャーを1体選んでもよい。その2体をバトルさせる。

 

「効果で山札の上から4枚を墓地に置きます!」

 

一気にめくられる4枚。

同時に、横向きに刺さっていたカードが、山札の上へと現れる。

 

(ハチ公を止めるだけじゃ足りない……!キュラックスも処理しないと負ける!)

 

墓地へ落ちた4枚に視線を走らせる。

そして——迷いなく、1枚を掴み取った。

 

「《龍素記号wDサイクルペディア》をバトルゾーンへ!」

 

 

龍素記号wDサイクルペディア コスト5 パワー5000 クリスタル・コマンド・ドラゴン/ダークロード 水・闇

・ブロッカー

・ジャストダイバー(次の自分のターンの始めまでこのクリーチャーは相手に選ばれず攻撃されない)

・このクリーチャーが出た時、コスト4以下の呪文を1枚、自分の墓地からコストを支払わずに唱えてもよい。

・各ターンに一度、自分の手札から呪文を唱えた時、その呪文を自分の墓地からもう一度、コストを支払わずに唱えてもよい。

・自分の墓地から呪文を唱えた後、墓地のかわりに山札の下に置く。

 

 

カードが叩きつけられ、場に現れる。

 

「《百鬼の邪王門》の効果で、今攻撃しているハチ公とバトルです!」

 

「中々やるね……!」

 

先生が感心したように目を細める一方で、ユウカはすでに次の一手へと意識を移していた。

墓地の中には、邪王門の効果で落ちたばかりのカードがある。そこにあるカードを忘れてはいなかった。

 

「サイクルペディアの効果で、墓地から《深淵の逆転劇》を使用します!」

 

 

深淵の逆転劇 コスト3 呪文 闇

・逆転撃③(今回は使用しないため割愛)

・相手のクリーチャーを1体選ぶ。このターン、そのクリーチャーのパワーを-∞する。(パワー0以下のクリーチャーは破壊される)

 

 

「《Q.Q.QX.(キューキュラーキュラックス)》のパワーをマイナス無限!破壊です!」

 

静かに告げるその声には、もう迷いはない。

たった一枚の呪文が、盤面の流れを根こそぎひっくり返していく。

 

これで、先生の場には攻撃できるクリーチャーがいなくなった。

 

「キュラックスが離れたから、デッキをシャッフルしてね。……正直、想像以上だよ。よく耐えたね」

 

先生は少し驚いたような顔で、ユウカを見た。

 

「ここから逆転できるかな?ターンエンドだよ」

 

 

 

ユウカ ターン4

 

「ドロー!」

 

カードを引く。

耐えきったとはいえ、シールド差はまだ大きい。ここから逆転するには、相手の盤面を崩しながら一気に押し切るしかない。

 

けれど、不思議と迷いはなかった。

今の自分なら、どう動けばいいかが見えている。出すべきカードも、つなぐべきカードも、もう分かっていた。

 

「《切札勝太&カツキング-熱血の物語-》を召喚です!」

 

キュラックスがいなくなった今、カツキングを縛るものはない。

ユウカはそのままカードを見つめ、次の行動を重ねていく。

 

「能力で山札の上から5枚を見て……《百鬼の邪王門》を回収します!さらに火のカードを回収したため、レッドギラゾーンを手札に戻します!」

 

これで、先生の場からはクリーチャーがいなくなった。

盤面は一度まっさらに戻る。だが、それで終わるつもりはない。

 

「そして、カツキングで攻撃する時に、《百鬼の邪王門》と、《時の法皇 ミラダンテ(トゥエルブ)》を使用します!」

 

 

時の法皇 ミラダンテ(トゥエルブ) コスト8 パワー12000 エンジェル・コマンド・ドラゴン/革命軍/ダママ団 光・水

・T・ブレイカー

・革命チェンジ:光または水のコスト5以上のドラゴン

・このクリーチャーが出た時、手札から光のコスト5以下の呪文を唱えてもよい。唱えたかった場合はカードを1枚引く。

・ファイナル革命:このクリーチャーが「革命チェンジ」によって出た時、そのターン中に他の「ファイナル革命」をまだ使っていなければ、次の自分のターンのはじめまで、相手はコスト7以下のクリーチャーを召喚できない。

 

 

「光の呪文が無いので唱えることはできませんが……これで、先生は次のターン、コスト7以下のクリーチャーを召喚できません!」

 

言い切る声に、もう揺らぎはない。

さらにユウカは続ける。

 

「そして、《百鬼の邪王門》の効果で——」

 

山札の上から4枚を墓地に置く。

その中から1枚を選び、場へと叩きつけた。

 

「《一王二命三眼槍(バラドヴィナシューラ)》をバトルゾーンへ!」

 

 

一王二命三眼槍(バラドヴィナシューラ) コスト5 パワー6000 デモニオ/鬼札王国 火・闇

・自分がゲームに負ける時、これが相手のターンで、自分のマナゾーンに闇のカードと火のカードがそれぞれ1枚以上あれば、かわりに自分の手札にあるこのカードを相手に見せ、山札の下に置いてもよい。

・スピードアタッカー

・W・ブレイカー

<鬼エンド>このクリーチャーが出た時、シールドが1つもないプレイヤーがいれば、自分の山札の一番下のカードを墓地に置く。それがコスト5以下のクリーチャーなら、出してもよい。

 

 

「鬼エンドの効果で山札の下を墓地に…」

 

山札の下を墓地へ送る。

だが、そこにあったのはクリーチャーではなく、呪文だった。

 

一瞬だけ、ユウカの指先が止まる。

けれど、そこで終わりではない。

 

「効果は失敗……ですが、サイクルペディアの効果を使って墓地からもう一度《百鬼の邪王門》を唱えます!」

 

一度止まりかけた流れが、もう一度、はっきりと動き出した。

 

「《百鬼の邪王門》の効果で……墓地から2体目の《龍素記号wDサイクルペディア》をバトルゾーンへ出します!」

 

圧倒的な展開力と制圧力が盤面を支配する。

だが、先生は相変わらずニコニコとしたまま、少しも動じていない。

その表情が焦りを加速させる。

 

「ミラダンテでシールドを攻撃です!」

 

宣言と同時に、先生はシールドを一枚ずつ手札へ加えていく。

そのうちの一枚を見た瞬間、ふっと表情が変わった。

 

(シールド)・トリガー、《逆転の剣(カウンターアタック)スカイソード》!」

 

逆転の剣(カウンターアタック)スカイソード コスト10 パワー5000 ビーストフォーク 自然

・このクリーチャーが出た時、相手のクリーチャーを1体選び、持ち主のマナゾーンに置いてもよい。その後、自分のマナゾーンにあるカードの枚数よりコストが小さいクリーチャーを1体、自分のマナゾーンから出してもよい。

 

「スカイソードの効果でカツキングをマナゾーンへ。そして、そのまま自分のマナから《Q.Q.QX.(キューキュラーキュラックス)》をバトルゾーンに出すよ!」

 

「っ……!」

 

ユウカは一瞬だけ息を呑む。

カツキングがいなくなったとはいえ、まだこちらには攻撃できるクリーチャーが3体残っている。

 

(まだよ……! まだ押し切れるはず!)

 

自分にそう言い聞かせるようにして、ユウカは次のカードへと手を伸ばした。

 

「続いて、ジャオウガでシールドを攻撃します!」

 

最後の二枚のシールドが、音を立てて砕け散る。

 

(1体止められても、まだ2体いる……! お願い……!)

 

固唾を呑み、ユウカは次の展開を見守る。

 

(シールド)・トリガー発動!《ストーム・ハイパーXX(ダブルクロス)》!」

 

ストーム・ハイパーXX(ダブルクロス)コスト10 パワー0000+ アーマード・ドラゴン/フレイム・コマンド 火

(シールド)・トリガー

・ハイパーエナジー(今回は使用しないため割愛)

・パワード・ブレイカー(パワー6000につきシールドをさらに1枚ブレイク)

・コストが異なる自分のクリーチャー1体につき、このクリーチャーのパワーを+3000する。

・このクリーチャーが出た時、このクリーチャーよりパワーが小さい相手のクリーチャーをすべて破壊する。

 

「このクリーチャーは場にいるコストの違うクリーチャーの数だけパワーが上がるんだ。そして今、場には4・10・11の三体がいるよね?」

 

「は、はい。という事はパワーは9000ですね…」

 

「そして出た時に、そのパワーの相手クリーチャーを全て破壊できるんだ!」

 

「ええっ!?」

 

ユウカの声が思わず上ずる。

 

平気だと思っていた盤面が、たった一枚のカードで一気にひっくり返された。

場に残ったのは、すでに攻撃を終えたミラダンテただ一体。

 

逆転できると思ったのに、まさかの逆転返し。

もう打つ手は無い。

 

「……ターンエンド、です」

 

ユウカは静かにそう告げた。

 

 

先生 ターン5

 

「ドロー!」

 

先生はカードを勢いよく引く。

 

「4コストでハチ公を再び召喚!」

 

そして迷いなく指をカードへ置いた。

 

「《ストーム・ハイパーXX(ダブルクロス)》で、ダイレクトアタック!」

 

もう手札には、敗北を回避する手段は無い。

そしてそのまま、最後の一撃がユウカを貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、楽しかった! やっぱりデュエマって、逆転があるから面白いよね~」

 

テーブルの上のカードを手際よくまとめながら、先生は上機嫌に言った。

 

「ユウカもすごく楽しそうだったし……その顔が見られて、こっちも嬉しかったよ」

 

「えっ……」

 

途端に、ユウカの頬が一気に熱を持つ。

 

「さっきのターンのユウカ、すごく真剣で、すごく楽しそうだったからさ。思わず私まで熱くなっちゃったよ」

 

先生はいつもの柔らかな笑みを浮かべたまま、そう言った。

 

 

先生の楽しそうな顔が見たくて始めたはずのカードゲーム。

けれど、いつの間にか自分自身も、同じ熱に巻き込まれていたらしい。

 

「そ、そう……でしたか」

 

かろうじて絞り出した声は、どこか小さかった。

 

「その……、もしよろしければ…」

 

どこを見ているのか自分でも分からないまま、ユウカが言葉を口にしようとした瞬間だった。

 

「失礼しまーす!!」

 

「失礼します♪」

 

「先生、来たよー!」

 

休憩室のドアが勢いよく開く。

そこにいたのは、ノアとコユキ、そしてゲーム開発部の面々だった。

 

「えっ……?」

 

思わず固まるユウカをよそに、先生は何事もなかったかのように手を振る。

 

「ちょうど呼んだところだったんだ。せっかくだから、みんなでやろうかなって」

 

ユウカは一瞬で状況を理解し、顔を赤くしたまま固まる。

そんな様子を見たノアが、ふわりと首をかしげた。

 

「……あら? ユウカちゃん、少し顔が赤いですね?」

 

「なっ……」

 

ノアが面白そうに覗き込んでくる。

 

「先生と二人で何か……してましたか?」

 

「そ、そんなことないわよ!普通にデュエマをやってただけ!」

 

慌てて否定するユウカ。

だがその声は、明らかに上ずっていた。

 

「ただ、その……ちょっと熱くなっていただけというか……!」

 

「ふふっ」

 

ノアはくすりと笑うだけで、それ以上は追及しない。

代わりに、そっと先生の隣へと腰を下ろした。

 

「では、私も混ぜていただきますね」

 

「おー! 私も!私もやる!」

 

「アリスも参加します!」

 

気づけば休憩室は、いつもの静かな空気ではなくなっていた。

カードを広げる音、誰かの笑い声、そして少しだけ慌ただしい会話が重なっていく。

 

先生はそんな様子を見て、楽しそうに笑っていた。

ユウカはほんの少しだけ視線を逸らし、それから小さく息をついた。

 

「……もう、先生ったら」

 

でも、その口元は、確かに少しだけ緩んでいた。

 

 

その日、日が暮れるまでシャーレの休憩室からは楽しそうな声が響いていた。




本日のキーカード

特攻(ぶっこみ)の忠剣ハチ公 コスト4 パワー4000 フレイム・コマンド/フレイム・モンスター/ハンター 火
・このカードは、4枚より多くデッキに入れることができる。
・スピードアタッカー
・このクリーチャーの攻撃の終わりに、相手とガチンコ・ジャッジする。自分が勝ったら、自分の山札を見る。その中から、《特攻の忠剣ハチ公》を1体、バトルゾーンに出してもよい。その後、山札をシャッフルする。


百鬼の邪王門 コスト6 パワー11000 呪文 火・闇
<鬼エンド>クリーチャーが攻撃する時、シールドが1つもないプレイヤーがいて、自分のマナゾーンに闇のカードと火のカードがそれぞれ1枚以上あれば、この呪文を自分の手札からコストを支払わずに唱えてもよい。
・自分の山札の上から4枚を墓地に置く。こうして墓地に置いたカードの中から、闇または火のコスト6以下の進化ではないクリーチャーを1体選び、出す。その後、相手のクリーチャーを1体選んでもよい。その2体をバトルさせる。


「『ドキドキ強いデッキ 25の王道』、キヴォトス各所のエンジェル24で公表発売中です!それに、5月にはそのデッキを強化するカードが入った、『ますます強いパック 25の援軍』も発売予定です!ご予約はお早めに!…………発注しておかなきゃ」
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