ハチ公はドキ強発表日に組んでたので実質2ダブり...
既に夜の帳が降りた頃。
ミレニアムの一角にある部屋の電気がまた一つ消える。
「ふぁああ……」
思わずあくびが漏れる。
今日もあれこれと立て込んで、帰る時間は随分と遅くなってしまった。明日が休日でなければ、今ごろもっと気が重かったに違いない。
壁にかかった無機質な時計へと視線を向ける。
部屋の明かりは落ちていたが、差し込む月明かりのおかげで、針の位置だけはどうにか判別できた。
時刻は、すでに22時を回っている。
ミレニアムの建物内も、研究室や整備室を除けば、ほとんどが消灯していた。新素材開発部やエンジニア部の一部がまだ残っているのだろう、とぼんやり考える。
ふと、スマホを開く。
溜まっていた通知を順に流し見ていくと——
「あ」
その中の一件に、思わず指が止まった。
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<ユウカ、明日って何か予定はある?
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先生からのモモトークだった。
それを見た瞬間、歩みが止まる。
いつもなら、自分から誘うのにも一苦労で、右往左往してしまうくせに。
先生の方からこうして連絡してくるのは、決して珍しくはないにせよ、やはり少しだけ意外だった。(領収証の整理のような用件ならともかく)
すぐさまロックを解除してモモトークを開く。
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明日は特には予定は無いです>
何か用がありましたか?>
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送信する文面に動揺が出ないよう、できるだけ平静を装って打ち込む。
指先だけが、わずかに速く動いていた。
送った直後、すぐに既読が付き——間を置かずに返信が返ってくる。
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<良いものが手に入ったんだ
<良かったら、明日シャーレに来れる?
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良いもの、とは何だろうか。
少しだけ気になったが、それ以上に、先生の方からこうして誘ってくれたことが素直に嬉しかった。
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はい。わかりました。>
何時頃にお伺いすれば良いですか?>
<私は一日中シャーレにいるから、ユウカの都合のいい時間で良いよ。
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その一文を見た瞬間、ふっと頬が緩む。
(……そうと決まったら、早く帰らなきゃ)
そうして再びユウカは歩き出す。
さっきまで重かった足取りが、いつの間にか軽くなっていた。
その日は思うように眠ることができなかった。
次の日
幸い寝坊はせず、いつも通りの時刻に目を覚ました。
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今からそちらに向かいますね>
<了解!
<車に気を付けてね
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短いやり取りを終え、スマホを閉じる。
いつもの制服ではなく、私服に袖を通し、寮の扉を開ける。
休日のミレニアムの通りは、相変わらず人で賑わっていた。
そんな中を抜けて、いつものシャーレへと続く道を進む。
足取りはどこか弾んでいて、気が付けばあっという間にシャーレの建物の前へと辿り着いていた。
到着したことをモモトークで伝えると、「休憩室にいるから来て」とすぐに返信が返ってくる。
ユウカはいつものエレベーターに乗り、当番のときとは違う方向へと足を向けた。
休憩室の前まで来ると、すでに中の明かりが点いているのが分かる。
軽くノックをすると、
「あ、入っていいよ~」
中から気の抜けたような声が返ってきた。
ユウカはドアノブを回し、扉を開ける。
「おはようございます、先生」
「おはよう、ユウカ……あ、それって前に買ってた服?似合ってるよ」
柔らかく微笑みながら、何気ない調子で言う。
「あっ……ありがとうございます……」
思わず言葉が少しだけ詰まる。
(こういうところは妙に鋭いのに……どうして肝心なところは鈍いのかしら)
内心でそんなことを思いながらも、褒められたこと自体は素直に嬉しくて、ほんの少しだけ視線を逸らした。
「それで……昨日言っていた“良いもの”って何ですか?」
ユウカは先生の隣に腰を下ろし、そのまま顔を向けて問いかける。
「ふっふっふ……実はね、昨日あるものを買えたんだ……!」
意味ありげに笑うと、先生は立ち上がり、休憩室の棚を開ける。
中からレジ袋を取り出し、そのままこちらへと持ってきた。
「ねぇユウカ。コユキとノアから聞いたんだけど、二人とデュエマしてたんだってね」
「へっ……?」
思っていたのとはまったく違う話題に、不意を突かれて間の抜けた声が漏れる。
「あっ……はい。まぁ、その……成り行きといいますか……」
少しだけ言葉を濁しながら答えると、先生は楽しそうに続けた。
「どうだった?楽しかった?」
「まぁ……楽しくは、ありましたね」
少しだけ間を置いて、正直に答える。
楽しんでいた自分がいたのは、否定できなかった。
「それは良かった。でも、ユウカってまだデッキ一つしか持ってないよね?」
「はい。この前いただいた“力の王道”っていうのしか……」
「じゃあさ、新しいデッキも使ってみよう!ってことで——」
そう言って、先生はレジ袋の中身を取り出し、ユウカの前に掲げる。
「『ドキドキ強いデッキ 25の王道』!!」
やけにテンションの高い声。
思わず瞬きをしてしまう。
「ドキドキ……なんですか、それ?」
「25種類のデッキの中から、ランダムで1つ入ってるやつだよ。過去に大会で結果を出してる構築とか、初心者でも使いやすいデッキが揃ってるんだ!」
「へぇ……」
感心したように頷きながらも、どこか冷静に受け止める。
「ってことで!この中からまず1つ選んでみて!それで対戦しよう!」
楽しげに袋を差し出してくる先生。
「えっ……でも、私そのデッキについてよく分からないのですが……」
「大丈夫だよ。解説サイトもあるし、一回やった後にちゃんと教えるからさ!」
軽い調子で返され、思わず小さく息をつく。
自分が想像していた“良いもの”とは少し違っていたけれど——それでも、楽しそうにしている先生の表情を見ると、不思議と悪い気はしなかった。
二人は袋の中から、それぞれ一つずつ手に取る。
ほぼ同時に封を切り、中身を確認する。
「あっ……なるほど、このデッキかぁ」
先生は中を見て、納得したように呟いた。
ユウカもカードを取り出し、一番上にあった一枚へと視線を落とす。
(えっ……何この効果……)
思わず目を疑うような内容に、ほんの一瞬だけ思考が止まる。
そのとき、スマホから小さく通知音が鳴った。
「ユウカ、モモトークに使い方が載ってるサイト送ったから、それでざっくり見てみて」
「あ、はい。ありがとうございます」
短く礼を言い、画面に目を通す。
簡単に目を通し終えた頃、先生は立ち上がり、隣から対面の席へと移動していた。
「じゃ、さっそくやろうか!」
「はい!」
軽く頷き、カードを整える。
そして——
「「デュエマ!スタート!!」」
先行 先生 マナ4 シールド5 場:《
後攻 ユウカ マナ4 シールド5 場:無し
ツインパクトカード
クリーチャー面
・
・相手は、自身の山札の横向きのカードを手札に加えた時、ゲームに負ける。
・相手は、自身の山札を見たり、順番を入れ替えたりできない。
・このクリーチャーがバトルゾーンを離れた時、相手は自身の山札をシャッフルする。
呪文側
終葬
・相手のクリーチャーを1体選ぶ。相手はそれを、自身の山札の上から4枚目の位置に、横向きに刺す。
・このカードをバトルゾーンに出す。
先生 ターン4
(見た感じ……あのカードが切り札ね。山札を見られないのは、かなり厄介だわ……)
ユウカは盤面の《
すると——
「じゃあユウカ!悪いけど、このターンで勝ちに行くよ!」
「えっ!?」
あまりにも唐突な勝利宣言に、思わず声が上ずる。
「4コスト!《特攻の忠剣ハチ公》を召喚!」
勢いよく叩きつけられたカードが、軽快に場へと現れる。
・このカードは、4枚より多くデッキに入れることができる。
・スピードアタッカー
・このクリーチャーの攻撃の終わりに、相手とガチンコ・ジャッジする。自分が勝ったら、自分の山札を見る。その中から、《特攻の忠剣ハチ公》を1体、バトルゾーンに出してもよい。その後、山札をシャッフルする。
「パワー4000の……1ブレイカー?」
思わず疑問が口に出る。
あれだけ大きく“勝ちに行く”と宣言しておきながら、出てきたのは一見すると平凡なクリーチャーだった。
(これで……勝ちに来る?)
違和感が、じわりと広がる。
「このカードの恐ろしさ、ちゃんと味わってもらうよ!まずはキュラックスで攻撃!そのシールドを山札の4番目に入れてね」
「4番目、ですか」
先生に言われるとおりにシールドを4番目に入れる。
「これは
「うん。ユウカはそのカードをドローしたら、負けになるから気を付けてね」
(やっぱり...このカードが切り札ね。どうにか除去をしなきゃ)
そう思っている最中に続いて先生が動く。
「続いてハチ公で攻撃!」
迷いのない宣言とともに、一直線に攻撃が通る。
シールドが一枚、静かに割れた。
「
そう言ってカードを手札に加えた、その瞬間――
先生の目が、わずかに細められた。
「その時! ハチ公の効果で、ガチンコ・ジャッジをするよ!」
「ガ、ガチンコ・ジャッジ?」
聞きなれない単語に、ユウカは思わず首をかしげる。
「お互いに山札の上をめくって、コストが大きい方が勝ちになるんだ」
「勝ったら、どうなるんです?」
「ユウカが勝っても何も無いんだけど…私が勝ったら山札からハチ公をもう一体出せるんだ」
「なるほど……デッキに何枚でも入るので、それでハチ公を増やして一気に押し切るということですか」
ユウカは納得したようにうなずき、山札の上に手を伸ばす。
「でも!勝てなければ意味が無いですよ!」
だが、先生はその手を遮るように、静かに続けた。
「その前に、《
「《
さっき見たばかりのカードに視線を落とす。
だが、今はまだ発動していないはずだ。
「確か、攻撃したシールドを山札に入れるんじゃ……」
「大事なのはこっちだよ」
先生は《
「『相手は自身の山札を見たり、順番を入れ替えたりできない』。ここ」
「……それが、どうしたんですか?」
「ガチンコ・ジャッジって、山札の上をめくるよね?」
「……?はい」
「でも、キュラックスの効果で、ユウカは山札を見たり動かしたりできない」
ユウカはもう一度、盤面の《
確かに、そう書いてある。
「……あ」
そこでようやく、ユウカの表情が変わる。
「めくれないから、ガチンコジャッジができない...?」
「ガチンコ・ジャッジができない場合は、数字は0として扱うんだ」
その瞬間、ユウカの顔から血の気が引いた。
先を想像してしまう。
いや、何なら見えてしまった。
「……まさか、
恐る恐る問うユウカに、先生はにっこりと笑う。
「その通り!続いて2体目のハチ公で攻撃する時!」
先生は手札から1枚のカードを場に出す。
「《轟く革命 レッドギラゾーン》革命チェンジだ!」
轟く革命 レッドギラゾーン コスト7 パワー11000 ソニック・コマンド・ドラゴン/革命軍 火
・革命チェンジ:自分の水、火または自然のコマンドが攻撃する時、そのクリーチャーと手札にあるこのクリーチャーを入れ替えてもよい
・W・ブレイカー
・自分のコマンドはすべて「スピードアタッカー」と「マッハファイター」を持ち、ブロックされない。
・ファイナル革命:このクリーチャーが「革命チェンジ」によって出た時、そのターン中に他の「ファイナル革命」をまだ使っていなければ、自分の他のクリーチャーをすべてアンタップする。
「レッドギラゾーン!?」
ユウカの知っている“レッドゾーン”と似た姿。
だが、その登場の仕方も、場に与える圧もまるで別物だった。
「ユウカ、革命チェンジとかファイナル革命は知ってる?」
「あっ、はい。アリスちゃんに貸してもらったカードに、《ドギラゴン剣》というのがありました」
「じゃあ説明は省略するね! レッドギラゾーンのファイナル革命、発動! 自分の他のクリーチャーをすべてアンタップする!」
その一言で、すでに攻撃を終えていたクリーチャーたちが一斉に起き上がる。
「えっ!?」
一瞬、思考が追いつかない。
「そのままW・ブレイクだ!」
容赦のない追撃。
シールドに手を伸ばすユウカの指先が、わずかに震える。
(ここで
キュラックスの攻撃が通れば、残り1枚も山札に入れられて敗北は確定する。
祈るような気持ちでカードを手に取り、その効果へと視線を落とす。
(……ん?)
そのテキストの中に、見覚えのある一文があった。
胸の奥から、一気に熱がこみ上げる。
「シ、
切札勝太&カツキング-熱血の物語- コスト5 パワー5000+ アウトレイジ・ドラゴン/ヒューマノイド 火・水・自然
マッハファイター
・このクリーチャーが出た時、自分の山札の上から5枚を見る。そのうちの1枚を相手に見せてから手札に加え、残りを好きな順で山札の下に置く。こうして見せたカードが火または自然なら、クリーチャーを1体選び、持ち主の手札に戻してもよい。
革命2:自分のシールドが2つ以下なら、自分のシールドゾーンから手札に加えるこのクリーチャーに「
革命0:自分のシールドが1つもなければ、このクリーチャーのパワーを+10000し、「スピードアタッカー」と「T・ブレイカー」を与える。
「効果で山札を……あっ!」
山札へ伸ばしかけた手が、ぴたりと止まる。
「そう、キュラックスの効果で山札は見れないよ」
「そんな……!」
希望だったはずのカードは、ただのパワー5000のドラゴンへと変わる。
ブロッカーもない。追撃を防ぐ術は何も無かった。
「キュラックスで最後のシールドを攻撃!」
容赦なく振り下ろされる一撃。
最後のシールドが砕け、ユウカはそれを山札の4枚目に差し込む。
もう、できることは残っていない。
そう思いながら——最後に、手札へと視線を落とす。
「あ……!」
一枚のカードが、目に留まる。
諦めかけていた心に、昨日のアリスの声がよみがえる。
『諦めたら、そこで終わりなんです!』
その瞬間、ユウカの瞳に力が戻る。
「ハチ公でダイレクトアタック!」
最後の一撃がユウカに届く、その瞬間。
ユウカはカードを1枚見せた。
「鬼エンドの効果で、《百鬼の邪王門》を発動します!」
百鬼の邪王門 コスト6 パワー11000 呪文 火・闇
<鬼エンド>クリーチャーが攻撃する時、シールドが1つもないプレイヤーがいて、自分のマナゾーンに闇のカードと火のカードがそれぞれ1枚以上あれば、この呪文を自分の手札からコストを支払わずに唱えてもよい。
・自分の山札の上から4枚を墓地に置く。こうして墓地に置いたカードの中から、闇または火のコスト6以下の進化ではないクリーチャーを1体選び、出す。その後、相手のクリーチャーを1体選んでもよい。その2体をバトルさせる。
「効果で山札の上から4枚を墓地に置きます!」
一気にめくられる4枚。
同時に、横向きに刺さっていたカードが、山札の上へと現れる。
(ハチ公を止めるだけじゃ足りない……!キュラックスも処理しないと負ける!)
墓地へ落ちた4枚に視線を走らせる。
そして——迷いなく、1枚を掴み取った。
「《龍素記号wDサイクルペディア》をバトルゾーンへ!」
龍素記号wDサイクルペディア コスト5 パワー5000 クリスタル・コマンド・ドラゴン/ダークロード 水・闇
・ブロッカー
・ジャストダイバー(次の自分のターンの始めまでこのクリーチャーは相手に選ばれず攻撃されない)
・このクリーチャーが出た時、コスト4以下の呪文を1枚、自分の墓地からコストを支払わずに唱えてもよい。
・各ターンに一度、自分の手札から呪文を唱えた時、その呪文を自分の墓地からもう一度、コストを支払わずに唱えてもよい。
・自分の墓地から呪文を唱えた後、墓地のかわりに山札の下に置く。
カードが叩きつけられ、場に現れる。
「《百鬼の邪王門》の効果で、今攻撃しているハチ公とバトルです!」
「中々やるね……!」
先生が感心したように目を細める一方で、ユウカはすでに次の一手へと意識を移していた。
墓地の中には、邪王門の効果で落ちたばかりのカードがある。そこにあるカードを忘れてはいなかった。
「サイクルペディアの効果で、墓地から《深淵の逆転劇》を使用します!」
深淵の逆転劇 コスト3 呪文 闇
・逆転撃③(今回は使用しないため割愛)
・相手のクリーチャーを1体選ぶ。このターン、そのクリーチャーのパワーを-∞する。(パワー0以下のクリーチャーは破壊される)
「《
静かに告げるその声には、もう迷いはない。
たった一枚の呪文が、盤面の流れを根こそぎひっくり返していく。
これで、先生の場には攻撃できるクリーチャーがいなくなった。
「キュラックスが離れたから、デッキをシャッフルしてね。……正直、想像以上だよ。よく耐えたね」
先生は少し驚いたような顔で、ユウカを見た。
「ここから逆転できるかな?ターンエンドだよ」
ユウカ ターン4
「ドロー!」
カードを引く。
耐えきったとはいえ、シールド差はまだ大きい。ここから逆転するには、相手の盤面を崩しながら一気に押し切るしかない。
けれど、不思議と迷いはなかった。
今の自分なら、どう動けばいいかが見えている。出すべきカードも、つなぐべきカードも、もう分かっていた。
「《切札勝太&カツキング-熱血の物語-》を召喚です!」
キュラックスがいなくなった今、カツキングを縛るものはない。
ユウカはそのままカードを見つめ、次の行動を重ねていく。
「能力で山札の上から5枚を見て……《百鬼の邪王門》を回収します!さらに火のカードを回収したため、レッドギラゾーンを手札に戻します!」
これで、先生の場からはクリーチャーがいなくなった。
盤面は一度まっさらに戻る。だが、それで終わるつもりはない。
「そして、カツキングで攻撃する時に、《百鬼の邪王門》と、《時の法皇 ミラダンテ
時の法皇 ミラダンテ
・T・ブレイカー
・革命チェンジ:光または水のコスト5以上のドラゴン
・このクリーチャーが出た時、手札から光のコスト5以下の呪文を唱えてもよい。唱えたかった場合はカードを1枚引く。
・ファイナル革命:このクリーチャーが「革命チェンジ」によって出た時、そのターン中に他の「ファイナル革命」をまだ使っていなければ、次の自分のターンのはじめまで、相手はコスト7以下のクリーチャーを召喚できない。
「光の呪文が無いので唱えることはできませんが……これで、先生は次のターン、コスト7以下のクリーチャーを召喚できません!」
言い切る声に、もう揺らぎはない。
さらにユウカは続ける。
「そして、《百鬼の邪王門》の効果で——」
山札の上から4枚を墓地に置く。
その中から1枚を選び、場へと叩きつけた。
「《
・自分がゲームに負ける時、これが相手のターンで、自分のマナゾーンに闇のカードと火のカードがそれぞれ1枚以上あれば、かわりに自分の手札にあるこのカードを相手に見せ、山札の下に置いてもよい。
・スピードアタッカー
・W・ブレイカー
<鬼エンド>このクリーチャーが出た時、シールドが1つもないプレイヤーがいれば、自分の山札の一番下のカードを墓地に置く。それがコスト5以下のクリーチャーなら、出してもよい。
「鬼エンドの効果で山札の下を墓地に…」
山札の下を墓地へ送る。
だが、そこにあったのはクリーチャーではなく、呪文だった。
一瞬だけ、ユウカの指先が止まる。
けれど、そこで終わりではない。
「効果は失敗……ですが、サイクルペディアの効果を使って墓地からもう一度《百鬼の邪王門》を唱えます!」
一度止まりかけた流れが、もう一度、はっきりと動き出した。
「《百鬼の邪王門》の効果で……墓地から2体目の《龍素記号wDサイクルペディア》をバトルゾーンへ出します!」
圧倒的な展開力と制圧力が盤面を支配する。
だが、先生は相変わらずニコニコとしたまま、少しも動じていない。
その表情が焦りを加速させる。
「ミラダンテでシールドを攻撃です!」
宣言と同時に、先生はシールドを一枚ずつ手札へ加えていく。
そのうちの一枚を見た瞬間、ふっと表情が変わった。
「
・このクリーチャーが出た時、相手のクリーチャーを1体選び、持ち主のマナゾーンに置いてもよい。その後、自分のマナゾーンにあるカードの枚数よりコストが小さいクリーチャーを1体、自分のマナゾーンから出してもよい。
「スカイソードの効果でカツキングをマナゾーンへ。そして、そのまま自分のマナから《
「っ……!」
ユウカは一瞬だけ息を呑む。
カツキングがいなくなったとはいえ、まだこちらには攻撃できるクリーチャーが3体残っている。
(まだよ……! まだ押し切れるはず!)
自分にそう言い聞かせるようにして、ユウカは次のカードへと手を伸ばした。
「続いて、ジャオウガでシールドを攻撃します!」
最後の二枚のシールドが、音を立てて砕け散る。
(1体止められても、まだ2体いる……! お願い……!)
固唾を呑み、ユウカは次の展開を見守る。
「
ストーム・ハイパー
・
・ハイパーエナジー(今回は使用しないため割愛)
・パワード・ブレイカー(パワー6000につきシールドをさらに1枚ブレイク)
・コストが異なる自分のクリーチャー1体につき、このクリーチャーのパワーを+3000する。
・このクリーチャーが出た時、このクリーチャーよりパワーが小さい相手のクリーチャーをすべて破壊する。
「このクリーチャーは場にいるコストの違うクリーチャーの数だけパワーが上がるんだ。そして今、場には4・10・11の三体がいるよね?」
「は、はい。という事はパワーは9000ですね…」
「そして出た時に、そのパワーの相手クリーチャーを全て破壊できるんだ!」
「ええっ!?」
ユウカの声が思わず上ずる。
平気だと思っていた盤面が、たった一枚のカードで一気にひっくり返された。
場に残ったのは、すでに攻撃を終えたミラダンテただ一体。
逆転できると思ったのに、まさかの逆転返し。
もう打つ手は無い。
「……ターンエンド、です」
ユウカは静かにそう告げた。
先生 ターン5
「ドロー!」
先生はカードを勢いよく引く。
「4コストでハチ公を再び召喚!」
そして迷いなく指をカードへ置いた。
「《ストーム・ハイパー
もう手札には、敗北を回避する手段は無い。
そしてそのまま、最後の一撃がユウカを貫いた。
「いやー、楽しかった! やっぱりデュエマって、逆転があるから面白いよね~」
テーブルの上のカードを手際よくまとめながら、先生は上機嫌に言った。
「ユウカもすごく楽しそうだったし……その顔が見られて、こっちも嬉しかったよ」
「えっ……」
途端に、ユウカの頬が一気に熱を持つ。
「さっきのターンのユウカ、すごく真剣で、すごく楽しそうだったからさ。思わず私まで熱くなっちゃったよ」
先生はいつもの柔らかな笑みを浮かべたまま、そう言った。
先生の楽しそうな顔が見たくて始めたはずのカードゲーム。
けれど、いつの間にか自分自身も、同じ熱に巻き込まれていたらしい。
「そ、そう……でしたか」
かろうじて絞り出した声は、どこか小さかった。
「その……、もしよろしければ…」
どこを見ているのか自分でも分からないまま、ユウカが言葉を口にしようとした瞬間だった。
「失礼しまーす!!」
「失礼します♪」
「先生、来たよー!」
休憩室のドアが勢いよく開く。
そこにいたのは、ノアとコユキ、そしてゲーム開発部の面々だった。
「えっ……?」
思わず固まるユウカをよそに、先生は何事もなかったかのように手を振る。
「ちょうど呼んだところだったんだ。せっかくだから、みんなでやろうかなって」
ユウカは一瞬で状況を理解し、顔を赤くしたまま固まる。
そんな様子を見たノアが、ふわりと首をかしげた。
「……あら? ユウカちゃん、少し顔が赤いですね?」
「なっ……」
ノアが面白そうに覗き込んでくる。
「先生と二人で何か……してましたか?」
「そ、そんなことないわよ!普通にデュエマをやってただけ!」
慌てて否定するユウカ。
だがその声は、明らかに上ずっていた。
「ただ、その……ちょっと熱くなっていただけというか……!」
「ふふっ」
ノアはくすりと笑うだけで、それ以上は追及しない。
代わりに、そっと先生の隣へと腰を下ろした。
「では、私も混ぜていただきますね」
「おー! 私も!私もやる!」
「アリスも参加します!」
気づけば休憩室は、いつもの静かな空気ではなくなっていた。
カードを広げる音、誰かの笑い声、そして少しだけ慌ただしい会話が重なっていく。
先生はそんな様子を見て、楽しそうに笑っていた。
ユウカはほんの少しだけ視線を逸らし、それから小さく息をついた。
「……もう、先生ったら」
でも、その口元は、確かに少しだけ緩んでいた。
その日、日が暮れるまでシャーレの休憩室からは楽しそうな声が響いていた。
本日のキーカード
・このカードは、4枚より多くデッキに入れることができる。
・スピードアタッカー
・このクリーチャーの攻撃の終わりに、相手とガチンコ・ジャッジする。自分が勝ったら、自分の山札を見る。その中から、《特攻の忠剣ハチ公》を1体、バトルゾーンに出してもよい。その後、山札をシャッフルする。
百鬼の邪王門 コスト6 パワー11000 呪文 火・闇
<鬼エンド>クリーチャーが攻撃する時、シールドが1つもないプレイヤーがいて、自分のマナゾーンに闇のカードと火のカードがそれぞれ1枚以上あれば、この呪文を自分の手札からコストを支払わずに唱えてもよい。
・自分の山札の上から4枚を墓地に置く。こうして墓地に置いたカードの中から、闇または火のコスト6以下の進化ではないクリーチャーを1体選び、出す。その後、相手のクリーチャーを1体選んでもよい。その2体をバトルさせる。
「『ドキドキ強いデッキ 25の王道』、キヴォトス各所のエンジェル24で公表発売中です!それに、5月にはそのデッキを強化するカードが入った、『ますます強いパック 25の援軍』も発売予定です!ご予約はお早めに!…………発注しておかなきゃ」